「書籍」と呼ぶには短い電子書籍というコンテンツと従来よりちょっと長くなったWebというコンテンツの相対的な関係

 10月にリリースされるというAppleのiOS5のアップデート、噂されるiBooksのEPUB3対応は当然すごく期待するところですが、それに加えてSafariのリーダー機能、結構面白いのではないかと思います。

Safariのアイコン

さらに快適なネットサーフィンを。
iOS 5は、iPhone、iPad、iPod touchでのネットサーフィンにさらなる新機能を加えます。例えば、Safariのリーダー。広告や不要なものが表示されないので、ウェブの記事だけに集中できます。リーディングリストは、あとでじっくり読むために記事を保存できる機能で、iCloudにはすべてのデバイスから集めた最新のリーディングリストが保存されます。iPadではタブを使うこともできるようになったので、複数のウェブページを開いて、思いのままに切り替えていけます。さらにiOS 5では、どのiOSデバイスでもSafariのパフォーマンスが向上しました。

 リーダーという機能はPC版のSafariですでに実装された機能ですし、iPad上でもすでにInstapaperが同じような機能を実現していますが、PCよりも「読む」という行為に適したインターフェイスであるタブレット端末の標準のブラウザで実装されることに意味があるのかと思うのです。

 Webコンテンツは、これまでこんな感じでこれまで垂直に立てられたモニター上で読むことを前提に作られてきたわけです。
垂直に立てられたモニター上でウェブを閲覧している人間を横から示した図

 目とコンテンツの距離姿勢(特に首の角度)に注目してほしいのですが、この上のようなインターフェイスは「読む」というよりも「作業をする」、もしくは「見る」という行為に適したインターフェイスではないかと。このインターフェイスはWebというコンテンツの有り様を大きく規定してきたのではないでしょうか。

 タブレットPCはこんな感じでコンテンツと目の距離といい、読むときの首の角度といい、書籍にインターフェイスが近いですから、Webというコンテンツの有り様を規定する前提が崩れてしまうかもしれません。

紙の書籍を読んでいる人間を横から示した図
タブレットPCでWebを閲覧する人間を横から示した図。本を読む状態に近いことを示している
 タブレットPCで標準で搭載されているブラウザに「リーダー」のような「読む」ことに集中できる機能を実装されるようになると

 

Webが、より「読む」コンテンツに

 

 となるかもしれません。つまり、少々長くなっても読むことが苦にならなくなるので、コンテンツが少し長くなるかもということです。 

 一方で・・ということで今度は電子書籍という器に話を移します。同じ端末で電子書籍を読むためのiBooksを利用できるわけですが、同じインターフェイス上で「読む」コンテンツである以上、Webと「書籍」はどういう関係になっていくのでしょうか。

 電子書籍という器はWebよりも長く、本より短いサイズのコンテンツに強みを発揮するような気がします。電子書籍のメリットとして上限がないことはよくいわれることです。量が増えても物理的サイズがふえるわけではないので、そういった制約はほとんどないと。

 しかし、逆に量の少ないコンテンツはどうでしょうか。紙の本でも数ページから数十ページという量の少ない冊子を作ることは可能です。無料冊子では普通にありますね。しかし、商業ベースにのせようと思った場合、流通コストを考えるとある程度のまとまったサイズにならないとコスト的に採算がとれないという制約があります。1つのコンテンツで流通コストを賄えない場合、複数のコンテンツをバンドルして単価を上げる必要が出てくる。このあたりは出版界にいる人間ではないので想像するだけになりますが。

 電子書籍は流通コストを低く抑えることができる(という前提でとりあえず今回は書く)。だから、単価を低く設定することができる。そして、だから、紙の書籍よりも遙かに少ないサイズでコンテンツを販売することができる。つまり、マイクロ化したコンテンツでも売れるということです。。

 ※が、実際はどうなんでしょう?もしかすると物理メディアと比較するのそもそもの間違いで、電子媒体はコストのかかり方、傾斜が全く違うもののような気がします。一線超えるとコストがゼロに等しくなるとか。

 誤解されそうなので、一応、書きますが、「紙の本よりも電子書籍は物流コスト等がかからないから紙と全く内容のコンテンツでも電子書籍のほうが安くできる」ということをここで言いたいわけではないのです。従来の紙の本という器では経済的に載せることができなかったコンテンツを商業ベースで販売できるかもしれないということです。

 課金コストをゼロにできるわけではないので、ほとんど情報が無料で公開されているWebよりコンテンツを細分化することはおそらくできないだろうと。それでも、紙の本より単価を遙かに安く設定することができる。だから、コンテンツも小さくすることができる。

 すでに100ページ前後の電子書籍が1000円を切る価格で販売されていますが、50ページ、30ページ程度の雑誌記事サイズのコンテンツが100〜300円程度の価格で販売される日は遠からずくるだろうなと思います。課金コストがさらに下がればさらにコンテンツのマイクロ化が進むかもしれません。

 そうなると「書籍」と呼ぶには短いコンテンツである電子書籍と少し長くなったWeb。それを同じ端末で読むことになったら、その違いは有料か無料かの違いになってしまうのでしょうか。どちらにしても、これまでのように「紙の本 VS Web」という対立を前提とした比較はあまり意味がなくなり、相対的な関係になっていくのではないかと私は考えています。

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