11月 25

障害者差別解消法と図書館サービス 1 -そもそも障害者差別解消法とは-

 「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(通称:「障害者差別解消法」)は、合理的配慮の提供などを義務づけ、障害者の権利の保障と実質的平等を確保することを目的として具体的な措置や義務を定めた法律で、2016年(平成28年)4月に施行を予定しています。
 
 エントリを何回かに分けて、この法律と図書館サービスとの関係を整理してみたいと思います。

1. この障害者差別解消法成立の背景

 後でも少し触れる「障害者の権利に関する条約」(通称:障害者権利条約)批准のための法整備の一環として制定されたものです。2013年6月に障害者差別解消法と障害者雇用促進法の改正法が成立したところで、2014年1月に日本政府は障害者権利条約に批准しています。

2006年12月 「障害者の権利に関する条約」(通称:障害者権利条約)採択
2011年8月  障害者基本法の改正(公布・施行)
2012年6月  障害者総合支援法(旧障害者自立支援法)の成立
2013年6月  障害者差別解消法の成立・障害者雇用促進法の改正
2014年1月  日本が障害者権利条約を批准

 この障害者差別解消法は、2011年8月に改正された障害者基本法の第四条(以下)を具体化するために制定されたものです。

(差別の禁止)
第四条  何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。
2  社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない。
3  国は、第一項の規定に違反する行為の防止に関する啓発及び知識の普及を図るため、当該行為の防止を図るために必要となる情報の収集、整理及び提供を行うものとする。

つまり、国際条約である障害者権利条約から、以下のように

障害者権利条約
  ↓
障害者基本法
  ↓
障害者差別解消法

という流れで、「障害を理由とする差別」を解消する措置が、具体化され、義務化されています。ですので、障害者差別解消法を理解するためには、障害者基本法と障害者権利条約も必要に応じて参照しなければなりません。

 例えば、用語の定義ですが、以下のように、「合理的配慮」、「障害に基づく差別(障害を理由とする差別)」、「障害者」などの重要なキーワードが、障害者権利条約と、障害者基本法・障害者差別解消法のいずれかにしか定義されていません。もちろん障害者権利条約、障害者基本法、障害者差別解消法はそれ単体で成立する独立したものであるため、それぞれで理解できるようになっていますが、より深く理解するためには必要に応じて、障害者権利条約で定義されたものを参照する必要があります。

障害者権利条約 障害者基本法 障害者差別解消法
障害に基づく差別(障害を理由とする差別) 定義有り 定義無し 定義無し
合理的配慮 定義有り 定義無し 定義無し
障害者 定義無し 定義有り 有り
社会的障壁 定義無し 定義有り 定義有り
ユニバーサルデザイン 定義有り 定義無し 定義無し
意思疎通 定義有り 定義無し 定義無し
言語 定義有り 定義無し 定義無し

2. 「障害を理由とする差別」とは何か

 「障害を理由とする差別」については、障害者権利条約 第二条の定義のところで以下のように定義されています。

障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。 (障害者権利条約 第二条 定義 「障害に基づく差別」より)

 
 「障害を理由とする差別」は、障害者の基本的人権を侵害する者であり、それには「合理的配慮の否定を含む」とあるように、合理的配慮を提供しないことも含まれています。これが障害者差別解消法では、以下のように

(行政機関等における障害を理由とする差別の禁止)
第七条 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。
2 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。

 

「障害を理由とする差別」は以下のように区別して整理されています。「障害者の権利利益を侵害することとならないよう」とあるように合理的配慮の不提供が、障害者権利条約の考え方を受けて障害者の権利権益を侵害するものとして規定されているところは重要です。

  • 障害を理由とする不当な差別的取扱い
  • 合理的配慮の不提供

3. 障害者差別解消法における「障害者」とは

 では、「障害者」とは?ということになります。障害者基本法及び障害者差別解消法では、以下のように定義され、障害者手帳保持者に限定されません。また、障害は社会的障壁と相対することで生じるものとするいわゆる「社会モデル」の考え方に基づいた定義となっており、障害者差別解消法はこの「社会的障壁」の除去を目的としたものと言えます。

身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。(第二条)

 

医学モデルと社会モデル
医学モデル
機能障害機能障害(impairment)= 障害(disability)。つまり、機能障害(impairment)を障害(disability)の原因と見なす考え方
社会モデル
機能障害(impairment)×社会的障壁= 障害(disability)。つまり、機能障害(impairment)と社会的障壁(つまり、その機能障害に社会が対応できていない状況)が相対する時に障害(disability)が発生するという考え方

