Bookshare、マラケシュ条約国のAEからも30万件のデータを集める

管理するアクセシブルな図書コンテンツのタイトルが100万件を超えたというプレスリリースを、Bookshare が出しました。Bookshare はプリントディスアビリティのある人を対象とした世界最大の電子図書館です。サピエの世界版といえば、分かる人にはわかりやすいかも。

Bookshare は自身で、70万件強のデータを作成するなり、出版社から提供をうける形で集めていますが、それに加えて30万件ほどをマラケシュ条約締約国の図書館等に呼びかけて集めたらしいです。

上のプレスリリースで名前が上がっていますが、プリントディアビリティのある人へのサービスとして有名な以下のサービスが書誌とデータを提供とのこと。これらの図書館サービスの蔵書(全てかわかりませんが)がカウントされたのですね。

マラケシュ条約締約国の図書館等で製作されたアクセシブルな図書コンテンツは、WIPO の Accessible Books Consortium (ABC) Global Book Service で集約してこうと、WIPO や関係者が動いていますが、Booksahre が、それに近いことをやろうとしているようです。それは Bookshare が2018年にマラケシュ条約締約国向けに出した案内からも伺えるのですが、もう30万件集めたとは・・(ABC Global Book Service は40万件強)

このBookshare、ウェブアーカイブ業界におけるInternet Archiveのような、圧倒的インフラに近い存在になりそうな感じもします。一度その方向に傾くと世界中のコンテンツがそこに集約されることになるかも(それが良いことか悪いことかは現時点では判断つかないけど、ユーザー側のメリットは大きいはず。日本語のUIもちゃっと作ってしまいそう)。この10年の動向次第かな。

図書館の点訳、音訳、テキスト化等に係る著作権法の権利制限規定(著作権法第37条)

 図書館や点字図書館で行われている点訳や音訳(DAISY録音図書の製作)、テキストデータ化等、サピエ図書館国立国会図書館が行っているDAISYをインターネットで提供するサービス等は、日本では主に著作権法の権利制限規定(著作権法第37条)に基づいて行われています。
 図書館や点字図書館関係者を対象とした研修では、よくテーマになる著作権法第37条の話ですが、ウェブ上ではまとまった形で紹介されていないような気がしたので、簡単に概要をまとめました。あくまで私の理解ということになりますので、間違っている場合もあり得ますので、ご留意ください。

1. 著作権法第37条の概要

 第37条は第1項から第3項までありますが、それぞれ以下のように対応しています。

  • 第37条第1項、第2項: 点訳に係る権利制限規定
  • 第37条第3項: 音訳やテキストデータ化など(「など」としているところが重要!)に係る権利制限規定

 先に表でまとめると以下になります。

著作権法第37条の概要
項目 点訳(第37条第1項、第2項) 音訳、テキスト化などのそれ以外の形式(第37条第3項)
受益者(複製物を利用してよいのは誰か) 規定なし(誰が利用しても良い) 視覚障害者等
複製行為を行える者 規定なし(誰が点訳してもよい) 著作権法施行令第2条に限定列記された機関・団体
複製の目的 規定なし(営利・非営利を問わない) 視覚障害者等に提供するため
複製物として作成してよい形式 点字 視覚障害者等が利用するために必要な方式
複製の対象(複製していいもの) 公表された著作物 公表された視覚著作物
ただし、著作権者自身が提供している方式には複製できない
複製物の受益者への提供方法 ・公衆送信(インターネット配信、メール送信)
・譲渡(第47条の7による)
・貸出(営利を目的としない場合に限る。第38条第4項による)
・公衆送信(インターネット配信、メール送信)
・譲渡(第47条の7による)
・貸出(営利を目的としない場合に限る。第38条第4項による)

2. 点訳に係る著作権法の権利制限規定(第37条第1項、第2項)

 点訳に係る著作権法第37条第1項、第2項は以下になります。

第三十七条 公表された著作物は、点字により複製することができる。
2 公表された著作物については、電子計算機を用いて点字を処理する方式により、記録媒体に記録し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。次項において同じ。)を行うことができる。

 ポイントは以下のとおりです。後述の第37条第3項と比べるとシンプルです。

  • 受益者(複製物を利用してよいのは誰か): 規定なし(誰が利用しても良い)
  • この権利制限規定で複製行為を行える者: 規定なし(誰が点訳してもよい)
  • 複製の目的: 規定なし(営利・非営利を問わない)
  • 複製の対象: 公表された著作物
  • 複製物として作成してよい形式: 点字
  • 複製物の受益者への提供方法: 公衆送信(インターネット配信、メール送信)・譲渡(第47条の7)・貸出(営利を目的としない場合に限る第38条第4項

 他の権利制限規定であれば、例えば、私的複製に係る権利制限を規定する第30条の「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする」のように、複製の目的が規定されているところですが、第37条第1項は、「公表された著作物は、点字により複製することができる。」とのみ規定するだけで、複製の目的が規定されていません。点字の利用は視覚障害者に限られ、著作権者の経済的利益に影響を当たる影響は軽微だろうという前提でたっているため、制約が少なくなっています。
 「誰もが」行えるというところと、点訳の目的を限定していない、対象についても第3項の但し書きにような限定条件をつけていない点があとで紹介する著作権法第3項と大きく異なります。

3. 音訳やテキストデータ化などに係る権利制限規定(第37条第3項 )

  
次は、音訳やテキストデータ化などに係る著作権法第3項です。以下になります。

3 視覚障害その他の障害により視覚による表現の認識が困難な者(以下この項及び第百二条第四項において「視覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、公表された著作物であつて、視覚によりその表現が認識される方式(視覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この項及び同条第四項において「視覚著作物」という。)について、専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、当該視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は公衆送信を行うことができる。ただし、当該視覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者により、当該方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。

3.1 概要

 第37条第3項のポイントは以下のとおりです。複製できる形式は実質特に規定されておらず、この規定でなされる音訳やテキストデータ化の成果物は、健常者でも利用できるため、第1項、第2項の点訳と比べると、制限が設けられています。

  • 受益者(複製物を利用してよいのは誰か): 視覚障害その他の障害により視覚による表現の認識が困難な者(「視覚障害者等」)(=プリントディスアビリティのある人)と規定
  • 複製できる者: 複製できる主体は政令で限定列記された機関
  • 複製できる形式: 視覚障害者等が利用するために必要な方式(具体的にこの形式という規定なし)
  • 複製の対象: 公表された視覚著作物(ただし、著作権者より同じ形式のものが提供されている場合は複製できない。)
  • 複製物の受益者への提供方法: 公衆送信(インターネット配信、メール送信)・譲渡(第47条の7)・貸出(営利を目的としない場合に限る第38条第4項

