12月に公開されたver.1.0eでSchema.orgにアクセシビリティに関する語彙が追加されました。本、映画、写真、音楽といった創作物のメターデータにアクセシビリティに関する情報を追加するためのものです。
- schema blog: Content Accessibility
- Schema.org v1.0e published: Order schema, Accessibility properties from Dan Brickley on 2013-12-04 (public-vocabs@w3.org from December 2013)
目次
Schema.orgとは
Schema.orgはウェブの構造化データ、マークアップの共通仕様を策定するための活動です。もう少し具体的に言えば、ウェブに埋め込むメタデータの語彙の標準化や形式の標準化を目的としています。
http://schema.org/
もともとはGoogle、Microsoft、Yahoo! の検索エンジン大手がウェブの改善を目的として共同で進めていたプロジェクトでしたが、その後、検討の場がW3Cにうつされたようで、W3CのSemantic Web Interest Group Web Schemas Task Forceが中心に仕様の検討を進めているようです。
- Semantic Web Interest Group Web Schemas Task Force
- schema blog: W3C “Web Schemas” group is our new public feedback forum
今回公開されたver.1.0eでアクセシビリティに関する語彙がSchema.orgの仕様に追加されました。Accessibility Metadata Projectの成果を取り込んだものです。
追加されたアクセシビリティに関する語彙
ver1.0eで追加されたアクセシビリティに関する語彙(もう少し詳しく書くと、プロパティ)は以下の4つです。CreativeWork(本、雑誌記事、映画、音楽、絵、写真、テレビ番組などのメタデータ)で使用することができます。
- ○accessibilityAPI
- リソースが特定のアクセシビリティAPIに適合することを示すものです。
値: AndroidAccessibility,ARIA,ATK,AT-SPI,iAccessible2,iOSAccessibility,JavaAccessibility,MacOSXAccessibilityなど - ○accessibilityControl
- リソースを制御するための入力方法を示すものです。
値: fullKeyboardControl,fullMouseControl,fullSwitchControl,fullTouchControl,fullVoiceControl - ○accessibilityFeature
- リソースが備えるアクセシビリティに関するコンテンツの特性を示すものです。
値: alternativeText, annotations, audioControl, audioDescription, bookmarks, braille, captions, ChemML, displayTransformability, highContrastAudio, highContrastDisplay, index, largePrint, latex, longDescription, MathML, printPageNumbers, readingOrder, signLanguage, structuralNavigation, tableOfContents, taggedPDF, tactileGraphic, tactileObject, timingControl, transcript, unlocked, videoControl - ○accessibilityHazard
- あるユーザーに対して生理的に危険なコンテンツであることを示すものです。
値: flashing,noFlashingHazard,motionSimulation,noMotionSimulationHazard,sound,noSoundHazard
プロパティの値については、以下をご参照ください
なお、以下のプロパティの追加も検討されているようです。
- accessMode
- hasAdaptation
- isAdaptationOf
記述例
Examples | Accessibility Metadata Projectより。
図書(大活字本であることを示す)
<dl itemtype="http://schema.org/Book" itemscope=""> <dt>Title:</dt> <dd itemprop="name">Algebra II, trigonometry</dd> <dt>Location:</dt> <dd itemprop="contentLocation" itemtype="http://schema.org/Location" itemscope=""> <span itemprop="name">Louis</span></dd> <dt>Author:</dt> <dd> <span itemprop="author" itemtype="http://schema.org/Person" itemscope=""> <span itemprop="name">Sherman K. Stein</span> </span></dd> <dt>ISBN:</dt> <dd itemprop="isbn">1-55636-757-0</dd> <dt>Publisher:</dt> <dd itemprop="publisher" itemtype="http://schema.org/Organization" itemscope=""> <span itemprop="name">Sunburst Communications</span></dd> <dt>Date:</dt> <dd itemprop="datePublished">1986</dd> <dt>Format:</dt> <dd><meta itemprop="accessibilityFeature" content="largePrint">Large Print (1)</dd> <dt>Grade:</dt> <dd>9 to 12</dd> </dl>
ビデオ(キーボード、マウスでそれぞれフル操作可能であり、字幕があることを示す)
<meta itemprop="accessibilityControl" content="fullKeyboardControl"> <meta itemprop="accessibilityControl" content="fullMouseControl"> <meta itemprop="accessibilityFeature" content="captions"> <h1>Martin Luther King's Speech (video): 'I Have a Dream'</h1> <video src="http://www.youtube.com/watch?v=smEqnnklfYs" controls=""><track src="captions.webvtt" type="captions"></video>
想定されるユースケース
メタデータに追加したアクセシビリティの情報には、様々なユースケースが想定されますが、まずは検索結果のスニペットやファセット等で利用される可能性が高いと思われます。
以下の動画がそれを再現していてイメージがしやすいかと思います。
さいごに
コンテンツ本体がアクセシブルであることはもちろん重要ですが、利用者がそのコンテンツを選択するまでの過程がアクセシブルであることも重要です。つまり、利用者が自分の特性や環境に応じて適切にコンテンツを選択できるよう、コンテンツの特性の情報を事前に知らせることですが、それを担うのが「データのデータ」であるメタデータです。
多くのコンテンツがウェブ上で配布されるようになっている現在、Schema.orgにおけるアクセシビリティに関する語彙の役割は、非常に重要です。視覚障害者等のためのオンライン図書館であるBookshareが上の語彙を一部実験的に埋め込んでいるそうですが、より多くのウェブサイトで使用されることが望まれます。また、検索エンジン側の対応も期待したいところです。
(本エントリはWeb Accessibility Advent Calendar 2013の23日目のエントリです。)