読書バリアフリー法基本計画に著作権法第37条第3項における大学の障害学生支援室の位置づけについて記述がある

 2015年に以下のエントリで大学の障害学生支援室が著作権法第37条第3項の複製の主体に該当するかについて、障害者政策委員会の議事録を参照する形で文化庁著作権課の見解を紹介しました。

 その後の動きとして、2020年7月に国が策定した読書バリアフリー法基本計画において、著作権法第37条第3項における大学の障害学生支援室の位置づけについて記述触れられています。「Ⅲ 施策の方向性」 >「1.視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等(第9条関係)」>「(2)円滑な利用のための支援の充実」(PDF版で10ページ)の以下の部分です。

④全国の大学等の障害学生支援を担う施設は、大学図書館に類する役割や機能を有する施設であれば、著作権法施行令(昭和45年政令第335号)において視覚障害者等のための複製が認められる者として位置付けられていることについて大学等に周知するとともに、大学等の図書館と学内の障害学生支援担当部局等の関係部局との情報共有を促進し、相互の連携を強化する。

 解釈は2015年の障害者政策委員会での文化庁の見解と全く変わっておらず、「大学図書館に類する役割や機能を有する施設であれば」という条件がついています。どのような要件を満たせば、この条件をクリアできるのかはっきりしないため、障害学生支援室で第37条第3項複製を行うことに躊躇するところ多いのではないかと思います。少なくとも統一の基準がない状況では支援室で障害学生を対象に製作されたデータの共有はなかなか難しいのかな…。

米国の大学におけるKindle DX訴訟(2010年)関係ふりかえり

 これは、 アクセシビリティAdvent Calendar 2020の16日目のエントリです(えっ?)。かなり古い事例紹介になりますが、障害当事者団体による米国の障害を持つアメリカ人法(Americans with Disabilities Act of 1990 : ADA) を根拠にアクセシビリティの担保を米国の大学に求める動きの1つとして、2010年前後のKindle DX訴訟をめぐる動きを少しふりかえります。

 2009年に米国の大学がKindle DXを授業で導入しようと試みた際に、視覚障害者団体がアクセシビリティが十分に担保されていないKindle DXを授業で用いることは問題であると訴えた事例です。詳細は以下に詳しいのですが、最終的に和解にいたり、大学はKindle DXの導入を見送っています。

 これを発端として、2010年に司法省と教育省が連名で米国の全大学の学長宛に通知(”Dear College or University President(June 29, 2010)“)を出しました。最新のICT機器やICT技術を導入する際は、障害学生が持つ全ての授業を受ける権利を侵害しないように留意しないと、ADAやアクセシビリティ基準を準拠したものの調達を政府に求めるリハビリテーション法508条に違反することになると大学に伝える内容になっています。

 上の通知に対して、大学からの問い合わせが多かったのか、教育省は2010年通知の趣旨を明確にするためにFAQの形式で追加の通知を再度2011年に出しています。FAQでは、15の設問が用意されていますが、このFAQで、最新のICT機器やICT技術の導入そのものを否定するものではないこと(ただし、アクセシビリティの担保を求めている)、先の通知が電子書籍に限るものではなく、オンラインコースやその他のオンラインコンテンツなど幅広いものが対象になることなどが質問に対する回答の形で説明されています。問9で現時点では障害学生が在籍していない場合も、将来の障害学生が持つ全ての授業を受ける権利に保障する必要があるため、最新のICT機器やICT技術を導入する際は、アクセシビリティの担保に留意する必要があることをADAとリハビリテーション法504条(508条ではなく)は求めているとはっきり書いてある点、アクセシビリティの法制化の強さを感じます。

 なお、障害者または障害当事者団体が米国の大学に対してアクセシビリティの担保による機会保障を求めた事例が以下に集約されています。上の通知だけでは、補いきれない部分が当然あるのだと思いますが、その後も事例が積み上げられていったようです(数がすごい・・・)。