4月 09

4年ぶりに文部科学省で障害のある学生の修学支援に関する検討会が開催

 文部科学省で障害のある学生の修学支援に関する検討会が4年ぶりに開催されるそうです。1回目は4月19日。4年ぶりって・・・。

  平成24年度の検討会でまとめられた報告(第一次まとめ)は、大学における障害者差別解消法への対応の検討の歳に、もう少し具体的にいえば、対応要領の作成の際に大きく影響を与えたようですが、今年度の検討会ではどのようなテーマで検討がなされるのでしょうか。

参考

11月 02

大学の障害学生支援室が著作権法第37条第3項の複製の主体に該当するかについての文化庁著作権課の見解

 著作権法第37条第3項では、著作権法施行令で定められた施設は視覚障害その他の理由で読書に困難のある人々のために著作者の許諾なく複製が行えるという権利制限が規定されています。大学については、著作権法施行令第二条第一項第一号ロにおいて、

大学等の図書館及びこれに類する施設

が複製の主体(著作権法第37条第3項に基づく複製が行える機関)として規定されています。

 大学図書館が複製の主体に含まれることは間違いありません。しかし、「これに類する施設」に何が該当するかという点です。

 現状として、視覚障害など障害のある学生のために著作物のテキストデータの作成は、ほとんどの大学で障害学生支援室のような学生支援部局が行っており、大学図書館でそれを行っているところは立命館大学図書館などのごく少数の例外を除き、ほとんどありません。

 大学図書館は著作権法第37条第3項の規定に基づいて著作物の複製が行えますが、障害学生支援室が、上の「これに類する施設」に該当するとは文字だけでは解釈できないために、障害学生支援室は、著作権法第30条に基づき、学生の私的複製(手足理論)という形でしか著作物を複製することしかできなかったのではないかと思います。この場合、学生の私的複製という形ですので、テキストデータを作成しても、製作を依頼した学生にしか渡すことしかできず、同じ著作物のテキストデータをリクエストした他の学生への提供も大学間で相互貸借や共同利用ができません。

 ちなみに、大学として、著作物のテキストデータ(「教材のテキストデータ化」)の作成をしているところは、以下の日本学生支援機構の平成26年度の調査によれば、89の大学が実施しています。

 各大学でどれだけの数が製作されているかまではこの調査ではわかりませんが、これだけの数の大学で製作したテキストデータの共同利用が進んでいないということは、非常にもったいないことだと思います。これについて、平成24年度に文部科学省が立ち上げた「障がいのある学生の修学支援に関する検討会」でも議論され、報告書でも言及されています。

 他の学生への提供も大学間で相互貸借や共同利著作権法第37条第3項に基づく複製であれば可能です。障害学生支援室が「これに類する施設」に該当する施設という解釈がはっきりすれば、各大学が作成したテキストデータなどの共同利用が一気に進む可能性があります。

 これについて、内閣府の障害者政策委員会の8月の会議で、障害者政策委員長である静岡県立大学教授の石川准先生の質問に回答する形で、文化庁著作権課が公に見解を示しました。議事録も公開されるはずですが、動画は公開されており、それを確認することができます。障害学生支援室が全て含まれるというわけでもなさそうですが、大学図書館の趣旨に合致するものが含まれるという見解です。該当部分のテキストを起こしてみました(一字一句すべてが正確というわけではないので、ご注意を)。

