3Dプリンタでその人の本当のニーズにあった道具を作る、がすごい

アクセシビリティ Advent Calendar 2024 18日目の記事です。今回はファボラボ品川の3Dプリンタを使った自助具制作の取組みについて書きます。

作業療法士であり、 ファボラボ品川ディレクターの林園子さんが2020年にTEDxGotandaで3Dプリンタで障害のある方一人ひとりにあった自助具を作る取組みを紹介しています。

概要をまとめると以下のとおりです。

  • リハビリの現場では、日々変化する一人一人の身体にあわせて細かく道具を作ってきたが、徐々に道具を作らなくなり、福祉用具や道具は販売されているものやレンタルされているものをカタログから選ぶことが主流になってきている。
  • しかし、実際にはカタログの中には一人一人の身体や生活にぴったり合う道具がないことがある。せっかくその人がやりたいことや暮らしたい生活があってもカタログに道具がなければ諦めなければならない
  • それを解決する方法として見出しだのが3Dプリンタによる自助具の作成
  • 作成された3Dモデリングのデータはネット上で公開され、他の人が利用することができるようになっている

上のプレゼンでの林園子さんの以下の言葉が自分に刺さりました。

必要な道具の形をあきらめなくていい。身体の状態がどのようになってもその状態にあった道具を手にいれることができればやりたいことをあきらめなくていいんです。

「できない」と感じることは我慢してしまい、無意識に選択肢から落としてしまうこともあるように思います。「やりたい」と言う気持ちは、ある程度「できる」可能性を本人が感じれないと自分の中から引き出すことも難しい。その人のニーズに本当にぴったりマッチした道具によって、「できない」と感じたことが「できる」とその人が感じられるようになるなら、そして、様々な場面でそのような道具が制作できるなら、その可能性が見えるだけでも、無意識に諦めていたいろいろな「やりたい」を掘り起こす大きな力にもなるのではないか。3Dプリンタで短時間に制作できることをファボラボ品川が提示し続けていることは、その意味で大きな可能性を提示しているように思います。

ただし、私は3Dプリンタをまだ触ったことがなく、その可能性を実感として、まだ感じられていません。3Dプリンタを購入して実際に触ってみて、自分自で可能性を実感できるか試してみたいなと思っています。ということで、購入を考えているのですが、3Dプリンタでプリント時に健康面で有害な粒子を出すとのことだったで、室内に設置する場合の健康面でのリスクを回避する方法を探しています(このリスクがなければ、ブラックフライデーで購入するところだったのですが・・)。

関連リンク

欧州アクセシビリティ法(EAA)がいよいよ半年後に効力発効

欧州アクセシビリティ法(EAA)がいよいよ半年後の2025年6月28日からすべての製品とサービスに適用されます。

欧州アクセシビリティ法は、加盟国に法整備を求める欧州指令 (EU Directive)“Directive (EU) 2019/882 of the European Parliament and of the Council of 17 April 2019 on the accessibility requirements for products and services“(製品及びサービスのアクセシビリティ要件に関する欧州議会および欧州理事会の2019年4月17日の指令(EU)2019/882) です。2022年6月28日までにEU加盟国で国内法の法整備することを求め、2025年6月28日かすべての製品とサービスに適用される予定です(一部の措置を2027年6月28日まで延期することができる)。

欧州アクセシビリティ法(EAA)については、ミツエーリンクスのブログの以下が簡潔でわかりやすいです。

電子書籍のアクセシビリティへの影響については以下にまとめたことがあります。

上を書いたのは2019年ですが、最新の状況は、IPA(International Publishers Association、国際出版連合)の以下の記事が詳しいです。フランスやアイルランドの法整備状況も紹介されています。

JAWSの生成AIを利用した画像説明機能 Picture Smart AI

少し前の話になりますが、2024年3月にスクリーンリーダのJAWSが、以前からあった画像説明機能のPicture SmartをChatGPTなどの生成AIを取り入れて大幅に強化し、Picture Smart AI として利用できるようにしたとのことです。

上のページの案内で、写真、円グラフなどの画像を例に、AI導入前後でどれだけ改善されたかの例も掲載されてますので、具体的にどのように改善されたのかを知りたい方はそちらを。以下の紹介動画も公開されています。

利用できる生成AIは、2024年3月時点ではChat GPTと GoogleのGeminiでしたが、2ヶ月後の2024年5月のアップデートで、Google のGeminiは、信頼性が高いという理由でAnthropicのClaudeに置き換えられたらしい。だから、現在は、ChatGPTとAnthropicのClaudeとなるようです。

なお、無償で使用できるのか、無制限に利用できるのかは不明です。

この生成AI関係のJAWSのアップデートはJAWS 2024にされたもので、これを書いている時点のJAWS 日本語版の最新版は、現時点で 2023 なので、日本語環境におりてくるのは、もう少し先にでしょうか。

ところで、そもそもJAWSとは何かということですが、米国のFreedom Scientific社が開発するデスクトップ環境用のスクリーンリーダー(読み上げソフト)で、海外では、オープンソースのNVDAと並んで広く利用されています(調査によるけど、以下のWebAIMの2023年12月あら2024年1月の調査だと、JAWS 40.5%、NVDA 37.7%の回答者がそれぞれ主に使っていると回答。)。

ちなみに、日本だと、PC-Talkerというスクリーンリーダを使用されている方が圧倒的に多いので、海外とは状況は少し異なります。

生成AIの導入といった新しい技術へのキャッチアップは、NVDAのほうが早いのではと予想していたのですが、NVDAはやるべきかどうかを含めて議論がされていると言った段階のようです。