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カテゴリー: Metadata

LCからのMARC 21フォーマットへのアクセシビリティメタデータ項目追加の提案

2017-07-12 kzakza

 米国議会図書館(LC)からMARC 21フォーマットに、アクセシビリティに関する情報を提供するメタデータ項目の追加の提案がなされています。
Proposal No. 2017-11: Defining New Fields to Record Accessibility Content in the MARC 21 Bibliographic Format (Network Development and MARC Standards Office, Library of Congress)
 
 まだ使用されていない341フィールドと、532フィールドに以下の項目を追加する提案です。

  • 341 – Accessibility Content(schema.orgのaccessModeやaccessibilityFeatureに相当するもの。統制された語彙を入れる)
  • 532 – Accessibility Note(アクセシビリティに関する注記)

schema.orgのaccessModeやaccessibilityFeatureについては、以下を参照してください。

  • EPUBのアクセシビリティ仕様が求めるアクセシビリティメタデータ

 
 一般向け資料と障害者向け資料が区別されているところも多いのではないかと思うのですが、一般資料でも障害の状況次第でその人にとっては使える資料、使いやすい資料もあり、逆に障害者向け資料とされるものでも使えない資料といううものもあるのではないかと思います。上のようなアクセシビリティメタデータが追加されることで、1点1点について、自分の能力と資料のアクセシビリィ状況を勘案して資料を選択できるようになります。
 MARC21にアクセシビリティメタデータの項目が追加され、MARC21を採用する世界中の国立図書館が、全ての資料についてアクセシビリティメタデータが付与されるようになれば(なればですが)、全ての資料についてアクセシビリティに関する情報がわかるようになるわけで、今回のLCの提案はそんな夢のような状況が生む種になりえるものだと思います。

例

 上に掲載されていた例がわかりやすかったので、参考までに転載します。
 

例1 大活字

現在
008/23 Form of Item: d=Large type
020 ## $a 9781683240624 (large print : hardcover : alk. paper)
250 ## $a Large print edition.
300 ## $a 499 pages (large print) ; $c 23 cm.
340 ## $n 15 point
650 #0 $a Large type books.
提案:
008/23 Form of Item: d=Large type
020 ## $a 9781683240624 $q large print : hardcover : alk. paper)
250 ## $a Large print edition.
300 ## $a 499 pages ; $c 23 cm.
340 ## $n 15 point
341 0# $a textual $b largePrint $2 w3c
650 #0 $a Large type books.

例2 電子書籍

現在
347 ## $a text file $b EPUB3 $2 rda
提案
347 ## $a text file $b EPUB3 $2 rda
341 0# $a textual $c displayTransformability $d synchronizedAudioText $d structuralNavigation $2 w3c
532 ## $a This EPUB 3 resource has been optimized to conform to DAISY Consortium specifications for text to speech playback.

例3: 電子書籍(カラーコンテンツあり)

現在
300 ## $a 1 online resource (314 pages) : $b color illustrations
347 ## $a text file $b EPUB3 $2 rda
提案
300 ## $a 1 online resource (314 pages) : $b color illustrations
341 0# $a textual $c displayTransformability $2 w3c
347 ## $a text file $b EPUB3 $2 rda
532 ## $a Lacking alternative b&w images for color illustrations.

例4: DVD

現在
546 ## $a Close-captioned.
655 #7 $a Video recordings for the hearing impaired $2 lcgft
提案
341 0# $a auditory $b captions $2 w3c
532 ## $a Closed captioning
655 #7 $a Video recordings for the hearing impaired $2 lcgft

例5: DVD(項目繰り返しの例)

現在
500 ## $a Includes picture-in-picture signing.
546 ## $a Described video.
655 #7 $a Video recordings for the hearing impaired $2 lcgft
655 #7 $a Video recordings for people with visual disabilities $2 lcgft
提案
041 ## $a sgn $a eng
341 0# $a auditory $c signLanguage $2 w3c
341 0# $a visual $d audioDescription $2 w3c
341 1# $a textual $b braille $2 w3c
532 ## $a Described video
532 ## $a Picture-in-picture signing
532 ## $a Container contains text in Braille.
655 #7 $a Video recordings for the hearing impaired $2 lcgft
655 #7 $a Video recordings for people with visual disabilities $2 lcgft

EPUB, Metadata, アクセシビリティ, アクセシビリティメタデータ, 電子出版, 電子書籍

EPUB Accessibility 1.0 概要

2017-06-14 kzakza

 EPUB3.1の仕様と同時に公開されたEPUBのアクセシビリティの仕様 EPUB Accessibility 1.0 について概要をまとめてみました。

1. 仕様及び関連文書

  EPUBのアクセシビリティの仕様は、EPUB Accessibility 1.0 。これは規格として策定されたものなので、長期的な使用に耐えうるように、その時々の技術には依存しない形で書かれており、要件も抽象的な記述になっています。具体的な達成方法は、関連文書であるEPUB Accessibility Techniquesに参照することになります。これは、WCAGとWCAGの関連文書である”Techniques(達成方法集)”と同じ関係。EPUB Accessibility Techniques に似た立ち位置の文書として 古くからあるEPUB 3 Accessibility Guidelines が存在しますが、Techniques のさらなる追加の説明文書的な立ち位置として整理されているようです。
  

