3月 29

日本学生支援機構が平成26年度「障害のある学生の修学支援に関する実態調査」の報告書を公開

 独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)が平成26年度「障害のある学生の修学支援に関する実態調査」の報告書を3月27日に公開しました。どのような障害のある学生がどれくらい在籍し、どのような支援を受けているか、各機関はどのような体制で支援を行っているのか、どのような設備を行っているのか、障害学生の卒業後の進路等が数量的に詳細に明らかにされています。

 「障害のある学生の修学支援に関する実態調査」は平成17年度から大学、短期大学、高等専門学校1,000校以上を対象に毎年行われています。

3月 27

メタデータを電子書籍のアクセシビリティの議論の俎上にそろそろのせませんか

  2月19日に近畿視情協主催で「どうなる! 電子書籍のアクセシビリティ ~ だれにも使える「本」の実現をめざして」というイベントがありました。そこで登壇された大阪府立中央図書館の杉田正幸さんが、視覚障害者にとってもっとも使いやすい電子書籍書店は現状ではアマゾンのKindleストアではないかという話をされていました。
 

 しかし、そのアマゾンをして、合成音声による読み上げが可能かどうかの情報をきちんと提供できておらず、購入してダウンロードするまでは合成音声で読み上げできているのかわからないという状態が続いています。

 米国のAmazon.comは以下のようにきちんとメタデータとして提供しているのですが、
米国Amazon.comのメタデータにはText-to-Speechという項目がある。この写真ではその項目にEnabled(有効)という値が入っている
Amazon.com : Dead Wake: The Last Crossing of the Lusitania [Kindle Edition]

 
 日本のアマゾンは、以下のようになっており、メタデータとして提供していません。

日本のAmazon.co.jpには、米国Amazon.comのメタデータにあったText-to-Speech欄がない
マイクロフォーサーズレンズ FANBOOK [Kindle版] : Amazon.co.jp

 では、どこで合成音声に対応しているかを確認できるのかというと、画面上部の表紙画像が掲載されているところの
画面上部の表紙画像が掲載されている周辺に米印で次の文言が掲載されている。

以下の文言で判断するしかありません。

※この商品は固定レイアウトで作成されており、タブレットなど大きなディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。

 

 コミックに至っては上の文言すらなく、コミックは画像を用いた固定レイアウトなんだということを知らなければ、購入するタイミングで合成音声で読み上げることができるかどうかも判断することができません。

 なお、余談ながら、Amazon.co.jpでも洋書については米国のAmazon.comのメタデータをそのまま流用しているからなのか、合成音声の対応についてきちんとメタデータが提供されています、
Amazon.co.jpの洋書にはtext-to-Speech(テキスト読み上げ機能)欄がある
Amazon.co.jp: Dead Wake: The Last Crossing of the Lusitania 電子書籍: Erik Larson: Kindleストア

 ここでは、視覚障害者が比較的使いやすいとされるAmazon.co.jpのことばかり書いてしまいましたが、iBooksストア、google Play、楽天kobo、紀伊国屋書店などの他の電子書籍ストアでも状況は変わらず(あるいはもっとひどい)、この種のメタデータは提供されていません。

 電子書籍サービスを視覚障害者の方が利用するようになってきており、アクセシビリティに関するメタデータの提供は、未来の課題ではなく、現在進行形の問題だと思います。電子書籍ストアにはなるべく早く提供するようにして欲しいところです。

 また、ここでは合成音声による読み上げに関するメタデータを問題にしましたが、メタデータとして提供するべき語彙は他にもいろいろとあるはずです。電子書籍のアクセシビリティについての議論はいろいろなところでされているようですが、国内でアクセシビリティの観点からメタデータについて議論されていることをあまり聞いたことがありません。アクセシビリティについてどのような情報をメタデータとして提供するべきかという議論をそろそろ日本でも行うべきではないでしょうか。電子書籍そのものに格納されるメタデータと、電子書籍ストアのウェブサイトで提供されるべきメタデータ、それぞれについて。

