2月 15

MTM(Swedish Agency for Accessible Media)のオンラインサービスLegimusなど

 DAISY Consortiumは今年で20周年を迎えるのだそうです。そして、昨年、2015年6月の理事会で、スウェーデンのMTM(Swedish Agency for Accessible Media)のJesper Klein氏がDAISY Consortiumの新しい会長(Chairman of the Board)に選任されています。38歳。若い。

 で、前置きが長くなってしまいましたが、そのJesper Klein氏が、以下の記事でDAISY Consortiumが今年で20周年を迎えることを紹介しつつ、所属するMTMの活動について紹介していました。MTMの最近の活動がよくまとまっていますので、この記事を箇条書きで要点をまとめてみました。

スウェーデンの概要

  • スウェーデンの人口:あまり多くない。980万人。移民が160万人と移民が占める割合が大きい。
  • インターネット利用率:世界でももっとも高い国の1つ
  • DAISY規格が生まれた国でもある。
  • MTMのターゲットである視覚障害者とディスレクシアは人口のおおよそ6パーセント、つまり、約60万人。この60万人に含まれない知的障害、認知障害などもMTMのターゲットになると思われるが、正確な数は分からない。

MTM(Swedish Agency for Accessible Media)のオンラインサービスLegimus

  MTM(Myndigheten för tillgängliga medier : 英語でSwedish Agency for Accessible Media)

  • MTMのアクセシブルな資料を提供するサービス、Legimus(http://www.legimus.se/)
  • コンテンツの提供インターフェイスは、ウェブサイト。iOSアプリや、Androidアプリ、DAISY配信プロトコルを用いたサービス
  • Legimusの登録ユーザー数は10万人(スウェーデンの人口の約1%)
  • 提供するコンテンツ数は、2016年初めで肉声で読み上げ録音したスウェーデン語のDAISY図書111,181点。全て無料で提供されている
  • 2014年は、その年にスウェーデン語で刊行された市販本(trade books)とテキストブックの約25%の録音図書を追加することができた。
  • その録音のほとんどが、商用のオーディオブックで朗読する俳優のような有名人ではないが、熟練した音訳者に読み上げによるもの。

MTM(Swedish Agency for Accessible Media)のその他

  • Legimusのオンラインサービス以外に、CDベースのサービスを図書館経由で利用しているものが、高齢の視覚障害者を中心に2万から3万人いる。
  • Legimusの利用者10万人とあわせると、MTMは13万人の利用者を持つことになる。ターゲットとなる人口の60万人の21.7%だ。
  • なぜ、たった21.7%しかいないのか。Klein氏は以下の4つの理由を挙げている。
    • ロービジョンやディスレクシアの人で、聞いて読書するよりがんばって目で読むほうがよい人は、大活字本を含む印刷した書籍、PDFやEPUB2で刊行された商用の電子書籍を読んでいる。
    • 読書をする習慣がそもそもない人がいる。
    • 多くのプリントディスアビリティのある人にまだサービスが知られていない。
    • 既存のオーディオブックサービスがベストセラーのタイトルを押させており、それで十分にニーズが満たせている。
2月 07

読み上げソフトユーザーへの情報保障のためのプレーンテキストデータの書き方について

 何かを例えば、wordやPowerPointのファイル、PDF形式のファイルなどで送ったり、提供したり、公開したりする場合で、さらに提供する人に視覚障害者などの読み上げソフトを利用する方が含まれている場合には、同じ内容のプレーンテキストファイルも作成して提供することがあります。その際に気をつけていることを何点か思いつくところを参考までにまとめてみました。
 
 あくまで私のやり方でして、これが正解というものではないとは思いますし、いつも全てをやっているわけでもありません。対象となる人が限定されるなら、その人のICTスキルに応じての話になりますし、幅広い層の不特定多数の人を対象にホームページ上で公開するとなった場合は、それなりに労力をさくという感じでケースバイケースです。この中からできるところからやれるとよいのかもしれません。

 プレーンテキストデータの書き方については、毎回迷いながらやっていますので、ご意見いただけると嬉しいです。

1.読み上げソフトで誤読を誘発しない言葉を選択する。

 読み上げソフトで誤読を誘発しない言葉を選択します。言うは簡単ですが・・。

例えば、日付や時刻で

2016/2/7(日)13:30〜16:00

と書きがちですが、以下のように

2016年2月7日(日曜日)13時30分から16時まで

とか。

見栄えや幅を揃えるために、以下のように日時の日と時の間にスペースをいれてしまいがちですが、

日 時
連絡先

「日 時」を「にちじ」とは読んでくれないので、

日時
連絡先

など。

 読み上げソフトがインストールされているのであれば、一度実際に聞いて確認するのがベストかと思います(私もそれほどやれているわけではありませんが・・・)。
 例えば、「視覚障害のある方」の「ある方」という言葉、「のあるかた」と読んで欲しいのですが、「あるほう」と読んだりして、意外な単語を誤読しています。後で知ると結構焦ります。「市町村立」を「しちょうそんりつ」と読まずに、「いちまちそんりつ」と読んだりなどしてたりしますので。

※2016年2月10日追記
 ここについては、以下のようなご意見をいただきました。
・漢字の誤読について、そこまで配慮されていると助かる面もあるが、「ある方」が「あるほう」などよくある誤読は、もう慣れっこになっており、間違って読まれても脳内補完できるという人は多いのでは。
・日付の書き方については、文書内で一貫していれば、yyyy/mm/ddで問題ない
・人名や地名が振り仮名で表記されていれば助かる。