  • EPUB Accessibility 1.0(imagedriveさんによる日本語訳)
  • EPUB Accessibility Techniques 1.0(上の仕様の達成方法集)
  • EPUB 3 Accessibility Guidelines

 また、EPUBもウェブ技術を使用しているので、アクセシビリティの要件をのかなりの部分をWeb Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.0 に拠っているので、これも参照する必要があります。

  • Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.0(日本語訳)
  • Understanding WCAG 2.0(日本語訳)
  • Techniques for WCAG 2.0(日本語訳)

2. EPUB Accessibility 1.0が対象とするEPUBのバージョンの範囲

 EPUB3.1と同じタイミングで公開されたものだが、EPUBの特定のバージョンを対象とするものではなく、古いバージョン又は将来のバージョンも含む全てのEPUBのバージョンを対象とする。

3. EPUB Accessibility 1.0のポイント

 個人的にポイントと感じたところは以下です。

  • アクセシビリティメタデータは必須。超重要。この仕様で最低限満たすべきとしているラインがアクセシビリティメタデータを提供すること。
  • WCAG2.0のレベルAが必須要件。レベルAAは推奨。なので、非テキストコンテンツに対する代替テキストは必須
  • 音声(非テキストコンテンツ)が主たるコンテンツである録音図書は、WCAG2.0の要件を満たすものではない(代替テキストがないから)。しかし、不可ではない。特定の利用者に最適化されたものであり、だからこそ、それとわかるアクセシビリティメタデータを提供することが重要
  • ページ数のある紙版等のバージョンがある場合は、ページ番号は提供すべきとしている
  • TTSによる読み上げの支援(SSML、PLS)に関する規定はなし
  • DRMは否定していないが、支援技術によるアクセスを阻害する制限は不可
  • 補論という形で閲覧ソフトと配信システムの要件も規定されている

 印象としては、この仕様はそれほど高いハードルを設けていません。アクセシビリティメタデータを提供すれば、EPUB Accessibility 1.0の必須要件に準拠したと言えるものは多いのではないでしょうか。DRMですね。DRMかなぁ…

4.仕様の概要

 EPUB Accessibility 1.0は、要件の適合によって以下のとおり、発見可能なEPUB出版物、アクセシブルなEPUB出版物、最適化されたEPUB出版物の3つに整理されています。

発見のメタデータ要件 アクセシビリティの要件 最適化(規格またはガイドライン識別)の要件
発見可能なEPUB出版物 適合  
アクセシブルなEPUB出版物

適合 適合  
最適化されたEPUB出版物

適合   適合

 

5. 発見のためのメタデータ要件

 EPUB 3 Publication(OPFファイル)に格納されるメタデータにschema.orgのアクセシビリティメタデータ以下のように包含することを求めている。詳細は、以下のエントリにまとめたのでそちらをご参照ください。

  • EPUBのアクセシビリティ仕様が求めるアクセシビリティメタデータ

必須(must)

  • accessMode
  • accessibilityFeature
  • accessibilityHazard
  • accessibilitySummary

推奨(recommended)

  • accessModeSufficient

任意(optional)

  • accessibilityAPI
  • accessibilityControl

6. アクセシビリティの要件

 以下のとおり。

6.1 WCAGとの適合性

 
 WCAGレベルAが必須(must)、WCAGレベルAAが推奨(recommended)となっている
 WCAGが求める要件も幅広いので、ここで全て網羅できませんが、レベルAで求められている以下は直接関係があるでしょうか。画像等の非テキストコンテンツに代替テキストの提供を必須としている点は重要です(webだと最近だと提供することが常識になっていますが、電子書籍だとどこまで提供されているか・・・)。

原則 1: 知覚可能 – 情報及びユーザインタフェース コンポーネントは、利用者が知覚できる方法で利用者に提示可能でなければならない。
ガイドライン 1.1 テキストによる代替: すべての非テキストコンテンツには、拡大印刷、点字、音声、シンボル、平易な言葉などの利用者が必要とする形式に変換できるように、テキストによる代替を提供すること。