 図書館と点字図書館は、この著作権法第37条第3項と、図書館関係団体と権利者が合意してまとめられた以下のガイドラインに基づいて運用しています。第37条第3項は、このガイドラインとセットで読む必要があります(以下、「ガイドライン」という場合は、以下のガイドラインを指します)。

3.2 受益者(複製物を利用してよいのは誰か){#32}

 点訳の第1項、第2項では受益者は特に規定されていませんが、次のように第3項は受益者が「視覚障害その他の障害により視覚による表現の認識が困難な者(視覚障害者等)」と規定されています。

視覚障害その他の障害により視覚による表現の認識が困難な者( 中略「視覚障害者等」という。)

 点訳の第1項、第2項では受益者は特に規定されていませんが、第3項は受益者が「視覚障害その他の障害により視覚による表現の認識が困難な者(視覚障害者等)」と規定されています。 つまり、端的に言えば、第37条第3項に基づいて作成した資料やデータを受益者として規定される「視覚障害者等」に該当しない人は利用していけない。
 「視覚障害者等」という略称から視覚障害者とそれに類する障害者と思われがちですが、視覚障害者以外にディスレクシア、肢体不自由者など理由で読書に困難のある非常に幅広い方がこの「視覚障害者等」に該当します。いわゆる「プリントディスアビリティのある者」とほぼ同義です。法律用語にありがちですが、「等」の対象とするところがとても広い。ちなみに2010年に著作権法が改正されるまでは、受益者は「視覚障害者」に限定されていました。2010年の改正はとても大きいものでした。
 なお、図書館では、「視覚障害者等」の判断の仕方やサービスの提供方法について第4項と第5項およびそれに付随する別表で細かく規定しています。

3.3 この権利制限規定で複製行為を行える者

 点訳の第1項、第2項では、複製ができるものについてとくに規定されていません(制限はない)が、第3項には、次のように政令で限定列記されたものに限定されています。

視覚障害その他の障害により視覚による表現の認識が困難な者(以下この項及び第百二条第四項において「視覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるもの

 政令とは、具体的には著作権法施行令第2条を指し、次のように規定されています。ざっくり言うと、図書館や視覚障害者等の福祉に関係する機関、団体、ボランティア団体です。

第二条 法第三十七条第三項(法第八十六条第一項及び第三項並びに第百二条第一項において準用する場合を含む。)の政令で定める者は、次に掲げる者とする。
 一 次に掲げる施設を設置して視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者(イ、ニ又はチに掲げる施設を設置する者にあつては国、地方公共団体又は一般社団法人等、ホに掲げる施設を設置する者にあつては地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人に限る。)
  イ 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第七条第一項の障害児入所施設及び児童発達支援センター
  ロ 大学等の図書館及びこれに類する施設
  ハ 国立国会図書館
  ニ 身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設
  ホ 図書館法第二条第一項の図書館(司書等が置かれているものに限る。)
  ト 老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の三の養護老人ホーム及び特別養護老人ホーム
  チ 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)第五条第十一項に規定する障害者支援施設及び同条第一項に規定する障害福祉サービス事業(同条第七項に規定する生活介護、同条第十二項に規定する自立訓練、同条第十三項に規定する就労移行支援又は同条第十四項に規定する就労継続支援を行う事業に限る。)を行う施設
 二 前号に掲げる者のほか、視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人(法第二条第六項に規定する法人をいう。以下同じ。)で次に掲げる要件を満たすもの
  イ 視覚障害者等のための複製又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。ロにおいて同じ。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力及び経理的基礎を有していること。
  ロ 視覚障害者等のための複製又は公衆送信を適正に行うために必要な法に関する知識を有する職員が置かれていること。
ハ 情報を提供する視覚障害者等の名簿を作成していること(当該名簿を作成している第三者を通じて情報を提供する場合にあつては、当該名簿を確認していること)。
  ニ 法人の名称並びに代表者(法人格を有しない社団又は財団の管理人を含む。以下同じ。)の氏名及び連絡先その他文部科学省令で定める事項について、文部科学省令で定めるところにより、公表していること。
 三 視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人のうち、当該事業の実施体制が前号イからハまでに掲げるものに準ずるものとして文化庁長官が指定するもの

3.4 複製の目的

 点訳の場合は、複製の目的は規定されていませんでしたが、第3項に基づく複製の場合は、以下のように規定されています。

専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において

 視覚障害者等に提供する目的と規定されています。図書館等は、視覚障害者等以外のものに提供してはいけませんし、視覚障害者等が著作権者が提供している方式では利用することができない場合に当該視覚障害者等が利用できる方式での複製に限られます。
 これは、後述の複製できる方式複製してはいけないものとも絡んできます。

3.5 複製できる形式

 この第3項でどのような形式に複製することができるのかということが以下のところで規定されています。視覚障害者等が利用するために必要な方式で複製できるということで、具体的にこの形式という制限はありません。

専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、当該視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式

 ちなみに2010年に著作権法が改正されるまでは、「録音図書」に限定されていました。それが2010年の法改正で、視覚障害者等が利用するために必要な方式であれば、どのような形式で複製できるようになりました。大きい。
 なお、ガイドラインの第6項で以下のように例示されています。

(図書館が行う複製(等)の種類)
6 著作権法第37条第3項にいう「当該視覚障害者等が利用するために必要な方式」とは,次に掲げる方式等,視覚障害者等が利用しようとする当該視覚著作物にアクセスすることを保障する方式をいう。
 録音,拡大文字,テキストデータ,マルチメディアデイジー,布の絵本,触図・触地図,ピクトグラム,リライト(録音に伴うもの,拡大に伴うもの),各種コード化(SPコードなど),映像資料のサウンドを映像の音声解説とともに録音すること等
 

3.6 複製の対象

 複製してよいものとして、以下のように「公表されたされた視覚著作物」が規定されています。点訳の第1項、第2項は「公表された著作物」ですので、対象が狭くなっています。

公表された著作物であつて、視覚によりその表現が認識される方式(視覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この項及び同条第四項において「視覚著作物」という。)

ポイントは以下のとおり。

  • 図書館の所蔵資料などに限定されない
  • 視覚で認識して利用する「視覚」著作物である(視覚著作物なので、紙の書籍だけではなく、電子書籍も視覚著作物に含まれます)。音楽などの「聴覚著作物」は含まれないので、例えば、本にCDがついている場合がありますが、CDに収録された音声は聴覚著作物に相当するので、録音図書にいれることはできません。
  • 映像は、音声とセットで提供されているものがほとんどですが、「当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。」という規定があるので、映像も視覚著作物に含まれる。

3.7 複製してはいけないもの

ただし、当該視覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者により、当該方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。

