アクセシビリティの観点から電子書籍のおけるTTSの読み上げの正確性をどこまで保障するべきか

 公共図書館や点字図書館が著作権法第37条第3項の権利制限規定に基づいて、視覚障害者等のためにテキストDAISYを作るようにEPUBを作成した場合のPackage Documentファイル(OPFファイル)に包含するメタデータを考えてみました。EPUBのアクセシビリティ仕様であるEPUB Accessibility 1.0の要件を可能な限り満たすメタデータを目指しました。

 今回は、仮にEPUBを制作する図書館を「XXX図書館」とし、この図書館が、『ローマ帝国の崩壊: 文明が終わるということ』(ブライアン・ウォード=パーキンズ 著、南雲泰輔訳)を原本にたEPUB作成した場合を想定してみました。

原本となる書籍の特徴

  • 責任者に著者と訳者がいる。
  • テキストが主体の書籍だが、図(テキストがベースの図も含む)や地図、写真、グラフが用いられている。
  • テキストの一部にルビがふられている(ただし、訳語に原語の発音をカタカナ表記でルビをふったもの)。

想定されるEPUBの特徴

 視覚障害者等のためにテキストDAISYを作るようにEPUBを制作するということで、通常のリフロー型のEPUBであるということに加えて、以下のようなアクセシビリティの要件が追加されると想定します。

  • 原本のページ情報が追加されている。
  • 原本にあるルビはルビタグを用いて表示される(逆にいえば、原本にルビのない箇所にはルビを追加しない)。
  • 図や地図、写真、グラフが画像として挿入される場合は、代替テキストあるいは説明が長くなる場合は長い説明が追加されている。
  • DRMは用いない(DAISYだからDRMは不可というわけではないですが、用いないほうが利用者のリーディングシステムの選択の幅が拡がるのでないほうが望ましい)

以上で、おそらくWCAG 2.0 Level AAに準拠することになるのではないかと思われます。

想定されるEPUBのメタデータ

 EPUB Accessibility 1.0の要件を可能な限り満たすメタデータを包含します。
 また、著作権法第37条第3項の権利制限規定に基づいて製作されたDAISY的なEPUBならば、その原本の出版事項はメタデータに入れておく必要があります。しかし、EPUBの仕様に規定されるメタデータだけでは、語彙が不足するようなので、接頭辞”dtb”を宣言して、DAISY3の仕様から語彙を一部使用することにしました(ただし、DAISY3のメタデータの語彙が定義されているURIが見つからないので、URIはとりあえずの仮のもの)。

作ってみたEPUBのメタデータ

 作ってみたメタデータは以下の通りです。EPUB Accessibility 1.0の要件に関係してくるのは、「アクセシビリティ情報」以下のところです。

 なお、タイトルや責任者名にヨミを入れているのは、今回なんとなく入れてみたという次元のもので、必須というものでもないようです(DAISYでは入れられている例はあまり見たことがない)。
 
 接頭辞”schema”や”a11y”は、EPUB Publications Reserved Prefixesで予約済みなので、今回、接頭辞として宣言したのは、”dtb”のみです。
 実際に作ろうとすると、悩むところが多かったです。正しいかどうか・・・・

<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
	<package 
		xmlns="http://www.idpf.org/2007/opf" 
		unique-identifier="uni_id" 
		version="3.0">
   	<metadata xmlns:dc="http://purl.org/dc/elements/1.1/">

<!-- 識別子 -->
    		  <dc:identifier id="uni_id">urn:uuid:4dafre9c99rkfkrfirlelir84448kckc8kiiri393943cdrerre434343gbghtht</dc:identifier>
<!-- タイトル -->
  		<dc:title id="title">ローマ帝国の崩壊 : 文明が終わるということ</dc:title>
  		<meta refines="#title" property="file-as">ローマ テイコク ノ ホウカイ : ブンメイ ガ オワル ト イウ コト</meta>
<!-- 責任者 -->
  		<dc:creator id="creator1">ブライアン・ウォード=パーキンズ </dc:creator>
  		<meta refines="#creator1" property="role" scheme="marc:relators">aut</meta><!-- 役割:著者 -->
  		<meta refines="#creator1" property="alternate-script" xml:lang="en">Ward-Perkins, Bryan</meta>
  		<meta refines="#creator1" property="display-seq">1</meta>
  		
