4月 09

4年ぶりに文部科学省で障害のある学生の修学支援に関する検討会が開催

 文部科学省で障害のある学生の修学支援に関する検討会が4年ぶりに開催されるそうです。1回目は4月19日。4年ぶりって・・・。

  平成24年度の検討会でまとめられた報告(第一次まとめ)は、大学における障害者差別解消法への対応の検討の歳に、もう少し具体的にいえば、対応要領の作成の際に大きく影響を与えたようですが、今年度の検討会ではどのようなテーマで検討がなされるのでしょうか。

参考

11月 02

大学の障害学生支援室が著作権法第37条第3項の複製の主体に該当するかについての文化庁著作権課の見解

 著作権法第37条第3項では、著作権法施行令で定められた施設は視覚障害その他の理由で読書に困難のある人々のために著作者の許諾なく複製が行えるという権利制限が規定されています。大学については、著作権法施行令第二条第一項第一号ロにおいて、

大学等の図書館及びこれに類する施設

が複製の主体(著作権法第37条第3項に基づく複製が行える機関)として規定されています。

 大学図書館が複製の主体に含まれることは間違いありません。しかし、「これに類する施設」に何が該当するかという点です。

 現状として、視覚障害など障害のある学生のために著作物のテキストデータの作成は、ほとんどの大学で障害学生支援室のような学生支援部局が行っており、大学図書館でそれを行っているところは立命館大学図書館などのごく少数の例外を除き、ほとんどありません。

 大学図書館は著作権法第37条第3項の規定に基づいて著作物の複製が行えますが、障害学生支援室が、上の「これに類する施設」に該当するとは文字だけでは解釈できないために、障害学生支援室は、著作権法第30条に基づき、学生の私的複製(手足理論)という形でしか著作物を複製することしかできなかったのではないかと思います。この場合、学生の私的複製という形ですので、テキストデータを作成しても、製作を依頼した学生にしか渡すことしかできず、同じ著作物のテキストデータをリクエストした他の学生への提供も大学間で相互貸借や共同利用ができません。

 ちなみに、大学として、著作物のテキストデータ(「教材のテキストデータ化」)の作成をしているところは、以下の日本学生支援機構の平成26年度の調査によれば、89の大学が実施しています。

 各大学でどれだけの数が製作されているかまではこの調査ではわかりませんが、これだけの数の大学で製作したテキストデータの共同利用が進んでいないということは、非常にもったいないことだと思います。これについて、平成24年度に文部科学省が立ち上げた「障がいのある学生の修学支援に関する検討会」でも議論され、報告書でも言及されています。

 他の学生への提供も大学間で相互貸借や共同利著作権法第37条第3項に基づく複製であれば可能です。障害学生支援室が「これに類する施設」に該当する施設という解釈がはっきりすれば、各大学が作成したテキストデータなどの共同利用が一気に進む可能性があります。

 これについて、内閣府の障害者政策委員会の8月の会議で、障害者政策委員長である静岡県立大学教授の石川准先生の質問に回答する形で、文化庁著作権課が公に見解を示しました。議事録も公開されるはずですが、動画は公開されており、それを確認することができます。障害学生支援室が全て含まれるというわけでもなさそうですが、大学図書館の趣旨に合致するものが含まれるという見解です。該当部分のテキストを起こしてみました(一字一句すべてが正確というわけではないので、ご注意を)。

障害者政策委員会 第25回動画 分割 2/2

※該当部分は、「第25回動画 分割 2/2の」58分33秒から1時間2分31秒。

障害者政策委員長 石川准氏

情報アクセシビリティと関係して、あるいは、教育とも関わってくる話ですが、著作権法の37条に関する点につきまして、文化庁著作権課にお聞きしたいのですけれども、政令で指定された機関が、視覚による読書に困難のある人々を対象として、著作物を複製することは、著作権者の許諾なしに認められる、というのがその37条の規定でありますけれども、その政令の中で大学の場合は、大学図書館がそのような機関として指定されております。ただし、現状の各大学における障害学生支援というのは、障害学生支援室といったところが中心になって行っておりまして、そこが例えば、視覚障害等あるいはディスレクシアの学生に対して著作物を電子データ化するといった作業も行っておりますけれども、これがそもそも著作権法第37条に基づく複製にあたるのかどうかということについて、各大学とも半信半疑、というところがございまして、したがって、共同利用、相互貸借みたいなこともできずにいるという状況がございます。それにつきまして、文化庁著作課としてのご見解、つまり、大学図書館等と書いてあって、障害学生支援室とは書いていないけれども、それも含むのか、あるいは、列挙型の規定となっているので、書いていないことは含んでいないのか、ということについて、この場を借りて、ご見解をいただけると有り難いと思います。