公表された視覚著作物でも、第37条第3項に基づいて複製してはいけないものが、上の「ただし書き」と呼ばれるところで規定されています。端的に言えば、著作権者より同じ形式のものが提供されている場合は製作できないということで、出版社自身が録音図書DAISYで出版している場合などがこれに該当します。
 どのようなものがただし書きに該当するのかについても、実務上図書館が判断するためにガイドラインは第9項で具体的に規定しています。

3.8 複製物の受益者への提供方法

第37条第3項により複製する形で作成された複製物の提供方法については、以下のように規定されています。

複製し、又は公衆送信を行うことができる。

以下ができることになります。

  • 公衆送信(インターネット配信、メール送信、FAX送信など)
  • 譲渡(これは第47条の7で読みます)
  • 貸出(営利を目的としない場合に限ります。これは第38条第4項で読みます。)

4. マラケシュ条約

 2019年1月からWIPOのマラケシュ条約(正式名称には以下のリンクのとおりですが、長いので「マラケシュ条約」)が日本においても発効しました。

 マラケシュ条約について紹介すると、それだけ1エントリになってしまうので、ここでは簡単に紹介するにとどめますが、端的にいえば、著作権法第37条第3項を国際条約にしたものになります。従来のWIPOの著作権条約は、著作権者の権利を強化する目的のものが多かったのですが、このマラケシュ条約は著作権法の権利制限規定を国際条約化しています。
 プリントディスアビリティのある人(=視覚障害者等)の著作権法の権利制限規定の内容が国によって差異があり(そもそも著作権法にそのような権利制限規定がない国もある)、例えば、米国で著作権法の権利制限規定に基づいて作成された録音図書をインドのプリントディスアビリティのある人に提供できない等の問題が生じていました。もともとプリントディスアビリティのある人の読むことができる本は少ない上に途上国のプリントディスアビリティのある人の読める本はさらに少ない。このような状況を、世界盲人連合は、Book Famine(本の飢餓)と呼んでいます。
 
 マラケシュ条約は、このような国ごとのプリントディスアビリティのある人(=視覚障害者等)への情報保障に係る権利制限規定の差異をなくし、各国で作成されたDAISY等のアクセシブルなコンテンツの国際交換を促進させることで、本の飢餓を解消することを目的に作られたものです。条約締約国である日本の著作権法も、第37条第3項がマラケシュ条約の求める要件を満たすものになっています。
 くわしくは機会があれば(というよりも気が向けば)、いずれ書くことにしますが、以下にも詳しいです。

5. 参考

 著作権法第37条については、平成30年の法改正は反映されていませんが、以下の本が詳しいです。

 国立国会図書館の平成30年度障害者サービス担当職員向け講座で研修科目になっている「著作権法と障害者サービス」の講義資料。こちらは、上の本ほどではないですが、図書館員であれば、著作権法第37条の運用において、理解が必須のガイドラインの内容にも踏み込んで触れています。

6. 関連エントリ

著作権法第37条全体

平成30年の著作権法改正関係

著作権法の障害者への情報提供に係る権利制限規定(第37条)の変遷(2018年版)

 ※本エントリは「著作権法第三十七条(視覚障害者等・聴覚障害者等のための複製等)の変遷」(2014年7月21日公開)に2018年(平成30年)法改正を追加・更新したものです。
 現行の著作権法(昭和45年法律第48号)は日本法令索引の著作権法 ( 昭和45年5月6日法律第48号 ) 法令沿革一覧にあるとおり、1970年に昭和45年法律第48号として明治32年法律第39号の著作権法が全部改正されたものです。この全部改正時に、障害者への情報提供に係る権利制限規定が第37条として新設されました。1970年の全部改正以降、著作権法は頻繁に改正されていますが、この第37条は2000年、2006年、2009年、2014年、2018年に改正されています。
 1970年に著作権法が全部改正された時の著作権法第37条は以下のとおりでした。

(点字による複製等)
第三十七条 公表された著作物は、盲人用の点字により複製することができる。
2 点字図書館その他の盲人の福祉の増進を目的とする施設で政令で定めるものにおいては、もつぱら盲人向けの貸出しの用に供するために、公表された著作物を録音することができる。

 
 それが2018年に改正された著作権法(2019年1月1日施行)は以下のようになります。

(視覚障害者等のための複製等)
第三十七条 公表された著作物は、点字により複製することができる。
2 公表された著作物については、電子計算機を用いて点字を処理する方式により、記録媒体に記録し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。次項において同じ。)を行うことができる。
3 視覚障害その他の障害により視覚による表現の認識が困難な者(以下この項及び第百二条第四項において「視覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、公表された著作物であつて、視覚によりその表現が認識される方式(視覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この項及び同条第四項において「視覚著作物」という。)について、専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、当該視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は公衆送信を行うことができる。ただし、当該視覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者により、当該方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。 
(聴覚障害者等のための複製等)
第三十七条の二 聴覚障害者その他聴覚による表現の認識に障害のある者(以下この条及び次条第五項において「聴覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で次の各号に掲げる利用の区分に応じて政令で定めるものは、公表された著作物であつて、聴覚によりその表現が認識される方式(聴覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この条において「聴覚著作物」という。)について、専ら聴覚障害者等で当該方式によつては当該聴覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、それぞれ当該各号に掲げる利用を行うことができる。ただし、当該聴覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者により、当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。
 一 当該聴覚著作物に係る音声について、これを文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うこと。
 二 専ら当該聴覚障害者等向けの貸出しの用に供するため、複製すること(当該聴覚著作物に係る音声を文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による当該音声の複製と併せて行うものに限る。)。

 
 著作権法第37条が上の姿になるまでの改正の変遷をまとめてみました。文化庁のサイト日本法令索引(法令沿革と審議過程がわかるデータベース)をもとにしています。なお、平成15年以前の改正については、文化庁に情報がなく、日本法令索引を目視で1つ1つ変遷を拾うことでまとめたため、見落としのある可能性があります。ご注意ください。なお、以下で引用する法規類の太字部分は、その法改正時になされた改正箇所です。
 

1. 1970年(昭和45年)の著作権法全部改正

 1970年(昭和45年)の著作権法全部改正ではじめて障害者の情報提供に関する権利制限規定が設けられました。

著作権法(昭和45年法律第48号

(点字による複製等)
第三十七条 公表された著作物は、盲人用の点字により複製することができる。
2 点字図書館その他の盲人の福祉の増進を目的とする施設で政令で定めるものにおいては、もつぱら盲人向けの貸出しの用に供するために、公表された著作物を録音することができる。

改正点

 著作権法は明治32年法律第39号の全部が改正され、昭和45年法律第48号となった。この時に障害者の障害者への情報提供に係る権利制限規定である第37条として新設された。

