MTM(Swedish Agency for Accessible Media)のオンラインサービスLegimusなど

 DAISY Consortiumは今年で20周年を迎えるのだそうです。そして、昨年、2015年6月の理事会で、スウェーデンのMTM(Swedish Agency for Accessible Media)のJesper Klein氏がDAISY Consortiumの新しい会長(Chairman of the Board)に選任されています。38歳。若い。

 で、前置きが長くなってしまいましたが、そのJesper Klein氏が、以下の記事でDAISY Consortiumが今年で20周年を迎えることを紹介しつつ、所属するMTMの活動について紹介していました。MTMの最近の活動がよくまとまっていますので、この記事を箇条書きで要点をまとめてみました。

スウェーデンの概要

  • スウェーデンの人口:あまり多くない。980万人。移民が160万人と移民が占める割合が大きい。
  • インターネット利用率:世界でももっとも高い国の1つ
  • DAISY規格が生まれた国でもある。
  • MTMのターゲットである視覚障害者とディスレクシアは人口のおおよそ6パーセント、つまり、約60万人。この60万人に含まれない知的障害、認知障害などもMTMのターゲットになると思われるが、正確な数は分からない。

MTM(Swedish Agency for Accessible Media)のオンラインサービスLegimus

  MTM(Myndigheten för tillgängliga medier : 英語でSwedish Agency for Accessible Media)

  • MTMのアクセシブルな資料を提供するサービス、Legimus(http://www.legimus.se/)
  • コンテンツの提供インターフェイスは、ウェブサイト。iOSアプリや、Androidアプリ、DAISY配信プロトコルを用いたサービス
  • Legimusの登録ユーザー数は10万人(スウェーデンの人口の約1%)
  • 提供するコンテンツ数は、2016年初めで肉声で読み上げ録音したスウェーデン語のDAISY図書111,181点。全て無料で提供されている
  • 2014年は、その年にスウェーデン語で刊行された市販本(trade books)とテキストブックの約25%の録音図書を追加することができた。
  • その録音のほとんどが、商用のオーディオブックで朗読する俳優のような有名人ではないが、熟練した音訳者に読み上げによるもの。

MTM(Swedish Agency for Accessible Media)のその他

  • Legimusのオンラインサービス以外に、CDベースのサービスを図書館経由で利用しているものが、高齢の視覚障害者を中心に2万から3万人いる。
  • Legimusの利用者10万人とあわせると、MTMは13万人の利用者を持つことになる。ターゲットとなる人口の60万人の21.7%だ。
  • なぜ、たった21.7%しかいないのか。Klein氏は以下の4つの理由を挙げている。
    • ロービジョンやディスレクシアの人で、聞いて読書するよりがんばって目で読むほうがよい人は、大活字本を含む印刷した書籍、PDFやEPUB2で刊行された商用の電子書籍を読んでいる。
    • 読書をする習慣がそもそもない人がいる。
    • 多くのプリントディスアビリティのある人にまだサービスが知られていない。
    • 既存のオーディオブックサービスがベストセラーのタイトルを押させており、それで十分にニーズが満たせている。

DAISY Planet 2014年12月号紹介

11月号に引き続き、DAISYコンソーシアムのウェブマガジンDAISY Planet Newsletters | DAISY Consortiumの2014年12月号を概要だけですが、紹介します。いつまで続くか…。

DAISY CEO Designate Appointed: Introducing Richard Orme

 Richard Orme氏がDAISY ConsortiumのCEO(最高経営責任者, chief executive officer)に任命されたことを紹介する記事。CEOのことをよくわかっていないのですが、PresidentのStephen King氏とは異なるんですね、とWikipediaのCEOの項を読んでもよく分からなかったりと・・・・。
 
 Richard Orme氏の経歴も紹介されています。一言で言えば、技術畑の人で、Royal National Institute of Blind People (RNIB)でアクセシブルな新聞サービスを開発したり、Dolphin Computer Access LtdでInnovation Directorを務めたり、発展途上国の視覚障害のある若者に教育環境の改善を目的するICEVI (International Council for the Education of Visually Impaired People)では、アクセシブル技術で途上国の若者の教育や社会参加を改善するプロジェクトでリーダーシップととっていたようです。また、Dolphin Computer Access Ltdなどで ディスレクシアなどの障害学生支援としてBookshareの英国内の大学での導入を支援したりもしていたようです。
 Richard Orme氏のウェブサイトにもこれまでの活動が掲載されています。

Accessible Books Consortium: Capacity Building Projects Galvanize Local Partnerships

 WIPOのマラケシュ条約で中心的な役割を果たすAccessible Books Consortiumは、”born accessible”な出版物の普及促進を目的とするInclusive Publishing、アクセシブルなコンテンツの共有・交換の促進を目的とするTIGAR Service、DAISYを利用できるICTスキルを持っていないプリントディスアビリティが発展途上国には多いため、そのICTスキル向上を目的とするCapacity Buildingの3つのプロジェクトを遂行しています。今回のこの記事では、そのうちのCapacity Buildingの一環としてバングラディッシュとスリランカでの活動を紹介しています。

バングラディッシュ

 現地のNGO法人Young Power in Social Action (YPSA)と共同でアクセシブルな本の製作/変換を目的とするプロジェクトをABCは行っています。2014年11月に終了した1フェーズでは90のアクセシブルな本を製作したそうです。政府や商業出版社を対象としたインクルーシブ出版に関するワークショップも開催しています。このワークショップについては、DAISY Planet 2014年9月号でも紹介されています。

スリランカ

ABCは、現地のNGO法人DAISY Lankaと了解覚書(Memorandum of Understanding)を交わして1000のアクセシブルな教材の製作を1年かけて行うプロジェクトを2014年8月から開始しています。スリランカの商業出版社3社とは、そのための電子ファイルの提供を合意しているそうです。
 なお、Accessible Books Consortiumについては、一度このブログでも紹介したことがありますので、こちらをご参照ください。

Availability above all!

