指でなぞった印刷媒体の箇所を読み上げるウェラブル端末"FingerReader"をMIT Media Labが開発

MIT Media Labが印刷媒体の指でなぞった箇所を読み上げてくれるウェラブル端末”FingerReader”を開発しました。

FingerReader | Fluid Interfaces

 以下は紹介動画です。視覚障害の方のために開発したとのことですが、ディスレクシアや発達障害の方が使っても有用な端末ではないかと思いました。また、印刷媒体を用いて電子書籍でできるようなこと、たとえば、辞書を引く、SNSに投稿する、コメントを残すなんてこともこれを使えばできるのではないでしょうか。

FingerReader – Wearable Text-Reading Device from Fluid Interfaces on Vimeo.
参考

漫画の「音訳」(まんがDAISYの話)

「音訳」(おんやく)とは、文字情報や図表などの視覚情報を聴覚情報、つまり、音声に忠実に置き換える行為で、具体的には紙媒体の図書や雑誌をDAISYやテープという形式によって録音図書や録音雑誌にすることなどを指しています。視覚障害者等のための情報保障の手段の1つです。
 いわゆる「朗読」とよく混同されますが、視覚情報を忠実に音声に置き換えることが求められますので、本文のテキスト情報だけではなく、図や表、写真のような非テキスト情報に対してはその説明をする必要があります。また、同音異義語・記号等、文字、略称をただそのまま読んだのでは意味が正しく伝わらないものがありますので、意味がわかるよう、必要に応じて説明をつける、1文字ずつ読む、略称を元のフルネームに戻して読んだり等々を行う必要があります。繰り返しますが、視覚情報を忠実に聴覚情報に変換することが求められますので、誤読のないように読むことが求められます。日本語だと、漢字の読みの問題がありますので、読みの調査を含めた事前の調査が欠かせません。その資料の分野の知識をある程度を知っていなければ、これらの調査を行うこともできませんから、対象資料の専門性が高くなればなるほど難易度は高くなっていきます(例えば、医学系の書籍に掲載された画像に説明をつけることを想像していただけば・・・)。

 前置きが長くなってしまいました。ここからが本題漫画の音訳についてです。
 視覚情報を忠実に音声に置き換えることが求められる音訳ですが、対象が漫画になるとどうなるかという話を少々。漫画の音訳について日本ライトハウス情報文化センター「ワンブックワンライフ」で少し紹介されています。

近畿視情協録音製作委員会では、昨年から各施設がまんがの音訳に取り組んでいけるよう、読み方の要点や製作作業の流れなどを整理してきました。今回の録音分科会では、この報告がなされた後、まんが表現の基本について学びました。
まんが音訳は、絵と文字で表現されたものを音声化します。文章の読み上げと絵の説明の順序、絵の描写の説明の仕方(音訳者により個人差がある)、コマの変わり目やページの変わり目の案内方法など、さまざまな工夫が必要になります。説明が多すぎるとストーリーの流れが損なわれますし、少ないと内容が理解できにくくなるため、バランスが大切です。
 報告では利用者の感想も発表され、まんがの音訳に対する期待感が伝わってきました。また、10年以上前からまんが音訳に取り組んでいるグループN-BUNの方々にもお話を伺いました。原本から文章を抜き出し、絵の説明などを加えた「シナリオ原稿」を作成してから録音することなど、実際の作業について説明されました。
 後半の講義では、花園大学の畑先生による「まんがの読み方」の講義があり、まんが表現の基本について説明を受けました。まんがの紙面には「重要な情報」と「背景的な情報」があること。それらを判別するには、コマの位置や、コマ内部のレイアウトが関係していること。具体的には、ページがめくられる前後のコマが重要であることや、コマの内部では台詞と台詞の間(視線の通り道)に人物(表情)が描かれており、これらは重要な情報。それ以外の視線から外れやすいものなどは背景的な情報であることが多いなど、非常に興味深いお話でした。
 まんが表現の基本を学ぶことで、音訳の際、優先して伝えるべき情報が把握しやすくなり、聴きやすい録音図書の製作につながります。今後も各施設・団体で協力し、まんが音訳の基本ルールを作っていければよいと思いました。
from 日本ライトハウス情報文化センター「ワンブックワンライフ」2014年2月号

