4月 21

アクセシブルなEPUBの作り方 -ウェブアクセシビリティガイドラインとEPUB –

 今回は電子書籍の標準フォーマットとして普及しつつあるEPUBのアクセシビリティについて1つ。
  
 EPUBはデジタル録音図書であるDAISYの要素を多く取り入れているため、フォーマットそのものがアクセシビリティに配慮されているといってもよいフォーマットではありますが、実際にEPUB形式のコンテンツがアクセシブルかどうかは作り手次第です。

 EPUBはHTMLやCSS等のWeb標準技術をベースとしているため、EPUB形式で作成されたコンテンツはW3CのウェブアクセシビリティガイドラインであるWCAG2.0(とそれをJIS化したJIS X8341-3:2010)の対象とする「ウェブコンテンツ(Web技術によって作成されたコンテンツ)」に該当すると思われます。ここで「該当する」というのは、EPUBを作る際にWCAGが参考になるという意味ではなく、WCAG2.0(JIS X8341-3:2010)の準拠が求められる場面において、EPUBコンテンツの作成者はWCAG2.0(JIS X8341-3:2010)に対する目配りも必要になってくるという意味です。

ウェブコンテンツとは、ウェブブラウザ、支援技術などのユーザーエージェントによって利用者に伝達されるあらゆる情報及び感覚的な体験を指し、例えば、ウェブアプリケーション、ウェブシステム、携帯端末などを用いて利用されるコンテンツ、インターネット、イントラネット、CD-ROMなどの記録媒体を介して配布されるウェブコンテンツ技術を用いて制作された電子文書、ウェブブラウザを用いて操作する機器などに適用する。
from JIS X8341-3:2010「1.適用範囲」

 
 WCAG2.0関連文書の1つであるWCAG 2.0 実装方法集では、PDFに対する言及はあるものの、EPUBに対する言及はまだありません。しかし、いずれEPUBに関する記述も追加されるのではないかと思われます。もしくは、HTML、CSS、Script、SMIL等々EPUBで使用されているWeb技術については、それぞれ個別に項目が立てられてまとめられていますので、それらを参照することになるのかもしれません。

 というわけで、「今回は、そういうのを加味しつつ、アクセシブルなEPUBの作り方について紹介しますっ!」と話をすすめたいところですが、EPUBの仕様を管理しているIDPFがEPUBのアクセシビリティガイドラインとしてまとまった文書を公開していますので、それを紹介するに留めます。

 EPUB 3仕様のエディタの1人であるMatt Garrish氏の以下の著書もよくまとまっていますのでお勧めです。O’Reilly Mediaから無料で入手可能です。


Accessible EPUB 3 : Best Practices for Creating Universally Usable Content

 By Matt Garrish
 Publisher: O’Reilly Media
 Released: February 2012

 
これらのドキュメント、長くはないとはいえ、最初にこれらを全部読むのもちょっとしんどいなぁという方には14のTipsにDIAGRAM Centerがまとめた以下のようなものもあります。 とっかかりとしてどうでしょうか。

関連エントリ

ウェブアクセシビリティガイドラインについて
ウェブアクセシビリティガイドライン: 代替テキスト
ウェブアクセシビリティ: 動画
ウェブアクセシビリティ :リンクのはり方
ウェブアクセシビリティ : テキスト
EPUBについて
4月 14

PDF関係の国際規格(ISO規格)

 国際規格化されたPDF関連の規格が多すぎるので少し整理してみました。

PDFの全機能を盛り込んだ国際規格

PDF 1.7をベースにPDFの全機能を盛り込んだ国際規格が2008年にISO 32000-1:2008として承認されました。現在、後継のPDF 2.0がISO/DIS 32000-2として検討されています。
 なお、PDF1.7の国際規格化以降はPDFはAdobeの手を離れて、ISOが管理する規格になり、仕様の策定は情報やイメージ管理の非営利の標準化団体AIIM (Association for Information and Image Management) が進めているようです。

 
 規格書は約25,000円強とお求めやすいとは言い難い価格ではありますが、幸いISO 32000-1はAdobeが以下のサイトで無料で公開してくれています。ありがたい。

参考

 

PDFのサブセット版国際規格

 PDFの仕様を目的に応じて部分的に切り出して国際規格化したものを挙げてみました。まだ、国際規格化されていないので、ここでは挙げていませんが、PDF/H(ヘルスケア)も国際規格化にむけて検討が進められているようです。

PDF/A(長期保存用)

長期保存用に利用されることを目的とした規格で。フォントの埋め込みや暗号化の禁止や外部依存性の排除など長期的なコンテンツへのアクセスの担保に適したものになっています。

