今回はミツエーリンクスさんのブログのエントリ「アクセシビリティに影響を及ぼした10の出来事」で紹介されていたGlobal Public Inclusive Infrastructure (GPII)を紹介します。スイスに拠点をおく国際団体Raising the Floor (RtF)によって進められているコンピュータやウェブ、プラットフォームのインターフェイスをクラウドベースでよりアクセシブルにするプロジェクトです。
Global Public Inclusive Infrastructure (GPII)
http://gpii.net/
GPIIは標準的なデバイスのインターフェイスでの利用に困難を感じる人たちのために、いつでもどこでもどんなデバイスを使用していても、その標準的なインターフェイスをクラウド経由で各ユーザーに最適化されたアクセシブルなインターフェイスに変換して提供することを目的としています。
以下の動画がGPIIの概要を非常にわかりやすく紹介しています。
上の動画に使用されているイメージをお借りしてGPIIのインターフェイス変換の仕組みを紹介すると以下のようになるようです。開発途上のようですので、あくまでイメージです。
ユーザーに最適化されたインターフェイスへの変換は以下の3つの機能をもったシステムを連携させることで実現されます。黄色がユーザー情報を格納する機能を受け持ち、緑色が様々な支援技術機能を格納する機能、オレンジ色が様々なデバイスの情報を格納する機能を受け持ちます。
まずユーザーは、自分自身に適したインタフェースをGPIIのクラウドサーバーにウィザードを用いて登録します。これは上の黄色部分のシステムに登録されます。登録されたパーソナルプロファイルは、インターフェイスのパーソラナイズに使用されます。
実際にデバイスのインターフェイスの変換を行うフローは以下になります。
GPIIのサーバーにアクセスするとまずは黄色部分のシステムにつながります。そこでユーザーが登録したパーソナルプロファイル情報を取得します。
パーソナルプロファイル情報を取得したら、引き続き様々な支援技術機能を格納するサーバー(緑色)に引き継がれます。ここにはアクセシビリティ開発者が様々なニーズに応えるために開発した様々な支援技術が格納されています。この緑色部分に格納された様々なツールを用いてユーザーに適した形式に変換します。テキストを音声に変えたり、テキストを点字に変換するような機能をここで担ったりするのでしょうか?
緑色部分のシステムでユーザーが求めるインターフェイスに適した形式に変換したら、次はオレンジ色部分のシステムに渡されます。ここでは、様々なデバイスに関する情報を格納されていますので、デバイス情報を取得します。
最終的にユーザーとデバイスに最適化されたインターフェイスに変換してユーザーのデバイスに戻します。便宜上、インターフェイスという言葉を用いていますが、もちろん見た目の表面的なものだけではなく、インターフェイスから提供される情報も変換して渡されるのだろうと思います。
Global Public Inclusive Infrastructure (GPII)の「基盤(Infrastructure )」という言葉が意味するように、GPIIはアクセシブルなインターフェイスに変換する新技術を開発してそれを提供しようというよりは、その下の部分、つまり、支援技術をユーザーに提供するために必要な基盤になることを志向しています。GPIIが基盤となり、その上で支援技術をのせることで、支援技術の独自開発が必要な部分を減らし、さらには各技術の相互運用性を向上させる。そうすることで、多種多様な支援技術の開発を促し、それを手頃な価格でクラウド経由であらゆる場所に行き渡らせる。そんなことを目指しているようです。
GPIIの支援技術開発支援の一例ですが、GPIIは容易かつ低コストに支援技術を開発するツールなどを開発者に提供することで、開発のハードルを下げ、様々なツールの開発を促そうとしています、さらに開発した支援技術を世界中に行き渡らせるためのプラットフォームも用意するそうです(それが緑色部分のシステム)。
対象となる「あらゆるデバイス」には空港の発券機や飛行機の座席の背面に据え付けてあるモニタなど公共の場で使用されている据え付けの機器も含まれているようです。これが実現できたら本当に凄いことです。
一番優れたUIとは何か、という議論に結論が出るとは思えませんが、個々のユーザーとそのユーザーが使用するデバイスに最適化されたUIは、この種の議論の究極に近いところの答えの1つではないかと思います。