視覚情報を触覚情報に変換する視覚障害者用の支援機器、オーデコ(AuxDeco)

 これは面白いなぁと思った視覚障害者のための歩行補助具オーデコ(AuxDeco)を紹介します。東京大学とアイプラスプラスが共同開発したもので、カメラで眼前の視覚情報を電子情報として取得し、その輪郭を電子刺激(触覚情報)に変換して額に伝える機器です。
オーデコ(AuxDeco)
http://www.eyeplus2.com/
 まずは以下の(おそらく)公式の紹介動画をご覧ください。

 
 視覚情報を触覚情報に変換する流れは以下の通りです。

①小型カメラで、前方を撮影する
内蔵された小型カメラで、前方を撮影します。前方とはカメラの向いている方向、つまり使用者の顔の向きです。使用者は「見たい」方向に顔を向けることで、撮影する方向を定めます。
②撮影した映像を電気刺激に変換する
撮影した映像は小型コンピューター(以下「本体」)に送られます。本体ではまず、送られてきた映像の輪郭線を抽出します。そして、抽出した輪郭線を電気刺激に変換します。
③額(おでこ)で刺激を感じとる
電気刺激に変換された輪郭線は、使用者の額部分に装着された512個の電極から出力します。使用者は、出力される輪郭線刺激を額の触覚で感じとります。
④白杖の先の前方をイメージする
使用者は、額で感じとった刺激の位置・動き・形から、前方の空間をイメージします。白杖を使って歩きながら、白杖の届かない範囲の情報を額から得られると、より安心して、そして楽しく歩行できるようになります
仕組み」より

 
 カメラで取得された情報は以下のような形で512の電磁版により触覚情報に変換されるそうです。  

オーデコの視覚情報を触覚情報に変換される画像(「トレーニング」より)
 白い杖では、杖の届く範囲の周辺情報しかを取得することができませんが、この支援機器なら杖の届かない遠方の障害物の存在を把握することができます。
 オーデコのような歩行補助具以外にも、視覚情報を触覚情報に変換する機器はいろいろな用途でありえそうです。この分野、もっと拡がるといいですね。

リンク先を別ウィンドウ(タブ)で表示させることはアクセシビリティ上どうなのか。

 ということが、ちょっと前に私の周りで議論になりました。
 なんとなくよくなさそうな気がしますが、実際のところどうなの?というあたり、それを説明できる文書や説明を当時はうまく見つけることができませんでした。しかし、改めて時間をおいて調べてみると、(意外とあっさりと・・)いろいろと出てきましたので今回は、
リンクを別ウィンドウ(タブ)で開くことをユーザーに強いることはアクセシビリティ上どうなのか。
について考えてみたいと思います。いつものようにW3CのWCAG2.0関連文書を参照しました。

結論からを申せば

 
 ユーザーが想定していない形でリンク先を別ウィンドウ(タブ)で表示させることは、基本的にアクセシビリティ上望ましくはないようです。リンク先をどのように表示させるかはユーザーの選択に委ねるべきということです。

リンクを別ウィンドウ(タブ)で開くことについて、デメリットを考えたことはあるでしょうか?別ウィンドウで開く一番のリスクは、キーボードで「前のページに戻る」動作ができなくなることです。他にもパソコン初心者の方も、別ウィンドウで開いたということが認識しにくいようです。
from 「Webアクセシビリティは、誰がどう必要としているのか? | Webクリエイターボックス

参考

 

しかし、絶対ダメというわけではない

・・・ようです。target=”_blank”を用いる場合と、JavaScriptを用いる場合について、W3Cが以下のようなドキュメントを公開しています。

target=”_blank”を用いて別ウィンドウ(タブ)を開く

 「target=”_blank”」はマシーンリーダブルですので、読み上げソフトなどの支援機器がそれを理解することが可能です。つまり、支援機器は別ウィンドウ(タブ)が立ち上がることをあらかじめユーザーに知らせることができますので、それを望まないユーザーは、別ウィンドウ(タブ)を開かない設定に事前に変更することが可能です。
 なお、支援技術を利用していないユーザーのことも考えて、リンクテキストからも別ウィンドウ(タブ)が開くという情報が得られるようにしておく必要があります。
 というわけで、 target=”_blank”を用いて別ウィンドウ(タブ)を開くならば、以下のようにリンクをはるべきです。

<a href=”contactme.html” target=”_blank”>お問い合わせ (新しいウィンドウが開きます)</a>

参考

 

JavaScriptを用いて別ウィンドウ(タブ)を開く

 JavaScriptを用いて別ウィンドウ(タブ)を開く手法はダメのか、といいますとそうでもないようでして、ユーザーに事前に別ウィンドウ(タブ)が開くという情報を伝えておくようにしておけばよいようです。

参考

 

WCAG2.0(JIS X8341-3:2010)上では?