1.1.1 非テキストコンテンツ: 利用者に提示されるすべての非テキストコンテンツには、同等の目的を果たすテキストによる代替が提供されている。ただし、次の場合は除く: (レベル A)
(中略)
ガイドライン 1.3 適応可能: 情報、及び構造を損なうことなく、様々な方法 (例えば、よりシンプルなレイアウト) で提供できるようにコンテンツを制作すること。
1.3.1 情報及び関係性: 何らかの形で提示されている情報、 構造、及び関係性は、プログラムによる解釈が可能である、又はテキストで提供されている。 (レベル A)
1.3.2 意味のある順序: コンテンツが提示されている順序が意味に影響を及ぼす場合には、正しく読む順序はプログラムによる解釈が可能である。 (レベル A)
1.3.3 感覚的な特徴: コンテンツを理解し操作するための説明は、形、大きさ、視覚的な位置、方向、又は音のような、構成要素が持つ感覚的な特徴だけに依存していない。 (レベル A)
ガイドライン 1.4 判別可能: コンテンツを、利用者にとって見やすく、聞きやすいものにすること。これには、前景と背景を区別することも含む
1.4.1 色の使用: 色が、情報を伝える、動作を示す、反応を促す、又は視覚的な要素を判別するための唯一の視覚的手段になっていない。 (レベル A)
(中略)
1.4.3 コントラスト (最低限) : テキスト及び文字画像の視覚的提示に、少なくとも 4.5:1 のコントラスト比がある。ただし、次の場合は除く: (レベル AA)
(中略)
1.4.4 テキストのサイズ変更: キャプション及び文字画像を除き、テキストは、コンテンツ又は機能を損なうことなく、支援技術なしで 200% までサイズ変更できる。 (レベル AA)
1.4.5 文字画像: 使用している技術で意図した視覚的提示が可能である場合、文字画像ではなくテキストが情報伝達に用いられている。ただし、次に挙げる場合を除く: (レベル AA)
(中略)
原則 2: 操作可能 – ユーザインタフェース コンポーネント及びナビゲーションは操作可能でなければならない。
(中略)
ガイドライン 2.4 ナビゲーション可能: 利用者がナビゲートしたり、コンテンツを探し出したり、現在位置を確認したりすることを手助けする手段を提供すること。
2.4.1 ブロックスキップ: 複数のウェブページ上で繰り返されているコンテンツのブロックをスキップするメカニズムが利用できる。 (レベル A)
2.4.2 ページタイトル: ウェブページには、主題又は目的を説明したタイトルがある。 (レベル A)
2.4.3 フォーカス順序: ウェブページが順を追ってナビゲートできて、そのナビゲーション順が意味又は操作に影響を及ぼす場合、フォーカス可能なコンポーネントは、意味及び操作性を損なわない順序でフォーカスを受け取る。 (レベル A)
2.4.4 リンクの目的 (コンテキスト内) : それぞれのリンクの目的が、リンクのテキスト単独で、又はリンクのテキストとプログラムによる解釈が可能なリンクのコンテキストから判断できる。ただし、リンクの目的がほとんどの利用者にとって曖昧な場合は除く。 (レベル A)
2.4.5 複数の手段: ウェブページ一式の中で、あるウェブページを見つける複数の手段が利用できる。ただし、ウェブページが一連のプロセスの中の1ステップ又は結果である場合は除く。 (レベル AA)
2.4.6 見出し及びラベル: 見出し及びラベルは、主題又は目的を説明している。 (レベル AA)
(中略)
原則 3: 理解可能 – 情報及びユーザインタフェースの操作は理解可能でなければならない。
ガイドライン 3.1 読みやすさ: テキストのコンテンツを読みやすく理解可能にすること。
3.1.1 ページの言語: それぞれのウェブページのデフォルトの自然言語がどの言語であるか、プログラムによる解釈が可能である。 (レベル A)
3.1.2 一部分の言語: コンテンツの一節、又は語句それぞれの自然言語がどの言語であるか、プログラムによる解釈が可能である。ただし、固有名詞、技術用語、言語が不明な語句、及びすぐ前後にあるテキストの言語の一部になっている単語又は語句は除く。 (レベル AA)
(中略)
原則 4: 堅牢 (robust) – コンテンツは、支援技術を含む様々なユーザエージェントが確実に解釈できるように十分に堅牢 (robust) でなければならない。
ガイドライン 4.1 互換性: 現在及び将来の、支援技術を含むユーザエージェントとの互換性を最大化すること。

4.1.1 構文解析: マークアップ言語を用いて実装されているコンテンツにおいては、要素には完全な開始タグ及び終了タグがあり、要素は仕様に準じて入れ子になっていて、要素には重複した属性がなく、どの ID も一意的である。ただし、仕様で認められているものを除く。 (レベル A)
4.1.2 名前 (name) ・役割 (role) 及び値 (value) : すべてのユーザインタフェース コンポーネント (フォームを構成する要素、リンク、スクリプトが生成するコンポーネントなど) では、名前 (name) 及び役割 (role) は、プログラムによる解釈が可能である。又、状態、プロパティ、利用者が設定可能な値はプログラムによる設定が可能である。そして、支援技術を含むユーザエージェントが、これらの項目に対する変更通知を利用できる。 (レベル A)