著作権法施行令

 ※調査中

参考

  • 著作権法 ( 昭和45年 5月 6日法律第48号 ) | 日本法令索引
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    2. 2000年(平成12年)の法改正

    著作権法(平成12年法律第56号反映))

    (点字による複製等)
    第三十七条  公表された著作物は、点字により複製することができる。
    2  公表された著作物については、電子計算機を用いて点字を処理する方式により、記録媒体に記録し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。)を行うことができる。
    3  点字図書館その他の視覚障害者の福祉の増進を目的とする施設で政令で定めるものにおいては、専ら視覚障害者向けの貸出しの用に供するために、公表された著作物を録音することができる
    (聴覚障害者のための自動公衆送信)
    第三十七条の二
    聴覚障害者の福祉の増進を目的とする事業を行う者で政令で定めるものは、放送され、又は有線放送される著作物について、専ら聴覚障害者の用に供するために、当該著作物に係る音声を文字にしてする自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行うことができる。

    改正点(平成12年法律第56号転載)

    第三十七条第一項中「盲人用の」を削り、同条第二項中「盲人」を「視覚障害者」に、「もつぱら」を「専ら」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。
     2 公表された著作物については、電子計算機を用いて点字を処理する方式により、記録媒体に記録し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。)を行うことができる。
      第三十七条の次に次の一条を加える。
      (聴覚障害者のための自動公衆送信)
     第三十七条の二 聴覚障害者の福祉の増進を目的とする事業を行う者で政令で定めるものは、放送され、又は有線放送される著作物について、専ら聴覚障害者の用に供するために、当該著作物に係る音声を文字にしてする自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行うことができる。

    著作権法施行令

     ※調査中

    参考

  • 著作権法及び万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律の一部を改正する法律 ( 平成12年 5月 8日法律第56号 ) | 日本法令索引
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    3. 2006年(平成18年)の法改正

    著作権法(平成18年法律第121号)反映)

    (点字による複製等)
    第三十七条  公表された著作物は、点字により複製することができる。
    2  公表された著作物については、電子計算機を用いて点字を処理する方式により、記録媒体に記録し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。)を行うことができる。
    3  点字図書館その他の視覚障害者の福祉の増進を目的とする施設で政令で定めるものにおいては、公表された著作物について、専ら視覚障害者向けの貸出しの用若しくは自動公衆送信(送信可能化を含む。以下この項において同じ。)の用に供するために録音し、又は専ら視覚障害者の用に供するために、その録音物を用いて自動公衆送信を行うことができる。
    (聴覚障害者のための自動公衆送信)
    第三十七条の二
    聴覚障害者の福祉の増進を目的とする事業を行う者で政令で定めるものは、放送され、又は有線放送される著作物(放送される著作物が自動公衆送信される場合の当該著作物を含む。以下この条において同じ。)について、専ら聴覚障害者の用に供するために、当該放送され、又は有線放送される著作物に係る音声を文字にしてする自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行うことができる。

    改正点(平成18年法律第121号転載)

      第三十七条第三項中「おいては」の下に「、公表された著作物について」を、「貸出しの用」の下に「若しくは自動公衆送信(送信可能化を含む。以下この項において同じ。)の用」を加え、「、公表された著作物を録音する」を「録音し、又は専ら視覚障害者の用に供するために、その録音物を用いて自動公衆送信を行う」に改める。
      第三十七条の二中「有線放送される著作物」の下に「(放送される著作物が自動公衆送信される場合の当該著作物を含む。以下この条において同じ。)」を、「当該」の下に「放送され、又は有線放送される」を加える。

    著作権法施行令

    この時は改正なし。

    参考

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    4. 2009年(平成21年)の法改正

    著作権法(平成21年法律第53号反映))

    (視覚障害者等のための複製等)
    第三十七条  公表された著作物は、点字により複製することができる。
    2  公表された著作物については、電子計算機を用いて点字を処理する方式により、記録媒体に記録し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。)を行うことができる。
    3  視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者(以下この項及び第百二条第四項において「視覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、公表された著作物であつて、視覚によりその表現が認識される方式(視覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この項及び同条第四項において「視覚著作物」という。)について、専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、当該視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該視覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者により、当該方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。
    (聴覚障害者等のための複製等)
    第三十七条の二  聴覚障害者その他聴覚による表現の認識に障害のある者(以下この条及び次条第五項において「聴覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で次の各号に掲げる利用の区分に応じて政令で定めるものは、公表された著作物であつて、聴覚によりその表現が認識される方式(聴覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この条において「聴覚著作物」という。)について、専ら聴覚障害者等で当該方式によつては当該聴覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、それぞれ当該各号に掲げる利用を行うことができる。ただし、当該聴覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者により、当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。
     一  当該聴覚著作物に係る音声について、これを文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うこと。
     二  専ら当該聴覚障害者等向けの貸出しの用に供するため、複製すること(当該聴覚著作物に係る音声を文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による当該音声の複製と併せて行うものに限る。)。

    改正点(平成21年法律第53号転載)

     第三十七条の見出し中「点字による」を「視覚障害者等のための」に改め、同条第三項を次のように改める。
    3 視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者(以下この項及び第百二条第四項において「視覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、公表された著作物であつて、視覚によりその表現が認識される方式(視覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この項及び同条第四項において「視覚著作物」という。)について、専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、当該視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該視覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者により、当該方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。
     第三十七条の二を次のように改める。
     (聴覚障害者等のための複製等)
    第三十七条の二 聴覚障害者その他聴覚による表現の認識に障害のある者(以下この条及び次条第五項において「聴覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で次の各号に掲げる利用の区分に応じて政令で定めるものは、公表された著作物であつて、聴覚によりその表現が認識される方式(聴覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この条において「聴覚著作物」という。)について、専ら聴覚障害者等で当該方式によつては当該聴覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、それぞれ当該各号に掲げる利用を行うことができる。ただし、当該聴覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者により、当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。
     一 当該聴覚著作物に係る音声について、これを文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うこと。
     二 専ら当該聴覚障害者等向けの貸出しの用に供するため、複製すること(当該聴覚著作物に係る音声を文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による当該音声の複製と併せて行うものに限る。)。

    著作権法の一部を改正する法律案に対する衆議院・参議院の附帯決議

    2009年の改正では、同法の改正について、著作権法第37条に関する付帯決議が衆議院と参議院でなされています。

    衆議院

    三 障害者のための著作物利用の円滑化に当たっては、教科用拡大図書や授業で使われる副教材の拡大写本等の作成を行うボランティア活動がこれまでに果たしてきた役割にかんがみ、その活動が支障なく一層促進されるよう努めること。著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