文化庁著作権課課長補佐 秋山氏

お問い合わせのありました著作権法37条3項の適用に関する部分ですけれども、同項の権利制限規定の適応のある主体に関しては政令で定める、ということになってございます。さきほどご説明いただいたとおりです。この政令でございますけれでも、著作権法施行令第二条第一項第一号ロにおきまして、この37条3項の規定の適用がうけられる主体として、「大学等の図書館及びこれに類する施設」と、このように定められてございます。ここにいう、「これに類する施設」といいますのは、大学図書館のように図書等の資料を備え置いて、学生に資料の貸出等の情報提供を行う機能、こういった機能を担う施設が想定されているものと解されるところでございまして、必ずしも名称が大学図書館となっていなくても、当然、その他のものが含まれるということは念頭に置かれているものと理解してございます。したがいまして、行政、私どもとしてまして、個々の事例への法令の適用関係について、個別に判断を申し上げる立場ではございませんけれども、ご質問のありましたのような、障害学生支援室といった名称を冠する組織につきましても、通常、上記の大学図書館のような趣旨に合致するものも多いと考えられますので、そうしたものにつきましては、基本的に「これに類する施設」に該当するというふうに解釈することもできるのではないかというふうに考えています。

障害者政策委員長 石川准氏

ありがとうございました。大変、明快なご回答をいただきまして、感謝いたします。

 

 障害者学生支援室のような学生支援部署も著作権法第37条第3項の複製の主体になりえる解釈を文化庁が公の場で議事録に残る形で示したことは大きいと思います。しかし、「大学図書館の趣旨に合致する」という条件めいたものがついていることが正直、わかりづらいところがありますね。情報提供だけすれば条件に合致するのか、資料も備えることがもとめられるのか。前者であれば、テキストデータ化をしているところは全て該当すると考えてよいように思いますが、後者の資料を備えることまで求められると該当するところはぐっと減る気がします。

参考

著作権法

第三十七条  3  視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者(以下この項及び第百二条第四項において「視覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、公表された著作物であつて、視覚によりその表現が認識される方式(視覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この項及び同条第四項において「視覚著作物」という。)について、専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、当該視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該視覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者により、当該方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。

著作権法施行令

第二条  法第三十七条第三項 (法第八十六条第一項 及び第三項 並びに第百二条第一項 において準用する場合を含む。)の政令で定める者は、次に掲げる者とする。
一  次に掲げる施設を設置して視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者(イ、ニ又はチに掲げる施設を設置する者にあつては国、地方公共団体又は一般社団法人等、ホに掲げる施設を設置する者にあつては地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人に限る。)
イ 児童福祉法 (昭和二十二年法律第百六十四号)第七条第一項 の障害児入所施設及び児童発達支援センター
ロ 大学等の図書館及びこれに類する施設
ハ 国立国会図書館
ニ 身体障害者福祉法 (昭和二十四年法律第二百八十三号)第五条第一項 の視聴覚障害者情報提供施設
ホ 図書館法第二条第一項 の図書館(司書等が置かれているものに限る。)
ヘ 学校図書館法 (昭和二十八年法律第百八十五号)第二条 の学校図書館
ト 老人福祉法 (昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の三 の養護老人ホーム及び特別養護老人ホーム
チ 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 (平成十七年法律第百二十三号)第五条第十一項 に規定する障害者支援施設及び同条第一項 に規定する障害福祉サービス事業(同条第七項 に規定する生活介護、同条第十二項 に規定する自立訓練、同条第十三項 に規定する就労移行支援又は同条第十四項 に規定する就労継続支援を行う事業に限る。)を行う施設
二  前号に掲げる者のほか、視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人(法第二条第六項 に規定する法人をいう。以下同じ。)のうち、視覚障害者等のための複製又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの

6月 26

全国高等教育障害学生支援協議会(AHEAD JAPAN) 第1回大会 参加メモ

 全国高等教育障害学生支援協議会(Association on Higher Education and Disability of Japan : AHEAD JAPAN) 第1回大会に1日目、2日目全ての日程参加してきました。AHEAD JAPANは高等教育機関における障害学生支援に関する相互の連携・協力体制を確保を目的に2014年10月に成立した団体です。

日程、場所、プログラム等は以下。

大会概要

日時:2015年6月19日(金曜日)、6月20日(土曜日)
場所:東京大学先端科学技術研究センター(東京都目黒区駒場4-6-1)
詳細: 全国高等教育障害学生支援協議会(AHEAD JAPAN) 第1回大会

 で、これはその参加メモです。

 1日目のプレカンファレンスには200名は参加していたそうで、おそらく2日目もそれくらい。まさに全国の障害学生支援関係者が一同に介していた感じではなかったかと思います。図書館関係者で参加していたのは、佛教大学の松戸宏予先生をのぞけば、おそらく私一人ぐらいだったと思います。

 この大会全体の大きなテーマが

  • 2015年4月に予定されている障害者差別解消法の施行に向けて国公立大学と私立大学に求められる対応

というもので、特に国立大学法人は、職員向けの対応要領を今年度中に作成することが義務づけられているので、時期的にはすでに待ったなしの状況。ということもあり、障害学生支援に積極的な大学が多く参加したということもあり、私が参加した国公立大学等分科会も含めて具体的で前向きな検討がなされている印象でした(私立大学等分科会のほうは参加していないので知りませんが・・・)。

 障害者差別解消法で求められる大学の対応については、以下にまとめたので、こちらをご参照ください。

 日本学生支援機構(JASSO)の実態調査でもわかることですが、今回の大会での議論、ポスター発表等を見ると、聴覚障害者、発達障害者、肢体不自由の学生が在学する大学が多く(JASSOの調査だと、病弱・虚弱の学生も多い)、視覚障害の学生が在学する大学は少ないということもあって、関心も前者に対する支援のほうが高い。公共図書館の障害者サービスが視覚障害者に対するサービスから始まっているので、「障害者」といえば視覚障害者がまず頭に浮かびますが、図書館が視覚障害者以外の障害者に対するサービスをもっと充実させないといけないのかなと思ったり。視覚障害者の障害学生そのものが少ないという点については、視覚障害者が大学進学に到達するには、勉学の上でいろいろな障害があるということも。公共図書館における障害者サービスと大学図書館におけるそれもだいぶ意味が変わってくるのでしょうか。

 2日間のイベントの内容を逐一紹介するのはさすがにやめておきますが、ざっくりと。
 

1日目プレカンファレンス

 1日目。プレカンファレンスといいつつ、障害学生支援について先進的な大学の具体的な取り組みついて情報交換されたり、対応要領の作成を想定した議論があったりと、大会の本丸はこの1日目だったと思います。

セミナー「差別解消法と合理的配慮の提供に向けた体制整備に必要なこと」

 配付資料として、協議会が作成した対応要領案が配布され、それを石川准先生(静岡大学)、村田淳先生(京都大学)、高橋知音先生(信州大学)、竹田一則先生(筑波大学)が解説。私立大学関係者向けには、柏倉秀克先生(日本福祉大学)が文部科学省から告示だされる対応指針を想定した体制整備について日本福祉大学の事例を紹介しつつ解説。

 「合理的配慮の否定」は、「障害を理由とする不当な差別的取り扱い」(これは事業者(民間)含めて禁止されている)に繋がるものですが、<「合理的配慮の提供」ができない>(「合理的配慮の提供」は、公的機関は義務、事業者(民間)は努力義務)との区別しづらい状況もあるかも(区別する必要があるかどうか微妙ですが)。

 会場からは学生の評価の方法と合理的配慮の不提供の兼ね合い、つまり、ノートテイクなどの十分な合理的な配慮を提供できなかった場合は、その学生の評価をするべきか、とかLGBTは障害者差別解消法でいうところの障害者に含まれるのか(例えば、ユニセックストイレの設置等の問題)などの質問がでました。