2.読みを補記する

 誤読をすることが分かっている場合でも、固有名詞など、その言葉を使用せざるを得ない場合があります。しかも、誤読されると文章の意図もきちんと伝わらない場合です。分かる範囲になりますが、読みの情報を一応補記するようにしています(できる範囲で)。

 例えば、ブラウザのFirefoxのような、英語の造語でしょうか。Firefoxを「フィレフォックス」と読む読み上げソフトもありますので、この場合は、「Firefox(ファイアフックス)」と単語の後ろに括弧でくくって読み情報を補記するなどしています。日本語の漢字であれば、誤読があっても一字読みで漢字を確認することで一応救われることもありますが、英語はそれもできませんので(アルファベット一文字一文字を読み上げることも可能かもしれませんがとはいえ・・)、英語の造語については特に気をつけています。

※2016年2月10日追記
 これに関連して、「Word」や「PC-Talker」は「ワード」「ピーシートーカー」とカタカナ表記にしているという意見もありました。年配の人だと、英語読みではとまどうこともあるとのことです。そういえば、場合によっては私も「DAISY図書」を「デイジー図書」、「PC-Talker」を「PCトーカー」などのようにカタカナ表記することがあります。
 カタカナ表記については、他の人から正式な表記を知りたいという欲求もあるので、最初に登場するときは、正式な表記とカタカナヨミを併記するのがよいのではないかと意見もいただきました。
  

3.URLやメールアドレスはそれだけを一行で表記する

 例えば、URLなどは以下のように見出しとURLなどを一行でまとめて書きがちです。
URL: http://code.kzakza.com/

これで取り返しの付かない問題になるというわけでもないのですが、上の書き方だと、エディタによっては、「URL:」からリンクを貼っていることもありえますし、読み上げソフトを使用しながら、「http://code.kzakza.com/」だけコピーすることも面倒な気がします。上の書き方をしていて実際、リンク先に飛べなかったという話も何度かいただいたことがありますので、

URL
http://code.kzakza.com/

のほうがよいような気がします。メールアドレスも同じ。

4. 文字コードはShift-JISにする

 これは特に根拠ありません。UTF-8で作成すると文字化けをするという話を何度かいただいたことがあるのでというだけの経験則による話です。これは、そんなことはないよと言われる人は多いかもしれません。

※2016年2月10日追記
これについては以下のようなご意見をいただきました。
・Shift JisのプレーンテキストデータをiOS上で開くと、文字化けを起こしやすい(確かにある!Mac OS上でも同じかもしれない)、海外製のアプリで開く場合ある、ということから、UTF-8のほうがよいというご意見をいただきました。
・UTF-8で概ね問題ないような印象ですが、BoMがないと化けることある

5.ドキュメントが大部になる場合は、章単位などの意味ある単位でファイルを分割する

 プレーンテキストデータは、構造化はされていませんので、HTMLドキュメントのように見出しでスキップしたり、ページ内リンクを活用した目次を冒頭に置くなどで意味ある単位で移動するということもできません。報告書のように紙の資料で数十ページにのぼるような長文になる場合は、最初からずっと目的の箇所まで読み上げるか全文検索で移動するしかありません。そのため、ナビゲーションの意味で、章単位などの意味ある単位でファイルを分割することで、ファイル単位で目次に相当する移動をできるようにします。ファイル数が多くなる場合は、それらをフォルダにいれて、zipで固めてお渡しすることもあります。

6. 図の説明を加える

 PDF版やword版などに図が入っている場合は、その図の説明をつけています。HTMLでの代替テキストと同じです。

7.表を線形のテキストに置き換える

 縦の項目と横の項目を組み合わせて理解する必要のある二次元的なコンテンツである表については、これというものが実はありません。複雑な表や大きな表だとどうしようかといつも迷います。しかし、以下のようにシンプルで小さな表であれば、線形、つまり、最初から順番に読んでいって理解しやすい形式に置き換えることがあります。

(例)

国の行政機関等 地方公共団体 民間事業者
障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止 義務 義務 義務
環境の整備(事前的改善措置) 努力義務 努力義務 努力義務
合理的配慮の提供 義務 義務 努力義務

 
これを以下のようなテキストに置き換えます。つまり、縦と横の見出しを1行でそれぞれ読むという感じでしょうか。

障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止、国の行政機関等は義務、地方公共団体は義務、民間事業者は義務
環境の整備(事前的改善措置)、国の行政機関等は努力義務、地方公共団体は努力義務、民間事業者は努力義務
合理的配慮の提供、国の行政機関等は義務、地方公共団体は義務、民間事業者は努力義務

これはいつもやれているわけではありません。表の数と大きさ次第でしょうか・・。

8. ある程度全体像が予測しやすいように配慮する

 読み上げソフトユーザー、というより、この場合は、特に視覚障害者に当てはまるかも知れませんが、全体の長さや構成などの全体像をぱっと視覚的に把握することが難しいため、線形でコンテンツを読んである程度全体像が予測できるように説明を追加しています。短ければよいのですが、長いといつ終わるか分からない文章を読まされるのは誰でもしんどいと思いますので。

 例えば、アンケートであれば、全体で質問はいくつある(例1)、ということや、個々の質問の中でも選択式のものであれば、質問文の最後に選択肢は4つある(例2)ということを伝えることなどでしょうか。