関連エントリ

3月 26

図書館の「障害者サービス」の英訳

 図書館の「障害者サービス」の英訳について。 “library service for “の後に「障害者」に当たる言葉にどの単語を使うべきかという話で、「障害」を意味する単語の”impairment”、”disability”、”handicap”のどれを使うべきかという話です。

 結論は実は出ていて、IFLAでは、いや、国際社会では、「障害者」という言葉に”persons with disabilities”などのように”disability”を用いるので、”library service for persons with disabilities”あるいは、”library service for the disabled”と訳せばよいのだと思う。結論そのものは迷いはないのですが、考え方としてどうなのだろうと思った次第。
 
 それぞれの意味は以下のエントリで触れた通りです。

 視覚障害に当てはめるならば、以下のとおりです。

(1)impairment(機能障害)
例: 目という機能に障害があること
   ↓
(2)disability(能力障害)
 例:目が見えないために墨字を読むという能力に障害があること墨字(インクで書かれた文字)を読めないこと。
   ↓
(3)handicap(社会的不利)
例:字で書かれた情報を得られないために社会的な不利を得がちだということ
  
 図書館の障害者サービスは、「障害者」を対象とする対象別のサービスではなく、図書館の全ての資料をすべての利用者に利用できるようにする、資料の利用に困難が利用者がいるなら、その利用者の困難を取り除くというのが図書館における障害者サービスです。だから、録音図書も提供するし、対面朗読サービスも提供しているのですが、障害者サービスをこの意味で考える場合、”library service for the handicapped”は矛盾しています。なぜなら、ここでの”the handicapped”は図書館利用において不利を得ている方ということになり、障害者サービスはそういう方を生じさせないサービスなのだからと。

 なので、handicapという言葉は用いず、disabilityという言葉を用いているのだろうか。
 
 なお、impairmentを用いないのは、昨今の「障害者」の定義が医学モデルではなく、社会モデルでされているからかと思う。

 以上、つらつらと思ったことでした。

3月 23

全国高等教育障害学生支援協議会 第1回大会(2015年6月19日〜20日)

  一般社団法人全国高等教育障害学生支援協議会の第1回大会が以下の日程で開催されるそうです。

日時:2015年6月19日〜20日
会場:東京大学先端科学技術研究センター(東京都目黒区駒場4-6-1)

 
 全国高等教育障害学生支援協議会は高等教育機関における障害学生支援に関する相互の連携・協力体制を確保を目的とした団体で、42の大学が発起校として名を連ねています。2014年10月に設立とのこと(定款の施行は2015年1月なので、一般社団法人としては、2015年1月からなのかもしれない)。

 この協議会の設立までの流れとしては、先のエントリでも紹介した障がいのある学生の修学支援に関する検討会報告書(第一次まとめ)が2012年12月に出されたの受けて、「高等教育機関における障害学生支援に関する全国協議会(仮称)」設立準備大会が2013年10月に開催、そして、一般社団法人として全国高等教育障害学生支援協議会が2014年10月に設立というもののようです。URLに”ahead-japan”とあるように、米国のAHEAD(Association on Higher Education and Disability)をモデルにしているようです。

※2015年4月2日追記 プログラムが公開され、参加申し込みできるようになりました。

プログラム

第1回大会・1日目(プレカンファレンス) 2015年6月19日(金)

時:2015年6月19日(金)10:30~17:30(その後19:30まで情報交換会/レセプション) ※9:30より受付
場所:東京大学先端科学技術研究センター(東京都目黒区駒場4-6-1) → アクセスマップ

プログラム
10:30-12:45(3号館南棟ENEOSホール)
セミナー「差別解消法と合理的配慮の提供に向けた体制整備に必要なこと」
・国公立大学における対応要領の作成
・私立大学における体制整備
※途中15分の休憩を挟みます
12:45-14:00 昼食休憩
14:00-17:00(3号館南棟ENEOSホール)
法人分科会「学内体制整備における問題点の共有」
・国公立大学等分科会
・私立大学等分科会
※途中30分の休憩/コーヒーブレイクを挟みます
17:00-17:30 休憩・移動
17:30-19:30(AN棟1階)
情報交換会/レセプション