法人分科会「学内体制整備における問題点の共有」

 国公立大学等分科会と私立大学等分科会のうち、私は国公立大学等分科会に参加。 
 午後に引き続き、対応要領案をベースに話が進められました。ここでは、筑波技術大学、群馬大学、宮城教育大学、富山大学、筑波大学など障害学生支援に積極的な大学が具体的な事例を中心に積極に発言して分科会をひっぱっていたので、全体としてかなり前向きに議論が進められたのではないかと思う。

 例えば、以下について議論がなされていました。

  • 合理的配慮の提供の前提となる意思の表明は本人からのみか
  • 教員の教育方針から
  • 障害学生支援のための予算の獲得について
  • 専門性のある組織体制の構築
  • 合理的配慮の提供と学生の評価の関係(例えば、ノートテイクなどの十分に合理的配慮が提供できない場合のその学生の評価はどうあるべきか)
  • 対応要領の作成で障害者当事者団体に意見を聞くということになっているが、どの段階で行うべきなのか
  • 対応要領に従わない教職員への対応はどうあるべきか

2日目(メインカンファレンス) 



基調講演(ピーター・ブランク教授)

 シラキュース大学のピーター・ブランク教授による基調講演。テーマは「米国の障害学生支援の制度と課題」のはずですが・・・・、どちらかというと、6月22日にブランク教授が立命館大学で行ったシンポジウムの基調講演のテーマに近い気がしないでもない。しかし、話としては、とても面白かった。ブランク教授はWebの柔軟性を信じていて「だれもが使いやすい」と「特定の個人に特化して使いやすい」はWebでは両立しうると考えている。
 
 講演はブランク教授が2014年に出した以下の著書の前半部分を中心になっているとのこと。

eQuality: The Struggle for Web Accessibility by Persons with Cognitive Disabilities (Cambridge Disability Law and Policy Series)

 ところで、ブランク教授が話の中で言及していたRaising the Floor (RtF)が進める”GPII”というプロジェクト、どこかで聞いたことがあるとかと思ったら、自分でブログに書いていた(すっかり忘れてた・・)。

 これまた話がまた少し外れますが、ビル・ゲイツが、最近、グラフや写真などを文字や音に翻訳する技術の特許を申請したという話をブランク教授がしていた。ピカソの絵画があったとすると、コンピューターがそれを文字や音に翻訳してつたえる技術のようです。気になって探してみたけど、よくわからず。

情報共有セッション「差別解消法,合理的配慮の現状と今後」

 内閣府の方が障害者差別解消法とその基本方針、文部科学省の方がそれに対応する高等教育関係の政府内の動き、厚生労働省が改正障害者雇用促進法を紹介。

 会場から、雇用促進法は改正されたが、国家公務員法は改正されなかった(国立大学法人は国家公務員法に準じる運用をする?)。自立通勤通勤ができること、介助なしに業務が遂行できることが応募条件にすることを今だにある。介助者が必要な障害者は応募すらできないということにになる。これは不当な差別的取り扱いになるのか、なるなら国家公務員法はどうなるのかという趣旨の質問がでていました。
  
 

AHEAD JAPAN 大会に行きそびれた方、関西の方

 AHEAD JAPAN 大会に行きそびれた方、関西の方であれば、7月に以下のイベントが京都大学で行われます。プログラムと登壇者をみると、内容的には、AHEAD JAPAN 大会1日目の内容に近い話がされる気がします。

6月 25

障害者差別解消法と大学に求められる取り組みについて

 障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)は障害者の権利の保障と実質的平等を確保することを目的として具体的な措置や義務を定めた法律で、2015年4月に施行されます。詳しくは法の条文今年2月に閣議決定された基本方針を読んでいただければよいのですが、各機関、各法人、事業者(民間)に対して様々な措置が義務化あるいは努力義務化されています。大学に関して言えば、大さっばに主に以下の4つです。

国立大学法人 公立大学法人 学校法人(私立大学)
1 障害を理由とする差別の禁止 義務(第七条第一項) 義務(第七条第一項) 義務(第八条第一項)
2 環境の整備(事前的改善措置) 努力義務(第五条) 努力義務(第五条) 努力義務(第五条)
3 合理的配慮の提供 義務(第七条第二項) 義務(第七条第二項) 努力義務(第八条第二項)
4 職員に対する対応要領の作成及びそれの公開 義務(第九条) 努力義務(第十条)  -