 W3CのウェブアクセシビリティガイドラインであるWCAG2.0では、以下の「3.2.5 利用者の要求による状況の変化」がリンクを別ウィンドウ(タブ)に係る要件になります(JIS X8341-3:2010では、7.3.2.5)。

3.2.5 利用者の要求による状況の変化(JIS X8341-3:2010では、7.3.2.5)

状況の変化は利用者の要求によってだけ生じるか、又は、そのような変化を止めるメカニズムが利用可能である。  (レベルAAA)

 リンクを別ウィンドウ(タブ)が開くなどの予期しない状況の変化によって混乱が引き起こされる可能性を取り除き、状況の変化をユーザーが完全に制御できることを求めています。この要件は達成基準がAAAですので、ウェブサイト全体に対してこの要件を満たすことはなかなか難易度は高いとみなされてるようですが、別ウィンドウ(タブ)だけに限れば、個人的にはさほど高い難易度でもないように思えます。
 この要件の詳細は以下のWCAG 2.0解説を参照してください。
 

参考

 

さいごに

 ここまで書いたように、リンク先を別ウィンドウ(タブ)で開いて表示させることは、事前にユーザーにその情報が伝わる限りにおいてアクセシビリティを担保できるようです。
 
 しかし、あくまでユーザーに混乱を与えない必要最低限のアクセシビリティを担保するものであり、事前であれ、事後であれ、ユーザーに別ウィンドウ(タブ)の対応を強いることには変わりありません。リンク先をどのように表示させるかはユーザーの選択に委ねるべきであり、どうしても別ウィンドウ(タブ)でなければならない場合を除き、リンク先を別ウィンドウ(タブ)で開いて表示させる手法はなるべく用いないほうがよいと思われます。別ウィンドウ(タブ)で開いて表示させる場合でも、ユーザー側から一を見て十が知れるような、つまり、ここが別ウィンドウ(タブ)で立ち上がるならここもそうかなと推測が容易にできるような、はっきりとした使われ方が望ましいと思います。
 

関連エントリ

ウェブアクセシビリティガイドラインについて
代替テキスト
リンクのはり方

「触覚フィードバック機能付きタッチスクリーン」のiPhoneってまだですか・・・

 以下のニュースを見て以来、期待してます。ずっと待っています。触覚フィードバック機能付きタッチスクリーンのiPhoneやiPadってまだ出ないのでしょうか。

 上のニュースによると、2009年当時は振動を返すだけのものだったようですが、2012年のニュースによると、スクリーンが立体的に浮かび上がりボタンや地図などを表現できる技術に進化している(らしい)。これはすごい!

   2010年のゲーム機関係のニュースになりますが、ソニーとマイクロソフトも似たような技術の特許を出願しているようです。

 例えば、iOS機にはVoice Overのような支援機能が搭載されているとはいえ、タッチスクリーンは平面的で視覚障害者の方にとって使いやすいものではありません。とはいえ、タッチスクリーンは必要な時に必要なボタンだけ表示できるUIが可能ですので、触覚がより活用できるタッチスクリーンが登場すれば、必要な時に必要な物理的ボタンだけを備えたUIを実現できる。結構理想的かもしれません。アクセシビリティが大きく向上すると思われます。タッチスクリーンの次は触覚の時代です。
 電子書籍の普及で「書籍」がよりアクセシブルになることが期待されたわけですが、ほとんどの端末がタッチスクリーンだけのものになってしまい、ボタンがあったとしてもほとんど脇に追いやられてしまっています。非常に残念ですが、触覚技術の進化とその普及がその状況が逆転されるかもしれません。
 将来的に点字を浮かび上がらせるところまでできれば本当に理想的です。