"Accessible Publishing : Best Practice Guidelines for Publishers" ver.4.0

 EDItEURより”Accessible Publishing Best Practice Guidelines for Publishers”のver.4.0が2013年6月4日に公開されています。このガイドラインは World Intellectual Property Organization (WIPO)の出資によるEnabling Technologies Frameworkプロジェクトのジョイントプロジェクトとして作成されたものです。
  HTML版の他にEPUB版、Word版が公開されています。

 2011年4月に公開されたver.1.0版の日本語訳を日本障害者リハビリテーション協会情報センターが公開しています。

 ver.1.0からver4.0まではマイナーアップデートとのこと。Ver.1.0tと比較してver.4.0では、仕様が確定したEPUB 3に関する記述が増えているようです。

必ずしも全てのEPUB 3が「DAISY」ではない

 支援技術開発機構の濱田麻邑さんがカレントアウェアネスに以下のような記事を投稿しています。EPUB 3とDAISY-AI(DAISY 4)の関係やEPUB 3のもつアクセシビリティ機能について簡潔に説明されていますので必読です。

 EPUBがアクセシビリィな機能を持つフォーマットであることに加え、DAISY-AI(DAISY 4)の配布フォーマットであることも知られるようになりました。しかし、一方で上の記事で濱田さんが以下のようなご指摘をされているように、EPUBで作ったからと言って必ずしもそのコンテンツがアクセシブルなわけではありません。
 

このように多様なアクセシビリティ機能がある一方で、EPUB3に準拠していてもアクセシブルでない電子出版物も製作できてしまうといった課題もある。

 
 EPUB 3というフォーマットは、DAISYが備えるアクセシブルな機能を包含していますので、EPUBでDAISY並のアクセシブルなコンテンツを作ることは可能です。しかし、可能であるというだけでして、EPUB 3で作れば、みんな「DAISY」だ、もしくはDAISY並にアクセシブルであるというわけではありません。「DAISYとEPUBの統合」という部分が強調されすぎて、EPUB 3で作りさえすれば、DAISYと同じアクセシビリティを備えたことになると思われる傾向があるように感じられ、ちょっと心配もしています。
 ウェブサイトがW3CのHTMLの仕様に準拠して作成されたからといって必ずもアクセシブルではないように、EPUBがアクセシブルであるかどうは、作り手がアクセシビリティにどの程度配慮するかに左右されます。EPUBはすでに数多く作成されていますが、アクセシビリティの観点からみればおそらく玉石混合といった状態ではないでしょうか。
epub
 
 EPUBはあくまでアクセシブルなコンテンツをいれることができる器です。しかし、その器に入れるコンテンツをアクセシブルにするのは実際にコンテンツを作る人です。
 EPUBをよりアクセシブルにするためのガイドラインがIDPFから公開されています。このガイドラインを参照して少しでもアクセイブルなEPUBが作られることが望まれます。

どこまで頑張ればDAISY並のアクセシビリティと言えるかという明確な線引きは難しいですが、テキストDAISYから生成されたEPUBでも以下は備えているはずです。
  

  • TTSに対する配慮(読み情報の提供や適切な順序で読み上げられるようコンテンツを作成するなど)
  • 様々なレベルでのナビゲーション(目次、コンテンツの構造化、コンテンツ文書へのセマンティクス、原資料のページ数情報など)
  • 読者の選択肢を制限しない(色、フォントサイズ、レイアウトなどを固定しない)

「コンテンツ文書へのセマンティクスの付与」については以下をご覧ください。

正直、BORN EPUBでは、コンテンツ文書へのセマンティクスの付与が一番抜け落ちそうな気がします。
 

関連エントリ

EPUB 3とDAISY 4の関係
DAISYからEPUB 3に変換する
DAISY再生ソフト・機器のEPUB対応

DAISY Pipeline 2のGUI版

 これまでのエントリでDAISY Pipeline 2のCI版を用いてDAISYをEPUB3に変換してきましたが、実はGUI版もあります。

1.DAISY Pipeline 2(GUI版あり)のダウンロード

DAISY Pipeline 2(GUI版あり)をダウンロードします。以下からpipeline2-1.5-webui-desktop.zipをダウンロードしてください。

 ダウンロードしたら、pipeline2-1.5-webui-desktop.zipを解凍して適当な場所においてください。特にインストールの必要はありません。解凍したフォルダ内はおおよそこんな感じです。
スクリーンショット 2013-06-22 0.15.37

2.DAISY Pipeline 2のGUI版の起動

  Mac OSの場合は、上のwebuiフォルダ内にある「start」をクリックすることでGUI版DAISY Pipeline 2を起動することができます(Windowsなら「start.bat」のはずですが、私のMacにインストールしたWindows XPではうまく起動できませんね)。
 
  これが起動直後の画面です。
GUI版DAISY Pipeline 2スタート画面
  GUI版DAISY Pipeline 2スタート画面
 

3.変換作業開始

 「Get Start」ボタンを押下すると、以下のような画面が表示されます。
GUI版DAISY Pipeline 2のJob画面
  GUI版DAISY Pipeline 2のJob画面
 

4.変換元のファイルのアップロード

 変換するDAISYファイルをアップロードしてみましょう。Filesの緑の「Uploads files」ボタンを押下してファイルをアップロードしてください。今回はNHKが公開しているDAIsY2.02版音声DASIYの番組表ファイル bangumi.zipをEPUB 3に変換します。
NHK音声番組時刻表のbangumi.zipをアップロード中
  NHK音声番組時刻表のbangumi.zipをアップロード中
  
  なお、ここでアップロードするファイルは関係するものを1つのフォルダにまとめてzipに固め、1つのファイル化しておく必要があるようです。 

5.スクリプトの選択及びオプションの選択

 続いてスクリプトを選択してください。今回はDAISY2.02からEPUB3に変換しますので、「DAISY 2.02 to EPUB3」を選択します。
スクリプト選択画面
  スクリプト選択画面
  続いて、Option画面が表示されます。ここでソースファイルとパラメータを設定し、青い「Start Job」ボタンを押下してください。今回はデフォルトの設定で問題ないので、そのまま「Start Job」ボタンを押下します。
Option画面
  Option画面
 

6.変換

青い「Start Job」ボタンを押下すると変換作業が開始され・・
変換処理中の表示
  変換処理中の表示
 
 
 しばらく待つと完了です。緑の「Download results」ボタンを押下すると、変換したEPUB3ファイルを取り出すことができます。
変換処理終了の画面
  変換処理終了の画面
 裏でターミナルが起動しています。GUI版DAISY Pipeline 2を閉じるときは、ターミナルも一緒に落とす必要がありますので、GUI版の右上にある「X Shut Down」ボタンを押下してください。

関連エントリ

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