 このほかにも相談窓口の設置や職員に対する啓発活動等なども求められますが、これは4の対応要領を作成する過程で整備されるはず。

 1、2,3については、以下をご参照ください。

4の職員向けの対応要領とは、上の1、2、3について職員が適切に対応することができるように法人が職員を対象して作成する要領で、基本方針に即して言えば、

  • 事務・事業を行うに当たり、職員が遵守すべき服務規律の一環として定められる必要がある。
  • 対応要領の作成に当たり、障害者その他の関係者を構成員に含む会議の開催、障害者団体等からのヒアリングなど、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、作成後は、対応要領を公表しなければならない。
  • 想定される記載事項: 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方及び具体例、相談体制の整備、職員への研修・啓発

となります。

 私立大学に対しては、対応要領作成・公開の義務が課されていませんが、文部科学省が事業者(民間)向けに対応指針を告示する予定であるため、それに対応することが求められます。文部科学省は今まさにそのためのヒアリングを進めているところのようです。

参考 大学において求められる「教育上の合理的配慮等」-文科省の障がいのある学生の修学支援に関する検討会-

 文部科学省内に設置された「障がいのある学生の修学支援に関する検討会」において2012年6月から2012年12月の間に9回にわたり、大学等における教育上の合理的配慮の対象範囲について検討が行われ、その検討結果が「報告(第一次まとめ)」としてまとめられ、2012年12月に公開されています。

参考
3月 29

日本学生支援機構が平成26年度「障害のある学生の修学支援に関する実態調査」の報告書を公開

 独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)が平成26年度「障害のある学生の修学支援に関する実態調査」の報告書を3月27日に公開しました。どのような障害のある学生がどれくらい在籍し、どのような支援を受けているか、各機関はどのような体制で支援を行っているのか、どのような設備を行っているのか、障害学生の卒業後の進路等が数量的に詳細に明らかにされています。

 「障害のある学生の修学支援に関する実態調査」は平成17年度から大学、短期大学、高等専門学校1,000校以上を対象に毎年行われています。

3月 23

全国高等教育障害学生支援協議会 第1回大会(2015年6月19日〜20日)

  一般社団法人全国高等教育障害学生支援協議会の第1回大会が以下の日程で開催されるそうです。

日時:2015年6月19日〜20日
会場:東京大学先端科学技術研究センター(東京都目黒区駒場4-6-1)

 
 全国高等教育障害学生支援協議会は高等教育機関における障害学生支援に関する相互の連携・協力体制を確保を目的とした団体で、42の大学が発起校として名を連ねています。2014年10月に設立とのこと(定款の施行は2015年1月なので、一般社団法人としては、2015年1月からなのかもしれない)。

 この協議会の設立までの流れとしては、先のエントリでも紹介した障がいのある学生の修学支援に関する検討会報告書(第一次まとめ)が2012年12月に出されたの受けて、「高等教育機関における障害学生支援に関する全国協議会(仮称)」設立準備大会が2013年10月に開催、そして、一般社団法人として全国高等教育障害学生支援協議会が2014年10月に設立というもののようです。URLに”ahead-japan”とあるように、米国のAHEAD(Association on Higher Education and Disability)をモデルにしているようです。

※2015年4月2日追記 プログラムが公開され、参加申し込みできるようになりました。

プログラム

第1回大会・1日目(プレカンファレンス) 2015年6月19日(金)

時:2015年6月19日(金)10:30~17:30(その後19:30まで情報交換会/レセプション) ※9:30より受付
場所:東京大学先端科学技術研究センター(東京都目黒区駒場4-6-1) → アクセスマップ

プログラム
10:30-12:45(3号館南棟ENEOSホール)
セミナー「差別解消法と合理的配慮の提供に向けた体制整備に必要なこと」
・国公立大学における対応要領の作成
・私立大学における体制整備
※途中15分の休憩を挟みます
12:45-14:00 昼食休憩
14:00-17:00(3号館南棟ENEOSホール)
法人分科会「学内体制整備における問題点の共有」
・国公立大学等分科会
・私立大学等分科会
※途中30分の休憩/コーヒーブレイクを挟みます
17:00-17:30 休憩・移動
17:30-19:30(AN棟1階)
情報交換会/レセプション

第1回大会・2日目(メインカンファレンス) 2015年6月20日(土)

