EPUB3 ≒ DAISY4 — EPUB 3とDAISY 4の関係と現在の状況 —

EPUB 3とDAISY 4との関係についてまとめました。

DAISY 4とは

 正式には“Authoring and Interchange Framework for Adaptive XML Publishing Specification”(ANSI/NISO Z39.98-2012)と呼ばれる米国情報標準化機構(NISO)の規格のとして2012年8月に公開されたフォーマットです。

 なお、海外では、“ANSI/NISO Z39.98-2012”、”DAISY AI”もしくは、”ZedAI(”Z39.86 Authoring and Interchange Framework”の略)“のほうが通称として使用されることが多く、「DAISY4」というナンバリングされた名称は現在、通称としてはほとんど使用されていないようです(ここでは便宜上「DAISY 4」という呼称も使用します)。

 「DAISY AI」のAI(Authoring and Interchange)が意味するように、DAISY4は「交換フォーマット(中間フォーマット)」です。コンテンツの提供者側が保有するフォーマットで、そのまま読者が利用するためのフォーマット(「配布フォーマット」)ではありません。イメージは以下のような感じです。
次のテキストでイメージの説明あり 

 コンテンツのテキストや動画、音声などを格納したDAISY AIという交換フォーマットからテキストDAISY的なEPUB、マルチメディアDAISY的なEPUB、点字データ、アクセシブルPDFなどアクセシブルな形で利用者が利用する各種配布フォーマットに変換するイメージです。

ANSI/NISO Z39.98-2012 (DAISY4)仕様のOverview部分だけ以下のエントリで訳してみましたので、こちらも参照してください。

DAISY 4とEPUB 3の関係

 2011年10月に仕様が正式に公開されたEPUB 3は、DAISY4の主要な配布フォーマットに位置づけられ、テキストDAISYやマルチメディアDAISYのような利用が想定されています。「EPUB3とDAISY4は統合した」という説明がされることがありますが、その「統合された」部分とは、配布フォーマットを指しています。ちなみにEPUB3の各仕様のエディタに名を連ねている方々を見ていただいても分かりますが、EPUB 3の開発にもDAISYコンソーシアムは非常に深く関わっています。

 DAISY4の開発当初は交換フォーマットだけではなく、DAISY4の配布フォーマット版の開発も検討されていたようですが、EPUB3にDAISY4の配布フォーマットとしての要件がほぼ受け入れれることになったため、DAISY独自の配布フォーマットの開発はやめて、DAISYの交換フォーマットとEPUB3の開発に力を入れる事になったそうです。そのあたりの経緯は以下をご参照ください。

 EPUB2からEPUB 3への主な変更点は以下の通りで、HTML5対応、インタラクティブ機能の他に全体的なアクセシビリティの強化がはかられています。

  • 動画・音声ファイルのサポート
  • SMIL3.0のサブセットが仕様に組み込まれ、テキストと同期した形で音声を再生することが可能に(EPUB Media Overlays)。
  • MathMLのサポート
  • JavaScriptのサポート
  • Text-to-speechのサポート機能強化(CSS3 Speech Module、インラインSSML、PLS(Pronunciation Lexicon Specification)
  • HTML5(XHTML5)マークアップ
  • 国際化対応(縦書きなどの日本語組版対応など)

 マルチメディアDAISY的な機能は、音声とテキストを同期させるEPUB Media Overlaysによって実現されます。


例: EPUBリーダーReadiumでMedia Overlays付きEPUB3を再生するデモ

 テキストと動画の同期は、残念ながら現時点ではEPUB Media Overlaysではサポートされていません。動画とテキストを同期させることができれば、手話通訳動画を挿入したり、読み上げにあわせて絵が動く絵本のなどが実現できるので、ぜひ対応して欲しいところです。 

DAISY4の現在の状況

DAISY4の現時点での状況をまとめると以下の通りです。

DAISY的EPUB3の閲覧環境

EPUBリーダーのMedia Overlays対応

 EPUB 3の閲覧環境はこの1年で大きく改善されましたが、EPUB Media Overlaysに対応しているEPUBリーダーはまだ多くありません。私が把握している限りでは、ReadiumとiOSのiBooksです。

 Media Overlaysに対応はしても、音声の再生制御(音量、スピード、再生間隔)や読み上げ箇所の様々なレベルでの移動(特にキーボードを使用しての)機能等は既存のDAISYリーダーのそれと比較するとまだ十分ではありません。
 

DAISYリーダーのEPUB 3対応

 従来のDAISYユーザーに特化したDAISYリーダーでのEPUB対応も重要です。DAISYリーダーのEPUB対応については、以下のエントリで述べた通りで、EPUB2に対応しているDAISYリーダーはいくつかあるものの、EPUB3対応しているリーダはida-readerVoice Dream Readerぐらいでで、どちらもMedia Overlaysには対応していません。

 なお、話は少し変わりますが、EPUBに対応したDAISYリーダーでは、当然ですが以下のデモのようにEPUBをテキストDAISYと同様にTTSで再生を細かく制御しながら読み上げることが可能です。


例: EPUB2に対応したDAISYリーダーDolphin EasyReaderで広報ひらつかEPUB版を読み上げる。

 上のデモで使用したDolphin EasyReaderは残念ながらEPUB3未対応ですが、日本語TTSエンジンを搭載したEPUB2/EPUB3両対応のDAISYリーダーが登場すれば、日本のDAISYユーザーの選択肢が大幅に広がるかもしれません。

配布フォーマットへの変換ツール

 DAISY4は交換フォーマットですので、利用者が利用できる各種「配布フォーマット」に変換するツールが必要です。そのツールとしてDAISYコンソーシアムが開発しているのが、以下の「DAISY Pipeline 2」です。

 開発ロードマップを見る限り、2013年で開発は終了するようです。DAISY4からEPUB 3への変換モジュールは、一応提供されているものの、課題は残っているようで開発が続けられています(「ZedAI」はDAISY4を指す)。

音声とテキストに同期させるための編集ツールであるTobiはEPUB 3 Media Overlays生成にすでに対応しています。

米国の全国指導教材アクセシビリティー標準規格

 米国では個別障害者教育法(IDEA 2004)によって電子教科書の電子ファイルをNIMAS形式(全国指導教材アクセシビリティー標準規格)でNIMAC(全国指導教材アクセスセンター)に提供する義務が出版社に課されています。そのNIMAS形式は実質、DAISYなのですが、そのNIMAS形式が現時点ではまだDAISY3ベースです。しかし、これは時間の問題で、DAISY 4に移行すると思われます。

まとめ

 DAISY4の作る/読む環境は現時点では十分とはいえませんが、DAISY4の仕様の正式な公開が2012年8月ですので、まだ1年を経過していません。環境が整備されるまでもう少し時間は必要ではないかと思われます。

関連エントリ

EPUB 3とDAISY 4の関係
DAISYからEPUB 3に変換する
DAISY再生ソフト・機器のEPUB対応

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