EPUB3に対応しているDAISY再生ソフトida-readerでEPUBを試す。

 先のエントリでEPUBに対応しているDAISY再生ソフト/機器を調べてみましたが、その中で唯一EPUB3に対応していたida-readerのトライアル版でEPUBを試してみました。
ida-reader
http://www.idareader.com/

 気になっていた以下の2点を中心に確認してみました。

  1. ida-readerで開いたEPUBがテキストDAISY的に使用できるか
  2. ida-readerがEPUB Media Overlays対応しているか

なお、使用するEPUB3のサンプルファイルは主に以下で公開されているファイルを使用します。

  なお、私が今回使用したida-readerはMac版です。Windows用とMac用で若干機能に差があるようですので、ご注意ください。

1.EPUBをテキストDAISY的に使用してみる

 普通のEPUBファイル、ということで一番問題なさそうな、欧文のみの”EPUB 3.0 Specifications“をida-readerで開いてみました。これがida-readerのUIです。
ida-readerのスクリーンショット
 下部のナビゲーション部分にある「Sound」でTTSエンジンによって読み上げるのか、コンテンツが同梱している録画された音声ファイルを読み上げるのかを選択することができます。テキストDAISY的な使用感を確認したいので、まずはTTSエンジンによる読み上げを試します。
Sound欄のTTSボタンを押した状態
  再生ボタン(start)を押すと、TTSエンジンによる読み上げがスタートします。
ida-readerによるEPUBのTTS読み上げ。読みあげているパラグラフは黄色、単語は水色にハイライトされている
 読み上げているパラグラフは黄色、読み上げている単語は水色でハイライト表示されています。なお、現時点では日本語のTTSエンジンを搭載していないので、日本語の読み上げには対応していません。
 GUIのナビゲーションでは、
・文字の拡大縮小
・読み上げ音声のボリューム調整
・読み上げスピードの調整
・再生箇所の移動(戻る、繰り返す、進む)
・セクションの移動
などが用意されています。キーボードショートカットを使用すればより細かな制御が可能になるのでしょうか(ショートカットの案内を見つけられなかった・・・・)。
 

2.EPUB Media Overlaysに対応しているか

 EPUBでマルチメディアDAISYのような機能を実現するためには、リーダーがEPUB Media Overlaysに対応している必要があります。EPUBリーダーだとiBooksやReadiumなどが一応対応している機能です。DAISY再生ソフトであるida-readerには対応していてほしいところですが、どうでしょうか。
 epub-samplesで公開されている以下のMedia Overlays対応のサンプルEPUBファイルで試してみました。

 「Sound」欄で「Audio」を選択します。
Sound欄のAudioボタンを押した状態
 これで、ida-readerがMedia Overlaysに対応しているならば、再生ボタンを押せば、EPUBに同梱された音声ファイルを読み上げつつ、読み上げている箇所にテキストをハイライト表示させるはずです。
 
 が・・・・、一向にに音声の再生も、テキストのハイライトもされません・・・。うーん。
Media Overlays対応のEPUBの録画音声による読み上げを試みたスクリーンショット。読み上げも始まらず、テキストのハイライトもされない
 
 IMAGEDRIVEさんが以下で公開されているMedia Overlays対応のEPUBファイルも一通り試してみましたが、どれも結果は同じでした。

  現時点ではEPUB Media Overlaysには対応してないようです。残念・・。

まとめ

 DAISY再生ソフトであるならばMedia Overlaysに対応して欲しかったところですが、特にDAISY再生ソフト向けに加工されたわけではない、普通のEPUBでも、TTSで読み上げたり、読み上げているテキストをハイライトさせたり等々、テキストDASIYに近い使い方がida-reader上でならできる(らしい)ことは確認できてよかったです。
他のEPUB対応DAISY再生ソフトでもEPUBファイルが

  • リフロー型である。
  • 文字情報がテキストデータとして提供されている。
  • 目次が用意されている。
  • 代替テキストが提供されている。

などの要件を満たせば、同様のことが可能であろうと思われます。iBooksなどのEPUBリーダーではTTS読み上げによるテキストハイライトはまだできないようですし、ナビゲーション機能が強化されているDAISYリーダーでEPUBを読むという選択肢もありかもしれません。

関連エントリ

EPUB 3とDAISY 4の関係
DAISYからEPUB 3に変換する
DAISY再生ソフト・機器のEPUB対応

EPUBに対応したDASIY再生ソフトウェアと再生機器

 DAISY4とEPUB3の関係は以前、別のブログで書いた以下のエントリの通り、DAISY4は交換フォーマット、EPUB3はDAISY4の配布フォーマット(の1つ)という関係にあります。

