W3CのWebアクセシビリティに関するオンラインシンポジウム "Easy-to-Read on the Web" (日本時間12/4 0:00-)

 W3CがWebアクセシビリティに関するオンラインシンポジウム “Easy-to-Read on the Web”を開催するそうです。
 
 「いろいろな分野の研究者がいろいろな角度やレイヤーでアクセシビリティについて研究を進め、いろいろなガイドラインやツールを作ってきたけど、みんなあつまって議論しようぜ!なっ!」という趣旨のようです。

・概要

 シンポジウムの概要は以下の通り。
名称:Easy-to-Read on the Web Online Symposium
主催: W3C/WAI Research and Development Working Group (RDWG)
時間:12/3 15:00-18:00(UTC) ※日本時間で12/4 00:00-03:00
参加無料。登録は11/28まで(もしくは申し込み上限に達するまで)。
参加方法: メールによる事前質問、電話会議、ライブキャプショニング(テキストによる実況?)、チャット
URL: http://www.w3.org/WAI/RD/2012/easy-to-read/
 参加者にはシンポジウムが開始される前が事前に報告書が配布されます。開始する前に読んでおけということです。君は限られた枠に入っているのだから、積極的に参加してねという雰囲気で「UST中継みよっかな」という気分で参加するとはポカーンとしてしまうかもしれません。
 日本からだとなかなか参加しづらい時間帯ではありますが、(そして、私はおそらく参加しませんが)個人的になかなかなツボなシンポジウムなので紹介してみました。
※2012/11/29追記
 上の締め切りは電話会議参加の締め切りのようで、ライブキャプショニング(テキストによる実況?)、チャットによる参加は登録不要とのことです。
 
すでに終了しましたが、以下のオンラインシンポジウムもおもしろそうでした。
Text Customization for Readability Online Symposium 19 November 2012

・アジェンダ(2012/11/29追記)

 アジェンダは以下の通り(時刻はUTC)。
Time: 15:00-18:00 UTC (times in different locations).

  1. Introduction to topic and symposium (15:00 – 15:10)
  2. Easy-to-Read Guidelines and impact on WCAG 2.0 (15:10 – 15:35)
    1. What are the key aspects of Easy-to-Read that must / should / “would be nice to have” added to WCAG 2.0 – where to draw the line.
    2. How to value the chances to implement a) Plain Language and b) Easy-to-Read in everyday web design processes and at what level should they be integrated into WCAG 2.0?
    3. Transferability of Easy-to-Read guidelines, concepts and tools between different languages and cultural contexts?
  3. Tools for Easy-to-Read (15.35 – 16.25)
    1. Based on research and experiences,
      • How to make WCAG 2.0 more concisely related to Easy-to-Read?
      • How to formulate guidelines which can be followed and implemented efficiently supported by tools?
    2. Are tools to support Easy-to-Read and Plain Language in practice sufficient in terms of a) covering areas and b) intended user groups?
    3. Do tools support transferability into other languages, cultural contexts and application scenarios (e.g. legal, medical, technical, … information)?
  4. Workflow, Process and Services of Easy-to-Read (16.25 – 16.50)
    1. What sets of guidelines are applied predominantly on the web: Easy-to-Read, Plain Language or others?
    2. Is there a need for transfer in other languages and cultural contexts and to build up Easy-to-Read test corpora?
    3. Is there a defined workflow for Easy-to-Read, would it be useful and how should it be designed?
  5. Short Break (16:50 – 17:00)
  6. Next steps and conclusions – Further questions and answers to the panel with input from the symposium participants (17:00-18:00)

・事前配布される報告書(とそのアブストラクト)

 事前配布される報告書の一覧とそのアブストラクトが公開されています。

Easy-to-Read Guidelines and Impact on WCAG 2.0

Tools for Easy-to-Read:

Workflow, Process and Services of Easy-to-Read:

独立系の出版社や個人作家を支援するソーシャルリーディングサービスReadmillとは

 今回はドイツのベンチャー企業が2011年12月に立ちあげたばかりのReadmillを紹介します。クラウドなマイライブラリサービス兼ソーシャルリーディングサービスです。

http://readmill.com/

1. Readmillとは?

  
 まずは以下の動画をご覧ください。提供されているサービスのおおまかな雰囲気がつかめると思います。

This is Readmill from Readmill 紹介動画 on Vimeo.
  上の動画で紹介されているReadmillの主な特徴をあげていけば、以下のような感じでしょうか。

  1. 電子書籍のコンテンツをクラウドなマイライブラリに登録できる。
  2. 電子書籍の本文に付与したハイライトやコメントをフォロワー同士でタイムライン形式や本文上に直接表示させる形で共有することができる。また、もちろんTwitterやfacebook、tumblrに流すことも可能。
  3. 電子書籍ビューワとして、現在、iPad専用のリーダーアプリReadmill for iPad が用意されている。2にあげたハイライトやコメントの付与はこのアプリ上で行う。

 最近のソーシャルリーディングサービスとしては、ごくごく標準的なサービスを提供していると言えます。
 

2. ライブラリサービスとビューワアプリ

 登録できるファイルフォーマットはPDF、EPUBです。2012年10月にはAdobe DRMで保護されたコンテンツの対応もできるようになりましたので、Barnes & Noble、Kobo、Googleなどが採用している有料コンテンツも登録できるようになったようです※1

 
 ライブラリに登録した電子書籍はReadmillが提供しているビューワアプリReadmill for iPad で読むことができます。

Readmill for iPad

 
このアプリについては、こもりまさあきさんが以下のブログで詳しく紹介してくださっていますので、こちらをご参照ください。
ソーシャルなePubリーダー、Readmill | gaspanik weblog
 このReadmill for iPad の紹介動画も公開されています。