4. 障害者差別解消法によって具体的な措置が義務付けられている機関

 障害者差別解消法が障害者の権利の保障と実質的平等を確保するために各機関に義務付けている大きな柱が以下の4つです。

  • 障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止(第七条第一項、第八条第一項)
  • 環境の整備(事前的改善措置)(第五条)
  • 合理的配慮の提供(第七条第二項、第八条第二項)
  • 職員向け対応要領の作成・公開(第九条、第十条)
  •  

     上について具体的な措置を義務づけている対象は以下の通りです。

    • 行政機関等
      • 国の行政機関
      • 独立行政法人等
      • 地方公共団体
      • 地方独立行政法人
    • 事業者(商業その他の事業を行う者)

     
     そして、図書館は以下のように割り振られます。

    • 公共図書館:「地方公共団体」
    • 国立大学の大学図書館:「独立行政法人等」※
    • 公立大学の大学図書館:「地方独立行政法人」
    • 私立大学の大学図書館:「事業者」
    • 私立の図書館: 「事業者」
    • 学校図書館: 運営主体による

    ※国立大学法人は、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律施行令」によって「独立行政法人等」にあたることが規定されます。

     結論から申せば、上の4本柱は以下のように義務付けられています。

    (行政機関等)
    公共図書館
    公立大学図書館
    (行政機関等)
    国立大学図書館
    (事業者)
    私立大学図書館
    不当な差別的取扱いの禁止 義務 義務 義務
    環境の整備 努力義務 努力義務 努力義務
    合理的配慮の提供 義務 義務 努力義務
    対応要領の作成・公開 努力義務
    (設置主体である地方自治体全体に対する努力義務)
    義務
    (国立大学法人全体に対する義務)

    詳細はまた次回に。

    次回以降の更新予定
    障害者差別解消法と図書館サービス 2 -合理的配慮の考え方-
    障害者差別解消法と図書館サービス 3 -セットで考える合理的配慮、環境整備、そして、不当な差別的取扱いの禁止-
    障害者差別解消法と図書館サービス 4 -障害者差別解消法と図書館サービス-
    障害者差別解消法と図書館サービス 5 -(おまけ)障害者差別解消法に係る職員向け対応要領の作成と公開について-

    11月 02

    大学の障害学生支援室が著作権法第37条第3項の複製の主体に該当するかについての文化庁著作権課の見解

     著作権法第37条第3項では、著作権法施行令で定められた施設は視覚障害その他の理由で読書に困難のある人々のために著作者の許諾なく複製が行えるという権利制限が規定されています。大学については、著作権法施行令第二条第一項第一号ロにおいて、

    大学等の図書館及びこれに類する施設

    が複製の主体(著作権法第37条第3項に基づく複製が行える機関)として規定されています。

     大学図書館が複製の主体に含まれることは間違いありません。しかし、「これに類する施設」に何が該当するかという点です。

     現状として、視覚障害など障害のある学生のために著作物のテキストデータの作成は、ほとんどの大学で障害学生支援室のような学生支援部局が行っており、大学図書館でそれを行っているところは立命館大学図書館などのごく少数の例外を除き、ほとんどありません。

     大学図書館は著作権法第37条第3項の規定に基づいて著作物の複製が行えますが、障害学生支援室が、上の「これに類する施設」に該当するとは文字だけでは解釈できないために、障害学生支援室は、著作権法第30条に基づき、学生の私的複製(手足理論)という形でしか著作物を複製することしかできなかったのではないかと思います。この場合、学生の私的複製という形ですので、テキストデータを作成しても、製作を依頼した学生にしか渡すことしかできず、同じ著作物のテキストデータをリクエストした他の学生への提供も大学間で相互貸借や共同利用ができません。

     ちなみに、大学として、著作物のテキストデータ(「教材のテキストデータ化」)の作成をしているところは、以下の日本学生支援機構の平成26年度の調査によれば、89の大学が実施しています。

     各大学でどれだけの数が製作されているかまではこの調査ではわかりませんが、これだけの数の大学で製作したテキストデータの共同利用が進んでいないということは、非常にもったいないことだと思います。これについて、平成24年度に文部科学省が立ち上げた「障がいのある学生の修学支援に関する検討会」でも議論され、報告書でも言及されています。

     他の学生への提供も大学間で相互貸借や共同利著作権法第37条第3項に基づく複製であれば可能です。障害学生支援室が「これに類する施設」に該当する施設という解釈がはっきりすれば、各大学が作成したテキストデータなどの共同利用が一気に進む可能性があります。