 他のジャンルの資料と同じような詳細な説明を漫画の絵に対して付すと、コマのテンポを損ねてしまうかもしれない。しかし、逆に説明を省きすぎると必要なコマの状況が伝わらない。コマの大きさにも意味がありますので、コマ割りをどのように音訳で表現するべきか。セリフの読み上げと絵の説明はどういう順序で行うべきか。擬音などの漫画独特の表現方法をどう音訳するか。などなど漫画ならではの苦労があるようです。
 ウェブや「サピエ図書館」を調べるとまんがDAISYを製作している機関はすでにいくつかあるようです。「ワンブックワンライフ」を読むかぎりまだまだ試行錯誤の段階なのかもしれません。漫画の音訳について詳しく知りたい。

第3次障害者基本計画(平成25年9月閣議決定)

 国は、障害者基本法に基づき、障害者施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、障害者基本計画を定めています。この障害者基本計画は、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の総合的かつ計画的な推進を図るために策定されるもので、政府が講ずる障害者のための施策の最も基本的な計画として位置付けられています。平成25年9月閣議決定された第3次障害者基本計画は平成25(2013)年度から29(2017)年度までの概ね5年間を対象としています。

 この計画、国の障害者を対象とする施策の基本となるだけに、どの項目の動向も追っていかねばならないところですが、特に施策の動向が気になるのは以下でしょうか。そのほか、エントリが長くなるので、以下には挙げませんでしたが、「7.安全・安心 (1)防災対策の推進」、「10.国際協力」も気になるところです。

(3) 高等教育における支援の推進
○ 大学等が提供する様々な機会において,障害のある学生が障害のない学生と平等に参加できるよう,授業等における情報保障やコミュニケーション上の配慮,教科書・教材に関する配慮等を促進するとともに,施設のバリアフリー化を推進する。3-(3)-1
○ 大学入試センター試験において実施されている障害のある受験者の配慮については,障害者一人一人のニーズに応じて,より柔軟な対応に努めるとともに,高等学校及び大学関係者に対し,配慮の取組について,一層の周知を図る。3-(3)-2
○ 障害のある学生の能力・適性,学習の成果等を適切に評価するため,大学等の入試や単位認定等の試験における適切な配慮の実施を促進する。3-(3)-3
○ 入試における配慮の内容,施設のバリアフリー化の状況,学生に対する支援内容・支援体制,障害のある学生の受入れ実績等に関する各大学等の情報公開を促進する。3-(3)-4
○ 各大学等における相談窓口の統一や支援担当部署の設置など,支援体制の整備を促進するとともに,障害のある学生への修学支援に関する先進的な取組を行う大学等を支援し,大学等間や地域の地方公共団体,高校及び特別支援学校等とのネットワーク形成を促進する。3-(3)-5
○ 障害のある学生の支援について理解促進・普及啓発を行うため,その基礎となる調査研究や様々な機会を通じた情報提供,教職員に対する研修等の充実を図る。3-(3)-6

(4) 文化芸術活動,スポーツ等の振興
○ 障害者が地域において,文化芸術活動,スポーツに親しむことができる施設・設備の整備等を進めるとともに,障害者のニーズに応じた文化芸術活動,スポーツに関する人材の養成等の取組を行い,障害の有無にかかわらず,文化芸術活動,スポーツを行うことのできる環境づくりに取り組む。特に,障害者の芸術活動に対する支援や,障害者の芸術作品の展示等を推進するための仕組みを検討し,推進を図る。3-(4)-1
○ 国立博物館,国立美術館,国立劇場等における文化芸術活動の公演・展示等において,字幕や音声案内サービスの提供等,障害者のニーズに応じた工夫・配慮が提供されるよう努める。3-(4)-2
○ 障害者芸術・文化祭や全国障害者スポーツ大会の開催を通じて,障害者の文化芸術活動,スポーツの普及を図るとともに,民間団体等が行う文化芸術活動,スポーツ等に関する取組を支援する。特に,身体障害者や知的障害者に比べて普及が遅れている精神障害者のスポーツの振興に取り組む。3-(4)-3
○ パラリンピック,デフリンピック,スペシャルオリンピックス等への参加の支援等,スポーツ等における障害者の国内外の交流を支援するとともに,パラリンピック等の競技性の高い障害者スポーツにおけるアスリートの育成強化を図る。3-(4)-4
○ 聴覚障害者及び視覚障害者が映画を楽しむことができるよう,関係団体等の協力の下,日本語字幕の付与や音声ガイドの制作等のバリアフリー映画の普及に向けた取組を推進する。3-(4)-5

