2008年9月に施行した教科書バリアフリー法(障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律)では、教科書発行者に文部科学省が定める拡大教科書の標準規格にあった教科用特定図書等の発行が努力義務として定められていますが、文部科学省のサイトによると、平成24年度に小中学校用の教科書に対応した教科用拡大図書が全点発行されたようです。100%です。
教科書(平成24年度) | 対応する拡大教科書発行点数 | |||||
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種類 | 点数 | 24年度 | 23年度 | 22年度 | 21年度 | |
小学校 | 51 | 280 | 280(100%) | 280 | 81 | 81 |
中学校 | 66 | 131 | 131(100%) | 99 | 99 | 73 |
合計 | 117 | 411 | 411 | 379 | 180 | 154 |
小学校及び中学校におけるすべての教科の教科書を対象とする拡大教科書の標準規格は拡大教科書普及推進会議 第一次報告でまとめられています。
- [PDF]障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律第六条第一項の規定に基づき定める教科用拡大図書の標準的な規格:文部科学省
- (参考)拡大教科書普及推進会議 第一次報告 第3章 教科書デジタルデータの提供について:文部科学省
教科書発行者はこの標準規格と国立特別支援教育総合研究所作成の『「拡大教科書」作成マニュアル 拡大教科書へのアプローチ』を参照しながら作成しているようです。
文部科学省は平成22年度から「標準規格の拡大教科書等の作成支援のための調査研究」事業として、教科書発行者側の状況とユーザー側、つまり、拡大教科書を使用する生徒側の状況を継続して調査しています。オリジナルの教科書が生徒にとって使いやすいようフォントやレイアウトなどのレベルで非常に練られて作成されているため、それを拡大教科書にする場合もただフォント拡大すればよいというものではなく、教科書の持ち味を残したまま、レイアウト、フォント、配色を変更し、拡大教科書にする必要があり、教科書発行者側にオリジナルの教科書作成と同等に近い負担がかかっているようです。また、ユーザー側の満足度は比較的高いものの、障害の状況は人によってそれぞれ異なるため、標準規格に従って作成した拡大教科書が全ての生徒のニーズを満せるものではないということも今後の課題になりそうです。
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(拡大教科書作成者側に対する調査)
- 「拡大教科書の効率的な作成方法について」報告書(平成22年度標準規格の拡大教科書等の作成支援のための調査研究)
- 「拡大教科書の効率的な作成方法について」報告書(平成23年度標準規格の拡大教科書等の作成支援のための調査研究)
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(拡大教科書のユーザー側に対する調査)
- 平成23年度文部科学省教科書課「標準規格の拡大教科書等の作成支援のための調査研究」
- 平成22年度文部科学省教科書課「標準規格の拡大教科書等の作成支援のための調査研究」