【メモ】3Dプリンタを使用する上での健康リスクと対策

3Dプリンタを購入するという前提で、3Dプリンタを使用する上での健康リスクとそれを回避する方法などを調べてみました。あくまで私個人レベルのメモなので、他の方の参考になるかどうかわかりません。
FFF型の購入を検討しているので、他のタイプの3Dプリンタはここでは対象外です。

3Dプリンタを使用する上での健康リスク

3Dプリンタを使用してすぐに健康を害すというのではなく、長い期間使用していくと、体内に蓄積して健康に良くない影響が出るというものらしい。そして、子供のほうが影響をうけやすい。

  • 3D プリンタ(FFF型)の使用時に、空気中に汚染物質の複雑な混合物が放出される。これらの放出物には、揮発性有機化合物 (VOC) と超微粒子(<100 nm) )と呼ばれる非常に小さな粒子が含まれる。
  • 吸入された超微粒子は肺や血流に入り込み、酸化ストレスの増加、炎症、心血管への影響、細胞毒性などの原因となる可能性がある。
  • VOC は喘息、アレルギー、閉塞性肺疾患、肺がんの発生に寄与する可能性がある。
  • 粒子の総質量沈着量は9歳から 18 歳の年齢層で最も高く、肺表面面積による質量沈着量は3か月から9歳の幼児で最も高く、肺表面面積による沈着粒子の表面積は 9 歳の幼児で最も高い
  • VOCや超微粒子の放出量はABSを素材したフィラメントがPLAのそれより放出量が多い。

機関レベルで求められる対策

米国国立労働安全衛生研究所やChemical Insightの各文書が健康リスクを下げるために求めている対応概ね以下のとおり(他にもVOCや超微粒子を部屋の外に持ち出さない運用や印刷後の手洗い、プリンター周りの掃除を求めているなど、文章によって色々書いてあるけど)

  1. 健康リスクを理解した上で使用する。
  2. フィラメントの素材はABSをさけてPLAを使う(PLAもVOCやUFPは放出するがABSより少ない)
  3. 換気を十分に行う。可能であれば、プリンタの直上に局所的な換気扇を設置する
  4. 印刷中はプリンタのある部屋から人を遠ざける(プリント中の監視は目視ではなく、カメラなどで遠隔的に行う)
  5. 目を保護するために保護メガネを使う
  6. ノズルの温度を可能な限り低温にする
  7. 印刷後はプリンタの中や周りをしっかり掃除する。

個人レベルで取れそうな対策は、 1、2、3、6かなぁ・・・。3の換気も窓を開けただけでは、外からの空気を取り込んで3Dプリンタを設置した部屋から他の部屋にVOCやUFPを拡散させてしまうだけなので、3Dプリンタをおいた密閉した空間と外を繋いで外に直接放出するなどしたほうがよいかもしれない。

4と5は印刷が長時間に及ぶことを考えると、住環境的に厳しいか。

ひとまず目指す対応

以下を目指す。

  • PLAのフィラメントを使う。(ABSの利用は避ける)
  • エンクロージャー型(しかも、きちんと密閉されている)の3Dプリンタにする。
  • HEPAフィルターを使う
  • 換気設備を整える。(エンクロージャーから直接外に排出できると望ましい)
  • 継続的にvocや超微粒子を計測して監視する方法を用意する(可能であれば。可能か?)

参考した主な文献

Accessilble 3D – 全盲当事者が3Dモデリングから3D プリントまでするプロジェクト

全盲の方が3Dモデリングから3Dプリンタでの印刷までを行うAccessilble 3Dというプロジェクトが公開されています。

このプロジェクトを進めているのは、デンマーク在住の全盲のEdisさん。Youtubeでもチャンネルを立ち上げて、3Dのデザインから3Dプリンタでの印刷までの工程をスクリーンリーダやChatGPTを利用して行う動画をチャンネル最初の動画としてあげています。OpenSCAD という「テキストベースのCADソフト」(Edisさんは行っていましたが、スクリプトから3Dモデリングするソフトらしい)をJAWSというスクリーンリーダで読み上げさせながら3Dモデルを制作したり、ChatGPTでその3Dモデルを説明させることで確認したり、3Dプリンタでプリントするまでの様子が動画で紹介されています。

3Dモデリングや3Dプリンタでの印刷を視覚障害当事者でもできるということを示すだけではなく、視覚障害当事者自身が視覚的な情報を触覚的な情報に変換することで、いろいろなものをアクセシブルにできるんだということを提示することにこのプロジェクトの可能性を感じます。

Accessilble 3Dの詳細はEdisさんが運営するサイトを以下のどうぞ。

学校、図書館、スモールビジネス向け3Dプリンタ安全ガイド(米国国立労働安全衛生研究所発行)

米国国立労働安全衛生研究所が2023年11月に学校や図書館、スモールビジネス向けの3Dプリンタ安全ガイドを公開しています。

  • [NIOSH [2023]. Approaches to safe 3D printing: a guide for makerspace users, schools, libraries,
    and small businesses. By Hodson L, Dunn KL, Dunn KH, Glassford E, Hammond D, Roth G.
    Cincinnati, OH: U.S. Department of Health and Human Services, Centers for Disease Control
    and Prevention, National Institute for Occupational Safety and Health, DHHS (NIOSH) Publication 2024-103, https://doi.org/10.26616/NIOSHPUB2024103.

3Dプリンタを導入する上での健康面や安全面でどのようなリスクがあるのか、そして、それを軽減するためにどのような対策をとるべきががまとめられています。
あくまで一例ですが、環境整備(換気設備をかなりしっかり)とか、運用面の管理(印刷時の3Dプリンタになるべく人が近づかないような運用)が記載されています。