例1 質問は全部で20問です。次の5つのセクションに分かれています。
例2 次の選択肢からお選びください。選択肢は4個で、複数の回答が可能です。

2月 07

マルチメディアDAISYを普及させるための方法としていくつか

 音声とテキストを保持し、音声が読み上げる箇所のテキストをハイライトするマルチメディアDAISYが視覚障害やディスレクシアなどの様々な理由で読書に困難のある人にたいして幅広く有効であることは形式であることは疑いないところですが、テキストと音声それぞれをつくり、さらにそれを掛け合わせる必要があり、製作コストがそれなりにかかるため、普及しているとは言えない状況です。しかし、少しでも(可能であれば、商業ベースで)普及させるために、図書館としてこういう手立ては取り得るんじゃないかと思うところを思いつきで何点か。書いていて、マルチメディアDAISYに限定されるものではないかなと思いましたが。
 

1 アクセシブルな電子書籍の要件をまとめたガイドラインを作成する

  • 最終的にはマルチメデァアDAISYにたどり着くようなアクセシブルな電子書籍製作のためのガイドラインを作成する。
  • そもそも「アクセシブルな電子書籍」に対する関係者の認識に相違がかなりある。その相違を解消し、「アクセシブルな電子書籍」の要件を様々な領域がわかるようにするために要件をまとめたガイドライン。いろいろな業界の関係者を巻き込んで作成すれば、このガイドラインを作成するプロセスそのものがアクセシブルな電子書籍と何かというコンセサンスを形成するはず。
  • ガイドラインは、全ての要件を平たく挙げるのではなく、要件の優先順位を示す。たとえば、等級Aの要件を満たせば、スクリーンリーダーで読み上げさせれば誤読がありうるが、それでも読み上げさせることができるもの、等級AAAであれば、肉声の音声と同期したマルチメディアDAISYか、誤読がないようにSSMLを埋め込んだ電子書籍などになるなど。
  • アクセシブルなテキストDAISYライクな電子書籍も十分に出ていない状態で、出版社にいきなりマルチメディアDAISY作ってほしいと要望を出しても難しいと思う。そこで、まずはアクセシブルなテキストDAISYから目指す(ボランティアベースでマルチメディアDAISYを製作するにしても、紙の書籍からマルチメディアDAISYを作るよりは、テキストDAISYからマルチメディアDAISYを作る方がコストは安く押さえられるはず)。

ガイドラインの作成については、以下でまとめたことがあります。

2 マルチメディアDAISY普及のための団体を図書館の外に立ち上げる

  • 理解のある出版社あるいは出版関係者を巻き込んでマルチメディアDAISY普及のための団体を立ち上げる。
  • 様々な業界におけるマルチメディアDAISYの橋頭堡となるべき団体があるべきだと思う。
  • その団体で商業ベースでマルチメディアDAISYを出版するにはどうすればよいか研究したり、定期的に啓発イベントを行ったりする。
  • 出版社という組織ではなく、まずはその中にいる編集者に興味を持ってもらい、働きかける。そのためには、こういう団体が存在するほうがよいのではないか。
  • 岩田美津子さんがたちあげた「点字つき絵本の出版と普及を考える会」という団体はロールモデルになるのではないか。

3 技術者をもっと巻き込む

  • アクセシビリティに関心のある技術者や研究者は多い。また、技術的にやれる余地はかなり残されているのではないかと思う。著作権法第37条クラスタが抱えている問題をもっとオープンにして様々な技術者や研究者が参加しやすい体制を。
  • 例えば、青空文庫は、こんなに困っているんですということをアピールでアイデアソンを開いて、幅広い技術者の関心を集めた。こういう手法はもっと採用されるべき。
    青空文庫を救え!「Code for 青空文庫」アイデアソン #1 レポート ‪#‎aozorahack‬

4 オーディオブック関係者/団体との連携を図る

  • 商業ベースでマルチメディアDAISYを出版させるビジネスモデルとしては、米国のアマゾンのImmersion Readingがやっているような、オーディオブックとKindle図書を別々に販売し、両方を購入した人にはその両方を掛け合わせて、マルチメディアDAISY機能として利用できる方法はかなり有効ではないか。
    Kindleで洋書を読むならImmersion Readingを使ってみよう
  • オーディオブック業界とはもっと連携を図って、図書館側の要望を伝えてもよいのではないか。ユーザー側の意見として
11月 25

障害者差別解消法と図書館サービス 1 -そもそも障害者差別解消法とは-

 「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(通称:「障害者差別解消法」)は、合理的配慮の提供などを義務づけ、障害者の権利の保障と実質的平等を確保することを目的として具体的な措置や義務を定めた法律で、2016年(平成28年)4月に施行を予定しています。
 
 エントリを何回かに分けて、この法律と図書館サービスとの関係を整理してみたいと思います。

1. この障害者差別解消法成立の背景

 後でも少し触れる「障害者の権利に関する条約」(通称:障害者権利条約)批准のための法整備の一環として制定されたものです。2013年6月に障害者差別解消法と障害者雇用促進法の改正法が成立したところで、2014年1月に日本政府は障害者権利条約に批准しています。

2006年12月 「障害者の権利に関する条約」(通称:障害者権利条約)採択
2011年8月  障害者基本法の改正(公布・施行)
2012年6月  障害者総合支援法(旧障害者自立支援法)の成立
2013年6月  障害者差別解消法の成立・障害者雇用促進法の改正
2014年1月  日本が障害者権利条約を批准

 この障害者差別解消法は、2011年8月に改正された障害者基本法の第四条(以下)を具体化するために制定されたものです。

(差別の禁止)
第四条  何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。
2  社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない。
3  国は、第一項の規定に違反する行為の防止に関する啓発及び知識の普及を図るため、当該行為の防止を図るために必要となる情報の収集、整理及び提供を行うものとする。