    参議院

    三、障害者の情報アクセスを保障し、情報格差を是正する観点から、本法の運用及び政令の制定に当たっては、障害の種類にかかわらず、すべての障害者がそれぞれの障害に応じた方式の著作物を容易に入手できるものとなるよう、十分留意すること。
    四、教科用拡大図書や副教材の拡大写本を始め、点字図書、録音図書等の作成を行うボランティアがこれまで果たしてきた役割にかんがみ、今後もボランティア活動が支障なく一層促進されるよう、その環境整備に努めること。
    七、国立国会図書館において電子化された資料については、情報提供施設として図書館が果たす役割の重要性にかんがみ、読書に困難のある視覚障害者等への情報提供を含め、その有効な活用を図ること。
    [PDF]著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

    著作権法施行令(平成21年政令第299号)

    (視覚障害者等のための複製等が認められる者)
    第二条 法第三十七条第三項(法第八十六条第一項及び第百二条第一項において準用する場合を含む。)の政令で定める者は、次に掲げる者とする。
     一 次に掲げる施設を設置して視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者(イ、ニ又はチに掲げる施設を設置する者にあつては国、地方公共団体又は一般社団法人等、ホに掲げる施設を設置する者にあつては地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人に限る。)
      イ 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第七条第一項の知的障害児施設及び盲ろうあ児施設
      ロ 大学等の図書館及びこれに類する施設
      ハ 国立国会図書館
      ニ 身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設
      ホ 図書館法第二条第一項の図書館(司書等が置かれているものに限る。)
      ヘ 学校図書館法(昭和二十八年法律第百八十五号)第二条の学校図書館
      ト 老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の三の養護老人ホーム及び特別養護老人ホーム
      チ 障害者自立支援法(平成十七年法律第百二十三号)第五条第十二項に規定する障害者支援施設及びする自立訓練、同条第十四項に規定する就労移行同条第一項に規定する障害福祉サービス事業(同条第六項に規定する生活介護、同条第十三項に規定支援又は同条第十五項に規定する就労継続支援を行う事業に限る。)を行う施設
     二 前号に掲げる者のほか、視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人(法第二条第六項に規定する法人をいう。以下同じ。)のうち、視覚障害者等のための複製又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの
    2 文化庁長官は、前項第二号の指定をしたときは、その旨を官報で告示する。 
    (聴覚障害者等のための複製等が認められる者)
    第二条の二 法第三十七条の二(法第八十六条第一項及び第百二条第一項において準用する場合を含む。)の政令で定める者は、次の各号に掲げる利用の区分に応じて当該各号に定める者とする。
     一 法第三十七条の二第一号(法第八十六条第一項において準用する場合を含む。)に掲げる利用 次に掲げる者
      イ 身体障害者福祉法第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設を設置して聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者(国、地方公共団体又は一般社団法人等に限る。)
      ロ イに掲げる者のほか、聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人のうち、聴覚障害者等のための複製又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの
     二 法第三十七条の二第二号(法第八十六条第一項及び第百二条第一項において準用する場合を含む。)に掲げる利用 次に掲げる者(同号の規定の適用を受けて作成された複製物の貸出しを文部科学省令で定める基準に従つて行う者に限る。)
      イ 次に掲げる施設を設置して聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者((2)に掲げる施設を設置する者にあつては国、地方公共団体又は一般社団法人等、(3)に掲げる施設を設置する者にあつては地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人に限る。)
       (1) 大学等の図書館及びこれに類する施設
       (2) 身体障害者福祉法第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設
       (3) 図書館法第二条第一項の図書館(司書等が置かれているものに限る。)
       (4) 学校図書館法第二条の学校図書館
      ロ イに掲げる者のほか、聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人のうち、聴覚障害者等のための複製を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの
    2 文化庁長官は、前項第一号ロ又は第二号ロの指定をしたときは、その旨を官報で告示する。

    改正点(平成21年政令第299号転載)

    第二条及び第二条の二を次のように改める。
    (視覚障害者等のための複製等が認められる者)
    第二条 法第三十七条第三項(法第八十六条第一項及び第百二条第一項において準用する場合を含む。)の政令で定める者は、次に掲げる者とする。
     一 次に掲げる施設を設置して視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者(イ、ニ又はチに掲げる施設を設置する者にあつては国、地方公共団体又は一般社団法人等、ホに掲げる施設を設置する者にあつては地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人に限る。)
      イ 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第七条第一項の知的障害児施設及び盲ろうあ児施設
      ロ 大学等の図書館及びこれに類する施設
      ハ 国立国会図書館
      ニ 身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設
      ホ 図書館法第二条第一項の図書館(司書等が置かれているものに限る。)
      ヘ 学校図書館法(昭和二十八年法律第百八十五号)第二条の学校図書館
      ト 老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の三の養護老人ホーム及び特別養護老人ホーム
      チ 障害者自立支援法(平成十七年法律第百二十三号)第五条第十二項に規定する障害者支援施設及びする自立訓練、同条第十四項に規定する就労移行同条第一項に規定する障害福祉サービス事業(同条第六項に規定する生活介護、同条第十三項に規定支援又は同条第十五項に規定する就労継続支援を行う事業に限る。)を行う施設
     二 前号に掲げる者のほか、視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人(法第二条第六項に規定する法人をいう。以下同じ。)のうち、視覚障害者等のための複製又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの
    2 文化庁長官は、前項第二号の指定をしたときは、その旨を官報で告示する。 
    (聴覚障害者等のための複製等が認められる者)
    第二条の二 法第三十七条の二(法第八十六条第一項及び第百二条第一項において準用する場合を含む。)の政令で定める者は、次の各号に掲げる利用の区分に応じて当該各号に定める者とする。
     一 法第三十七条の二第一号(法第八十六条第一項において準用する場合を含む。)に掲げる利用 次に掲げる者
      イ 身体障害者福祉法第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設を設置して聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者(国、地方公共団体又は一般社団法人等に限る。)
      ロ イに掲げる者のほか、聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人のうち、聴覚障害者等のための複製又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの
     二 法第三十七条の二第二号(法第八十六条第一項及び第百二条第一項において準用する場合を含む。)に掲げる利用 次に掲げる者(同号の規定の適用を受けて作成された複製物の貸出しを文部科学省令で定める基準に従つて行う者に限る。)
      イ 次に掲げる施設を設置して聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者((2)に掲げる施設を設置する者にあつては国、地方公共団体又は一般社団法人等、(3)に掲げる施設を設置する者にあつては地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人に限る。)
       (1) 大学等の図書館及びこれに類する施設
       (2) 身体障害者福祉法第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設
       (3) 図書館法第二条第一項の図書館(司書等が置かれているものに限る。)
       (4) 学校図書館法第二条の学校図書館
      ロ イに掲げる者のほか、聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人のうち、聴覚障害者等のための複製を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの
    2 文化庁長官は、前項第一号ロ又は第二号ロの指定をしたときは、その旨を官報で告示する。