  • PDF/A-1(ISO 19005-1:2005)
    • PDF1.4がベース。
    • PDF/A-1a(ISO 19005-1完全準拠)。
    • PDF/a-1b(ISO 19005-1一部準拠)。
  • PDF/A-2 (ISO 19005-2:2011)
    • PDF 1.7(ISO 32000-1)がベース。
    • PDF/A-2a(ISO 19005-2完全準拠)。
    • PDF/a-2b(ISO 19005-2一部準拠)。
    • PDF/a-2u(ISO 19005-2一部準拠。bに加えてテキスト内のユニコード値を取得できること)。
  • PDF/A-3(ISO 19005-3:2012)
    • PDF 1.7(ISO 32000-1)がベース。
    • PDF/A-2を任意のファイル形式の埋め込みに対応させたもの。
    • PDF/A-3a(ISO 19005-3完全準拠)。
    • PDF/a-3b(ISO 19005-3一部準拠)。
    • PDF/a-3u(ISO 19005-3一部準拠。bに加えてテキスト内のユニコード値を取得できること)。
参考

  

PDF/X(印刷用)

  商用ベースの印刷に利用されることを目的とした規格シリーズ。さすがに沢山ありますねぇ・・・。

参考

 

PDF/E(エンジニアリング用)

 技術文書の交換に使用されることを目的とした規格のようです。

参考

 

PDF/VT(バリアブルデータ・トランザクション印刷用)

  可変するデータに応じた印刷(差し替え印刷みたいなもの?)に使用されることを目的とした規格のようです。

参考

 

PDF/UA(ユニバーサルアクセシビリティ)

 PDF/UAについては、また後日別のエントリで紹介しようと考えていますので、ここでは簡単に述べるにとどめますが、アクセシブルなPDFを作成するための一連のガイドラインを提供することを目的としているようです。

参考
4月 11

アクセシビリティに配慮した音声や動画(映像)の代替コンテンツの提供の話

 今回は、音声、映像コンテンツ(動画)のウェブ上でのアクセシブルな公開方法について考えてみたいと思います。

音声・映像の代替コンテンツ

 音声、映像コンテンツ(動画)を提供する際、アクセシビリティ上の観点から代替コンテンツを提供することが求めらます。W3CのウェブアクセシビリティガイドラインであるWCAG2.0では、「1.2 時間の経過に伴って変化するメディア」(JIS X8341-3:2010では、7.1.2)で、提供すべき代替コンテンツの要件がまとめられていますが、文章のみでは非常にわかりづらいので、表にまとめて整理してみました。
 

WCAG2.0(JIS X8341-3:2010)で求められる音声・映像の代替コンテンツ
(括弧内の番号はWCAG2.0の章節番号。リンク先はWCAG2.0解説書
形態 公開方法 達成等級A 達成等級AA 達成等級AAA
音声のみ 収録済 ○時間の経過に伴って変化するメディアの代替コンテンツ(1.2.1
ライブ ○時間の経過に伴って変化するメディアの代替コンテンツ(1.2.9)
映像のみ 収録済 ○音声トラック(1.2.1
○時間に伴って変化するメディアの代替コンテンツ(1.2.1
○(全ての映像について)時間の経過に伴って変化するメディアの代替コンテンツ(1.2.8
ライブ
映像と音声の
同期メディア
収録済 ○(全ての音声に対して)キャプション(1.2.2
○(映像に対して)時間の経過に伴って変化するメディアの代替コンテンツ又は音声ガイド(1.2.3
○(全ての映像に対して)音声ガイド(1.2.5 ○(全ての音声に対して)手話通訳(1.2.6
○(全ての映像に対して)拡張した音声ガイド(1.2.7
○(全ての音声及び映像に対して)時間の経過に伴って変化するメディアの代替コンテンツ(1.2.8
ライブ ○(全ての音声に対して)キャプション(1.2.4

 
 「映像と音声の同期メディア」は、映像に同期して音声も再生されるコンテンツを指します。Youtubeなどで公開されている動画はほとんどがこれに該当するのではないでしょうか。「ライブ」は生中継を指しています。代表的なものはUstreamでしょうか。

 提供すべきとされている代替コンテンツのそれぞれの意味は以下の通りです(WCAG2.0及び関連文書にある用語解説の転載)。詳細は、WCAG2.0解説書を参照してください(上の表では、それぞれのWCAG2.0解説書の該当するページにリンクをはってあります。)

時間の経過に伴って変化するメディアに対する代替コンテンツ
正しい順序で提供されている、時間の経過に伴って変化する視覚的及び聴覚的情報のテキストによる説明(トランスクリプト)を含み、時間の経過に伴って変化する情報のやりとりの結果を得る手段を提供する文書。
音声ガイド
音声トラックに追加されたナレーションで、主音声のトラックだけでは理解できない重要で視覚的な細部を説明するもの。
キャプション
そのメディアのコンテンツを理解するのに必要な、発話および発話ではない音声情報の両方に対する、同期した視覚的表現あるいは代替テキスト。
拡張した音声ガイド
追加の説明を付加する時間を作るために映像を一時停止させて、視聴覚のプレゼンテーションに付加した音声ガイド。
手話通訳
ある言語、通常は話し言葉を、手話に訳すこと。