つまり、国際条約である障害者権利条約から、以下のように

障害者権利条約
  ↓
障害者基本法
  ↓
障害者差別解消法

という流れで、「障害を理由とする差別」を解消する措置が、具体化され、義務化されています。ですので、障害者差別解消法を理解するためには、障害者基本法と障害者権利条約も必要に応じて参照しなければなりません。

 例えば、用語の定義ですが、以下のように、「合理的配慮」、「障害に基づく差別(障害を理由とする差別)」、「障害者」などの重要なキーワードが、障害者権利条約と、障害者基本法・障害者差別解消法のいずれかにしか定義されていません。もちろん障害者権利条約、障害者基本法、障害者差別解消法はそれ単体で成立する独立したものであるため、それぞれで理解できるようになっていますが、より深く理解するためには必要に応じて、障害者権利条約で定義されたものを参照する必要があります。

障害者権利条約 障害者基本法 障害者差別解消法
障害に基づく差別(障害を理由とする差別) 定義有り 定義無し 定義無し
合理的配慮 定義有り 定義無し 定義無し
障害者 定義無し 定義有り 有り
社会的障壁 定義無し 定義有り 定義有り
ユニバーサルデザイン 定義有り 定義無し 定義無し
意思疎通 定義有り 定義無し 定義無し
言語 定義有り 定義無し 定義無し

2. 「障害を理由とする差別」とは何か

 「障害を理由とする差別」については、障害者権利条約 第二条の定義のところで以下のように定義されています。

障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。 (障害者権利条約 第二条 定義 「障害に基づく差別」より)

 
 「障害を理由とする差別」は、障害者の基本的人権を侵害する者であり、それには「合理的配慮の否定を含む」とあるように、合理的配慮を提供しないことも含まれています。これが障害者差別解消法では、以下のように

(行政機関等における障害を理由とする差別の禁止)
第七条 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。
2 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。

 

「障害を理由とする差別」は以下のように区別して整理されています。「障害者の権利利益を侵害することとならないよう」とあるように合理的配慮の不提供が、障害者権利条約の考え方を受けて障害者の権利権益を侵害するものとして規定されているところは重要です。

  • 障害を理由とする不当な差別的取扱い
  • 合理的配慮の不提供

3. 障害者差別解消法における「障害者」とは

 では、「障害者」とは?ということになります。障害者基本法及び障害者差別解消法では、以下のように定義され、障害者手帳保持者に限定されません。また、障害は社会的障壁と相対することで生じるものとするいわゆる「社会モデル」の考え方に基づいた定義となっており、障害者差別解消法はこの「社会的障壁」の除去を目的としたものと言えます。

身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。(第二条)

 

医学モデルと社会モデル
医学モデル
機能障害機能障害(impairment)= 障害(disability)。つまり、機能障害(impairment)を障害(disability)の原因と見なす考え方
社会モデル
機能障害(impairment)×社会的障壁= 障害(disability)。つまり、機能障害(impairment)と社会的障壁(つまり、その機能障害に社会が対応できていない状況)が相対する時に障害(disability)が発生するという考え方

4. 障害者差別解消法によって具体的な措置が義務付けられている機関

 障害者差別解消法が障害者の権利の保障と実質的平等を確保するために各機関に義務付けている大きな柱が以下の4つです。

  • 障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止(第七条第一項、第八条第一項)
  • 環境の整備(事前的改善措置)(第五条)
  • 合理的配慮の提供(第七条第二項、第八条第二項)
  • 職員向け対応要領の作成・公開(第九条、第十条)
  •  

     上について具体的な措置を義務づけている対象は以下の通りです。

    • 行政機関等
      • 国の行政機関
      • 独立行政法人等
      • 地方公共団体
      • 地方独立行政法人
    • 事業者(商業その他の事業を行う者)

     
     そして、図書館は以下のように割り振られます。

    • 公共図書館:「地方公共団体」
    • 国立大学の大学図書館:「独立行政法人等」※
    • 公立大学の大学図書館:「地方独立行政法人」
    • 私立大学の大学図書館:「事業者」
    • 私立の図書館: 「事業者」
    • 学校図書館: 運営主体による

    ※国立大学法人は、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律施行令」によって「独立行政法人等」にあたることが規定されます。

     結論から申せば、上の4本柱は以下のように義務付けられています。

    (行政機関等)
    公共図書館
    公立大学図書館
    (行政機関等)
    国立大学図書館
    (事業者)
    私立大学図書館
    不当な差別的取扱いの禁止 義務 義務 義務
    環境の整備 努力義務 努力義務 努力義務
    合理的配慮の提供 義務 義務 努力義務
    対応要領の作成・公開 努力義務
    (設置主体である地方自治体全体に対する努力義務)
    義務
    (国立大学法人全体に対する義務)

    詳細はまた次回に。

    次回以降の更新予定
    障害者差別解消法と図書館サービス 2 -合理的配慮の考え方-
    障害者差別解消法と図書館サービス 3 -セットで考える合理的配慮、環境整備、そして、不当な差別的取扱いの禁止-
    障害者差別解消法と図書館サービス 4 -障害者差別解消法と図書館サービス-
    障害者差別解消法と図書館サービス 5 -(おまけ)障害者差別解消法に係る職員向け対応要領の作成と公開について-