日時:2015年6月20日(土)09:00~17:30 ※8:00より受付
場所:東京大学先端科学技術研究センター(東京都目黒区駒場4-6-1) → アクセスマップ

プログラム
09:00-09:40(3号館南棟ENEOSホール)
初回大会開催挨拶
全国協議会の現状説明と今後
09:40-10:00 休憩・準備
10:00-11:30(3号館南棟ENEOSホール)
基調講演
ピーター・ブランク教授(シラキュース大学)
「米国の障害学生支援の制度と課題」(仮) Peter Blank 教授
11:30-13:00 昼食休憩
12:00- (4号館2階講堂)
ポスター会場での掲示開始(実践発表・研究発表)
13:00-14:30(3号館南棟ENEOSホール)
情報共有セッション「差別解消法,合理的配慮の現状と今後」
座長:事務局司会
・文部科学省高等教育局
・内閣府
・厚生労働省障害者雇用対策課
14:30-15:00 休憩・移動
15:00-17:00(4号館2階講堂)
ポスター発表・情報交換セッション
17:00-17:30(4号館2階講堂)
クロージング・閉会

1月 14

大学において求められる「教育上の合理的配慮等」を検討した「障がいのある学生の修学支援に関する検討会」(文部科学省)

文部科学省が設置した「障がいのある学生の修学支援に関する検討会」では、2012年6月から2012年12月の間に9回にわたり、大学等における教育上の合理的配慮の対象範囲について検討が行われました。

 その検討結果が「報告(第一次まとめ)」としてまとめられ、2012年12月に公開されています。

この検討会の背景と今後の展望?

 この検討会が合理的配慮について議論を重ねていた時期は、以下のとおり、障害者権利条約の批准に向けて日本が法整備を進めている段階で、改正障害者基本法がすでに施行され、障害者差別解消法の成立に向けた検討が行われている時期にあたります。

2006年12月 障害者権利条約が国連総会で採択
2008年5月 障害者権利条約が発効。日本でもその批准のために日本でも法整備を行うことに
2011年8月 改正障害者基本法が公布・施行
2013年6月 障害者差別解消法及び改正障害者雇用促進法が成立
2016年4月 障害者差別解消法及び改正障害者雇用促進法が施行

 2011年8月に施行した改正障害者基本法では、第4条に「合理的配慮」という障害者権利条約にある言葉が盛り込まれました。「障がいのある学生の修学支援に関する検討会」はこれを受けての検討になるようです。

障害者基本法 第四条

何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。
2 社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない。
3 国は、第一項の規定に違反する行為の防止に関する啓発及び知識の普及を図るため、当該行為の防止を図るために必要となる情報の収集、整理及び提供を行うものとする。

 

 2012年12月に検討会の報告として「報告(第一次まとめ)」を上のとおりまとめています。「第一次まとめ」なので、後に続くものがあるはずですが、現時点ではそれに続くものは見つかりません。2013年6月に成立し、2016年4月施行される予定の障害者差別解消法(上の障害者基本法第4条を具体化することを目的としたもの)では、各省庁は所管する事業者向けの必要なガイドライン(「対応指針」)を作成し、公表することになっていますので、文部科学省もこの議論の成果をうけて大学向けのガイドラインを公開するかもしれません。

 合理的配慮の提供を国公立大学に義務化、私立大学には努力義務化(しかし、文部科学省による行政指導でよって一定程度の実効性が担保されることになっている)した障害者差別解消法の施行が2016年4月に迫っていますので、合理的配慮の提供の検討を各大学でも進めていかなければならない時期にすでになっています。

 いずれにしても、文部科学省において関係者があつまって、障害学生に提供すべき「教育上の合理的配慮等」とは何かということが検討された、このことはもっと知られてもよいのではないかと思います。

大学等における「教育上の合理的配慮等」の対象

 この検討会で「教育上の合理的配慮等」を検討する上で対象とする学生の活動の範囲は、「授業、課外授業、学校行事への参加等、教育に関する全ての事項」を対象としています。つまり、講義だけではなく、サークル活動や学園祭等のイベントの参加も含まれることになっています。

 一方で、教育とは直接に関与しない学生の活動や生活面への配慮については、この検討会における検討の対象から外れています。これは「教育上の合理的配慮等」ではないということであって、この方面に対して大学が配慮しなくてもよいということではありません。一般的な合理的配慮に含まれるので、「教育上の合理的配慮等」とは何かを検討するこの検討会では検討の対象から外したということになります。

