先のエントリで紹介したように、DAISY4こと、ANSI/NISO Z39.98-2012の仕様が先日正式に公開されました(以下、ANSI/NISO Z39.98-2012をDAISY4)。これはいわゆる中間(交換)フォーマットの仕様で、そのまま利用者が読書をする目的のフォーマットではありませんので、利用者が読書に利用するためにはEPUB、DAISYなどの配布フォーマットに変換する必要があります。そのDAISY4と配布フォーマットの間を橋渡しをする役目を担うのがDAISY Pipeline 2です。
DAISY Pipeline2
http://www.daisy.org/pipeline2/
(河村 宏氏の講演「DAISYの新時代―EPUB3を使って自分らしい知識のスタイルを選ぶ」より)
今回は、DAISY4と並んで重要である配布フォーマットへの変換ツール、DAISY Pipeline2をその使用方法を含めて紹介します。なお、このエントリを書いている2012年8月22日時点で2012年7月3日に公開された2.1.3beta版が最新となっていますので、この2.1.3beta版を中心に話を進めていきます。
目次
1.出入力フォーマット
現時点でDAISY Pipeline 2.1.3betaで変換出来るフォーマットは主に以下の通りです。上では、DAISY4を起点にと、紹介しましたが、DAISY2.02などからもEPUB3に変換することができます。
- DAISY2.02 → EPUB3
- DTBook(DAISY3のXMLドキュメント) → EPUB3
- DTBook(DAISY3のXMLドキュメント) → DAISY4 XML
- DAISY4 XML → EPUB3
現時点では、DAISY3、DAISY4については、出入力ともそれぞれのコンテンツファイル部分(DAISY3、DAISY4という器のなかに入っているコンテンツ本体)のみの対応になっているようです。
将来的に以下のように出入力フォーマットとしてDAISY3、DAISY4に対応していく必要があります。
- DAISY3 → EPUB3
- DASIY3 → DAISY4
- DAISY4 → EPUB3
DAISY3→EPUB3は、2012年6月以降の開発スケジュールに組み込まれています。それ以外のDAISY4→EPUB3、DASIY3→DAISY4はロードマップには掲載されていませんが、”ZedAI to EPUB 3“のLimitationの行間を読むといずれ対応するのではないかと思います。
その他、ドキュメントで確認できた範囲では今後、以下の変換に対応できるようにするとのことです。
- Word/ODT → EPUB3
- HTML5 → EPUB3
- DAISY4 → PEF(点字)
点字とTTSについては、WGが立ち上がって議論が進められている(いた?)ようです。これは期待したいですね。
点字
・Pipeline 2 Working Group: Braille Production
・Braille WGのまとめた要件、議事録など
TTS
・Pipeline 2 Working Group: TTS-based Production
・TTS WGのまとめた要件、議事録など
2. インターフェイス
DAISY Pipeline2で提供されているのは、現時点ではCI版のみです(Pipleline1はすでにGUI版の提供あり)。ローカルで実行する場合は、Windowsならコマンドプロンプト、Mac OS、Linuxならばターミナルを使用しましょう。なお、開発ロードマップによると、GUI版も2012年12月に公開される予定とのことです。
また、これはユーザーというよりも開発者向けの話になりますが、開発中であるものの、Web UIとしてWebサービスとして展開することも可能なようです。
・ DAISY Pipeline 2 Web UI
3.DAISY Pipeline 2を使う
簡単ですが、実際に使用法を紹介します。
3.1. 対応OS
Windows/Mac OSX/Linux
3.2. ダウンロード
以下でダウンロードできます。
・Downloads – daisy-pipeline
3.3. インストール・実行環境
とくにインストールは必要ありません。解凍したフォルダを作業しやすい適当なディレクトリに置いてください。
ただし、プログラムの実行にはRubyとJavaを実行できる環境が必要です。詳細はREADME.txtもしくは以下を参照してください。Mac OSならば、RubyもJavaもすでにはいっているはずです。
・Installing the Pipeline2
3.4. DAISY AI(DAISY4 Book Profile)を変換してEPUB3を生成してみる
まずはDASIY Pipeline2の実行の基本から。README.txtに記載のあるとおり、カレントディレクトリをcliディレクトリに変更して実行します。
では、サンプルファイルとしてついている以下のDAISY4のコンテンツファイル、alice.xmlをEPUB3に変換してみます。
コマンドの構文は以下です。