障害者政策委員会 第25回動画 分割 2/2

※該当部分は、「第25回動画 分割 2/2の」58分33秒から1時間2分31秒。

障害者政策委員長 石川准氏

情報アクセシビリティと関係して、あるいは、教育とも関わってくる話ですが、著作権法の37条に関する点につきまして、文化庁著作権課にお聞きしたいのですけれども、政令で指定された機関が、視覚による読書に困難のある人々を対象として、著作物を複製することは、著作権者の許諾なしに認められる、というのがその37条の規定でありますけれども、その政令の中で大学の場合は、大学図書館がそのような機関として指定されております。ただし、現状の各大学における障害学生支援というのは、障害学生支援室といったところが中心になって行っておりまして、そこが例えば、視覚障害等あるいはディスレクシアの学生に対して著作物を電子データ化するといった作業も行っておりますけれども、これがそもそも著作権法第37条に基づく複製にあたるのかどうかということについて、各大学とも半信半疑、というところがございまして、したがって、共同利用、相互貸借みたいなこともできずにいるという状況がございます。それにつきまして、文化庁著作課としてのご見解、つまり、大学図書館等と書いてあって、障害学生支援室とは書いていないけれども、それも含むのか、あるいは、列挙型の規定となっているので、書いていないことは含んでいないのか、ということについて、この場を借りて、ご見解をいただけると有り難いと思います。

文化庁著作権課課長補佐 秋山氏

お問い合わせのありました著作権法37条3項の適用に関する部分ですけれども、同項の権利制限規定の適応のある主体に関しては政令で定める、ということになってございます。さきほどご説明いただいたとおりです。この政令でございますけれでも、著作権法施行令第二条第一項第一号ロにおきまして、この37条3項の規定の適用がうけられる主体として、「大学等の図書館及びこれに類する施設」と、このように定められてございます。ここにいう、「これに類する施設」といいますのは、大学図書館のように図書等の資料を備え置いて、学生に資料の貸出等の情報提供を行う機能、こういった機能を担う施設が想定されているものと解されるところでございまして、必ずしも名称が大学図書館となっていなくても、当然、その他のものが含まれるということは念頭に置かれているものと理解してございます。したがいまして、行政、私どもとしてまして、個々の事例への法令の適用関係について、個別に判断を申し上げる立場ではございませんけれども、ご質問のありましたのような、障害学生支援室といった名称を冠する組織につきましても、通常、上記の大学図書館のような趣旨に合致するものも多いと考えられますので、そうしたものにつきましては、基本的に「これに類する施設」に該当するというふうに解釈することもできるのではないかというふうに考えています。

障害者政策委員長 石川准氏

ありがとうございました。大変、明快なご回答をいただきまして、感謝いたします。

 

 障害者学生支援室のような学生支援部署も著作権法第37条第3項の複製の主体になりえる解釈を文化庁が公の場で議事録に残る形で示したことは大きいと思います。しかし、「大学図書館の趣旨に合致する」という条件めいたものがついていることが正直、わかりづらいところがありますね。情報提供だけすれば条件に合致するのか、資料も備えることがもとめられるのか。前者であれば、テキストデータ化をしているところは全て該当すると考えてよいように思いますが、後者の資料を備えることまで求められると該当するところはぐっと減る気がします。

参考

著作権法

第三十七条  3  視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者(以下この項及び第百二条第四項において「視覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、公表された著作物であつて、視覚によりその表現が認識される方式(視覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この項及び同条第四項において「視覚著作物」という。)について、専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、当該視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該視覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者により、当該方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。

著作権法施行令

第二条  法第三十七条第三項 (法第八十六条第一項 及び第三項 並びに第百二条第一項 において準用する場合を含む。)の政令で定める者は、次に掲げる者とする。
一  次に掲げる施設を設置して視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者(イ、ニ又はチに掲げる施設を設置する者にあつては国、地方公共団体又は一般社団法人等、ホに掲げる施設を設置する者にあつては地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人に限る。)
イ 児童福祉法 (昭和二十二年法律第百六十四号)第七条第一項 の障害児入所施設及び児童発達支援センター
ロ 大学等の図書館及びこれに類する施設
ハ 国立国会図書館
ニ 身体障害者福祉法 (昭和二十四年法律第二百八十三号)第五条第一項 の視聴覚障害者情報提供施設
ホ 図書館法第二条第一項 の図書館(司書等が置かれているものに限る。)
ヘ 学校図書館法 (昭和二十八年法律第百八十五号)第二条 の学校図書館
ト 老人福祉法 (昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の三 の養護老人ホーム及び特別養護老人ホーム
チ 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 (平成十七年法律第百二十三号)第五条第十一項 に規定する障害者支援施設及び同条第一項 に規定する障害福祉サービス事業(同条第七項 に規定する生活介護、同条第十二項 に規定する自立訓練、同条第十三項 に規定する就労移行支援又は同条第十四項 に規定する就労継続支援を行う事業に限る。)を行う施設
二  前号に掲げる者のほか、視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人(法第二条第六項 に規定する法人をいう。以下同じ。)のうち、視覚障害者等のための複製又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの

6月 26

全国高等教育障害学生支援協議会(AHEAD JAPAN) 第1回大会 参加メモ

 全国高等教育障害学生支援協議会(Association on Higher Education and Disability of Japan : AHEAD JAPAN) 第1回大会に1日目、2日目全ての日程参加してきました。AHEAD JAPANは高等教育機関における障害学生支援に関する相互の連携・協力体制を確保を目的に2014年10月に成立した団体です。

日程、場所、プログラム等は以下。

大会概要

日時:2015年6月19日(金曜日)、6月20日(土曜日)
場所:東京大学先端科学技術研究センター(東京都目黒区駒場4-6-1)
詳細: 全国高等教育障害学生支援協議会(AHEAD JAPAN) 第1回大会

 で、これはその参加メモです。

 1日目のプレカンファレンスには200名は参加していたそうで、おそらく2日目もそれくらい。まさに全国の障害学生支援関係者が一同に介していた感じではなかったかと思います。図書館関係者で参加していたのは、佛教大学の松戸宏予先生をのぞけば、おそらく私一人ぐらいだったと思います。

 この大会全体の大きなテーマが

  • 2015年4月に予定されている障害者差別解消法の施行に向けて国公立大学と私立大学に求められる対応

というもので、特に国立大学法人は、職員向けの対応要領を今年度中に作成することが義務づけられているので、時期的にはすでに待ったなしの状況。ということもあり、障害学生支援に積極的な大学が多く参加したということもあり、私が参加した国公立大学等分科会も含めて具体的で前向きな検討がなされている印象でした(私立大学等分科会のほうは参加していないので知りませんが・・・)。

 障害者差別解消法で求められる大学の対応については、以下にまとめたので、こちらをご参照ください。

 日本学生支援機構(JASSO)の実態調査でもわかることですが、今回の大会での議論、ポスター発表等を見ると、聴覚障害者、発達障害者、肢体不自由の学生が在学する大学が多く(JASSOの調査だと、病弱・虚弱の学生も多い)、視覚障害の学生が在学する大学は少ないということもあって、関心も前者に対する支援のほうが高い。公共図書館の障害者サービスが視覚障害者に対するサービスから始まっているので、「障害者」といえば視覚障害者がまず頭に浮かびますが、図書館が視覚障害者以外の障害者に対するサービスをもっと充実させないといけないのかなと思ったり。視覚障害者の障害学生そのものが少ないという点については、視覚障害者が大学進学に到達するには、勉学の上でいろいろな障害があるということも。公共図書館における障害者サービスと大学図書館におけるそれもだいぶ意味が変わってくるのでしょうか。

 2日間のイベントの内容を逐一紹介するのはさすがにやめておきますが、ざっくりと。
 

1日目プレカンファレンス

 1日目。プレカンファレンスといいつつ、障害学生支援について先進的な大学の具体的な取り組みついて情報交換されたり、対応要領の作成を想定した議論があったりと、大会の本丸はこの1日目だったと思います。

セミナー「差別解消法と合理的配慮の提供に向けた体制整備に必要なこと」

 配付資料として、協議会が作成した対応要領案が配布され、それを石川准先生(静岡大学)、村田淳先生(京都大学)、高橋知音先生(信州大学)、竹田一則先生(筑波大学)が解説。私立大学関係者向けには、柏倉秀克先生(日本福祉大学)が文部科学省から告示だされる対応指針を想定した体制整備について日本福祉大学の事例を紹介しつつ解説。