     これについて、内閣府の障害者政策委員会の8月の会議で、障害者政策委員長である静岡県立大学教授の石川准先生の質問に回答する形で、文化庁著作権課が公に見解を示しました。議事録も公開されるはずですが、動画は公開されており、それを確認することができます。障害学生支援室が全て含まれるというわけでもなさそうですが、大学図書館の趣旨に合致するものが含まれるという見解です。該当部分のテキストを起こしてみました(一字一句すべてが正確というわけではないので、ご注意を)。

    障害者政策委員会 第25回動画 分割 2/2

    ※該当部分は、「第25回動画 分割 2/2の」58分33秒から1時間2分31秒。

    障害者政策委員長 石川准氏

    情報アクセシビリティと関係して、あるいは、教育とも関わってくる話ですが、著作権法の37条に関する点につきまして、文化庁著作権課にお聞きしたいのですけれども、政令で指定された機関が、視覚による読書に困難のある人々を対象として、著作物を複製することは、著作権者の許諾なしに認められる、というのがその37条の規定でありますけれども、その政令の中で大学の場合は、大学図書館がそのような機関として指定されております。ただし、現状の各大学における障害学生支援というのは、障害学生支援室といったところが中心になって行っておりまして、そこが例えば、視覚障害等あるいはディスレクシアの学生に対して著作物を電子データ化するといった作業も行っておりますけれども、これがそもそも著作権法第37条に基づく複製にあたるのかどうかということについて、各大学とも半信半疑、というところがございまして、したがって、共同利用、相互貸借みたいなこともできずにいるという状況がございます。それにつきまして、文化庁著作課としてのご見解、つまり、大学図書館等と書いてあって、障害学生支援室とは書いていないけれども、それも含むのか、あるいは、列挙型の規定となっているので、書いていないことは含んでいないのか、ということについて、この場を借りて、ご見解をいただけると有り難いと思います。

    文化庁著作権課課長補佐 秋山氏

    お問い合わせのありました著作権法37条3項の適用に関する部分ですけれども、同項の権利制限規定の適応のある主体に関しては政令で定める、ということになってございます。さきほどご説明いただいたとおりです。この政令でございますけれでも、著作権法施行令第二条第一項第一号ロにおきまして、この37条3項の規定の適用がうけられる主体として、「大学等の図書館及びこれに類する施設」と、このように定められてございます。ここにいう、「これに類する施設」といいますのは、大学図書館のように図書等の資料を備え置いて、学生に資料の貸出等の情報提供を行う機能、こういった機能を担う施設が想定されているものと解されるところでございまして、必ずしも名称が大学図書館となっていなくても、当然、その他のものが含まれるということは念頭に置かれているものと理解してございます。したがいまして、行政、私どもとしてまして、個々の事例への法令の適用関係について、個別に判断を申し上げる立場ではございませんけれども、ご質問のありましたのような、障害学生支援室といった名称を冠する組織につきましても、通常、上記の大学図書館のような趣旨に合致するものも多いと考えられますので、そうしたものにつきましては、基本的に「これに類する施設」に該当するというふうに解釈することもできるのではないかというふうに考えています。

    障害者政策委員長 石川准氏

    ありがとうございました。大変、明快なご回答をいただきまして、感謝いたします。

     

     障害者学生支援室のような学生支援部署も著作権法第37条第3項の複製の主体になりえる解釈を文化庁が公の場で議事録に残る形で示したことは大きいと思います。しかし、「大学図書館の趣旨に合致する」という条件めいたものがついていることが正直、わかりづらいところがありますね。情報提供だけすれば条件に合致するのか、資料も備えることがもとめられるのか。前者であれば、テキストデータ化をしているところは全て該当すると考えてよいように思いますが、後者の資料を備えることまで求められると該当するところはぐっと減る気がします。

    参考

    著作権法

    第三十七条  3  視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者(以下この項及び第百二条第四項において「視覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、公表された著作物であつて、視覚によりその表現が認識される方式(視覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この項及び同条第四項において「視覚著作物」という。)について、専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、当該視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該視覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者により、当該方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。

