アクセシブルに「強調」-strong要素、em要素、b要素、mark要素 –

 なんとなく強調するために使われているっぽいstrong要素、em要素、b要素、mark要素の使い分けについて整理し、アクセシビリティ的にどうなのかというところを簡単にまとめてみました。なお、HTML5になってこれらの要素の定義が変更されたようですので、今回はHTML5の仕様に基づいてまとめます。

テキストに対する意味付けをする要素

 HTML5タグリファレンスを参照して整理しますと以下の通りになります。 

strong要素

 重要性を表します。

em要素

 強調を表します。重要性を伝える意味はありません。

b要素

 他のテキストと視覚的に区別させたいときに使用します。重要性や強調は意味しません。太字で表示されることが多いですが、太字で表示されるとは限りません。

mark要素(HTML5の新要素)

 特定の範囲をハイライトします。他の箇所である箇所を言及した場合にそのある箇所を目立たせる場合に使用されます。重要性や強調は意味しません

strong要素とem要素の違い

 strong要素が意味するところの重要性とem要素が意味するところの強調の違いが分かりづらいですね。以下のHTML5.JPで公開されているhtml5doctorの翻訳でその違いが詳しく紹介されていますが、アクセントを置くのはそこが重要だからではないかという気もしまして、個人的にはその使い分けが完全にはよくわかっていません。重要だからアクセントを置くならばstrong要素を、重要ではないがアクセントを置くならem要素をとなるのでしょうか。ケースバイケースで判断するところもあるのだと思います。

参考

支援技術でのサポート

 strong要素とem要素はテキストにそれぞれ重要性と強調の意味を持たせることができますので、支援技術が対応していれば、プログラムがその意味を理解し、ユーザーに伝えることができます。
 
 残念ながら現時点でこの両要素に対応するものはほとんど存在しないようですが、重要性や強調を表現する場合は、将来の支援技術の対応に備えるために、また、テキストにセマンティクスを与えるためにもstrong要素やem要素を使用するべきです。

参考

WCAG2.0(JIS X8341-3:2010)上では?

 W3CのウェブアクセシビリティガイドラインであるWCAG2.0では、「1.3.1 情報及び関係性」が今回のエントリに係る要件になります(JIS X8341-3:2010では、7.1.3.1)。

1.3.1 情報及び関係性

表現を通じて伝達されている情報、 構造、及び関係性は、プログラムが解釈可能である。プログラムが解釈可能にすることができないウェブコンテンツ技術を用いる場合は、それらがテキストで提供されている。 (レベルA)

参考:達成基準 1.3.1 を理解する | WCAG 2.0解説書
 

関連エントリ

ウェブアクセシビリティガイドラインについて
代替テキスト
リンクのはり方

国際電子出版EXPO2011におけるBRC松井 進氏の講演「視覚障がい者とインターネット」の講演動画

  一昨年の国際電子出版EXPO2011で行われたバリアフリー資料リソースセンター松井 進氏の「視覚障がい者とインターネット」の動画が公開されていました。UStreamでまだアーカイブもされているのですが、こちらのほうが画質もよさそうなので、こちらを紹介。1/4〜4/4あわせて45分です。

視覚障がい者とインターネット【国際電子出版EXPO2011】
※上の埋め込み動画は1/4から4/4が連続再生されますので、個々に視聴したい場合は上のリンクにあるYoutubeからどうぞ。
バリアフリー資料リソースセンター(BRC)副理事長 松井 進氏
2011年7月9日(土) 11:30~12:20
国際電子出版EXPO2011 ボイジャー・セルシス合同ブース内 Voyager Speaking Sessions
発表資料も公開されています。
[PDF]発表資料
 「視覚障がい者とインターネット」とありますが、内容的には視覚障害者がどのように「読書」を行うのか、支援機器のデモを交えての紹介と視覚障害者にとってのアクセシブルな電子書籍とは何かというお話でした。プレクストークリンクポケットを使った音声のみによるサピエ図書館の利用デモを観ることができたのが、個人的に非常に良かったです。
 
 プレクストークがサピエ図書のウェブサイトを音声で読み上げて利用させているのかは分かりませんが、他のウェブサイトも同様のことが本当はできなくてはいけない。GUIで利用できるだけではなく。プレクストークのような機器で音声だけでも利用することができるアクセシブルなデザインが求められているのだろうと感じました。もしかすると、これがマルチモーダルというのでしょうか。
 松井氏は講演の中で、後付けのアクセシビリティではなく、アクセシビリティを最初から盛り込んだ電子書籍をとおっしゃっていましたが、これは電子書籍に限らずの話だと思います。ウェブデザインもアクセシビリティをあらかじめ盛り込んだ「アクセシビリティファースト」な考えが普及して欲しいと願うところです。
 

