EPUB3の仕様がついに確定!!!

 EPUB3の勧告(Recommended Specification)が公開され、ついにEPUB3の仕様が確定しました。
EPUB 3 Becomes Final IDPF Specification
[速報]「EPUB 3」がついに完成! IDPFが発表 - Publickey
EPUB3の仕様は以下で公開されています。
EPUB 3 | International Digital Publishing Forum
http://idpf.org/epub/30
 
 EPUB2→EPUB3の変更点は思いつく限り挙げると主に以下の通りでしょうか。

  • HTML5対応になった
  • 縦書きとか縦横中とか日本語出版物の要件がとり入れられた。
  • 限定的だがJavaScirptが使えるようになり、インタラクティブなコンテンツを作れるようになった。
  • テキストとオーディオファイルを同期させて再生できるようになった
  • 上と実は密接な関係がありますが、これからのEPUBとDAISYは統合したようなものよ(他のブログで書いた以下のエントリを参照)。EPUB3 ≒ DAISY4 ― EPUB 3とDAISY 4との関係 |e-chuban blog

 

EPUB3のドキュメント、解説書類

 EPUB3の概要はEPUB3の仕様を策定・管理しているIDPFが概要とEPUB2からの変更点を説明したドキュメントを仕様とセットで公開しています。

 

日本語

 日本語のドキュメントとしては総務省の新ICT利活用サービス創出支援事業の一環としてイースト株式会社(と一般社団法人 日本電子出版協会(JEPA)?) が作成したガイドラインがepubcaféというサイトで公開されています。 

 
epubcafé
http://www.epubcafe.jp/ 
 また、EPUB日本語基準研究グループが「EPUB3における日本語電子書籍ベーシック基準」というガイドラインを作成しているようです。
EPUB日本語基準研究グループ
https://sites.google.com/site/epubjssg/home
追記(2011/10/16): JBasicマークアップ指針、EPUB日本語基準研究グループの情報を追加
 

英語

 IDPFが以下のようなはEPUB3を紹介した電子書籍をO’Reillyのサイトで 無料 で提供しています。なかなか容易周到です。表紙含めてPDF版で全25ページ(本文は全16ページ)なので、英語でもまあなんとか読めなくはないです。

What Is EPUB 3?
An Introduction to the EPUB Specification for Multimedia Publishing

By Matt Garrish
Publisher: O’Reilly Media
Released: September 2011
 
 また、以下のO’Reillyの書籍もお勧めです。タイトルにあるとおり、出版物にHTML5関連の技術をどう生かしていくかということに主眼が置かれておりますが、HTML5を採用したEPUB3ですので、この本でもいろいろなところでEPUB3に言及しております。上がEPUB3に軸足を置いているなら、以下の本はHTML5に軸足を置いて結果としてEPUB3にも結構触れているという感じです。EPUB3のHTML5的側面に興味がある方にはぴったりかと思います。ちなみにこの本も 無料 です。
 
null
HTML5 for Publishers

By Sanders Kleinfeld
Publisher: O’Reilly Media
Released: October 2011
 
 あとは、ビューワーやオーサリングツールが揃うのを待つばかりです。現時点でEPUB3対応しているのは・・て、挙げてみると結構ありますね。一言にビューワー、オーサリングツールといってもいろいろなものがあるようですが、とりあえず一緒に並べてみました。
 

EPUB3対応のビューワー

 

EPUB3対応のオーサリングツール

 
 そういえば、 明日 は確か iOS5 がリリースされる日ですね。噂では iBooksEPUB3対応 になるという話。すばらしいタイミングです。 
 
2011/10/15 追記
 期待されたiBooksのEPUB3対応ですが、残念ながら今回のアップデートでは対応されなかったようです。縦書き表示できるようになったらしいですが。

「書籍」と呼ぶには短い電子書籍というコンテンツと従来よりちょっと長くなったWebというコンテンツの相対的な関係

 10月にリリースされるというAppleのiOS5のアップデート、噂されるiBooksのEPUB3対応は当然すごく期待するところですが、それに加えてSafariのリーダー機能、結構面白いのではないかと思います。
Safariのアイコン

さらに快適なネットサーフィンを。
iOS 5は、iPhone、iPad、iPod touchでのネットサーフィンにさらなる新機能を加えます。例えば、Safariのリーダー。広告や不要なものが表示されないので、ウェブの記事だけに集中できます。リーディングリストは、あとでじっくり読むために記事を保存できる機能で、iCloudにはすべてのデバイスから集めた最新のリーディングリストが保存されます。iPadではタブを使うこともできるようになったので、複数のウェブページを開いて、思いのままに切り替えていけます。さらにiOS 5では、どのiOSデバイスでもSafariのパフォーマンスが向上しました。