    11月 11

    「ANSI/NISO Z39.86-2005 (R2012)(いわゆるDAISY 3)(2005年4月21日付承認)」の仕様の日本語訳を公開します。

    ANSI/NISO Z39.86-2005 (R2012)、いわゆるDAISY3の仕様の日本語訳を公開します。私自身のDAISY 3に対する理解のために個人的に訳したものであり、当然ですが、DAISY Consortiumの公式な日本語訳ではありません。また、翻訳の正確性、その内容について一切保証をするものではありません。ご注意ください。

     DAISY3については、DAISYの各バーションを紹介した以下のエントリをご参照ください。

    DAISY3には関連ドキュメントがまだあるので、これで十分というわけではないのですが、DAISY2.02はすでに翻訳済みで、EPUB3の仕様一式はIMAGEDRIVEさんが翻訳してくださっていますので、DAISYの各バージョンの日本語訳が一応、一通りそろったことになるのかな(DAISY AI(ANSI/NISO Z39.98-2012)は見なかったことにしてる、使われているのを見たことがないので…)。

    参考

    11月 02

    大学の障害学生支援室が著作権法第37条第3項の複製の主体に該当するかについての文化庁著作権課の見解

     著作権法第37条第3項では、著作権法施行令で定められた施設は視覚障害その他の理由で読書に困難のある人々のために著作者の許諾なく複製が行えるという権利制限が規定されています。大学については、著作権法施行令第二条第一項第一号ロにおいて、

    大学等の図書館及びこれに類する施設

    が複製の主体(著作権法第37条第3項に基づく複製が行える機関)として規定されています。

     大学図書館が複製の主体に含まれることは間違いありません。しかし、「これに類する施設」に何が該当するかという点です。

     現状として、視覚障害など障害のある学生のために著作物のテキストデータの作成は、ほとんどの大学で障害学生支援室のような学生支援部局が行っており、大学図書館でそれを行っているところは立命館大学図書館などのごく少数の例外を除き、ほとんどありません。

     大学図書館は著作権法第37条第3項の規定に基づいて著作物の複製が行えますが、障害学生支援室が、上の「これに類する施設」に該当するとは文字だけでは解釈できないために、障害学生支援室は、著作権法第30条に基づき、学生の私的複製(手足理論)という形でしか著作物を複製することしかできなかったのではないかと思います。この場合、学生の私的複製という形ですので、テキストデータを作成しても、製作を依頼した学生にしか渡すことしかできず、同じ著作物のテキストデータをリクエストした他の学生への提供も大学間で相互貸借や共同利用ができません。

     ちなみに、大学として、著作物のテキストデータ(「教材のテキストデータ化」)の作成をしているところは、以下の日本学生支援機構の平成26年度の調査によれば、89の大学が実施しています。

     各大学でどれだけの数が製作されているかまではこの調査ではわかりませんが、これだけの数の大学で製作したテキストデータの共同利用が進んでいないということは、非常にもったいないことだと思います。これについて、平成24年度に文部科学省が立ち上げた「障がいのある学生の修学支援に関する検討会」でも議論され、報告書でも言及されています。

     他の学生への提供も大学間で相互貸借や共同利著作権法第37条第3項に基づく複製であれば可能です。障害学生支援室が「これに類する施設」に該当する施設という解釈がはっきりすれば、各大学が作成したテキストデータなどの共同利用が一気に進む可能性があります。

     これについて、内閣府の障害者政策委員会の8月の会議で、障害者政策委員長である静岡県立大学教授の石川准先生の質問に回答する形で、文化庁著作権課が公に見解を示しました。議事録も公開されるはずですが、動画は公開されており、それを確認することができます。障害学生支援室が全て含まれるというわけでもなさそうですが、大学図書館の趣旨に合致するものが含まれるという見解です。該当部分のテキストを起こしてみました(一字一句すべてが正確というわけではないので、ご注意を)。

    障害者政策委員会 第25回動画 分割 2/2

    ※該当部分は、「第25回動画 分割 2/2の」58分33秒から1時間2分31秒。

    障害者政策委員長 石川准氏

    情報アクセシビリティと関係して、あるいは、教育とも関わってくる話ですが、著作権法の37条に関する点につきまして、文化庁著作権課にお聞きしたいのですけれども、政令で指定された機関が、視覚による読書に困難のある人々を対象として、著作物を複製することは、著作権者の許諾なしに認められる、というのがその37条の規定でありますけれども、その政令の中で大学の場合は、大学図書館がそのような機関として指定されております。ただし、現状の各大学における障害学生支援というのは、障害学生支援室といったところが中心になって行っておりまして、そこが例えば、視覚障害等あるいはディスレクシアの学生に対して著作物を電子データ化するといった作業も行っておりますけれども、これがそもそも著作権法第37条に基づく複製にあたるのかどうかということについて、各大学とも半信半疑、というところがございまして、したがって、共同利用、相互貸借みたいなこともできずにいるという状況がございます。それにつきまして、文化庁著作課としてのご見解、つまり、大学図書館等と書いてあって、障害学生支援室とは書いていないけれども、それも含むのか、あるいは、列挙型の規定となっているので、書いていないことは含んでいないのか、ということについて、この場を借りて、ご見解をいただけると有り難いと思います。

