日本時間で8月21日にWeb Annotation Working GroupがW3CのDigital Publishing Activityの下に設置されました。早くて9月と聞いていたので思ったよりも早かったですね。
- W3C Web Annotation Working Group
- Web Annotation Working Group Charter
- Web Annotation WG Launched! from Doug Schepers on 2014-08-20 (public-openannotation@w3.org from August 2014)
<iframe src="https://www.w3.org/annotation/diagrams/annotation-architecture.svg" style="width:537.4px; height:269.4px; border:thin solid gray"> </iframe> <a href="http://www.w3.org/annotation/diagrams/annotation-architecture.svg" title="Show diagram full screen">図を拡大</a>
このWGは、Open Annotationという名の下に議論されていた「アノテーション」をW3C仕様にするためのWGといってよいものですが、Open Annotationの動向をずっと追っていた私としては、「ついにW3Cの仕様化のトラックにのったか!」と少々感慨深いところがあります。
Open Annotationについては、「日本よっ!これがOpen Annotationだっ!!」というエントリで一度詳しく紹介したことがありますので、詳しくこちらをご覧ください。このOpen Annotationの延長で、このWGで言うところの「アノテーション(annotation)」を少し紹介するならば、WGでのアノテーションは、英和辞典にある「注釈、注記、注解」よりかなり広い意味で用いられています。例えば、以下のような行動が「アノテーション」に含まれており、日本語で言うところの「注釈」の範囲を超えたものだとお分かりいただけるかと思います。オリジナルコンテンツの真正性を担保しつつ、別のレイヤーとしてオリジナルのコンテンツに付与する付加的な情報をアノテーションを呼んでいると私は理解しています。
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このWGで検討されることはWorking Group憲章に示されていますが、具体的には以下の仕様群を2016年7月までにW3C勧告にすることを目標としているようです。
- Annotation Abstract Data Model
→アノテーションの抽象データモデル - Vocabulary for the Annotation Abstract Data Model→データモデルを記述/定義する語彙
- Serializations of the Annotation Abstract Data Model
→JSON/JSON-LDなど抽象データモデル<のシリアライゼーションのためのフォーマット - HTTP API for Annotations
→アノテーションをHTTPを通じてアクセス、作成、編集、管理、検索などさせるためのAPI。つまり、サーバーサイドのAPI - Client-Side API for Annotations
→ブラウザや電子書籍ビュワーなどのリーディングシステムでアノテーションを作成するためのスクリプトインターフェイスとイベント。つまり、4と対になるクライアントサイドのAPIでしょうか - Robust Link Anchoring
→アノテーションのターゲットにリンクをはるためのメカニズム。テキストは位置をピンポイントで指定するのではなく、範囲を指定したリンクを、メディアはメディアの一部分についてリンクをはれるように。
1と2は、Community DraftであるOpen Annotation Data Model(非公式日本語訳)とOpen Annotation Extension Specificationがインプットとなるようです。Open Annotation Community Groupでは、アノテーションの記述に係るこの1と2の検討のみであったと認識していますが、WGでは3から6も検討されるということで、アノテーションのサーバーを介したやり取りやリンクのはり方など、アノテーションに関係するものがまとめて検討されるんですね。
アノテーションのユースケースについては、すでにEditor’s Draftが公開されています。
Annotation Working Groupの検討は、電子書籍かWebの文脈で理解されることが多いよう気もしますが、もともと米国の大学や研究機関が推進してきただけに、デジタルアーカイブへのアノテーションの付与もアノテーションのユースケースの主軸であろうと思います(アノテーションもつけられて、それが共有できるようにならないと、デジタルアーカイブの学術利用は難しいよね的な話が意訳すればあったようななかったような)。デジタルアーカイブに対してOpen Annotationなアノテーションをつけるプロジェクトは、このブログでもMaphubを紹介したことがありましたが、Open Annotation Collaborationのサイトをみるといくつかみつけることができます。
また、上のAnnotation Use Casesにあるとおり、アクセビリティ対応目的で補足情報をアノテーションとして提供することも想定されています。例えば、視覚障害者のために画像にそのの説明を録音した音声ファイルをアノテーションとして付与したり、聴覚障害者や音声を再生することができない環境にいるユーザーのためにビデオの内容を文字に起こしたものを付与するといったユースケースが想定されているようです。
EDUPUBの一環でEPUB in Open Annotationという仕様案もIDPFから公開されてますし、アノテーションがこれから熱くなりそう?