2月19日に近畿視情協主催で「どうなる! 電子書籍のアクセシビリティ ~ だれにも使える「本」の実現をめざして」というイベントがありました。そこで登壇された大阪府立中央図書館の杉田正幸さんが、視覚障害者にとってもっとも使いやすい電子書籍書店は現状ではアマゾンのKindleストアではないかという話をされていました。
しかし、そのアマゾンをして、合成音声による読み上げが可能かどうかの情報をきちんと提供できておらず、購入してダウンロードするまでは合成音声で読み上げできているのかわからないという状態が続いています。
米国のAmazon.comは以下のようにきちんとメタデータとして提供しているのですが、
Amazon.com : Dead Wake: The Last Crossing of the Lusitania [Kindle Edition]
日本のアマゾンは、以下のようになっており、メタデータとして提供していません。
マイクロフォーサーズレンズ FANBOOK [Kindle版] : Amazon.co.jp
では、どこで合成音声に対応しているかを確認できるのかというと、画面上部の表紙画像が掲載されているところの
以下の文言で判断するしかありません。
※この商品は固定レイアウトで作成されており、タブレットなど大きなディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。
コミックに至っては上の文言すらなく、コミックは画像を用いた固定レイアウトなんだということを知らなければ、購入するタイミングで合成音声で読み上げることができるかどうかも判断することができません。
なお、余談ながら、Amazon.co.jpでも洋書については米国のAmazon.comのメタデータをそのまま流用しているからなのか、合成音声の対応についてきちんとメタデータが提供されています、
Amazon.co.jp: Dead Wake: The Last Crossing of the Lusitania 電子書籍: Erik Larson: Kindleストア
ここでは、視覚障害者が比較的使いやすいとされるAmazon.co.jpのことばかり書いてしまいましたが、iBooksストア、google Play、楽天kobo、紀伊国屋書店などの他の電子書籍ストアでも状況は変わらず(あるいはもっとひどい)、この種のメタデータは提供されていません。
電子書籍サービスを視覚障害者の方が利用するようになってきており、アクセシビリティに関するメタデータの提供は、未来の課題ではなく、現在進行形の問題だと思います。電子書籍ストアにはなるべく早く提供するようにして欲しいところです。
また、ここでは合成音声による読み上げに関するメタデータを問題にしましたが、メタデータとして提供するべき語彙は他にもいろいろとあるはずです。電子書籍のアクセシビリティについての議論はいろいろなところでされているようですが、国内でアクセシビリティの観点からメタデータについて議論されていることをあまり聞いたことがありません。アクセシビリティについてどのような情報をメタデータとして提供するべきかという議論をそろそろ日本でも行うべきではないでしょうか。電子書籍そのものに格納されるメタデータと、電子書籍ストアのウェブサイトで提供されるべきメタデータ、それぞれについて。
全く同感です。あらゆるオンライン情報提供サービスに共通しますが、WEBのアクセシビリティは、言わば入口が開いているかどうかの問題で、実際に読みたいコンテンツが利用者それぞれにとってアクセシブルかどうかを検索段階で知ることができないと、多様な読書障害者(persons with print disabilities)に均等な情報アクセス機会を保障できません。コンテンツプロバイダーにはEPUB3準拠と言うだけでなく、オンライン図書館のメタデータ検索機能とそれを支えるコンテンツのアクセシビリティの完全な実装を強く望みます。
コメントありがとうございます。視覚障害者等が電子書籍を利用する現在、アクセシビリティメタデータの議論がなされなければならない時期だと思います。