    文化庁著作権課課長補佐 秋山氏

    お問い合わせのありました著作権法37条3項の適用に関する部分ですけれども、同項の権利制限規定の適応のある主体に関しては政令で定める、ということになってございます。さきほどご説明いただいたとおりです。この政令でございますけれでも、著作権法施行令第二条第一項第一号ロにおきまして、この37条3項の規定の適用がうけられる主体として、「大学等の図書館及びこれに類する施設」と、このように定められてございます。ここにいう、「これに類する施設」といいますのは、大学図書館のように図書等の資料を備え置いて、学生に資料の貸出等の情報提供を行う機能、こういった機能を担う施設が想定されているものと解されるところでございまして、必ずしも名称が大学図書館となっていなくても、当然、その他のものが含まれるということは念頭に置かれているものと理解してございます。したがいまして、行政、私どもとしてまして、個々の事例への法令の適用関係について、個別に判断を申し上げる立場ではございませんけれども、ご質問のありましたのような、障害学生支援室といった名称を冠する組織につきましても、通常、上記の大学図書館のような趣旨に合致するものも多いと考えられますので、そうしたものにつきましては、基本的に「これに類する施設」に該当するというふうに解釈することもできるのではないかというふうに考えています。

    障害者政策委員長 石川准氏

    ありがとうございました。大変、明快なご回答をいただきまして、感謝いたします。

     

     障害者学生支援室のような学生支援部署も著作権法第37条第3項の複製の主体になりえる解釈を文化庁が公の場で議事録に残る形で示したことは大きいと思います。しかし、「大学図書館の趣旨に合致する」という条件めいたものがついていることが正直、わかりづらいところがありますね。情報提供だけすれば条件に合致するのか、資料も備えることがもとめられるのか。前者であれば、テキストデータ化をしているところは全て該当すると考えてよいように思いますが、後者の資料を備えることまで求められると該当するところはぐっと減る気がします。

    参考

    著作権法

    第三十七条  3  視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者(以下この項及び第百二条第四項において「視覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、公表された著作物であつて、視覚によりその表現が認識される方式(視覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この項及び同条第四項において「視覚著作物」という。)について、専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、当該視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該視覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者により、当該方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。

    著作権法施行令

    第二条  法第三十七条第三項 (法第八十六条第一項 及び第三項 並びに第百二条第一項 において準用する場合を含む。)の政令で定める者は、次に掲げる者とする。
    一  次に掲げる施設を設置して視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者(イ、ニ又はチに掲げる施設を設置する者にあつては国、地方公共団体又は一般社団法人等、ホに掲げる施設を設置する者にあつては地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人に限る。)
    イ 児童福祉法 (昭和二十二年法律第百六十四号)第七条第一項 の障害児入所施設及び児童発達支援センター
    ロ 大学等の図書館及びこれに類する施設
    ハ 国立国会図書館
    ニ 身体障害者福祉法 (昭和二十四年法律第二百八十三号)第五条第一項 の視聴覚障害者情報提供施設
    ホ 図書館法第二条第一項 の図書館(司書等が置かれているものに限る。)
    ヘ 学校図書館法 (昭和二十八年法律第百八十五号)第二条 の学校図書館
    ト 老人福祉法 (昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の三 の養護老人ホーム及び特別養護老人ホーム
    チ 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 (平成十七年法律第百二十三号)第五条第十一項 に規定する障害者支援施設及び同条第一項 に規定する障害福祉サービス事業(同条第七項 に規定する生活介護、同条第十二項 に規定する自立訓練、同条第十三項 に規定する就労移行支援又は同条第十四項 に規定する就労継続支援を行う事業に限る。)を行う施設
    二  前号に掲げる者のほか、視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人(法第二条第六項 に規定する法人をいう。以下同じ。)のうち、視覚障害者等のための複製又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの

    10月 10

    障害者差別解消法とウェブアクセシビリティ

     障害者差別解消法とウェブアクセシビリティについて。

     障害者差別解消法とか、合理的配慮については、以下をまずは以下のエントリをご覧ください。

     ウェブサイトのアクセシビリティの改善も、当然、障害者差別解消法の対象になりますが、基本的に障害者差別解消法でいうところの「環境整備」に該当するものになります。

     しかし、ウェブアクセシビリティに関係するケースでも、例えば以下のようなケースは合理的配慮の提供が求められるケースになるかと思います。

    • 特定のページについて、アクセシビリティに問題があり、障害者から改善を求められ、過度の負担なく改善できる場合(たとえば、テキストエディタでHTMLの編集をすれば改善する場合)
    • PDFや画像で提供されている特定のコンテンツについて、それではスクリーンリーダーで読み上げができないからと障害者からテキストデータの提供を求められた場合

     以下のような事例は、合理的配慮の提供がなされない場合、スクリーンリーダーユーザーを排除してしまっていることになり、民間事業者も禁止事項とされている障害を理由とする不当な差別的取扱いになってしまうかもしれない。

    • (あってはならないことだが)CAPTCHAのように画像による認証方法を用いていて、代替手段を提供していなかった場合

     このテーマについては、石川准先生が言うべきことおっしゃっているので、こちらをご参照ください。

    9月 30

    テレビ放送のバリアフリー化(視聴覚障害者向け放送の普及促進)の状況について

     子どもがいるとなかなか騒がしくて、テレビ放送を静かな環境でじっくり聞くことがなかなか難しいため、字幕表示をすることがよくあります。デジタル放送になって字幕表示が容易になり、NHKが聴覚障害者向けの字幕をがんばって提供していることは認識していたのですが、民法もドラゴンボールも仮面ライダーも生放送のニュース番組も字幕を提供していて、「あれ?以前からこんなに提供されていたっけ?」と思うことがたびたび。

     ということで、少し調べてみました。調べたといっても、総務省のサイトを調べただけですが、以下のページに情報が集約されています。

    公開されているもので最新のものは以下の平成25年度実績です。

     上から、聴覚障害者向けの字幕放送と手話、視覚障害者向けの音声解説の実績を以下に転載します。聴覚障害者向けの字幕放送はそれなりに提供されているようですが、聴覚障害者向けの手話と視覚障害者向けの音声解説は、まだまだこれからという状況のようです。