    著作権法施行令

    第二条  法第三十七条第三項 (法第八十六条第一項 及び第三項 並びに第百二条第一項 において準用する場合を含む。)の政令で定める者は、次に掲げる者とする。
    一  次に掲げる施設を設置して視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者(イ、ニ又はチに掲げる施設を設置する者にあつては国、地方公共団体又は一般社団法人等、ホに掲げる施設を設置する者にあつては地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人に限る。)
    イ 児童福祉法 (昭和二十二年法律第百六十四号)第七条第一項 の障害児入所施設及び児童発達支援センター
    ロ 大学等の図書館及びこれに類する施設
    ハ 国立国会図書館
    ニ 身体障害者福祉法 (昭和二十四年法律第二百八十三号)第五条第一項 の視聴覚障害者情報提供施設
    ホ 図書館法第二条第一項 の図書館(司書等が置かれているものに限る。)
    ヘ 学校図書館法 (昭和二十八年法律第百八十五号)第二条 の学校図書館
    ト 老人福祉法 (昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の三 の養護老人ホーム及び特別養護老人ホーム
    チ 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 (平成十七年法律第百二十三号)第五条第十一項 に規定する障害者支援施設及び同条第一項 に規定する障害福祉サービス事業(同条第七項 に規定する生活介護、同条第十二項 に規定する自立訓練、同条第十三項 に規定する就労移行支援又は同条第十四項 に規定する就労継続支援を行う事業に限る。)を行う施設
    二  前号に掲げる者のほか、視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人(法第二条第六項 に規定する法人をいう。以下同じ。)のうち、視覚障害者等のための複製又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの

    9月 29

    「障害を理由とする差別」が障害者の権利権益の侵害に該当するいうこと、それに合理的配慮の不提供も含まれることを規定した条約と国内法

     「障害を理由とする差別」が障害者の権利権益の侵害に該当するいうこと、それに合理的配慮の不提供も含まれることについて、障害者権利条約と国内法がどう規定しているかについて、少しまとめてみました。

     

    障害者の権利に関する条約(障害者権利条約) 第二条 定義

    「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。

     「障害に基づく差別」の定義ですが、「障害を理由とする差別」と同じと考えてよいと思います。ここでは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限で、あらゆる分野における障害者の人権を侵害する行為を「障害に基づく差別」と定義しています。それに「合理的配慮の否定を含む」と合理的配慮の不提供も人権侵害である「障害に基づく差別」と定義していることが重要です。

    障害者基本法

    (差別の禁止)
    第四条  何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない
    2  社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない。
    3  国は、第一項の規定に違反する行為の防止に関する啓発及び知識の普及を図るため、当該行為の防止を図るために必要となる情報の収集、整理及び提供を行うものとする。

     2011年に改正された障害者基本法の障害を理由とした差別を禁止した第四条です。国内法で初めて合理的配慮に言及したものです。ここでは、障害者権利条約を受けて、障害を理由として障害者の権利権益を侵害してはならないと第四条第1項で規定しています。そして、第四条第2項では、「前項の規定に違反することとならないよう」、つまり、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしないように、合理的配慮を提供しなければならないと規定しています。
     

    障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)

    (行政機関等における障害を理由とする差別の禁止
    第七条 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。
    2 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。

    (事業者における障害を理由とする差別の禁止
    第八条 事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。
    2 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。

     障害者差別解消法で、障害を理由とする差別の禁止を行政機関等(第七条)と民間事業者(第八条)に具体的に義務付けたものです。障害者権利条約で定義された「障害を理由とする差別(障害に基づく差別)」を障害差別解消法の第七条と第八条では、以下のように二つに分けて整理しています。

    • 障害を理由とする不当な差別的取扱い
    • 合理的配慮の不提供

     二つに分けたのは、合理的配慮の提供の義務付けが行政機関等と民間事業者で異なるからだと思いますが、いずれにしても、合理的配慮の不提供も「障害を理由とする差別」とし、合理的配慮を提供しないことが「障害者の権利利益を侵害」する行為であることを規定しています。

    9月 27

    勉強会で「障害者差別解消法と図書館サービス」というテーマで発表したスライド

     京都情報図書館学学習会 第227回(2015年9月25日)で、障害者差別解消法と図書館サービスというテーマで発表させていただいたので、そのスライド資料を公開用に一部編集して公開しました。


     

     テキスト版とhtml版は以下。

     テキスト版は情報保障のために事前に配布したものを上のスライドと同様に公開用に一部編集したものです。html版は、スクリーンリーダーで見出し単位(この場合はスライド単位)でスキップできる点ではこちらのほうが便利であろうと思い、事後に製作したものです。html版まで製作するのであれば、PowerPointではなく、HTMLベースのプレゼン用のフレームワークを使って発表してもよかったかもしれない。 

     今回の発表では、障害者差別解消法は、図書館に全く新しい義務を課すものではなく、図書館が行っている障害者サービスと同じ目的を持つものであり、むしろそれを支援するものであること、そして、そもそも図書館の障害者サービスは「すべての人に全ての資料とサービスを提供する」という図書館本来の使命に基づくものであるのだから、障害者差別解消法の施行が迫るこのタイミングで、図書館サービスという視点で改めて考えてみませんかということを言いたかったけど、正直、あまり整理されていなかったように思う。

