京都情報図書館学学習会 第227回(2015年9月25日)で、障害者差別解消法と図書館サービスというテーマで発表させていただいたので、そのスライド資料を公開用に一部編集して公開しました。
テキスト版とhtml版は以下。
テキスト版は情報保障のために事前に配布したものを上のスライドと同様に公開用に一部編集したものです。html版は、スクリーンリーダーで見出し単位(この場合はスライド単位)でスキップできる点ではこちらのほうが便利であろうと思い、事後に製作したものです。html版まで製作するのであれば、PowerPointではなく、HTMLベースのプレゼン用のフレームワークを使って発表してもよかったかもしれない。
今回の発表では、障害者差別解消法は、図書館に全く新しい義務を課すものではなく、図書館が行っている障害者サービスと同じ目的を持つものであり、むしろそれを支援するものであること、そして、そもそも図書館の障害者サービスは「すべての人に全ての資料とサービスを提供する」という図書館本来の使命に基づくものであるのだから、障害者差別解消法の施行が迫るこのタイミングで、図書館サービスという視点で改めて考えてみませんかということを言いたかったけど、正直、あまり整理されていなかったように思う。
このテーマはもう少し整理したいところです。
ところで、最後に余談として、乙武さんの以下の話を取り上げました。
この話は、障害者差別解消法的にいろいろと考えるべき要素があります。概要をかいつまんで紹介すると。
- 乙武さんが銀座のイタリアンレストランに予約をして夕食をとろうと試みる(車椅子を使用していることは事前に伝えていない)
- レストランはエレベータが止まらない2階にある
- レストラン側は乙武さんが車椅子を使用しているからと入店を拒否した
車椅子だからと入店を拒否することは、おそらく障害者差別解消法で言うところの、民間事業者も禁止事項となる不当な差別的取扱いに該当するでしょう。しかし、エレベータが2階に止まらないということは、乙武さんは、自分もしくは同伴者でなんとかできなければ、レストラン側が合理的配慮を提供しなければ、入店はできない。しかし、合理的配慮の提供そのものは、民間事業者は努力義務となっているため、仮に入店そのものは拒否しなくても、店側が合理的配慮を提供しなければ、結局、乙武さんは入店できないことになってしまう。どう考えるべきか。
おそらくは乙武さんが使用している車椅子は電動の車椅子でしょうから、非常に重くて男2人でも担いで階段に上るのは難しいのではないかと思います。できそうなのは、車椅子は1階に置いておいて、乙武さんを担いで2階に上がることですが、夕食の時間ということは、レストランそのものが非常に忙しい時間帯であり、合理的配慮を提供するだけの余裕がない可能性もあります。さあ、どうする。どうすれば、乙武さんがこのお店で食事ができないという事態をさけられたかということですが、ここでお互いが対立し、一方的にそれぞれが意見を言いあうよりは、建設的対話を重ねて問題の解決がはかれればよかったのかもしれません(このケースで問題になってしまっているのは、乙武さんが店側からそういう誠意を感じられなかったことによるところが大きいように思えます)。
なお、いろいろと考える要素はありますが、払うべき合理的配慮というのは、個別具体的な対応ですので、当事者同士が納得するものが結論といえるものになると思います。その場に立ち会っていない第三者が論じても、それらしい意見は言えても、おそらくは正解といえる最終的な結論は出せないということは注意が必要かと思います。