EPUB を アクセシブルにする13のTIPS(AAP EPUB 3 Implementation Project 報告書より)

 先のエントリで紹介した米国の出版団体 Association of American Publishers (AAP) のEPUB 3 Implementation Project 報告書には、 EPUB を アクセシブルにする13のTIPSが掲載されています。

 DIAGRAM Centerの”Top Tips for Creating Accessible EPUB 3 Files “をベースにまとめられたものです。今回は、どのようなものがTIPSとしてまとめられれているか、その概要を紹介します。
  
 なお、以下でそれぞれのTIPSの参考に挙げているものは、基本的に報告書で参考資料として紹介されたものですが、私が参考資料として挙げたものを含まれています(私が挙げたものは【追加】と記載してあります)。

1. コンテンツと表現を分ける
  Separate content and presentation

 スタイルや書式が適用されている状態とされていない状態でコンテンツの意味が異なってはいけない。色づけされたテキスト、フォントサイズによって重要性を伝えるなどのような、視覚表現にのみに頼る方法はグッドプラクティスとは言えない。
 また、全てのテキストは、論理的順序(人間が読んで自然な順序)で利用できることが重要である。

参考

2. 完全なナビゲーションを提供する
  Provide complete navigation

 本文の前に完全な目次をつける。そして、各セクションのはじめも小さな目次をつけることも検討する。
 論理的順序(人間が読んで自然な順序)を定義するために<section>、<figure>、<aside>タグをコンテンツの中で使用するのもベストプラクティスである。特に学術、教育、そして、児童書のような複雑で視覚的なレイアウトを用いたコンテンツには重要である。 

3. 可能なかぎり意味のある構造にする
  Create meaningful structure wherever possible

 論理的な構造に番号が付された見出しをもちいた構造にする。また、その他のタグもepub:type属性を用いてコンテンツを指定する。
 例:前書きところに<section epub:type=”preface”>
  なお、HTML5の仕様に特定のコンテンツに使用されることが規定されているタグ(引用のために用いる <cite>タグなど)はHTML5の仕様に準じて使用する。

参考

4. コンテンツ内のタグにセマンティックな情報を追加する
  Define the content of each tag

  EPUB 3 Structural Semantics Vocabularyなどの語彙を活用してコンテンツ内のタグにセマンティックな情報を追加することを検討する。
 
例:
目次に使用されるsectionタグ:<section epub:type=”toc”>
用語集に使用されるdlタグ:<dl epub:type=”glossary”>
 

5. 表やテキストを表示するためではなく、絵や写真のためだけに画像を使用する
  Use images only for pictures, not for tables or text

 画像に埋め込まれた情報を視覚障害者は利用できない。表や画像にテキストコンテンツが含まれているならば、テキストと表形式のための適切で完全なマークアップをすることが重要である(header要素やscope属性を用いるなど)。
もし表の表示に画像を用いることが避けられないならば、表形式の適切にマークアップされた別のページを用意して、そのページへのリンクを掲載する。 
 もしテキストの表示に画像を用いることが避けられないならば、テキストの内容を説明したものか、テキストを書き起こしたものを提供することが重要である。また、アクセシブルなSVG形式の画像を使用することが重要である。

6. 画像に説明と代替テキストをつける
  Use image descriptions and alt text

 装飾目的の画像でないかぎり、全ての画像に、説明やキャプションや代替テキストが付されているべきである。

参考

7. ページ数をいれる
  Include page numbers

 コンテンツが紙版の書籍と同じである場合は、紙版の書籍でページが改める位置にepub:type=”pagebreak”属性で例えば以下のようにページ数を記述する。
例: <span xml:id=”page361″ epub:type=”pagebreak”>361</span>
 
 さらにPackageドキュメントで提供するEPUB書籍のメタデータに紙版の書籍のISBNを記述しておくとベストである。.

参考

8. 言語を指定する
  Define the language(s)

 支援技術が正しく理解できるようにコンテンツに使用されている言語情報を提供する。
 ルートとなるhtml要素にはコンテンツのデフォルトの言語を指定した上で、デフォルトの言語と異なる部分については、@xml:lang属性を用いて単語、フレーズ、パラグラフ単位で以下のように指定する。
例: <span xml:lang=”fr” lang=”fr”>rueSaint-Andre-des-Arts</span>

参考

 

9. MathMLを使用する
  Use MathML

  数式を記述するためのマークアップ言語MathML(Mathematical Markup Language) で数式を記述する。

参考

10. メディアコンテンツの代替物を提供する
  Provide alternative access to media content

 映像コンテンツや音声コンテンツに対するHTML5のネイティブコントロールを初期設定の段階で有効にする。
 映像コンテンツや音声コンテンツには、キャプション、映像に対する説明、音声を書き起こしたものなどような代替コンテンツを提供することが重要である。
 聴覚障害者にとってや、手話を提供されることも重要である。

参考

11. インタラクティブなコンテンツをアクセシブルに
  Make interactive content accessible

 JavaSciptやSVGを用いたインタラクティブなコンテンツをアクセシブルにするために、すべてのカスタムコントロールに、ARIAのロール(role)、ステート(state)及び属性を必要に応じてすべて実装するべきである。

参考

 

12.アクセシビリティの情報をメタデータとして提供する
  Use accessibility metadata

 コンテンツのファイルの中でアクセシビリティに関する情報をメタデータとして提供して、ユーザーがそのコンテンツがアクセシブリティについてどのような機能をもっているのかわかるようにしたり、検索エンジンがアクセシブルなコンテンツを発見できるようにする。

参考

13. 以上のベストプラクティスを組織がサポートする体制にする
  Make sure your processes support the above best practices

 以上の1から12のベストプラクティスを組織がサポートできる体制をするためのTIPSが(以下)が13番目のTIPSとして紹介されています。

  • アクセシビリティについて、内部の人間と外部の人間の間を結ぶコミュニケーションのルートとして動ける人間を組織内に置く。
  • アクセシビリティを、自社製品やマーケティングなどの核となる価値をするために企業レベルの継続的な努力を開始する。
  • アクセシビリティガイドラインを作成した上でそれを実施し、著者向けに研修を行う。
  • アクセシビリティガイドラインを作成した上でそれを実施し、編集スタッフと製作スタッフむけに研修を行う。
  • ベンダーとアクセシビリティの問題とスタンダードについて議論する。
  • 品質保証管理のプロセスにアクセシビリティの観点からのレビューを含める。
  • ウェブサイトやマーケティング資料にアクセシビリティ情報を追加する。
  • アクセシビリィに対する意識をもたせるためのカスタマーサービスセンタースタッフ向けの研修を行う。

参考

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