Swedish DAISY Consortium Annual Conferenceがストックホルムで11月13日から14日に開催されました。この記事はその会議の概要を紹介しています。

 会議の資料と動画が公開されています(スウェーデン語ですが・・)

Obi & Tobi: New Releases Deliver Advance & Requested Features

 Obiがver.3.6にアップデートし、Tobiのver.2.4.3のテスト版が公開されたとのこと。Obiは音声DAISY、TobiはマルチメディアDAISYの製作を主とするDAISYコンソーシアムのOSSで、どちらもEPUB3の出力もサポートしています。Obiは今回のアップデートで出力する際の音声ファイルのフォーマットが増えたそうです。その他にも改良点がいくつか。Tobi 2.4.3では、構造化の機能が強化されているようです。
 今回のアップデートの詳細はこの記事(原文)か、それぞれのリリースノートをご覧ください。

DAISY Information Resources & Support Summary

DAISYコンソーシアムは情報提供のためのチャンネルをいろいろと持っていますが、それを紹介する記事です。それで終わってしまう記事ではあるのですが、せっかくなのでリンクだけも掲載しておきます。

DAISY Planet 2014年11月号紹介

DAISYコンソーシムは、月刊のDAISY Planetというウェブマガジンを刊行しています。海外のアクセシビリティに関するイベントや動向を追うのであれば、これを読むがよいと思います。

 といいつつ、私もきちんと毎号読んでいるわけでもないのですが、少し勉強する気になったので、気が向いた時にこのブログでDAISY Planet を紹介していきたいと思います。「感想」業界には、ささくれというブログがCA-E感想を隔週で更新するというすごいことをやっているのですが、ここまで自信もあまりないので、もう少しだらけた感じで簡単にこんなこと書いてあったと紹介することにしたいと思います。
 というわけで、最新号の2014年11月号の紹介をします。実は11月号、イベント紹介ばかりでさほど面白くはなかったですね・・・。

Techshare Middle East 2014: A Successful First

 11月4日から11月5日の2日間、カタールのドーハで行われた支援技術とアクセシビリティをテーマにした会議 Techshare Middle Eastの紹介記事。Techshare Middle EastはQatar Assistive Technology Center (Mada)主催、DAISY Consortiumとボーダフォンの後援という形で行われたそうで、アラビア語圏で支援技術とアクセシビリティをテーマにした国際会議が開催されたことにこの会議の意義があったようです。

From Exclusion to Empowerment: Role of ICT for Persons with Disabilities: UNESCO Conference

 10月24から26日の3日間、インドのニューデリーで行われたUNESCOの国際会議”From Exclusion to Empowerment: Role of ICT for Persons with Disabilities”の紹介記事。3日間行われたこの会議をこの字数でまとめるのもなかかな苦労したのではないかというのが最初読んだ時の感想でしたが、全体的テーマとして、教育や情報アクセシビリティの南北格差の解消が縦軸になっているのかになっているようです。
 
 マラケシュ条約の最初の批准国となったインドだけに、TIGARプロジェクトAccessible Books Consortiumの動向に関心が集まっている印象を記事を読んで受けました。
 あと、日本から発表者として記事では、日本大学教授の山口 雄仁氏の発表の紹介されていました。

DAISY Delivers at Techshare Middle East

 上で紹介したTechshare Middle EastにあわせてDAISYコンソーシアムの理事会が初めて中東で開催されたよという記事ですが、記事そのものは、Techshare Middle Eastでは、DAISYコンソーシアム関係者がたくさん発表したよという内容になっていたり。Techshare Middle Eastの発表資料一覧は公式サイトで公開されていますが、DAISYコンソーシアム関係者のスライドの一覧が抜き出されてこの記事に掲載されていたので、以下にそれらを参考までに転載。興味深い発表が多いですが、Pedro Millet氏のクラウドでDAISYを製作するシステムDORINA DAISY PLATFORMは面白そうですね。PDFのインポートもできるようにしたいとか。あと、韓国国立中央図書館もDAISYコンソーシアムのメンバーで、中東で発表とかしていたりするのかー。

In France Productivity Improves with Obi

 フランスのAssociation Valentin Haüy (AVH)がDAISYコンソーシマムのOSSであるObiのフランス語へのローカライズを行っているという記事です。ちなみにObiはおもに音声DAISYの製作に力点が置かれたアプリケーションで、最近公開されたver3.5でaudio onlyのEPUB3の製作にも対応しています。

Center on Technology and Disability: Assistive and Instructional Technology Supporting Learners with Disabilities

 11月に米国のCTD(Center on Technology and Disability)がオンラインサービスの提供を開始したという記事ですか?CTDという組織を不勉強ながら、初めて知りましたが、障害者の家族や支援者・団体をICT技術やその単お支援技術の情報提供等で支援する団体だそうです。LibraryCTD CaféLearning Centerで構成されて、登録すれば様々なサービスが受けられるとのこと。