 つまり、DAISY4から変換したDAISY的な機能を備えたアクセシブルなEPUB3に再生機器、再生ソフトウェアに対応していなければならないわけですが、考えられる対応のパターンは以下の2つだと思います。

  1. DAISY再生ソフトウェア/機器がたDAISY4から変換したDAISY的な機能を備えたアクセシブルなEPUB3に再生に対応する。
  2. EPUBリーダーがDAISY4から変換したDAISY的な機能を備えたアクセシブルなEPUB3に再生に対応する。

 個人的には2が非常に気になるところですが、1も興味があるところなので、1の可能性の下調べてとして、現時点でDAISY再生ソフトウェア/機器がEPUBに対応しているかを調べてみました。「DAISY的な機能を備えたアクセシブルなEPUB3」への対応状況を調べたいところだったのですが、調べ始めてすぐに「あっ、これはない・・・」と思い至りまして・・、単純にEPUBに対応しているか否かで調べてみました。
 確認したのは、DAISY Consortiumがウェブサイトで掲載している以下のリストです。リストと各メーカのウェブサイト上で確認できる範囲で洗い出しただけですので、漏れがあるかもしれません(もし掲載漏れ等ありましたらお知らせいただけると嬉しいです)

 
  確認した結果が以下の表です。

EPUBに対応したDASIY再生ソフトウェアと再生機器
名前 種別 OS 備考
BookSense DS 機器
DAISY / EPUB Reader for Android ソフトウェア Android EPUB対応を目指しているが、現時点では未対応。開発が止まっている?
Dolphin EasyReader ソフトウェア Windows
Emerson ソフトウェア Windows/Mac/Linux
Go Read ソフトウェア Android EPUB2対応
ida-reader ソフトウェア Windows/Mac EPUB2 / EPUB3対応
Milestone 212 DAISY Player 機器 DAISY Consortiumのリストの情報による
Milestone 312 DAISY Player/Recorder 機器 DAISY Consortiumのリストの情報による
ReadHear PC ソフトウェア Windows Premium版のみの対応。ReadHearのMac版は近いうちにEPUB対応とのこと。
Victor Reader Stream 機器

 辛うじて10に届くくらいで多いとは言えません。しかも、EPUB3対応と明記しているのはida-readerくらいでした。
  調べてみて気になる点は以下の2点でした。

  • ida-readerがどこまでEPUB3に対応しているか(「DAISY4から変換したDAISY的な機能を備えたアクセシブルなEPUB3」に対応している可能性は高くなさそうですが・・・)。
  • DAISY4から生成されたものではない、普通に作られたEPUB2やEPUB3を、視覚障害者ユーザーに特化したDAISY再生ソフトウェア/機器で読む場合の「読みやすさ」。DAISYコンテンツによる読書ほどではないとしても、視覚障害者の方々にとってそこそこ読みやすく、実用に耐えうる読みやすさなのでしょうか。

  (時間と)機会があれば確認してみたいところです。
※2013/06/07追記
日本語の読み上げにも対応した以下のアプリを見落としていました。EPUBも対応しています(EPUB3も一応、対応しています)。

 

関連エントリ

EPUB 3とDAISY 4の関係
DAISYからEPUB 3に変換する
DAISY再生ソフト・機器のEPUB対応

脳から発信する信号を検知して身体を動かせない人でもPCへの入力を可能とする支援技術「スイッチHAL」

  筑波大学の山海嘉之教授の研究グループがロボットスーツHALの応用技術として開発した「スイッチHAL(仮称)」がすごい。脳から筋肉に向けて発信する信号を検知して身体を動かせない人でもPCへの入力を可能とする技術です。
 3月24日に行われたITパラリンピック2013では、スイッチHALのデモが行われ、その様子をUstreamのアーカイブからみることができます。下の動画の00:40:00あたりからです。

Video streaming by Ustream
 ロボットスーツを支える技術の1つとして、脳からの発せられる信号を皮膚の表面から取り出す技術があります。取り出した信号を解析し、ロボットスーツの装着者の運動意図を推測し、それをスーツのモータのトルクに反映することで装着者の動きを支援する流れになるそうです。その脳から発せられる信号を検知する技術を入力支援技術として応用したのがスイッチHALです。上のデモでは、デモを実演する人の腕につけたセンサーで、脳からの発せられた信号自体を拾い、処理をしてPCへの入力しています。
 従来の入力支援技術は、脳からの信号によって筋肉が収縮し、その結果として生じた身体の動きを微才なレベルでも如何に検知するかに力が入れられていたそうですが、このスイッチHALはその脳からの信号の段階で検知しています。筋力がない状態でも使える可能性があるそうです。
 この技術は応用範囲がすごく広いのではないでしょうか。
 信号検知の標準化が今後の課題のようですが、2014年3月までになんとか商品化したいとのこと。期待が高まります。