    著作権法施行規則(平成21年文部科学省令第38号)

     聴覚障害者等用複製物の「貸出しの基準」として、以下の規定が省令(著作権法施行規則<昭和45年文部省令第26号>)に新設されて規定されています。

    第三章 聴覚障害者等用複製物の貸出しの基準
    第二条の二 令第二条の二第一項第二号の文部科学省令で定める基準は、次のとおりとする。
     一 専ら著作権法(以下「法」という。)第三十七条の二第二号の規定の適用を受けて作成された複製物(以下この条において「聴覚障害者等用複製物」という。)の貸出しを受けようとする聴覚障害者等を登録する制度を整備すること。
     二 聴覚障害者等用複製物の貸出しに関し、次に掲げる事項を含む規則を定めること。
      イ 聴覚障害者等用複製物の貸出しを受ける者が当該聴覚障害者等用複製物を法第三十七条の二第二号に定める目的以外の目的のために、頒布せず、かつ、当該聴覚障害者等用複製物によつて当該聴覚障害者等用複製物に係る著作物を公衆に提示しないこと。
      ロ 複製防止手段(電磁的方法(法第二条第一項第二十号に規定する電磁的方法をいう。)により著作物のデジタル方式の複製を防止する手段であつて、著作物の複製に際しこれに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物とともに記録媒体に記録する方式によるものをいう。次号において同じ。)が用いられていない聴覚障害者等用複製物の貸出しを受ける場合に、当該貸出しを受ける者が当該聴覚障害者等用複製物を用いて当該聴覚障害者等用複製物に係る著作物を複製しないこと。
     三 複製防止手段を用いていない聴覚障害者等用複製物の貸出しをする場合は、当該聴覚障害者等用複製物に係る著作物とともに、法第三十七条の二第二号の規定により複製を行つた者の名称及び当該聴覚障害者等用複製物を識別するための文字、番号、記号その他の符号の記録(当該聴覚障害者等用複製物に係る著作物が映画の著作物である場合にあつては、当該著作物に係る影像の再生の際に併せて常に表示されるようにする記録に限る。)又は記載をして、当該貸出しを行うこと。
     四 聴覚障害者等用複製物の貸出しに係る業務を適正に行うための管理者を置くこと。
    2 前項の規定は、法第八十六条第一項及び第百二条第一項において準用する法第三十七条の二の政令で定める者に係る令第二条の二第一項第二号の文部科学省令で定める基準について準用する。

    参考

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    5. 2014年(平成26年)の法改正

    著作権法(平成26年法律第35号反映)

    (視覚障害者等のための複製等)
    第三十七条  公表された著作物は、点字により複製することができる。
    2  公表された著作物については、電子計算機を用いて点字を処理する方式により、記録媒体に記録し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。)を行うことができる。
    3  視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者(以下この項及び第百二条第四項において「視覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、公表された著作物であつて、視覚によりその表現が認識される方式(視覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この項及び同条第四項において「視覚著作物」という。)について、専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、当該視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該視覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者により、当該方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。
    (聴覚障害者等のための複製等)
    第三十七条の二  聴覚障害者その他聴覚による表現の認識に障害のある者(以下この条及び次条第五項において「聴覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で次の各号に掲げる利用の区分に応じて政令で定めるものは、公表された著作物であつて、聴覚によりその表現が認識される方式(聴覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この条において「聴覚著作物」という。)について、専ら聴覚障害者等で当該方式によつては当該聴覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、それぞれ当該各号に掲げる利用を行うことができる。ただし、当該聴覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者により、当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。
     一  当該聴覚著作物に係る音声について、これを文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うこと。
     二  専ら当該聴覚障害者等向けの貸出しの用に供するため、複製すること(当該聴覚著作物に係る音声を文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による当該音声の複製と併せて行うものに限る。)。

    改正点(平成26年法律第35号転載)

    第三十七条第三項ただし書及び第三十七条の二ただし書中「受けた者」の下に「若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者」を加える。

    著作権法の一部を改正する法律案に対する衆議院・参議院の附帯決議

      2014年の改正では、将来の第37第3項の改正も視野に入れた付帯決議が衆議院と参議院でなされています。詳しくは以下のエントリ参照。

    著作権法施行令(平成26年政令第285号より)

    (視覚障害者等のための複製等が認められる者)
    第二条 法第三十七条第三項(法第八十六条第一項及び第三項並びに第百二条第一項において準用する場合を含む。)の政令で定める者は、次に掲げる者とする。
     一 次に掲げる施設を設置して視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者(イ、ニ又はチに掲げる施設を設置する者にあつては国、地方公共団体又は一般社団法人等、ホに掲げる施設を設置する者にあつては地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人に限る。)
      イ 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第七条第一項の障害児入所施設及び児童発達支援センター
      ロ 大学等の図書館及びこれに類する施設
      ハ 国立国会図書館
      ニ 身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設
      ホ 図書館法第二条第一項の図書館(司書等が置かれているものに限る。)
      ヘ 学校図書館法(昭和二十八年法律第百八十五号)第二条の学校図書館
      ト 老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の三の養護老人ホーム及び特別養護老人ホーム
      チ 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)第五条第十一項に規定する障害者支援施設及び同条第一項に規定する障害福祉サービス事業(同条第七項に規定する生活介護、同条第十二項に規定する自立訓練、同条第十三項に規定する就労移行支援又は同条第十四項に規定する就労継続支援を行う事業に限る。)を行う施設
     二 前号に掲げる者のほか、視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人(法第二条第六項に規定する法人をいう。以下同じ。)のうち、視覚障害者等のための複製又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの
    2 文化庁長官は、前項第二号の指定をしたときは、その旨を官報で告示する。 
    (聴覚障害者等のための複製等が認められる者)
    第二条の二 法第三十七条の二(法第八十六条第一項及び第三項並びに第百二条第一項において準用する場合を含む。)の政令で定める者は、次の各号に掲げる利用の区分に応じて当該各号に定める者とする。
     一 法第三十七条の二第一号(法第八十六条第一項及び第三項において準用する場合を含む。)に掲げる利用 次に掲げる者
      イ 身体障害者福祉法第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設を設置して聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者(国、地方公共団体又は一般社団法人等に限る。)
      ロ イに掲げる者のほか、聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人のうち、聴覚障害者等のための複製又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの
     二 法第三十七条の二第二号(法第八十六条第一項及び第百二条第一項において準用する場合を含む。)に掲げる利用 次に掲げる者(同号の規定の適用を受けて作成された複製物の貸出しを文部科学省令で定める基準に従つて行う者に限る。)
      イ 次に掲げる施設を設置して聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者((2)に掲げる施設を設置する者にあつては国、地方公共団体又は一般社団法人等、(3)に掲げる施設を設置する者にあつては地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人に限る。)
       (1) 大学等の図書館及びこれに類する施設
       (2) 身体障害者福祉法第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設
       (3) 図書館法第二条第一項の図書館(司書等が置かれているものに限る。)
       (4) 学校図書館法第二条の学校図書館
      ロ イに掲げる者のほか、聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人のうち、聴覚障害者等のための複製を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの
    2 文化庁長官は、前項第一号ロ又は第二号ロの指定をしたときは、その旨を官報で告示する。