大学等における「教育上の合理的配慮等」

 詳しくは報告署をご覧いただきたいのですが、「教育上の合理的配慮等」として以下が挙げられています。

  1. 学生が得られる機会への平等な参加を保障する配慮の提供
  2. 大学等全体としての受入れ姿勢・方針の公開
    (試における障害のある入学者への配慮の内容、大学構内のバリアフリーの状況、入学後の支援内容・支援体制(支援に関する窓口の設置状況、授業等における支援体制、教材の保障等)、受入れ実績(入学者数、在学者数、卒業・修了者数、就職者数等)等)
  3. 合理的配慮の決定過程における学生本人の教育的ニーズと意思の尊重と、配慮の提供
  4. 教育方法等への配慮の提供(情報提供、教材、公平な試験、学外における実習やインターンシップ等における配慮)
  5. 支援体制の整備
  6. 施設・設備のバリアフリー化

 なお、上の「合理的配慮」には、その後成立した障害者差別解消法では、努力義務の「環境整備(事前改善措置)」に該当するものまでが含まれています。もし文部科学省が大学向けにガイドラインを公開するのであれば、その後の障害者差別解消法に係る検討の成果を反映させる形で変更されるかもしれません。

アクセシブルな教材の提供について

この検討会では、上にように幅広い事項が議論されています。その全てをとても紹介しきれませんが、最後にこのブログでもたまに取り上げているアクセシブルな教材の提供について、少し詳しく紹介します。

アクセシブルな教材の提供や授業における情報保障は、重要な課題であるため、議事録を読むとこの検討会でもその議論にかなり時間が割かれています。
 
 図書館に関係してくるところで、アクセシブルな教材の提供については、あくまで一例ですが、静岡大学の石川准先生が第3回の検討会において以下のように発言されたり、

一つの方向としては,出版社には電子データがあるので提供を求めていく道筋を作れないかということがあります。やはり学術出版と商業出版とは違っていて,学術出版社にとっての大学はカスタマーとしての位置付けの比重が大きいので,大学のコンソーシアムというか,国立,公立,私立それぞれあると思いますが,大学と学術出版社との間では包括的な協定等を結んで,大学で学術文献や学術雑誌を購入しているのだから,電子データの提供については善処されたいというような合意形成を行うことは可能ではないかと考えております。これは短期か中期かは少しわかりませんけれども,恐らく可能であろうというふうに思いますしすべきことではないかというふうに考えています。
 それから,現在いろいろな形の電子的情報の提供がされていると思いますが,厳密に言うと著作権法37条の規定における情報提供施設というのは,政令では,大学の場合ですと大学図書館が指定されています。ですから,大学図書館が実施主体となって行っている場合については無許諾で複製し公衆送信できる,有資格者に対して公衆送信できるとなっていますけれども,多くの場合は大学の図書館が能動的に参加していない形になっているものと思われるので,その場合には,やや表現が難しいのですが,無許諾でひそやかにやっておられるところが多いのではないでしょうか。
 それは中・長期的な観点においても,やはりきちんと合意形成をしていくという点でも,次のいずれかの方法をとる必要があると考えます。一つは,大学図書館が主体となって,例えば障害学生支援センター等がそのブランチとしての組織上の位置付けを与えるというものと,あるいは文化庁と調整をして政令の中に障害学生支援センターも入れていただくといったような,いずれかの方法によって複製及び公衆送信について著作権法の37条の規定に整合性がとれる形にして,その上で大学間のデポジットを作ってアクセシブルな電子データ,電子教材の相互貸借,オンラインでの相互貸借を可能にしていくというふうにしていかないと,今のやり方をずっと続けていくというのは不合理極まりないというふうに考えています。

from 第3回の検討会議事録 石川准先生発言

 第6回の検討会において慶應義塾大学の中野泰志先生が以下のような発言をされています。

視覚障害の立場でいうと,図書館の本にどのくらいアクセスできるかがすごく重要で,先ほど自主学習のことを言いましたが,大学における学問とは,先生が授業で使っている本を読んでいてできる話ではありませんで,先生が参照しないものをどんどん先取りして教授をぎゃふんと言わせることが重要なわけで,そうなると先生が指示しないような本も読める必要があって,これは御存じの方がたくさんおられると思いますが,例えば,アメリカではアクセステキストネットワークというのが作られていて,大学で使われているような教材に関してはテキスト化してそれを共通に利用できるシステムがありますので,是非拠点校には,もし,がっさらとお金が来るんだったらそういうお金を使っていただいて,日本版の,例えばテキストデータを共有できるような仕組みを作っていただくとかというようなところに使っていただけるといいなと思います。

from 第6回の検討会議事録 中野泰志先生発言

 