6.情報アクセシビリティ
【基本的考え方】
 障害者が円滑に情報を取得・利用し,意思表示やコミュニケーションを行うことができるように,情報通信における情報アクセシビリティの向上,情報提供の充実,コミュニケーション支援の充実等,情報の利用におけるアクセシビリティの向上を推進する。
(1) 情報通信における情報アクセシビリティの向上
○ 障害者の情報通信機器及びサービス等の利用における情報アクセシビリティの確保及び向上・普及を図るため,障害者に配慮した情報通信機器及びサービス等の企画,開発及び提供を促進する。6-(1)-1
○ 研究開発やニーズ,情報技術の発展等を踏まえつつ,情報アクセシビリティの確保及び向上を促すよう,適切な標準化(日本工業規格等)を進めるとともに,必要に応じて国際規格提案を行う。また,各府省における情報通信機器等(ウェブコンテンツ(掲載情報)に関するサービスやシステムを含む。)の調達は,情報アクセシビリティの観点に配慮し,国際規格,日本工業規格への準拠・配慮に関する関係法令に基づいて実施する。6-(1)-2
○ 国立研究機関等において障害者の利用に配慮した情報通信機器・システムの研究開発を推進する。6-(1)-3
○ 障害者に対するIT(情報通信技術)相談等を実施する障害者ITサポートセンターの設置の促進等により,障害者の情報通信技術の利用及び活用の機会の拡大を図る。6-(1)-4
(2) 情報提供の充実等
○ 身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律(平成5年法律第54号)に基づく放送事業者への制作費助成,「視聴覚障害者向け放送普及行政の指針」に基づく取組等の実施・強化により,字幕放送(CM番組を含む),解説放送,手話放送等の普及を通じた障害者の円滑な放送の利用を図る。6-(2)-1
○ 聴覚障害者に対して,字幕(手話)付き映像ライブラリー等の制作及び貸出し,手話通訳者や要約筆記者の派遣,相談等を行う聴覚障害者情報提供施設について,情報通信技術(ICT)の発展に伴うニーズの変化も踏まえつつ,その整備を促進する。6-(2)-2
○ 身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律に基づく助成等により,民間事業者が行うサービスの提供や技術の研究開発を促進し,障害によって利用が困難なテレビや電話等の通信・放送サービスへのアクセスの改善を図る。6-(2)-3
○ 電子出版は,視覚障害や学習障害等により紙の出版物の読書に困難を抱える障害者の出版物の利用の拡大に資すると期待されることから,関係者の理解を得ながら,アクセシビリティに配慮された電子出版の普及に向けた取組を進めるとともに,教育における活用を図る。6-(2)-4
○ 現在の日本銀行券が,障害者等全ての人にとってより使いやすいものとなるよう,五千円券の改良,携帯電話に搭載可能な券種識別アプリの開発・提供等を実施し,券種の識別性向上を図る。また,将来の日本銀行券改刷が,視覚障害者にとり券種の識別性の大幅な向上につながるものとなるよう,関係者からの意見聴取,海外の取組状況の調査等,様々な観点から検討を実施する。6-(2)-5
○ 心身障害者用低料第三種郵便については,障害者の社会参加に資する観点から,利用の実態等を踏まえながら,引き続き検討する。6-(2)-6
(3) 意思疎通支援の充実
○ 障害のため意思疎通を図ることに支障がある障害者に対して,手話通訳者,要約筆記者,盲ろう者向け通訳・介助員等の派遣,設置等による支援を行うとともに,手話通訳者,要約筆記者,盲ろう者向け通訳・介助員,点訳奉仕員等の養成研修等の実施により人材の育成・確保を図り,コミュニケーション支援を充実させる。6-(3)-1
○ 情報やコミュニケーションに関する支援機器の開発の促進とその周知を図るとともに,機器を必要とする障害者に対する給付,利用の支援等を行う。6-(3)-2
○ 意思疎通に困難を抱える人が自分の意志や要求を的確に伝え,正しく理解してもらうことを支援するための絵記号等の普及及び利用の促進を図る。6-(3)-3
(4) 行政情報のバリアフリー化
○ 各府省において,障害者を含む全ての人の利用しやすさに配慮した行政情報の電子的提供の充実に取り組むとともに,地方公共団体等の公的機関におけるウェブアクセシビリティの向上等に向けた取組を促進する。6-(4)-1
○ 災害発生時に障害者に対して適切に情報を伝達できるよう,民間事業者等の協力を得つつ,障害特性に配慮した情報伝達の体制の整備を促進する。6-(4)-2
○ 政見放送への手話通訳・字幕の付与,点字又は音声による候補者情報の提供等,障害特性に応じた選挙等に関する情報の提供に努める。6-(4)-3
○ 各府省において,特に障害者や障害者施策に関する情報提供及び緊急時における情報提供等を行う際には,知的障害者等にも分かりやすい情報の提供に努める。6-(4)-4

 なお、平成24年度までの施策の進捗状況は以下で公開されています。