     このテーマはもう少し整理したいところです。

     ところで、最後に余談として、乙武さんの以下の話を取り上げました。

     この話は、障害者差別解消法的にいろいろと考えるべき要素があります。概要をかいつまんで紹介すると。

    • 乙武さんが銀座のイタリアンレストランに予約をして夕食をとろうと試みる(車椅子を使用していることは事前に伝えていない)
    • レストランはエレベータが止まらない2階にある
    • レストラン側は乙武さんが車椅子を使用しているからと入店を拒否した

     車椅子だからと入店を拒否することは、おそらく障害者差別解消法で言うところの、民間事業者も禁止事項となる不当な差別的取扱いに該当するでしょう。しかし、エレベータが2階に止まらないということは、乙武さんは、自分もしくは同伴者でなんとかできなければ、レストラン側が合理的配慮を提供しなければ、入店はできない。しかし、合理的配慮の提供そのものは、民間事業者は努力義務となっているため、仮に入店そのものは拒否しなくても、店側が合理的配慮を提供しなければ、結局、乙武さんは入店できないことになってしまう。どう考えるべきか。
     
     おそらくは乙武さんが使用している車椅子は電動の車椅子でしょうから、非常に重くて男2人でも担いで階段に上るのは難しいのではないかと思います。できそうなのは、車椅子は1階に置いておいて、乙武さんを担いで2階に上がることですが、夕食の時間ということは、レストランそのものが非常に忙しい時間帯であり、合理的配慮を提供するだけの余裕がない可能性もあります。さあ、どうする。どうすれば、乙武さんがこのお店で食事ができないという事態をさけられたかということですが、ここでお互いが対立し、一方的にそれぞれが意見を言いあうよりは、建設的対話を重ねて問題の解決がはかれればよかったのかもしれません(このケースで問題になってしまっているのは、乙武さんが店側からそういう誠意を感じられなかったことによるところが大きいように思えます)。

     なお、いろいろと考える要素はありますが、払うべき合理的配慮というのは、個別具体的な対応ですので、当事者同士が納得するものが結論といえるものになると思います。その場に立ち会っていない第三者が論じても、それらしい意見は言えても、おそらくは正解といえる最終的な結論は出せないということは注意が必要かと思います。

    8月 17

    省庁がパブコメを開始した障害者差別解消法に基づく対応要領案及び対応指針案の一覧(2015年8月28日時点)

     省庁がパブコメを開始した障害者差別解消法に基づく対応要領案及び対応指針案の一覧です。

    職員向けの対応要領案

    独立行政法人

    事業者向け対応指針案

    関連エントリ

    ※2015/8/18 追記
    防衛省と人事院の対応要領案のパブコメが開始されていたので、追記しました。

    ※2015/8/19追記
    文部科学省の対応指針案のパブコメが開始されていたので、追記しました。

    ※2015/8/29追記
    8/28までに公開されたものを追加しました。

    7月 09

    障害差別解消法の実施に関する文部科学省の調査研究協力者会議

     文部科学省が障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)の実施に関する調査研究協力者会議を6月から開催して居ます。その1回目と2回目の会議資料が7月8日に配布資料が公開されています。障害者差別解消法で各省庁に対して作成・公開を義務づけられている事業者(民間)向けの対応指針の検討が主な目的のようです。

     ヒアリングは上の2回までのようで、第3回(7月7日)、第4回(7月21日)は対応指針の検討、8月に対応指針案のパブリックコメント、9月に告示というのが、現在、想定されているスケジュールのようです。

     第2回では日本図書館協会障害者サービス委員会の委員長もヒアリングを受けています。

    (資料5)公共図書館の障害者サービスと合理的配慮 (PDF:546KB)

    参考

    障害者差別解消法(抜粋)

    (事業者のための対応指針)
    第十一条 主務大臣は、基本方針に即して、第八条に規定する事項に関し、事業者が適切に対応するために必要な指針(以下「対応指針」という。)を定めるものとする。
    2 第九条第二項から第四項までの規定は、対応指針について準用する。

    7月 09

    障害者差別解消法で各省庁が作成・公表を義務づけられている対応要領案及び対応指針案に関するヒアリング(内閣府)

     障害者差別解消法の九条と十一条で各省庁に作成・公開を義務づけられれている対応要領及び対応指針に関するヒアリングを内閣府が7月13日と14日に行うようです。

     議題に内閣官房、内閣法制局、人事院、内閣府、宮内庁、公正取引委員会、警察庁、消費者庁、復興庁、会計検査院、総務省・厚生労働省の名前が。内閣府が各省庁に対応要領と対応指針の作成についてヒアリングを行うのか、それとも各省庁が合同で対応要領と対応指針作成のためにヒアリングを行うのかは、まだわかりませんが、後者だとすると、2時間で10省庁分のヒアリングか・・・

