スマートスピーカーでのDAISY再生環境はないのか

 アマゾンのAlexaやGoogleアシスタントなどのAIアシスタント機能を持つスピーカーが備える Voice User Interface (VUI)は、DAISYオンライン配信プロトコルを利用したサピエ図書館が提供しているようなデイジーオンラインサービスとも親和性が高いはず。モニタを備えないDAISY機器( PTR 3リンクポケット など)からサピエ図書館を検索し録音図書データなどをダウンロードして読めるサービスをすでに実現していて、インプットこそボタン操作であるものの、アプトプットは音声情報のみも可としています。ほぼVUI。インプットを音声にできれば、もうできるのでは。
 2018年度サピエ研修会資料 では、アマゾンジャパンから「視覚障害者へのAIスピーカーの可能性について」という発表もなされているので、その後の動向が非常に気になります。
 海外で、スマートスピーカーでのDAISY再生環境を探してみて、プリントディスアビリティのある人を対象とした世界最大の電子図書館Bookshareについて以下のような要望があがってることは確認できる。

 ニュージーランドの盲人協会がアレクサスキルを公開しているようです。もしかして初めての事例?

 なお、Bookshareについては、How Amazon Alexa Can Help You Read によると、2018にBookshareは近日中に対応予定と回答してるようです。まだでしょうか。

ALEXA AND BOOKSHARE
Bookshare is an accessible online library for people with print disabilities. Books, magazines, and other publications are available in accessible formats such as EPUB, DAISY, MP3, and more. Previously, I have been able to read Bookshare books by uploading the MP3 files to my Amazon Music Library and having it read the book by asking Alexa to play the file name, but Amazon Music Library is discontinuing its uploading capabilities. I contacted Bookshare in July 2018 and they said that Alexa capabilities are coming very soon.

2019/5/12 追記
上では、コンテンツプロバイダ(DAISY配信サービス)ばかりに言及していますが、純粋な意味でのDAISY再生環境(閲覧スキル)について、言及していませんでした。残念ながら、それもまだないみたいです。たぶん。

アクセシビリティは “Start Small, Start Now” でいこう

ミネソタ大学の障害学生支援室が公開する Accessible U

Start Small, Start Now

というフレーズがあり、とても響いたので書いています。全てに当てはまることだと思いますが、上のフレーズは特にアクセシビリティについては、肝に銘じておきたいと改めて。

Accessibility is NOT all or nothing, and it’s simply impossible to make your digital content 100% accessible for 100% of your users.

まさにこれです。特にアクセシビリティというと、ゼロか100かで考えられることが多い印象があります(そして、100は無理だから、障害者専門の担当に任せるかという感じに)。
百人いれば百通りのニーズや使いやすさがあるわけで、1つで全ての人間にとっての「100%アクセシブル」な状態にすることは不可能です。無論、それを理想として追い求めることは必要ですが、やらない理由にしてはいけない、と。
また、「百人いれば百通り」の話を差し置いて、「自分の考える100%アクセシブル」基準で考えるにしても、「100%」でないと不可という考えは、ユーザーにゼロか百かの選択肢しか提示できないということに繋がります。これは、避けるべきだと思うのです。
例えば、アクセシブなコンテンツ提供の話です。リソースが無限にあるのであれば、「100%アクセシブル」なコンテンツを1万点でも、10万点、100万点でもそろえることが理想だと思いますが、限られたリソースではそれが難しく、「100%アクセシブル」なコンテンツは100点しか揃えることができない場合は、それでおしまいにするよりは、0%と100%の間をつなぐ(「自分の考える100%アクセシブル」視点での)「不完全」なコンテンツも1万点、10万点、100万点と揃えて、より多くの選択肢も提示するべきではないかと。
1つ1つについて、100%でないことで、ユーザーからお叱りを受けることもあるかもしれませんが、「100%アクセシブル」のコンテンツが100点しか提示してはいけないという状態よりは、ユーザー側にとって、そして、コンテンツ提供側にとっても幸せ度は高いのではないかと思うのです(お叱りはユーザーの声として前向けに受け止める必要がありますし、改善できるところは改善していくという姿勢で)。
「百人いれば百通り」の話に戻ると、百人百通りのニーズや使いやすさに応えるためには、そもそも問題意識もベクトル異なるプレーヤーをどんどん増やすしかないと思っています。多くのプレーヤーがそれぞれの問題意識とベクトルで優先順位の高いものに取り組んでほしい。船頭は多ければ多い方がいい。
そのためにも、多くの人の意識下にあるであろう、 “Accessibility is all or nothing” という意識の壁は取り除きたい。
“Start Small, Start Now(小さく初めていこう、でも、できることから今やりましょう)”と呼びかけていきたいし、自分自身も肝に銘じておきたい。
年度末の締めでした。来年度も引き続きよろしくお願いします。

自分の声の合成音声を作成するサービス my-own-voice

 自分の声のサンプルを基に自分の声の合成音声をつくることができるサービス。最終的にWindows SAPIなどのアプリケーションに取り込むことができる合成音声を生成することができるようです。自分の声で、Windows ナレーターを使って読み上げさせるということも可能になるということです。たしか『おしゃべりなコンピュータ 音声合成技術の現在と未来 (丸善ライブラリー) 』でも紹介されていたような。
※2019/3/22 追記 『おしゃべりなコンピュータ 音声合成技術の現在と未来 (丸善ライブラリー) 』を改めて確認したところ、この本で紹介されていた自分の声を合成音声する話は、山岸順一先生のボイスバンクプロジェクトでした。失礼しました。

 合成音声をつくるところまでは、無料で、アプリケーションに取り込むところで料金が発生するようです。
現時点で対応している言語は以下のとおり、今のところ、日本語には未対応。

  • AUS, US & UK English
  • German
  • French & Canadian French
  • Dutch & Flemish
  • Italian
  • Norwegian
  • Spanish & North American Spanish
  • Swedish
  • Norwegian
  • Italian

 my-own-voice がALSや発達障害等の理由で発話に困難な人の利用を想定したアプリ Predictable で利用可能になるようです。