    改正点(平成26年政令第285号転載)

    第二条第一項中「第八十六条第一項及び」の下に「第三項並びに」を加える。第二条の二第一項各号列記以外の部分中「及び」の下に「第三項並びに」を加え、同項第一号中「第八十六条第一項」の下に「及び第三項」を加える。

    著作権法施行規則

    この時の第37条に係る改正はなし

    参考

     
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    6. 2018年(平成30年)の法改正

    著作権法(平成30年法律第30号反映)

    (視覚障害者等のための複製等)
    第三十七条 公表された著作物は、点字により複製することができる。
    2 公表された著作物については、電子計算機を用いて点字を処理する方式により、記録媒体に記録し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。次項において同じ。)を行うことができる。
    3 視覚障害その他の障害により視覚による表現の認識が困難な者(以下この項及び第百二条第四項において「視覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、公表された著作物であつて、視覚によりその表現が認識される方式(視覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この項及び同条第四項において「視覚著作物」という。)について、専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、当該視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は公衆送信を行うことができる。ただし、当該視覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者により、当該方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。 
    (聴覚障害者等のための複製等)
    第三十七条の二 聴覚障害者その他聴覚による表現の認識に障害のある者(以下この条及び次条第五項において「聴覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で次の各号に掲げる利用の区分に応じて政令で定めるものは、公表された著作物であつて、聴覚によりその表現が認識される方式(聴覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この条において「聴覚著作物」という。)について、専ら聴覚障害者等で当該方式によつては当該聴覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、それぞれ当該各号に掲げる利用を行うことができる。ただし、当該聴覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者により、当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。
     一 当該聴覚著作物に係る音声について、これを文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うこと。
     二 専ら当該聴覚障害者等向けの貸出しの用に供するため、複製すること(当該聴覚著作物に係る音声を文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による当該音声の複製と併せて行うものに限る。)。

    改正点(平成30年法律第30号転載)

    第三十七条第二項中「含む」の下に「。次項において同じ」を加え、同条第三項中「視覚障害者その他」を「視覚障害その他の障害により」に、「に障害のある」を「が困難な」に、「自動公衆送信(送信可能化を含む。)」を「公衆送信」に改める。

    著作権法の一部を改正する法律案に対する衆議院・参議院の附帯決議

    また、2018年の改正では、同法の改正について付帯決議が衆議院と参議院でなされています。

    衆議院

    六 本法による改正後の著作権法第三十七条第三項に規定する視覚障害者等の読書の機会の充実を図るためには、本法と併せて、当該視覚障害者等のためのインターネット上も含めた図書館サービス等の提供体制の強化、アクセシブルな電子書籍の販売等の促進その他の環境整備も重要であることに鑑み、その推進の在り方について検討を加え、法制上の措置その他の必要な措置を講ずること。著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

    参議院

    七、本法による改正後の著作権法第三十七条第三項に規定する視覚障害者等の読書の機会の充実を図るためには、本法と併せて、同項により拡大図書やDAISY等の作成を行うことが認められる主体の拡大を行うとともに、当該視覚障害者等のためのインターネット上も含めた図書館サービス等の提供体制の強化、アクセシブルな電子書籍の販売等の促進その他の環境整備も重要であることに鑑み、その推進の在り方について検討を加え、法制上の措置その他の必要な措置を講ずること。[PDF]著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

     

    著作権法施行令(平成30年政令第360号より)

    (視覚障害者等のための複製等が認められる者)
    第二条 法第三十七条第三項(法第八十六条第一項及び第三項並びに第百二条第一項において準用する場合を含む。)の政令で定める者は、次に掲げる者とする。
     一 次に掲げる施設を設置して視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者(イ、ニ又はチに掲げる施設を設置する者にあつては国、地方公共団体又は一般社団法人等、ホに掲げる施設を設置する者にあつては地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人に限る。)
      イ 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第七条第一項の障害児入所施設及び児童発達支援センター
      ロ 大学等の図書館及びこれに類する施設
      ハ 国立国会図書館
      ニ 身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設
      ホ 図書館法第二条第一項の図書館(司書等が置かれているものに限る。)
      ヘ 学校図書館法(昭和二十八年法律第百八十五号)第二条の学校図書館
      ト 老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の三の養護老人ホーム及び特別養護老人ホーム
      チ 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)第五条第十一項に規定する障害者支援施設及び同条第一項に規定する障害福祉サービス事業(同条第七項に規定する生活介護、同条第十二項に規定する自立訓練、同条第十三項に規定する就労移行支援又は同条第十四項に規定する就労継続支援を行う事業に限る。)を行う施設
      前号に掲げる者のほか、視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人(法第二条第六項に規定する法人をいう。以下同じ。)で次に掲げる要件を満たすもの
      イ 視覚障害者等のための複製又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。ロにおいて同じ。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力及び経理的基礎を有していること。
      ロ 視覚障害者等のための複製又は公衆送信を適正に行うために必要な法に関する知識を有する職員が置かれていること。
      ハ 情報を提供する視覚障害者等の名簿を作成していること(当該名簿を作成している第三者を通じて情報を提供する場合にあつては、当該名簿を確認していること)。
      ニ 法人の名称並びに代表者(法人格を有しない社団又は財団の管理人を含む。以下同じ。)の氏名及び連絡先その他文部科学省令で定める事項について、文部科学省令で定めるところにより、公表していること。
     三 視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人のうち、当該事業の実施体制が前号イからハまでに掲げるものに準ずるものとして文化庁長官が指定するもの