   		<dc:creator id="creator2">南雲泰輔</dc:creator>
  		<meta refines="#creator2" property="role" scheme="marc:relators">trl</meta><!-- 役割:訳者 -->
  		<meta refines="#creator2" property="file-as">ナグモ, タイスケ </meta>
  		<meta refines="#creator2" property="display-seq">2</meta>
<!-- フォーマット-->
  		<dc:format>application/epub+zip</dc:format>
 <!-- 言語 -->
   		<dc:language>ja</dc:language>
 <!-- 著作権情報 -->
   		<dc:rights>このEPUB出版物は、著作権法第37条第3項の規定に基づき、障害等の理由により原本をそのままでは利用できない方のためにXXX図書館が制作したものです。著作権法に定められた権利制限規定に該当する場合を除き、又貸し、複製等による第三者への提供はできません。 </dc:rights>

<!-- EPUB製作機関情報 -->
   		<dc:publisher>XXX図書館</dc:publisher>
  		<dc:date>2017-07-30T22:34:23Z</ dc:date >
  		<meta property="dcterms:modified">2017-07-31T23:38:37Z</meta>

<!-- 原本出版情報 -->
  		<dc:source id="isbn_id">urn:isbn: 978-4-560-08354-3</dc:identifier>
  		<meta refines="#isbn_id" property="identifier-type" scheme="onix:codelist5">15</meta>
  		<!-- ↑原本のISBNが13桁の場合は"15"、原本のISBNが10桁の場合は"02" -->
  		<meta refines="#isbn_id" property="source-of">pagination</meta>
  		<!-- ↑EPUBに原本のページ情報を埋め込んだ場合にそのページ情報のソースがこの原本であるということをこれで記述 -->

<!-- アクセシビリティ情報 -->
<!-- accessMode -->
  		<meta property="schema:accessMode">textual</meta><
   		<meta property="schema:accessMode">visual</meta>
   		<meta property="schema:accessMode">textOnVisual</meta>
   		<meta property="schema:accessMode">chartOnVisual</meta>
<!-- accessModeSufficient -->
    		<meta property="schema:accessModeSufficient">textual,visual</meta>
   		<meta property="schema:accessModeSufficient">textual</meta>
<!-- accessibilityFeature -->
   		<meta property="schema:accessibilityFeature">alternativeText</meta>
   		<meta property="schema:accessibilityFeature">readingOrder</meta>
   		<meta property="schema:accessibilityFeature">tableOfContents</meta>
   		<meta property="schema:accessibilityFeature">printPageNumbers</meta>
   		<meta property="schema:accessibilityFeature">structuralNavigation</meta>
   		<meta property="schema:accessibilityFeature">unlocked</meta>
   		<meta property="schema:accessibilityFeature">displayTransformability</meta>
   		<meta property="schema:accessibilityFeature">longDescription</meta>	
   		<meta property="schema:accessibilityFeature">structuralNavigation</meta>	
<!-- schema:accessibilityHazard -->
  		<meta property="schema:accessibilityHazard">noFlashingHazard</meta>
     		<meta property="schema:accessibilityHazard">noMotionSimulationHazard</meta>
   		<meta property="schema:accessibilityHazard">noSoundHazard</meta>
<!-- schema:accessibilitySummary -->
    		<meta property="schema:accessibilitySummary">全ての図、写真、グラフ等には代替テキストが提供されているか、長文になる場合は、その近くにそれらの長い説明テキストが挿入されています。このEPUB出版物はWCAG 2.0 Level AAに準拠しています。</meta>
<!-- WACGへの適合レベル-->
   		<meta property="a11y:certifiedBy">XXX図書館</meta>
  		<link rel="dcterms:conformsTo" href="http://www.idpf.org/epub/a11y/accessibility-20170105.html#wcag-aa"/>
  	 </metadata>
  		
   	 <manifest>
   …
</package>

作ってみた感想

語彙の追加

 テキストDAISY的に作る場合は、原本出版社(sourcePublisher)や原本出版年(dtb:sourceDate)を入れたい。DAISY3の語彙を使用したいが、DAISY3の語彙を定義しているURIがよく分からず、困った(未だに解決していない)。

アクセシビリティメタデータ

 アクセシビリティメタデータについては、以下を参照。

 アクセシビリティ情報として、追加したSchema.orgのメタデータは、”WebSchemas/Accessibility“(imagedriveさんによる日本語訳)を参考に入力しましたが、個々の値については、Schema.orgの本サイトを含め、どこにも説明がされてないものが多く、どの値を入れるべきか迷うところが多かったです。例えば