 両先生の上の発言等を受けて、報告(第一次まとめ)では、国、大学等及び独立行政法人等の関係機関が取り組むべき事項の中長期的課題の中で、以下のようにまとめられています。

4) 教材の確保
○視覚障害や読字障害のため文字が見えにくい、読みにくい、肢体不自由のため書籍のページめくりや持ち運びが難しいなどといった「印刷物障害」に含まれる障害のある学生は、教科書や副読本、各種資料といった様々な教材の利用が困難である。また、聴覚障害のある学生は、音声の聞き取りや理解が難しく、動画等の視聴覚教材の利用が困難であり、大学等での学習機会への参加が難しい現状がある。

○これらの学生の学習機会への参加を保障するためには障害に応じ必要な教材を確保することが重要であり、各大学等の保有する点訳教材、字幕教材及びテキストデータ化した教材等の様々な教材や支援技術製品の一覧を作成し学内外で情報を共有することや、さらに、大学等間での共用や貸し借りを行う仕組みを検討することなど、利便性を高めるための方策を検討することが望まれる。

○また、電子化された教材は、学生本人にとって見やすい体裁への変更・調整や支援技術製品(音声読み上げソフトウェア等)の活用が容易となることから、その充実のため、大学等や図書館、出版社との連携の促進について検討することが望まれる。

from 報告(第一次まとめ) 6.国、大学等及び独立行政法人等の関係機関が取り組むべき事項 (2)中・長期的課題 4) 教材の確保

 2番目のところ、図書館に対する言及はされてないんですよね・・。ここで書かれていること、とくにテキストデータの共有は、著作権法第37条に基づくのであれば大学図書館が主体にならないと難しいはずですが、「文化庁長官の指定を受けることで,図書館以外の主体であっても大学の学内で同様の行為ができるということで」と事務局が説明して入れなかったようです(第9回議事録)。各大学の障害学生支援室ごとに文化庁指定を受けるのは、ちょっと現実的ではないという気がしますが・・・。

7月 02

青木 慎太朗 編「視覚障害学生支援技法 増補改訂版」(立命館大学生存学研究センター – 生存学研究センター報告書12)

立命館大学生存学研究センターが視覚に障害のある学生の支援方法についてまとめた以下の報告書を公開しています。

 大学がどのように視覚障害学生を支援していくべきかについてまとめているのは当然ですが、視覚障害者がどの支援機器を用いて、文字情報を入手しているのかという支援の大前提として必要となる情報が整理されているほか、実際にテキストデータ等を提供するに際して必要な情報として、著作権法との関係(著作権法第37条3項に基づいて障害学生支援室が録音図書(DAISY)を製作することの可否など)、書籍テキストデータの提供依頼に対する出版社の姿勢をまとめた調査などが掲載されています。また、巻末には資料編としてテキスト校正ガイドブックも付されています。少し古い報告書ではあるものの、今読んでもなお参考になるところが多いのではないかと思います。
 
 2005年刊行なので、やや古いところはあるものの、視覚に障害のある学生の支援方法についてまとめた、以下のようなまとまった書籍もあります。

視覚障害学生サポートガイドブック―進学・入試から卒業・就職までの実践的支援ノウハウ

6月 25

『大学および短期大学における障害学生支援担当者の業務内容・専門性に関する実態調査報告書』

 大学の障害学生支援担当者の業務内容や必要とする専門性について、日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)が2011年に調査を行いました。その報告書が筑波技術大学の機関リポジトリで公開されています。

 上の調査は、障害学生支援担当者に焦点を当てた調査ですが、障害学生在籍状況や障害学生に対して行われている支援状況は独立行政法人日本学生支援機構が毎年行っています。