日本学生支援機構が平成26年度「障害のある学生の修学支援に関する実態調査」の報告書を公開

 独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)が平成26年度「障害のある学生の修学支援に関する実態調査」の報告書を3月27日に公開しました。どのような障害のある学生がどれくらい在籍し、どのような支援を受けているか、各機関はどのような体制で支援を行っているのか、どのような設備を行っているのか、障害学生の卒業後の進路等が数量的に詳細に明らかにされています。

 「障害のある学生の修学支援に関する実態調査」は平成17年度から大学、短期大学、高等専門学校1,000校以上を対象に毎年行われています。

メタデータを電子書籍のアクセシビリティの議論の俎上にそろそろのせませんか

  2月19日に近畿視情協主催で「どうなる! 電子書籍のアクセシビリティ ~ だれにも使える「本」の実現をめざして」というイベントがありました。そこで登壇された大阪府立中央図書館の杉田正幸さんが、視覚障害者にとってもっとも使いやすい電子書籍書店は現状ではアマゾンのKindleストアではないかという話をされていました。
 

 しかし、そのアマゾンをして、合成音声による読み上げが可能かどうかの情報をきちんと提供できておらず、購入してダウンロードするまでは合成音声で読み上げできているのかわからないという状態が続いています。
 米国のAmazon.comは以下のようにきちんとメタデータとして提供しているのですが、
米国Amazon.comのメタデータにはText-to-Speechという項目がある。この写真ではその項目にEnabled(有効)という値が入っている
Amazon.com : Dead Wake: The Last Crossing of the Lusitania [Kindle Edition]
 
 日本のアマゾンは、以下のようになっており、メタデータとして提供していません。
日本のAmazon.co.jpには、米国Amazon.comのメタデータにあったText-to-Speech欄がない
マイクロフォーサーズレンズ FANBOOK [Kindle版] : Amazon.co.jp
 では、どこで合成音声に対応しているかを確認できるのかというと、画面上部の表紙画像が掲載されているところの
画面上部の表紙画像が掲載されている周辺に米印で次の文言が掲載されている。
以下の文言で判断するしかありません。

※この商品は固定レイアウトで作成されており、タブレットなど大きなディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。

 
 コミックに至っては上の文言すらなく、コミックは画像を用いた固定レイアウトなんだということを知らなければ、購入するタイミングで合成音声で読み上げることができるかどうかも判断することができません。
 なお、余談ながら、Amazon.co.jpでも洋書については米国のAmazon.comのメタデータをそのまま流用しているからなのか、合成音声の対応についてきちんとメタデータが提供されています、
Amazon.co.jpの洋書にはtext-to-Speech(テキスト読み上げ機能)欄がある
Amazon.co.jp: Dead Wake: The Last Crossing of the Lusitania 電子書籍: Erik Larson: Kindleストア
 ここでは、視覚障害者が比較的使いやすいとされるAmazon.co.jpのことばかり書いてしまいましたが、iBooksストア、google Play、楽天kobo、紀伊国屋書店などの他の電子書籍ストアでも状況は変わらず(あるいはもっとひどい)、この種のメタデータは提供されていません。
 電子書籍サービスを視覚障害者の方が利用するようになってきており、アクセシビリティに関するメタデータの提供は、未来の課題ではなく、現在進行形の問題だと思います。電子書籍ストアにはなるべく早く提供するようにして欲しいところです。
 また、ここでは合成音声による読み上げに関するメタデータを問題にしましたが、メタデータとして提供するべき語彙は他にもいろいろとあるはずです。電子書籍のアクセシビリティについての議論はいろいろなところでされているようですが、国内でアクセシビリティの観点からメタデータについて議論されていることをあまり聞いたことがありません。アクセシビリティについてどのような情報をメタデータとして提供するべきかという議論をそろそろ日本でも行うべきではないでしょうか。電子書籍そのものに格納されるメタデータと、電子書籍ストアのウェブサイトで提供されるべきメタデータ、それぞれについて。

関連エントリ

図書館の「障害者サービス」の英訳

 図書館の「障害者サービス」の英訳について。 “library service for “の後に「障害者」に当たる言葉にどの単語を使うべきかという話で、「障害」を意味する単語の”impairment”、”disability”、”handicap”のどれを使うべきかという話です。
 結論は実は出ていて、IFLAでは、いや、国際社会では、「障害者」という言葉に”persons with disabilities”などのように”disability”を用いるので、”library service for persons with disabilities”あるいは、”library service for the disabled”と訳せばよいのだと思う。結論そのものは迷いはないのですが、考え方としてどうなのだろうと思った次第。
 
 それぞれの意味は以下のエントリで触れた通りです。

 視覚障害に当てはめるならば、以下のとおりです。
(1)impairment(機能障害)
例: 目という機能に障害があること
   ↓
(2)disability(能力障害)
 例:目が見えないために墨字を読むという能力に障害があること墨字(インクで書かれた文字)を読めないこと。
   ↓
(3)handicap(社会的不利)
例:字で書かれた情報を得られないために社会的な不利を得がちだということ
  
 図書館の障害者サービスは、「障害者」を対象とする対象別のサービスではなく、図書館の全ての資料をすべての利用者に利用できるようにする、資料の利用に困難が利用者がいるなら、その利用者の困難を取り除くというのが図書館における障害者サービスです。だから、録音図書も提供するし、対面朗読サービスも提供しているのですが、障害者サービスをこの意味で考える場合、”library service for the handicapped”は矛盾しています。なぜなら、ここでの”the handicapped”は図書館利用において不利を得ている方ということになり、障害者サービスはそういう方を生じさせないサービスなのだからと。
 なので、handicapという言葉は用いず、disabilityという言葉を用いているのだろうか。
 
 なお、impairmentを用いないのは、昨今の「障害者」の定義が医学モデルではなく、社会モデルでされているからかと思う。
 以上、つらつらと思ったことでした。