紹介されたソフトウェア、支援機器など

アクセシビリティに配慮したリンクのはり方とは(その3)- 画像を用いたリンク –

 前々回前回のエントリに引き続き、アクセシビリティに配慮したリンクのはり方を取り上げます。
 
今回は、アクセシビリティに配慮した画像を用いたリンクのはり方です。
 画像といえば代替テキストですが、アクセシブルな代替テキストの提供方法はすでに以下のエントリで紹介したことがあります。

 上をベースにしつつ、今回は改めてリンクのはり方に焦点をあてたいと思います。

リンクテキストとしての代替テキスト

 たとえば、以下のように画像がリンクの唯一のコンテンツである場合は、画像の代替テキストがそのリンクテキストの役目を果たす事になります。

<a href="toppage.html"><img src="toppage.jpg" alt="トップページへ"></a>

 この場合はリンクの目的を伝えるテキストを画像の代替テキストとして提供します。
 以下のように画像そのものを説明するテキストを代替テキストとして提供すると、スクリーンリーダーなどの支援技術のユーザーにはこのリンクの目的が伝わりません。

#不適合事例
<a href="toppage.html"><img src="toppage.jpg" alt="トップページのスナップショット></a>

  
 以下のように検索ボタンとして虫眼鏡の画像を使用するケースです。

 

  検索ボタンとして使用されるので「検索」といれるほうが適切です。

<input type="image" src="image.png" alt =検索"/>

 
 検索ボタンとして使用される虫眼鏡画像の代替テキストに「虫眼鏡」といれてはなりません。

#不適合事例
<input type="image" src="image.png" alt =虫眼鏡"/>

 

参考

 
 

画像とリンクテキストの組み合わせ

 以下のように画像を用いてリンク先をビジュアル的にイメージしやすくする手法がよく使われています。

Yahoo! Japan
  Yahoo! Japan

  この場合、以下のように画像とテキストそれぞれに対してリンクをはり、かつ代替テキストとリンクテキストが同一だと、スクリーンリーダーでは全く同じテキストが重複して2度読まれることになります。

#不適合事例
<a href="http://www.yahoo.co.jp/"><img src="yahoo_cap.gif" alt="Yahoo! Japan" /></a>
<a href="http://www.yahoo.co.jp/">Yahoo! Japan</a>

 
 上のような場合は、リンクはテキスト及びアイコンを含み、alt属性を以下のように空にするか、

<a href="http://www.yahoo.co.jp/"><img src="yahoo_cap.gif" alt="" /></a>
<a href="http://www.yahoo.co.jp/">Yahoo! Japan</a>

 
 もしくはalt属性には画像を説明するテキストを代替テキストとして提供します。

<a href="http://www.yahoo.co.jp/"><img src="yahoo_cap.gif" alt="Yahoo! Japanのトップページのスナップショット" /></a>
<a href="http://www.yahoo.co.jp/">Yahoo! Japan</a>

  なお、alt属性を空にして提供する場合もalt属性を省略してはいけません。
 
 a要素でp要素をラップすることに違和感を感じる方もいるかもしれませんが、HTML5からa要素はp要素やdiv要素のようなブロック要素に対しても用いることができるようになりました。

参考

 

WCAG2.0(JIS X8341-3:2010)上では?

 W3CのウェブアクセシビリティガイドラインであるWCAG2.0では、「1.1.1 (非テキストコンテンツ)」、「2.4.4 (文脈におけるリンクの目的)」、「2.4.9 (リンクの目的)」が画像を用いたリンクに係る要件になります(JIS X8341-3:2010では、7.1.1.1、7.2.4.4、7.2.4.9)。

1.1.1 非テキストコンテンツ: (JIS X8341-3:2010では7.1.1.1)

利用者に提示されるすべての非テキストコンテンツには、同等の目的を果たす代替テキストを提供する。ただし、次の場合は除く: (レベルA) “>1.1.1 非テキストコンテンツ: 利用者に提示されるすべての非テキストコンテンツには、同等の目的を果たす代替テキストを提供する。ただし、次の場合は除く: (レベルA)

参考: 達成基準 1.1.1 を理解する | WCAG 2.0解説書

2.4.4 文脈におけるリンクの目的: (JIS X8341-3:2010では7.2.4.4)

それぞれのリンクの目的が、リンクのテキストだけから、又はプログラムが解釈可能なリンクの文脈をリンクのテキストとあわせたものから解釈できる。ただし、リンクの目的が一般的にみて利用者にとって曖昧な場合は除く。 (レベルA)

参考: 達成基準 2.4.4 を理解する | WCAG 2.0解説書

2.4.9 リンクの目的: (JIS X8341-3:2010では7.2.4.9)

それぞれのリンクの目的がリンクのテキストだけから特定できるメカニズムが利用可能である。ただし、リンクの目的が一般的にみて利用者にとって曖昧な場合は除く。 (レベルAAA)

参考: 達成基準 2.4.9 を理解する | WCAG 2.0解説書

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