    2 文化庁長官は、前項第三号の規定による指定をしたときは、その旨をインターネットの利用その他の適切な方法により公表するものとする。
    (聴覚障害者等のための複製等が認められる者)
    第二条の二法第三十七条の二(法第八十六条第一項及び第三項並びに第百二条第一項において準用する場合を含む。)の政令で定める者は、次の各号に掲げる利用の区分に応じて当該各号に定める者とする。
     一 法第三十七条の二第一号(法第八十六条第一項及び第三項において準用する場合を含む。)に掲げる利用 次に掲げる者
      イ 身体障害者福祉法第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設を設置して聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者(国、地方公共団体又は一般社団法人等に限る。)
      ロ イに掲げる者のほか、聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人のうち、聴覚障害者等のための複製又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの
     二 法第三十七条の二第二号(法第八十六条第一項及び第百二条第一項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)に掲げる利用次に掲げる者(法第三十七条の二第二号の規定の適用を受けて作成された複製物の貸出しを文部科学省令で定める基準に従つて行う者に限る。)
      イ 次に掲げる施設を設置して聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者((2)に掲げる施設を設置する者にあつては国、地方公共団体又は一般社団法人等、(3)に掲げる施設を設置する者にあつては地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人に限る。)
       (1) 大学等の図書館及びこれに類する施設
       (2) 身体障害者福祉法第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設
       (3) 図書館法第二条第一項の図書館(司書等が置かれているものに限る。)
       (4) 学校図書館法第二条の学校図書館
      ロ イに掲げる者のほか、聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人のうち、聴覚障害者等のための複製を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの
    2 文化庁長官は、前項第一号ロ又は第二号ロの規定による指定をしたときは、その旨をインターネットの利用その他の適切な方法により公表するものとする。

    改正点(平成30年政令第360号転載)

     第二条第一項第二号中「のうち、視覚障害者等のための複製又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定する」を「で次に掲げる要件を満たす」に改め、同号に次のように加える。
     イ 視覚障害者等のための複製又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。ロにおいて同じ。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力及び経理的基礎を有していること。
     ロ 視覚障害者等のための複製又は公衆送信を適正に行うために必要な法に関する知識を有する職員が置かれていること。
     ハ 情報を提供する視覚障害者等の名簿を作成していること(当該名簿を作成している第三者を通じて情報を提供する場合にあつては、当該名簿を確認していること)。
     ニ 法人の名称並びに代表者(法人格を有しない社団又は財団の管理人を含む。以下同じ。)の氏名及び連絡先その他文部科学省令で定める事項について、文部科学省令で定めるところにより、公表していること。
    第二条第一項に次の一号を加える。
    三 視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人のうち、当該事業の実施体制が前号イからハまでに掲げるものに準ずるものとして文化庁長官が指定するもの
     第二条第二項中「前項第二号の」を「前項第三号の規定による」に、「官報で告示する」を「インターネットの利用その他の適切な方法により公表するものとする」に改める。
     第二条の二第一項第二号中「含む」の下に「。以下この号において同じ」を加え、「同号」を「法第三十七条の二第二号」に改め、同条第二項中「指定」を「規定による指定」に、「官報で告示する」を「インターネットの利用その他の適切な方法により公表するものとする」に改める。

    著作権法施行規則(平成30年文部科学省令第37号)

     視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人の公表事項や公表方法が第二条の三と第二条の四として新設されています(すでにあった「聴覚障害者等用複製物の貸出しの基準」(旧第二条の二)は第二条の五に移動)。

    第三章  視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人の公表事項等
    (公表事項)
    第二条の三 令第二条第一項第二号ニの文部科学省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
     一 視覚障害者等のために情報を提供する事業の内容(法第三十七条第三項(法第八十六条第一項及び第三項並びに第百二条第一項において準用する場合を含む。)の規定により複製又は公衆送信を行う著作物等の種類及び当該複製又は公衆送信の態様を含む。)
    二 令第二条第一項第二号イからハまでに掲げる要件を満たしている旨
    (公表方法)
    第二条の四 令第二条第一項第二号ニの規定による公表は、文化庁長官が定めるウェブサイトへの掲載により行うものとする。
    第三章の二
     聴覚障害者等用複製物の貸出しの基準
    第二条の五 令第二条の二第一項第二号の文部科学省令で定める基準は、次のとおりとする。
     一 専ら著作権法(以下「法」という。)第三十七条の二第二号の規定の適用を受けて作成された複製物(以下この条において「聴覚障害者等用複製物」という。)の貸出しを受けようとする聴覚障害者等を登録する制度を整備すること。
     二 聴覚障害者等用複製物の貸出しに関し、次に掲げる事項を含む規則を定めること。
      イ 聴覚障害者等用複製物の貸出しを受ける者が当該聴覚障害者等用複製物を法第三十七条の二第二号に定める目的以外の目的のために、頒布せず、かつ、当該聴覚障害者等用複製物によつて当該聴覚障害者等用複製物に係る著作物を公衆に提示しないこと。
      ロ 複製防止手段(電磁的方法(法第二条第一項第二十号に規定する電磁的方法をいう。)により著作物のデジタル方式の複製を防止する手段であつて、著作物の複製に際しこれに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物とともに記録媒体に記録する方式によるものをいう。次号において同じ。)が用いられていない聴覚障害者等用複製物の貸出しを受ける場合に、当該貸出しを受ける者が当該聴覚障害者等用複製物を用いて当該聴覚障害者等用複製物に係る著作物を複製しないこと。
     三 複製防止手段を用いていない聴覚障害者等用複製物の貸出しをする場合は、当該聴覚障害者等用複製物に係る著作物とともに、法第三十七条の二第二号の規定により複製を行つた者の名称及び当該聴覚障害者等用複製物を識別するための文字、番号、記号その他の符号の記録(当該聴覚障害者等用複製物に係る著作物が映画の著作物である場合にあつては、当該著作物に係る影像の再生の際に併せて常に表示されるようにする記録に限る。)又は記載をして、当該貸出しを行うこと。
     四 聴覚障害者等用複製物の貸出しに係る業務を適正に行うための管理者を置くこと。
    2 前項の規定は、法第八十六条第一項及び第百二条第一項において準用する法第三十七条の二の政令で定める者に係る令第二条の二第一項第二号の文部科学省令で定める基準について準用する。

    文化庁告示(平成30年文化庁告示第百十五号)

    著作権法施行令第二条第一項第二号二(法人の名称並びに代表者(法人格を有しない社団又は財団の管理人を含む。以下同じ。)の氏名及び連絡先その他文部科学省令で定める事項について、文部科学省令で定めるところにより、公表していること。)の公表場所は、著作権施行規則で、「文化庁長官が定める」としていますが、それが文化庁告示で、以下のとおり指定されています。

    著作権法施行規則(昭和四十五年文部省令第二十六号)第二条の四の規定に基づき、文化庁長官が定めるウェブサイトとして、教育利用に関する著作権等管理協議会のウェブサイトを定め、平成三十一年一月一日から施行する。
    [PDF]文化庁告示第百十五号

    参考

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