 リーダーという機能はPC版のSafariですでに実装された機能ですし、iPad上でもすでにInstapaperが同じような機能を実現していますが、PCよりも「読む」という行為に適したインターフェイスであるタブレット端末の標準のブラウザで実装されることに意味があるのかと思うのです。
 Webコンテンツは、これまでこんな感じでこれまで垂直に立てられたモニター上で読むことを前提に作られてきたわけです。
垂直に立てられたモニター上でウェブを閲覧している人間を横から示した図
 目とコンテンツの距離姿勢(特に首の角度)に注目してほしいのですが、この上のようなインターフェイスは「読む」というよりも「作業をする」、もしくは「見る」という行為に適したインターフェイスではないかと。このインターフェイスはWebというコンテンツの有り様を大きく規定してきたのではないでしょうか。
 タブレットPCはこんな感じでコンテンツと目の距離といい、読むときの首の角度といい、書籍にインターフェイスが近いですから、Webというコンテンツの有り様を規定する前提が崩れてしまうかもしれません。
紙の書籍を読んでいる人間を横から示した図
タブレットPCでWebを閲覧する人間を横から示した図。本を読む状態に近いことを示している
 タブレットPCで標準で搭載されているブラウザに「リーダー」のような「読む」ことに集中できる機能を実装されるようになると
 
Webが、より「読む」コンテンツに
 
 となるかもしれません。つまり、少々長くなっても読むことが苦にならなくなるので、コンテンツが少し長くなるかもということです。 
 一方で・・ということで今度は電子書籍という器に話を移します。同じ端末で電子書籍を読むためのiBooksを利用できるわけですが、同じインターフェイス上で「読む」コンテンツである以上、Webと「書籍」はどういう関係になっていくのでしょうか。
 電子書籍という器はWebよりも長く、本より短いサイズのコンテンツに強みを発揮するような気がします。電子書籍のメリットとして上限がないことはよくいわれることです。量が増えても物理的サイズがふえるわけではないので、そういった制約はほとんどないと。
 しかし、逆に量の少ないコンテンツはどうでしょうか。紙の本でも数ページから数十ページという量の少ない冊子を作ることは可能です。無料冊子では普通にありますね。しかし、商業ベースにのせようと思った場合、流通コストを考えるとある程度のまとまったサイズにならないとコスト的に採算がとれないという制約があります。1つのコンテンツで流通コストを賄えない場合、複数のコンテンツをバンドルして単価を上げる必要が出てくる。このあたりは出版界にいる人間ではないので想像するだけになりますが。
 電子書籍は流通コストを低く抑えることができる(という前提でとりあえず今回は書く)。だから、単価を低く設定することができる。そして、だから、紙の書籍よりも遙かに少ないサイズでコンテンツを販売することができる。つまり、マイクロ化したコンテンツでも売れるということです。。
 ※が、実際はどうなんでしょう?もしかすると物理メディアと比較するのそもそもの間違いで、電子媒体はコストのかかり方、傾斜が全く違うもののような気がします。一線超えるとコストがゼロに等しくなるとか。
 誤解されそうなので、一応、書きますが、「紙の本よりも電子書籍は物流コスト等がかからないから紙と全く内容のコンテンツでも電子書籍のほうが安くできる」ということをここで言いたいわけではないのです。従来の紙の本という器では経済的に載せることができなかったコンテンツを商業ベースで販売できるかもしれないということです。
 課金コストをゼロにできるわけではないので、ほとんど情報が無料で公開されているWebよりコンテンツを細分化することはおそらくできないだろうと。それでも、紙の本より単価を遙かに安く設定することができる。だから、コンテンツも小さくすることができる。
 すでに100ページ前後の電子書籍が1000円を切る価格で販売されていますが、50ページ、30ページ程度の雑誌記事サイズのコンテンツが100〜300円程度の価格で販売される日は遠からずくるだろうなと思います。課金コストがさらに下がればさらにコンテンツのマイクロ化が進むかもしれません。
 そうなると「書籍」と呼ぶには短いコンテンツである電子書籍と少し長くなったWeb。それを同じ端末で読むことになったら、その違いは有料か無料かの違いになってしまうのでしょうか。どちらにしても、これまでのように「紙の本 VS Web」という対立を前提とした比較はあまり意味がなくなり、相対的な関係になっていくのではないかと私は考えています。