    7月13日

    http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/20150713_youkou.html
    議題
    (1) 障害者差別解消法に基づく国等職員対応要領案及び事業者のための対応指針案について(内閣官房、内閣法制局、人事院、内閣府、宮内庁、公正取引委員会、警察庁、消費者庁、復興庁、会計検査院)
    (2) その他

    7月14日

    http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/20150714_youkou.html
    議題
    (1) 障害者差別解消法に基づく国等職員対応要領案及び事業者のための対応指針案について(総務省・厚生労働省)
    (2) その他

    参考

    障害者差別解消法(抜粋)

    (国等職員対応要領)
    第九条 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、基本方針に即して、第七条に規定する事項に関し、当該国の行政機関及び独立行政法人等の職員が適切に対応するために必要な要領(以下この条及び附則第三条において「国等職員対応要領」という。)を定めるものとする。
    2 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、国等職員対応要領を定めようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。
    3 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、国等職員対応要領を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
    4 前二項の規定は、国等職員対応要領の変更について準用する。

    (事業者のための対応指針)
    第十一条 主務大臣は、基本方針に即して、第八条に規定する事項に関し、事業者が適切に対応するために必要な指針(以下「対応指針」という。)を定めるものとする。
    2 第九条第二項から第四項までの規定は、対応指針について準用する。

    6月 17

    合理的配慮のあり方も検討した文科省の特別支援教育の在り方に関する特別委員会(H22年度〜H24年度)

     2010(平成22)年7月から2012(平成24)年6月にかけて、文部科学省が中央教育審議会の下に特別支援教育の在り方に関する特別委員会を設置し、インクルーシブ教育のあり方について検討を行っています。ここで、障害児教育で提供するべき合理的配慮及びその基礎となる環境整備のあり方についても検討されています。

     設置は、2010(平成22)年6月29日の閣議決定(「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」)を受けてのようです。この特別委員会は最終的に以下の報告書をまとめました。

     この3章が「障害のある子どもが十分に教育を受けられるための合理的配慮及びその基礎となる環境整備」であり、合理的配慮とその前提となる基礎的環境整備の考え方についてまとめられています。ここでは、内容については詳しく触れませんが、合理的配慮の提供は、あくまで個別の事例に対応するためのものであり、その前提として基礎的な環境の整備が重要であることが繰り返し述べられています。課題の整理もどちらかと言えば、基礎的環境整備を中心にまとめられています。

    合理的配慮と基礎的環境整備については、以下のエントリでまとめましたことがあります。上の委員会時にはまだ存在しない障害者差別解消法における考え方ではありますが、同じであるはずですので、ご参照ください。

      合理的配慮の検討については、この特別委員会のさらに下にワーキンググループが2011(平成23)年7月に設置され、そこで主な検討がなされています。

    ちなみに時期的には、日本の法律で初めて合理的配慮の概念を採用する改正障害者基本法が参議院で可決されるのが2011(平成23)年7月29日で、上のワーキンググループの設置が特別委員会で決まったのが同年5月というのですから、政府内の合理的配慮に関する検討ではおそらくかなり早い方ではないでしょうか。

     この特別委員会が終わる時期とほぼかぶるタイミングで、同じ文部科学省内で「障がいのある学生の修学支援に関する検討会」が2012(平成24)年6月に立ち上がり、今度は大学などの高等教育における「教育上の合理的配慮等」の検討が開始されています。

    1月 14

    大学において求められる「教育上の合理的配慮等」を検討した「障がいのある学生の修学支援に関する検討会」(文部科学省)

    文部科学省が設置した「障がいのある学生の修学支援に関する検討会」では、2012年6月から2012年12月の間に9回にわたり、大学等における教育上の合理的配慮の対象範囲について検討が行われました。

     その検討結果が「報告(第一次まとめ)」としてまとめられ、2012年12月に公開されています。

    この検討会の背景と今後の展望?