#Windows cli/dp2.exe command [option] #Mac OS/Linux cli/dp2 command [option]
今回は私はMac OS上で実行して、EPUB3に変換したのでコマンドは以下のようになります。
$ cli/dp2 zedai-to-epub3 --i-source samples/zedai/alice.xml --x-output-dir samples/output
上のコマンドを分解すると以下のようになります。
- cli/dp2: アプリケーションの指定。Windowsなら cli/dp2.exe
- zedai-to-epub3: zedaiからepub3を生成を命令するコマンド
- -i-source:入力ファイルを指定するオプション。今回は”samples/zedai/alice.xml”と指定。
- –x-output-dir:変換して出力するEPUB3の置き場所を指定するオプション。今回は”samples/output”ディレクトリ下に出力するように指定。
実行すると以下のようにソースファイルからうねうねとEPUB3へ変換していってくれます。
$ cli/dp2 zedai-to-epub3 --i-source samples/zedai/alice.xml --x-output-dir samples/output [DP2] Waiting for the WS to come up [DP2] The daisy pipeline 2 WS is up! [DP2] Job with id b86104ce-30c8-4527-936d-e43e6969e66b submitted to the server [WS] INFO(1) - Message:writing in-memory document to file:/Users/hogehoge/daisy-pipeline/samples/output/epub/Content/alice-1.xhtml [WS] INFO(2) - Message:writing in-memory document to file:/Users/hogehoge/daisy-pipeline/samples/output/epub/Content/alice-2.xhtml ・ ・ ・ [WS] INFO(5) - Message:copying disk file to file:/Users/hogehoge/daisy- [WS] INFO(13) - Message:copying disk file to file:/Users/hogehoge/daisy-pipeline/samples/output/epub/Content/images/alice09a.png [WS] INFO(14) - Message:writing in-memory document to file:/Users/hogehoge/daisy-pipeline/samples/output/epub/Content/package.opf [DP2] The job b86104ce-30c8-4527-936d-e43e6969e66b has been deleted from the server [DP2] DONE
”DONE”と表示されると指定したディレクトリにEPUB3ファイルとEPUB3としてパッケージ化する前の状態のファイルが生成されています。
今回実行したのは、zedai-to-epub3というコマンドですが、他にも以下のようなコマンドが実行できます。
- dtbook-to-zedai(DTBookからDASIY4のコンテンツファイルに変換)
- daisy202-to-epub3(DAISY2.02からEPUB3に変換)
- dtbook-to-epub3(DTBookからEPUB3へ変換)
オプション等はヘルプコマンドや以下のページでも参照することができます。samplesディレクトリにはDAISY2.02、DTBook(DAISY3)、ZedAI(DAISY4)のサンプルファイルもありますで、興味をお持ちの方はぜひお試しください。
・Scripts — Short description of available scripts with links to each script
なお、最後になりますが、以下のワークショップのスライド資料も参考になります。
・Pipeline 2 Web Service Workshop: Integration and Interoperability
関連エントリ
EPUB 3とDAISY 4の関係
DAISYからEPUB 3に変換する
- DAISY4からEPUB3への橋渡し役、DAISY Pipeline 2
- DAISY Pipeline 2のGUI版
- 音声のみのDAISY(DAISY 2.02)から EPUB 3 with Media Overlaysを生成する
- マルチメディアDAISY(DAISY 3)から EPUB 3 with Media Overlaysを生成する
- DAISY-AI(DAISY4)から生成したEPUB 3のセマンティクス(epub:type属性)