Readmill for iPad 紹介動画 from Readmill on Vimeo.
  UIはなかなか洗練されています。
  しかし・・・・・、日本語のEPUBはバージョン関係なくうまく表示ができないようです。また、PDF上ではハイライトやコメントの付与ができないため、Readmillのウリの一つであるソーシャルな機能を使うことができません。単体のビューワアプリとしてみると、このビューワは日本で使用されるにはまだまだ機能不足のようです。Readmillで電子書籍を読む唯一の手段であるこのiPadアプリがこういう状態であることは少し残念ですね。立ち上がって間もないサービスですので、今後の対応を期待したいところです。 
 

3 iPadに自動送信できる「Send to Readmill」機能

 ビューワアプリが結構残念なReadmillですが、「Send to Readmill」機能を紹介せねばなりません。もしかするとこの機能がReadmillというサービスとその方向性を際だたせている機能かもしれません。
 

 「Send to Readmill」機能とは、電子書籍プラットフォームのコンテンツの各ページ等に設置されている上の「Send to Readmill」ボタンを押すと自分のReadmillのライブラリにコンテンツごと登録されるという機能です。
例: Alice’s Adventures in Wonderland – Lewis Carroll | Feedbooks

「Send to Readmill」紹介動画 from Readmill on Vimeo.
  ビューワアプリReadmill for iPad はReadmillのライブラリと同期する機能がありますので、コンテンツが自動的にダウンロードされることになります。アマゾンがKindleで提供している自動送信に近い使い勝手を実現しています。
 この機能、実はまだドラフト段階であるOPDS Callbackを使って実現しているんです。ええ、OPDS Callbackです。大事なことなので二度言いました※2。そうOPDS Callbackです。
 無料のコンテンツならば、上で紹介したFeedbooksのパブリックドメインのコンテンツのようにコンテンツを紹介するページに設置してしまえばいいわけです。では、有料のコンテンツはどうするの?ということですが、 A Book Apartのように、決済終了後にユーザーに見せるダウンロード画面に設置するという方法もあります※3

 
 この「Send to Readmill」機能、 OPDS Callbackが採用されていることより重要なことは、 
 誰でも「Send to Readmill」ボタンを簡単に設置することができること 
だと思います。
 
 設置方法も以下のようにコンテンツファイルのURLを記入するだけでボタンを設置するためのコードを生成できるページが用意されています。このコードを流用すれば、非プログラマーな人でも簡単に設置できます※4

Get the Send to Readmill code

 ためしに、ということで、板橋区議会が発行している広報誌『いたばし区議会だより』のEPUB版の「Send to Readmill」ボタンを作成してみました。 
いたばし区議会だより第161号 – 板橋区議会

 Readmillにログインした状態で上のボタンを押すと、Readmillのライブラリに登録され、同期したReadmill for iPad にそのままダウンロードされることになります。
 コンテンツファイルがPDFファイルでも、もちろん問題なく「Send to Readmill」ボタンを設置できます。
国立国会図書館月報 619号(2012年10月)

 独立系の出版社や個人作家が独力で提供から利用に至るフローをユーザーに用意することはとても大変ですが、Readmillのようなサービスがそのフローを肩代わりしてくれるのであれば、プラットフォームに頼る理由が1つ減ることになります。Readmillのサービスはまだ成長途上であると言わざるを得ない部分がありますが、この種のサービスは日本でも拡がって欲しいサービスだと思いました。
 
※1 Social Reading App Readmill Adds Adobe DRM and PDF, Adds New Stores | TechCrunch
  ただし、ローカルからDRMなしのEPUBファイルをアップロードしようとすると英語のファイルでもエラーが発生してしまうことも・・、あれっ・・・・・(汗)。
※2 Send to Readmill : Official Feedbooks Blog
   OPDS Callbackは大事なことなので、さらに別のエントリで紹介するかもしれません。
※3 Send to Readmill welcomes A Book Apart! | Readmill Blog
  上のA Book Apartのダウンロード画面もこのエントリより転載。
※4 より詳細は情報は 「API Documentation – Readmill」で。

W3C Web Content Accessibility Guidelines(WCAG) 2.0が国際規格化

 W3C Web Content Accessibility Guidelines(WCAG) 2.0ISO/IEC 40500:2012として承認されたようです。World Wide Web Consortium (W3C) ISO/IEC joint technical committee for information technology(ISOとIECの情報技術のための合同技術委員会)が共同で本日、発表しています。
ISO/IEC 40500:2012 Information technology — W3C Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.0
W3C Web Content Accessibility Guidelines 2.0 Approved as ISO/IEC International Standard
Web Content Accessibility Guidelines(WCAG) 2.0
http://www.w3.org/TR/WCAG20/
ウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン (WCAG) 2.0 日本語訳
http://www.jsa.or.jp/stdz/instac/commitee-acc/W3C-WCAG/WCAG20/index.html
 ちなみにWCAG 2.0は日本でもJIS X8341-3:2010として、JIS規格に組み込まれています。
JIS X 8341-3:2010 解説 | 公開資料&リンク集 | ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)
 なお、これは蛇足ですが、「X8341」の「8341」は「や・さ・し・い」の語呂合わせからきているそうで、その他の「X8431-」の規格もアクセシビリティに関する規格にあてられています(Xは情報技術分野の規格であることを示す)。覚えやすい。
JIS X8341概要:情報アクセシビリティ国際標準化委員会:INSTAC:JSA