     この検討会が合理的配慮について議論を重ねていた時期は、以下のとおり、障害者権利条約の批准に向けて日本が法整備を進めている段階で、改正障害者基本法がすでに施行され、障害者差別解消法の成立に向けた検討が行われている時期にあたります。

    2006年12月 障害者権利条約が国連総会で採択
    2008年5月 障害者権利条約が発効。日本でもその批准のために日本でも法整備を行うことに
    2011年8月 改正障害者基本法が公布・施行
    2013年6月 障害者差別解消法及び改正障害者雇用促進法が成立
    2016年4月 障害者差別解消法及び改正障害者雇用促進法が施行

     2011年8月に施行した改正障害者基本法では、第4条に「合理的配慮」という障害者権利条約にある言葉が盛り込まれました。「障がいのある学生の修学支援に関する検討会」はこれを受けての検討になるようです。

    障害者基本法 第四条

    何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。
    2 社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない。
    3 国は、第一項の規定に違反する行為の防止に関する啓発及び知識の普及を図るため、当該行為の防止を図るために必要となる情報の収集、整理及び提供を行うものとする。

     

     2012年12月に検討会の報告として「報告(第一次まとめ)」を上のとおりまとめています。「第一次まとめ」なので、後に続くものがあるはずですが、現時点ではそれに続くものは見つかりません。2013年6月に成立し、2016年4月施行される予定の障害者差別解消法(上の障害者基本法第4条を具体化することを目的としたもの)では、各省庁は所管する事業者向けの必要なガイドライン(「対応指針」)を作成し、公表することになっていますので、文部科学省もこの議論の成果をうけて大学向けのガイドラインを公開するかもしれません。

     合理的配慮の提供を国公立大学に義務化、私立大学には努力義務化(しかし、文部科学省による行政指導でよって一定程度の実効性が担保されることになっている)した障害者差別解消法の施行が2016年4月に迫っていますので、合理的配慮の提供の検討を各大学でも進めていかなければならない時期にすでになっています。

     いずれにしても、文部科学省において関係者があつまって、障害学生に提供すべき「教育上の合理的配慮等」とは何かということが検討された、このことはもっと知られてもよいのではないかと思います。

    大学等における「教育上の合理的配慮等」の対象

     この検討会で「教育上の合理的配慮等」を検討する上で対象とする学生の活動の範囲は、「授業、課外授業、学校行事への参加等、教育に関する全ての事項」を対象としています。つまり、講義だけではなく、サークル活動や学園祭等のイベントの参加も含まれることになっています。

     一方で、教育とは直接に関与しない学生の活動や生活面への配慮については、この検討会における検討の対象から外れています。これは「教育上の合理的配慮等」ではないということであって、この方面に対して大学が配慮しなくてもよいということではありません。一般的な合理的配慮に含まれるので、「教育上の合理的配慮等」とは何かを検討するこの検討会では検討の対象から外したということになります。

    大学等における「教育上の合理的配慮等」

     詳しくは報告署をご覧いただきたいのですが、「教育上の合理的配慮等」として以下が挙げられています。

    1. 学生が得られる機会への平等な参加を保障する配慮の提供
    2. 大学等全体としての受入れ姿勢・方針の公開
      (試における障害のある入学者への配慮の内容、大学構内のバリアフリーの状況、入学後の支援内容・支援体制(支援に関する窓口の設置状況、授業等における支援体制、教材の保障等)、受入れ実績(入学者数、在学者数、卒業・修了者数、就職者数等)等)
    3. 合理的配慮の決定過程における学生本人の教育的ニーズと意思の尊重と、配慮の提供
    4. 教育方法等への配慮の提供(情報提供、教材、公平な試験、学外における実習やインターンシップ等における配慮)
    5. 支援体制の整備
    6. 施設・設備のバリアフリー化

     なお、上の「合理的配慮」には、その後成立した障害者差別解消法では、努力義務の「環境整備(事前改善措置)」に該当するものまでが含まれています。もし文部科学省が大学向けにガイドラインを公開するのであれば、その後の障害者差別解消法に係る検討の成果を反映させる形で変更されるかもしれません。

    アクセシブルな教材の提供について

    この検討会では、上にように幅広い事項が議論されています。その全てをとても紹介しきれませんが、最後にこのブログでもたまに取り上げているアクセシブルな教材の提供について、少し詳しく紹介します。