第1回大会・2日目(メインカンファレンス) 2015年6月20日(土)

日時:2015年6月20日(土)09:00~17:30 ※8:00より受付
場所:東京大学先端科学技術研究センター(東京都目黒区駒場4-6-1) → アクセスマップ

プログラム
09:00-09:40(3号館南棟ENEOSホール)
初回大会開催挨拶
全国協議会の現状説明と今後
09:40-10:00 休憩・準備
10:00-11:30(3号館南棟ENEOSホール)
基調講演
ピーター・ブランク教授(シラキュース大学)
「米国の障害学生支援の制度と課題」(仮) Peter Blank 教授
11:30-13:00 昼食休憩
12:00- (4号館2階講堂)
ポスター会場での掲示開始(実践発表・研究発表)
13:00-14:30(3号館南棟ENEOSホール)
情報共有セッション「差別解消法,合理的配慮の現状と今後」
座長:事務局司会
・文部科学省高等教育局
・内閣府
・厚生労働省障害者雇用対策課
14:30-15:00 休憩・移動
15:00-17:00(4号館2階講堂)
ポスター発表・情報交換セッション
17:00-17:30(4号館2階講堂)
クロージング・閉会

3月 23

『アジ研ワールド・トレンド』2015年4月号の特集が「図書館と障害者サービス—情報アクセシビリティの向上—」

 『アジ研ワールド・トレンド』が2015年4月号で「図書館と障害者サービス—情報アクセシビリティの向上—」という特集を組んでいます。

 特集記事は以下の通りですが、各国事情で取り上げられている国は日本語ではなかなか紹介されない国ばかり。スーダンや南アフリカ共和国の障害者サービス事情が日本語で読めるというのは、本当に凄いことです。

特集 : 図書館と障害者サービス—情報アクセシビリティの向上—
特集にあたって / 澤田裕子
【国際動向】
国連のアクセシビリティ・センター—障害者権利条約とアクセシビリティ— / 森 壮也
国際図書館連盟の障害者の情報アクセスに関する取り組み / 野村美佐子
DAISYとEPUBを活用したインクルーシブな知識アクセスの開発 / 河村 宏
【国内情報】
日本点字図書館の取り組み—アクセシブルな電子書籍の製作と活用— / 天野繁隆
障害者サービスと著作権との関係 / 南 亮一
公共図書館の障害者サービスの現状 / 松延秀一
【各国事情】
日本点字図書館の国際協力事業 / 田中徹二
韓国—国立障害者図書館と障害者サービス— / 崔 善植
中国—8296万人の多様なニーズ— / 小林昌之
シンガポール—国立図書館と盲協会図書館の取り組み— / エイドリアン・ヤプイーミアン
コラム:マレーシア—ささやかな体験への追想— / 東川 繁
バングラデシュ—政府とNGO の取り組み— / 金澤真実
コラム:インド—デリー大学点字図書館を見学して— / 坂井華奈子
アラブ地域—視覚障害者をとりまく現状と課題— / モハメド・オマル・アブディン、福地健太郎
スーダン—視覚障害者の教育分野を中心に— / モハメド・オマル・アブディン、福地健太郎
南アフリカ共和国—点字図書館と地域に根ざした情報センター— / 鷺谷大輔
コラム:ブラジル—大学主導の障害者向けオンライン資料提供サービス— / 則竹理人

 刊行後2カ月を経過したものはPDFで全文公開されているとこのことですので、しばらくしたらウェブ上で全文公開されると思います。PDF版はスクリーンリーダーであまり読みやすいとも言えないとも聞いています。少なくとも段組されたレイアウトだとかなり厳しいと思われますので、せめてこの号の特集だけでもテキスト版も公開されるとよいのですが。

 『アジ研ワールド・トレンド』では、年1回、アジア経済研究所図書館が特集を担当しています。以前は3月号あたりを担当していたのですが、最近は4月号を担当しているようです。過去6年の特集は以下の通りです.

 マレーシアやブラジルの機関リポジトリについて日本語で知ることができるのは、この雑誌ぐらいではないでしょうか。本当に貴重な雑誌です。