    聴覚障害者向け情報保障

    字幕放送

    平成25年度における字幕放送等の実績の概要は、以下のとおりです。(注1)(注1) マルチ編成を行っている場合には、放送時間は、チャンネルごとの放送時間を合計したもの。(テキスト版はこちら

    【字幕放送】(注2)(注3)

      「視聴覚障害者向け放送普及行政の指針」の普及目標の対象となる放送番組における字幕番組の割合(注4) 総放送時間に占める字幕放送時間の割合
    NHK(総合) 84.8% [+1.3ポイント] 72.3% [+4.4ポイント]
    NHK(教育) 63.2% [+7.9ポイント] 54.5% [+6.4ポイント]
    在京キー5局(注5) 95.5% [+2.2ポイント] 52.3% [+2.4ポイント]
    在阪準キー4局(注6) 94.1% [+2.1ポイント] 47.5% [+3.1ポイント]
    在名広域4局(注7) 89.2% [+4.5ポイント] 44.4% [-0.1ポイント]
    全国の系列ローカル局(在阪準キー4局及び在名広域4局を除く101社) 69.4% [+3.0ポイント] 38.1% [+2.0ポイント]

                                                     ※[ ]は対前年度比
    (注2) 各放送事業者における個別の字幕放送実績については別表2参照。
    (注3) 字幕放送の実施事業者数は、平成25年度において地上民放テレビ127社中125社(※オープンキャプションを含むと127社)。(平成24年度と同じ。)
    (注4) 2週間のサンプル週(平成25年5月27日(月)~6月2日(日)及び11月25日(月)~12月1日(日))における調査。
     普及目標の対象となる放送番組とは、7時から24時までの間に放送される番組のうち、次に掲げる放送番組を除くすべての放送番組をいう。

    • 技術的に字幕を付すことができない放送番組(例 現在のところ、複数人が同時に会話を行う生放送番組)
    • 外国語の番組
    • 大部分が器楽演奏の音楽番組
    • 権利処理上の理由等により字幕を付すことができない放送番組

    (注5) 在京キー5局:日本テレビ放送網(株)、(株)TBSテレビ、(株)テレビ朝日、(株)フジテレビジョン、(株)テレビ東京
    (注6) 在阪準キー4局:(株)毎日放送、朝日放送(株)、讀賣テレビ放送(株)、関西テレビ放送(株)
    (注7) 在名広域4局:中部日本放送(株)、東海テレビ放送(株)、名古屋テレビ放送(株)、中京テレビ放送(株)
         *平成26年4月1日より、(株)CBCテレビに免許承継

    手話放送

    【手話放送】(注11)(注12)

      総放送時間に占める手話放送時間の割合
    NHK(総合) 0.2% [±0.0ポイント]
    NHK(教育) 2.5% [±0.0ポイント]
    在京キー5局 0.1% [±0.0ポイント]
    在阪準キー4局 0.1% [±0.0ポイント]
    在名広域4局 0.1% [±0.0ポイント]
    全国の系列ローカル局(在阪準キー4局及び在名広域4局を除く101社) 0.1% [±0.0ポイント]

                                                    ※[ ]は対前年度比
    (注11) 各放送事業者における個別の手話放送実績については別表4参照。
    (注12) 手話放送の実施事業者数は、平成25年度において地上民放テレビ127社中86社。(平成24年度は90社。)

     

    視覚障害者向けの情報保障

    音声解説放送

    【解説放送】(注8)(注9)

      「視聴覚障害者向け放送普及行政の指針」の普及目標の対象となる放送番組における解説番組の割合(注10) 総放送時間に占める解説放送時間の割合
    NHK(総合) 9.8% [+0.4ポイント] 8.9% [+0.9ポイント]
    NHK(教育) 13.6% [+1.2ポイント] 12.0% [+0.1ポイント]
    在京キー5局 5.4% [+1.1ポイント] 2.0% [+0.5ポイント]
    在阪準キー4局 5.5% [+1.2ポイント] 2.0% [+0.4ポイント]
    在名広域4局 4.7% [+1.5ポイント] 1.7% [+0.5ポイント]
    全国の系列ローカル局(在阪準キー4局及び在名広域4局を除く101社) 3.3% [+0.8ポイント] 1.6% [+0.4ポイント]

                                                       ※[ ]は対前年度比
    (注8) 各放送事業者における個別の解説放送実績については別表3参照。
    (注9) 解説放送の実施事業者数は、平成25年度において地上民放テレビ127社中117社。(平成24年度と同じ。)
    (注10) 普及目標の対象となる放送番組とは、7時から24時までの間に放送される番組のうち、権利処理上の理由等により解説を付すことができない放送番組を除くすべての放送番組としている。
     なお「権利処理上の理由等により解説を付すことができない放送番組」とは次に掲げる放送番組である。

    • 権利処理上の理由により解説を付すことができない放送番組
    • 2か国語放送や副音声など2以上の音声を使用している放送番組
    • 5.1chサラウンド放送番組
    • 主音声に付与する隙間のない放送番組
    9月 29

    「障害を理由とする差別」が障害者の権利権益の侵害に該当するいうこと、それに合理的配慮の不提供も含まれることを規定した条約と国内法

     「障害を理由とする差別」が障害者の権利権益の侵害に該当するいうこと、それに合理的配慮の不提供も含まれることについて、障害者権利条約と国内法がどう規定しているかについて、少しまとめてみました。