    アクセシブルな教材の提供や授業における情報保障は、重要な課題であるため、議事録を読むとこの検討会でもその議論にかなり時間が割かれています。
     
     図書館に関係してくるところで、アクセシブルな教材の提供については、あくまで一例ですが、静岡大学の石川准先生が第3回の検討会において以下のように発言されたり、

    一つの方向としては,出版社には電子データがあるので提供を求めていく道筋を作れないかということがあります。やはり学術出版と商業出版とは違っていて,学術出版社にとっての大学はカスタマーとしての位置付けの比重が大きいので,大学のコンソーシアムというか,国立,公立,私立それぞれあると思いますが,大学と学術出版社との間では包括的な協定等を結んで,大学で学術文献や学術雑誌を購入しているのだから,電子データの提供については善処されたいというような合意形成を行うことは可能ではないかと考えております。これは短期か中期かは少しわかりませんけれども,恐らく可能であろうというふうに思いますしすべきことではないかというふうに考えています。
     それから,現在いろいろな形の電子的情報の提供がされていると思いますが,厳密に言うと著作権法37条の規定における情報提供施設というのは,政令では,大学の場合ですと大学図書館が指定されています。ですから,大学図書館が実施主体となって行っている場合については無許諾で複製し公衆送信できる,有資格者に対して公衆送信できるとなっていますけれども,多くの場合は大学の図書館が能動的に参加していない形になっているものと思われるので,その場合には,やや表現が難しいのですが,無許諾でひそやかにやっておられるところが多いのではないでしょうか。
     それは中・長期的な観点においても,やはりきちんと合意形成をしていくという点でも,次のいずれかの方法をとる必要があると考えます。一つは,大学図書館が主体となって,例えば障害学生支援センター等がそのブランチとしての組織上の位置付けを与えるというものと,あるいは文化庁と調整をして政令の中に障害学生支援センターも入れていただくといったような,いずれかの方法によって複製及び公衆送信について著作権法の37条の規定に整合性がとれる形にして,その上で大学間のデポジットを作ってアクセシブルな電子データ,電子教材の相互貸借,オンラインでの相互貸借を可能にしていくというふうにしていかないと,今のやり方をずっと続けていくというのは不合理極まりないというふうに考えています。

    from 第3回の検討会議事録 石川准先生発言

     第6回の検討会において慶應義塾大学の中野泰志先生が以下のような発言をされています。

    視覚障害の立場でいうと,図書館の本にどのくらいアクセスできるかがすごく重要で,先ほど自主学習のことを言いましたが,大学における学問とは,先生が授業で使っている本を読んでいてできる話ではありませんで,先生が参照しないものをどんどん先取りして教授をぎゃふんと言わせることが重要なわけで,そうなると先生が指示しないような本も読める必要があって,これは御存じの方がたくさんおられると思いますが,例えば,アメリカではアクセステキストネットワークというのが作られていて,大学で使われているような教材に関してはテキスト化してそれを共通に利用できるシステムがありますので,是非拠点校には,もし,がっさらとお金が来るんだったらそういうお金を使っていただいて,日本版の,例えばテキストデータを共有できるような仕組みを作っていただくとかというようなところに使っていただけるといいなと思います。

    from 第6回の検討会議事録 中野泰志先生発言

     

     両先生の上の発言等を受けて、報告(第一次まとめ)では、国、大学等及び独立行政法人等の関係機関が取り組むべき事項の中長期的課題の中で、以下のようにまとめられています。

    4) 教材の確保
    ○視覚障害や読字障害のため文字が見えにくい、読みにくい、肢体不自由のため書籍のページめくりや持ち運びが難しいなどといった「印刷物障害」に含まれる障害のある学生は、教科書や副読本、各種資料といった様々な教材の利用が困難である。また、聴覚障害のある学生は、音声の聞き取りや理解が難しく、動画等の視聴覚教材の利用が困難であり、大学等での学習機会への参加が難しい現状がある。

    ○これらの学生の学習機会への参加を保障するためには障害に応じ必要な教材を確保することが重要であり、各大学等の保有する点訳教材、字幕教材及びテキストデータ化した教材等の様々な教材や支援技術製品の一覧を作成し学内外で情報を共有することや、さらに、大学等間での共用や貸し借りを行う仕組みを検討することなど、利便性を高めるための方策を検討することが望まれる。

    ○また、電子化された教材は、学生本人にとって見やすい体裁への変更・調整や支援技術製品(音声読み上げソフトウェア等)の活用が容易となることから、その充実のため、大学等や図書館、出版社との連携の促進について検討することが望まれる。

    from 報告(第一次まとめ) 6.国、大学等及び独立行政法人等の関係機関が取り組むべき事項 (2)中・長期的課題 4) 教材の確保

     2番目のところ、図書館に対する言及はされてないんですよね・・。ここで書かれていること、とくにテキストデータの共有は、著作権法第37条に基づくのであれば大学図書館が主体にならないと難しいはずですが、「文化庁長官の指定を受けることで,図書館以外の主体であっても大学の学内で同様の行為ができるということで」と事務局が説明して入れなかったようです(第9回議事録)。各大学の障害学生支援室ごとに文化庁指定を受けるのは、ちょっと現実的ではないという気がしますが・・・。

    1月 12

    平成26年度障害者施策に関する基礎データ集(内閣府)

     内閣府が2014年12月15日に平成26年度障害者施策に関する基礎データ集を公開しました。統計は平成23年生活のしづらさなどに関する調査などの厚生労働省の過去の調査を掲載したもののようです。