全国手をつなぐ育成会連合会が立ち上げた「知的障害のある人の合理的配慮」検討協議会が「わかりやすい情報 提供のガイドライン」を2015年1月に公開しています。知的障害により文字を読んだり、読んだ内容を理解することに難しさをもつ人たちが、一般の人たちと同じように、さまざまな情報を得て、自分の生活を豊かに生きることを支援することを目的としたものです。
日本語に不慣れな外国人や高齢者、子ども等への情報提供にも応用できます。具体例を含む詳細はガイドラインそのものをご覧いただきたいのですが、ガイドラインに掲げているものはどれも重要ですので、ガイドラインに上げられている要件を転載します。ガイドラインに掲載されている具体例は以下の2つが引用文献になっているため、図書館に関係するものになっています。
- 『ようこそ図書館へ』(近畿視覚障害者情報サービス研究協議会 LL ブック特別研究グループ、2011 年)
- 『知的障害者の図書館利用を進めるための LL(やさしく読める)図書館利用案内』(藤澤和子、河西聖子、2012 年、図書館界 Vol64、No.4、pp.268-2)
目次
1.テキスト(文章)について
【具体的に書く】
- 難しいことばは使わない。常とう語(ある場面にいつもきまって使われることば)を除いて、漢字が4つ以上連なることばや抽象的な概念のことばは避ける。
- 具体的な情報を入れる。
- 新しい情報を伝えるときには、背景や前提について説明する。
- 必要のない情報や表現はできるだけ削除する。
- 一般的にはあたりまえのことと思われても、当事者にとって重要で必要だと考えられる情報は入れる。
【複雑な表現を避ける】
- 比喩や暗喩、擬人法は使わない。
- 二重否定は使わない。
- それぞれの文章に重複した「のりしろ」を付ける(指示語を多用せず、あえて二度書く)。
- 名称等の表記は統一する。
【文章の構成をはっきりさせる】
- 手順のある内容は、番号をつけて箇条書きで記述する。
- 大事な情報は、はじめにはっきりと書く。
- 一文は一つの内容にする。内容が二つある場合は、三つの文章に分ける。
- 話の展開は、時系列に沿う。
- 接続詞はできるだけ使わない。
【表記】
- 横書きを基本とする
- 一文は 30 字以内を目安にする。
- 常とう語は、そのまま用いる。
- 常とう語を除く単語には、小学校2~3年生までの漢字を使い、漢字にはルビをふる。
- アルファベット・カタカナにはルビをふる。
- なじみのない外来語はさける。
- 漢数字は用いない。また時刻は 24 時間表記ではなく、午前、午後で表記する。
- はっきりとした見やすい字体(ゴシック体)を使う。
2.レイアウトについて
- 文字は、12ポイント以上のサイズを使う(ルビは該当文字の上部に半分程度のポイントで記述する)。ただし、サイズにこだわるあまり見やすさを失わせない。
- テキストを補助するために、内容を表す絵記号(ピクトグラム)を使う。
- テキストを補助するために、内容を表す写真や絵を使う。
- 本や冊子は、できるだけ見開き2ページで1つの事柄が完結するように書く。
- 意味のある単位でわかちがきにする。
- 行間をあける。・一つの文がまとまって見られるように改行する。
- 必要に応じて、枠外等に用語や概念の補足説明を加える。
- もっとも伝達したいことやキーワードは、色分けや太字、囲みなどで強調する。
- 主語は省かない。
3.伝達手段
- 紙ベースの著作物は音声でも聞けるように、パソコンや電子図書やマルチメディアデイジー※2等で利用できるようデジタルデータに変換して、聴覚的な情報を併用することが望ましい。
- 紙ベースの著作物は、口頭で補足説明することが望ましい。
4.注意事項
- 読む能力、聞く能力には個人差があるので、個人の障害特性に配慮する。
- 対象者の年齢を尊重し、年齢に相応しいことばを使う(子ども向けの表現は避ける)。