 「合理的配慮の否定」は、「障害を理由とする不当な差別的取り扱い」(これは事業者(民間)含めて禁止されている)に繋がるものですが、<「合理的配慮の提供」ができない>(「合理的配慮の提供」は、公的機関は義務、事業者(民間)は努力義務)との区別しづらい状況もあるかも(区別する必要があるかどうか微妙ですが)。

 会場からは学生の評価の方法と合理的配慮の不提供の兼ね合い、つまり、ノートテイクなどの十分な合理的な配慮を提供できなかった場合は、その学生の評価をするべきか、とかLGBTは障害者差別解消法でいうところの障害者に含まれるのか(例えば、ユニセックストイレの設置等の問題)などの質問がでました。

法人分科会「学内体制整備における問題点の共有」

 国公立大学等分科会と私立大学等分科会のうち、私は国公立大学等分科会に参加。 
 午後に引き続き、対応要領案をベースに話が進められました。ここでは、筑波技術大学、群馬大学、宮城教育大学、富山大学、筑波大学など障害学生支援に積極的な大学が具体的な事例を中心に積極に発言して分科会をひっぱっていたので、全体としてかなり前向きに議論が進められたのではないかと思う。

 例えば、以下について議論がなされていました。

  • 合理的配慮の提供の前提となる意思の表明は本人からのみか
  • 教員の教育方針から
  • 障害学生支援のための予算の獲得について
  • 専門性のある組織体制の構築
  • 合理的配慮の提供と学生の評価の関係(例えば、ノートテイクなどの十分に合理的配慮が提供できない場合のその学生の評価はどうあるべきか)
  • 対応要領の作成で障害者当事者団体に意見を聞くということになっているが、どの段階で行うべきなのか
  • 対応要領に従わない教職員への対応はどうあるべきか

2日目(メインカンファレンス) 



基調講演(ピーター・ブランク教授)

 シラキュース大学のピーター・ブランク教授による基調講演。テーマは「米国の障害学生支援の制度と課題」のはずですが・・・・、どちらかというと、6月22日にブランク教授が立命館大学で行ったシンポジウムの基調講演のテーマに近い気がしないでもない。しかし、話としては、とても面白かった。ブランク教授はWebの柔軟性を信じていて「だれもが使いやすい」と「特定の個人に特化して使いやすい」はWebでは両立しうると考えている。
 
 講演はブランク教授が2014年に出した以下の著書の前半部分を中心になっているとのこと。

eQuality: The Struggle for Web Accessibility by Persons with Cognitive Disabilities (Cambridge Disability Law and Policy Series)

 ところで、ブランク教授が話の中で言及していたRaising the Floor (RtF)が進める”GPII”というプロジェクト、どこかで聞いたことがあるとかと思ったら、自分でブログに書いていた(すっかり忘れてた・・)。

 これまた話がまた少し外れますが、ビル・ゲイツが、最近、グラフや写真などを文字や音に翻訳する技術の特許を申請したという話をブランク教授がしていた。ピカソの絵画があったとすると、コンピューターがそれを文字や音に翻訳してつたえる技術のようです。気になって探してみたけど、よくわからず。

情報共有セッション「差別解消法,合理的配慮の現状と今後」

 内閣府の方が障害者差別解消法とその基本方針、文部科学省の方がそれに対応する高等教育関係の政府内の動き、厚生労働省が改正障害者雇用促進法を紹介。

 会場から、雇用促進法は改正されたが、国家公務員法は改正されなかった(国立大学法人は国家公務員法に準じる運用をする?)。自立通勤通勤ができること、介助なしに業務が遂行できることが応募条件にすることを今だにある。介助者が必要な障害者は応募すらできないということにになる。これは不当な差別的取り扱いになるのか、なるなら国家公務員法はどうなるのかという趣旨の質問がでていました。
  
 

AHEAD JAPAN 大会に行きそびれた方、関西の方

 AHEAD JAPAN 大会に行きそびれた方、関西の方であれば、7月に以下のイベントが京都大学で行われます。プログラムと登壇者をみると、内容的には、AHEAD JAPAN 大会1日目の内容に近い話がされる気がします。