     

    障害者の権利に関する条約(障害者権利条約) 第二条 定義

    「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。

     「障害に基づく差別」の定義ですが、「障害を理由とする差別」と同じと考えてよいと思います。ここでは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限で、あらゆる分野における障害者の人権を侵害する行為を「障害に基づく差別」と定義しています。それに「合理的配慮の否定を含む」と合理的配慮の不提供も人権侵害である「障害に基づく差別」と定義していることが重要です。

    障害者基本法

    (差別の禁止)
    第四条  何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない
    2  社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない。
    3  国は、第一項の規定に違反する行為の防止に関する啓発及び知識の普及を図るため、当該行為の防止を図るために必要となる情報の収集、整理及び提供を行うものとする。

     2011年に改正された障害者基本法の障害を理由とした差別を禁止した第四条です。国内法で初めて合理的配慮に言及したものです。ここでは、障害者権利条約を受けて、障害を理由として障害者の権利権益を侵害してはならないと第四条第1項で規定しています。そして、第四条第2項では、「前項の規定に違反することとならないよう」、つまり、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしないように、合理的配慮を提供しなければならないと規定しています。
     

    障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)

    (行政機関等における障害を理由とする差別の禁止
    第七条 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。
    2 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。

    (事業者における障害を理由とする差別の禁止
    第八条 事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。
    2 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。

     障害者差別解消法で、障害を理由とする差別の禁止を行政機関等(第七条)と民間事業者(第八条)に具体的に義務付けたものです。障害者権利条約で定義された「障害を理由とする差別(障害に基づく差別)」を障害差別解消法の第七条と第八条では、以下のように二つに分けて整理しています。

    • 障害を理由とする不当な差別的取扱い
    • 合理的配慮の不提供

     二つに分けたのは、合理的配慮の提供の義務付けが行政機関等と民間事業者で異なるからだと思いますが、いずれにしても、合理的配慮の不提供も「障害を理由とする差別」とし、合理的配慮を提供しないことが「障害者の権利利益を侵害」する行為であることを規定しています。

    9月 27

    勉強会で「障害者差別解消法と図書館サービス」というテーマで発表したスライド

     京都情報図書館学学習会 第227回(2015年9月25日)で、障害者差別解消法と図書館サービスというテーマで発表させていただいたので、そのスライド資料を公開用に一部編集して公開しました。


     

     テキスト版とhtml版は以下。

     テキスト版は情報保障のために事前に配布したものを上のスライドと同様に公開用に一部編集したものです。html版は、スクリーンリーダーで見出し単位(この場合はスライド単位)でスキップできる点ではこちらのほうが便利であろうと思い、事後に製作したものです。html版まで製作するのであれば、PowerPointではなく、HTMLベースのプレゼン用のフレームワークを使って発表してもよかったかもしれない。 

     今回の発表では、障害者差別解消法は、図書館に全く新しい義務を課すものではなく、図書館が行っている障害者サービスと同じ目的を持つものであり、むしろそれを支援するものであること、そして、そもそも図書館の障害者サービスは「すべての人に全ての資料とサービスを提供する」という図書館本来の使命に基づくものであるのだから、障害者差別解消法の施行が迫るこのタイミングで、図書館サービスという視点で改めて考えてみませんかということを言いたかったけど、正直、あまり整理されていなかったように思う。

     このテーマはもう少し整理したいところです。

     ところで、最後に余談として、乙武さんの以下の話を取り上げました。

     この話は、障害者差別解消法的にいろいろと考えるべき要素があります。概要をかいつまんで紹介すると。

    • 乙武さんが銀座のイタリアンレストランに予約をして夕食をとろうと試みる(車椅子を使用していることは事前に伝えていない)
    • レストランはエレベータが止まらない2階にある
    • レストラン側は乙武さんが車椅子を使用しているからと入店を拒否した

     車椅子だからと入店を拒否することは、おそらく障害者差別解消法で言うところの、民間事業者も禁止事項となる不当な差別的取扱いに該当するでしょう。しかし、エレベータが2階に止まらないということは、乙武さんは、自分もしくは同伴者でなんとかできなければ、レストラン側が合理的配慮を提供しなければ、入店はできない。しかし、合理的配慮の提供そのものは、民間事業者は努力義務となっているため、仮に入店そのものは拒否しなくても、店側が合理的配慮を提供しなければ、結局、乙武さんは入店できないことになってしまう。どう考えるべきか。
     
     おそらくは乙武さんが使用している車椅子は電動の車椅子でしょうから、非常に重くて男2人でも担いで階段に上るのは難しいのではないかと思います。できそうなのは、車椅子は1階に置いておいて、乙武さんを担いで2階に上がることですが、夕食の時間ということは、レストランそのものが非常に忙しい時間帯であり、合理的配慮を提供するだけの余裕がない可能性もあります。さあ、どうする。どうすれば、乙武さんがこのお店で食事ができないという事態をさけられたかということですが、ここでお互いが対立し、一方的にそれぞれが意見を言いあうよりは、建設的対話を重ねて問題の解決がはかれればよかったのかもしれません(このケースで問題になってしまっているのは、乙武さんが店側からそういう誠意を感じられなかったことによるところが大きいように思えます)。

     なお、いろいろと考える要素はありますが、払うべき合理的配慮というのは、個別具体的な対応ですので、当事者同士が納得するものが結論といえるものになると思います。その場に立ち会っていない第三者が論じても、それらしい意見は言えても、おそらくは正解といえる最終的な結論は出せないということは注意が必要かと思います。