  • accessMode:値に”chartOnVisual”、”textOnVisual”など”〜OnVisual”というものが用意されているが、”visual”と区別するのか(視覚機能が必要という点では全て同じように思えるが、画像として表示されるテキスト、グラフ区別する必要があるのか)
  • accessibilityFeature: “rubyAnnotations”について。ごく一部分の提供でも”rubyAnnotations”は入れるべきなのか。また、ルビの目的に制限はないのか(今回は、原本のルビが補足情報の追加が目的でアクセシビリティ機能の追加ではないので、この値は使用しなかった)。
  • WACG以外に適合させるガイドライン、規格は特に思いつかなかった。その場合、「最適化されたEPUB出版物」の要件として求められる「最適化(規格またはガイドライン識別)の要件」に適合できないということになるのか、そのあたりがよく分からなかった。代替手段として、accessibilitySummaryにきちんと書いておけばよいのか。

 dcterms:conformsToにWCAGのどのレベルに準拠しているかを記入することが求められていますが、あわせて”a11y:certifiedBy”で誰がそれを証明するかを記入することも求められています。本当は第三者の外部機関に証明してもらうことが一番でしょうが、図書館で費用をかけて個々のEPUBに外部に証明してもらうのは、難しいとおもわれますので、おれおれ証明になりますが、制作館である「XXX図書館」が証明することにしました。仕様にも出版社が証明者になる例があるので、問題ないはずですが・・・


※2017/08/01 追記
imagedriveさんがWebSchemas/Accessibilityに追記された訳注を参考に、一部メタデータを修正しました。

具体的には以下を追加しました。

<meta property="schema:accessibilityFeature">tableOfContents</meta>
<meta property="schema:accessibilityFeature">displayTransformability</meta>

  迷ったのは、すでに記入していた以下のメタデータです。番号付き見出しをEPUB出版物全体をとおして正しく使用できるかどうか。該当する場合としない場合がありそうですが、今回は該当するという前提で残しました。

<meta property="schema:accessibilityFeature">structuralNavigation</meta>

 

※2017/08/03 追記
dc:rightsに著作権情報(著作権法第37条第3項の権利制限規定に基づいて制作されたこと)を追加しました。DAISYならほぼ当然のことですが、EPUBだと必要でしょうか。おそらく

 <!-- 著作権情報 -->
	 <dc:rights>このEPUB出版物は、著作権法第37条第3項の規定に基づき、障害等の理由により原本をそのままでは利用できない方のためにXXX図書館が制作したものです。著作権法に定められた権利制限規定に該当する場合を除き、又貸し、複製等による第三者への提供はできません。 </dc:rights>

 

※2017/08/09 追記
DAISY3のメタデータを追加して原本出版社(sourcePublisher)や原本出版年(dtb:sourceDate)を入れていましたが、DAISY3のメタデータの語彙を定義するURIがみつからないので、原本出版社(sourcePublisher)や原本出版年(dtb:sourceDate)及び接頭辞”dtb:”の定義部分を削除しました。EPUB3の仕様にもあるとおり、dc:sourceに原本のISBNを入れることで、原本を一意に指定できるので、それでよしとしました。ISBNを持たない資料を原本とする場合は、<dc:source id=”###”>Publisher, YYYY, 1st edition, hardback</dc:source>のように原本の出版情報を直接、書けばよいみたいです(参考: Source of pagination for books without ISBN | International Digital Publishing Forum)。

<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
	<package 
		xmlns="http://www.idpf.org/2007/opf" 
		unique-identifier="uni_id" 
		version="3.0" 
		prefix="dtb: http://www.loc.gov/nls/z3986/2005/dtbook"
		>
<!-- 原本出版情報 -->
  		<dc:source id="isbn_id">urn:isbn: 978-4-560-08354-3</dc:identifier>
  		<meta refines="#isbn_id" property="identifier-type" scheme="onix:codelist5">15</meta>
  		<!-- ↑原本のISBNが13桁の場合は"15"、原本のISBNが10桁の場合は"02" -->
  		<meta refines="#isbn_id" property="source-of">pagination</meta>
  		<!-- ↑EPUBに原本のページ情報を埋め込んだ場合にそのページ情報のソースがこの原本であるということをこれで記述 -->
  		<meta property="dtb:sourcePublisher">白水社</meta>
  		<meta property="dtb:sourceDate">2014</meta>

 余談ですが、EPUB 3.1の仕様 では、dc:sourceに対して言及はされているものの、dc:sourceそのものの項目がばっさり削除されていますね・・・。上のやり方(特に原本のページ番号を埋め込んでいるという”pagenation”という情報)は3.1でも使えるのかどうか・・

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