代替コンテンツの提供が難しい場合

 最低限満たすべきとされる達成等級Aにおいても、音声・映像コンテンツの代替コンテンツの提供が求められていますが、それが困難な場合も当然ありうると思われます。その際においても、「みんなの公共サイト運用モデル (2010 年度改定版) 」は、以下のようにせめて概要だけでも提供することを求めています(等級Aを満たすことにはなりません)。

全ての情報についてページを作成したり、字幕や音声ガイドをつけることが難しい場合は、概要情報のページを作成したり、内容に関する問い合わせ先を明記するなどの対応が求められます(ただし、JIS の等級 A を満たすことにはなりません)。
from 「みんなの公共サイト運用モデル (2010 年度改定版) 」 p21

外部の動画サイトのコンテンツの埋め込んだ場合はどうなのか

 動画は自サイトでコンテンツを公開することよりも、Youtubeなどで公開されている動画を自サイトに埋め込んで公開することが多いと思われます。

そこで、気になるのが、

  外部の動画サービスを使用する場合もWCAG2.0(JIS X8341-3:2010)の対象になるのか

ということですが、「みんなの公共サイト運用モデル (2010 年度改定版) 」を参照する限り、対象になると考えたほうがよさそうです。

外部の動画公開サービスを利用し、自団体のホームページ内で動画を再生させる場合も、上記の対応が求められます。

from 「みんなの公共サイト運用モデル (2010 年度改定版) 」 p21

WCAG2.0(JIS X8341-3:2010)

 前述の通り、W3CのウェブアクセシビリティガイドラインであるWCAG2.0では、「1.2 時間の経過に伴って変化するメディア」全体が今回のエントリに係る要件になります(JIS X8341-3:2010では、7.1.2)。

ガイドライン 1.2 時間の経過に伴って変化するメディア

時間の経過に伴って変化するメディアには代替コンテンツを提供する。

1.2.1 収録済の音声しか含まないメディア及び収録済の映像しか含まないメディア

収録済の音声しか含まないメディア及び収録済の映像しか含まないメディアは、次の事項が当てはまる。ただし、その音声あるいは映像がテキストの代替メディアであって、そのことがはっきりとラベル付けされている場合は除く。 (レベル A):

  • 収録済の音声しか含まないコンテンツ: 時間の経過に伴って変化するメディアの代替が、収録済の音声しか含まないコンテンツと等価な情報を提供している。
  • 収録済の映像しか含まないコンテンツ: 時間に伴って変化するメディアの代替あるいは音声トラックが、収録済の映像しか含まないコンテンツと等価な情報を提供している。

1.2.2 収録済の音声コンテンツのキャプション

同期したメディアに含まれている収録済の音声コンテンツすべてにキャプションを提供する。ただし、そのメディアがテキストの代替メディアで、はっきりとそのようにラベル付けされている場合は除く。(レベル A)

1.2.3 収録済の映像コンテンツの音声ガイドまたは代替

同期したメディアには、時間の経過に伴って変化するメディアの代替あるいは収録済の映像コンテンツの音声ガイドを提供する。ただし、そのメディアがテキストの代替メディアで、はっきりとそのようにラベル付けされている場合は除く。 (レベル A)

1.2.4 ライブの音声コンテンツのキャプション

同期したメディアに含まれているライブの音声コンテンツすべてにキャプションを提供する。 (レベル AA)

1.2.5 収録済の映像コンテンツの音声ガイド

同期したメディアに含まれている収録済の映像コンテンツすべてに音声ガイドを提供する。 (レベル AA)

1.2.6 収録済の音声コンテンツの手話通訳

同期したメディアに含まれている収録済の音声コンテンツすべてに手話通訳を提供する。 (レベル AAA)

1.2.7 収録済の映像コンテンツの拡張した音声ガイド

前景音の合間が音声ガイドが映像と同じ意味を伝達するのに十分ではない場合、同期したメディアに含まれている収録済の映像コンテンツすべてに拡張した音声ガイドを提供する。 (レベル AAA)

1.2.8 収録済のメディアの代替

収録済の同期したメディアすべて及び収録済の映像しか含まないメディアすべてに、時間の経過に伴って変化するメディアの代替を提供する。 (レベル AAA)

1.2.9 ライブの音声しか含まないコンテンツの代替

ライブの音声しか含まないコンテンツと等価な情報を提示する時間の経過に伴って変化するメディアの代替を提供する。 (レベル AAA)

参考:達成基準 1.2 を理解する | WCAG 2.0解説書

関連エントリ

ウェブアクセシビリティガイドラインについて
代替テキスト
リンクのはり方
テキスト