 

<余談 EPUB形式の録音図書>

 少し話はそれますが、EPUB形式の録音図書についてです。WCAGは、以下のような要件もあります。

ガイドライン 1.2 時間依存メディア: 時間依存メディアには代替コンテンツを提供すること。
1.2.1 音声のみ及び映像のみ (収録済) : 収録済の音声しか含まないメディア及び収録済の映像しか含まないメディアは、次の事項を満たしている。ただし、その音声又は映像がメディアによるテキストの代替であって、メディアによる代替であることが明確にラベル付けされている場合は除く: (レベル A)
収録済の音声しか含まない場合:時間依存メディアに対する代替コンテンツによって、収録済の音声しか含まないコンテンツと同等の情報を提供している。
収録済の映像しか含まない場合: 時間依存メディアに対する代替コンテンツ又は音声トラックによって、収録済の映像しか含まないコンテンツと同等の情報を提供している。
1.2.2 キャプション (収録済) : 同期したメディアに含まれているすべての収録済の音声コンテンツに対して、キャプションが提供されている。ただし、その同期したメディアがメディアによるテキストの代替であって、メディアによる代替であることが明確にラベル付けされている場合は除く。 (レベル A)
(中略)
1.2.7 拡張音声解説 (収録済) : 前景音の合間が、音声解説で映像の意味を伝達するのに不十分な場合、同期したメディアに含まれているすべての収録済の映像コンテンツに対して、拡張音声解説が提供されている。 (レベル AAA)

 上の要件については、以下のエントリを参照。

  • アクセシビリティに配慮した音声や動画(映像)の代替コンテンツの提供の話

 つまり、音声には聴覚障害等の理由で利用できない人のために代替となるテキストデータを提供するということが求められています。音声を主たるコンテンツとするEPUB形式の録音図書(目次データのみがテキスト)は、WCAG レベルAの要件を満たせないということになり、「アクセシブルなEPUB出版物」である要件は満たせません。
 録音図書が、1.2.2などは満たすとまさにEPUB with Media Overlays(マルチメディアDAISY)になりますが、EPUB Accessibility 1.0は、録音図書を否定したり、録音図書をマルチメディアDAISY化することを求めているわけではありません。録音図書については、考え方を以下のように整理しています。

  • WCAGは幅広いユーザーを対象とするので、録音図書のように、視角障害者に利用できても聴覚障害者に利用できないコンテンツは、WCAGの要件に適合しないということになる
  • しかし、特定のユーザーに最適化されたEPUB出版物をEPUB Accessibility 1.0はを否定しない。
  • その代わり、発見のメタデータの包含を提供することを重視し、豊富なアクセシビリティメタデータによって必要とする特定のターゲットに的確に発見されることを想定
  • EPUB形式の録音図書は、「概要」に掲載した表で言うところの、「アクセシブルなEPUB出版物」にはなれないが、「発見可能なEPUB出版物」と「最適化されたEPUB出版物」にはなれる

6.2 EPUBのための追加要件

 WCAGだけでは規定できないEPUB独自の要件として、ページナビゲーションとメディアオーバーレイに関して、以下のとおり規定しています(EPUB独自の要件といえば、TTSのサポートとしてSSMLやPLSなども他にも言及されてもよい要件は他にもいろいろあると思うが、ページナビゲーションとメディアオーバーレイ以外に言及はない)。

ページナビゲーション

 
 以下の場合は、ページナビゲーションを提供するべき(should)。

  • EPUB版とは別にページ数のあるバージョンの出版物(紙版の出版物等)がある場合
  • 教育等で印刷版とEPUB版の両バージョンを併用することが想定されるとき

メディアオーバーレイ

メディアオーバーレイドキュメント(SMILドキュメント)内にあるる全ての「スキップ可能な構造(skippable structures)」と「回避可能な構造(escapable structures」を識別することを保証する。
※といっても、DAISY3のようにコンテンツに「スキップ可能な構造(skippable structures)」と「回避可能な構造(escapable structures」を設定するのではなく、EPUB3の場合は、メディア オーバーレイ要素の epub:type 属性によって提供されるセマンティクス(ここは、footnoteですよ、figureですよという情報)に基づいて、リーディングシステムがスキップ機能や回避機能を提供することを想定しているので、何をすればよいのだろうか。きちんとepub:type 属性によってセマンティクスを提供するということだろうか。

7. 最適化(規格またはガイドライン識別)の要件

 EPUB Accessibility 1.0 の「最適化(規格またはガイドライン識別)の要件」では、適合している規格、ガイドラインを識別するための情報を dcterms の conformsTo プロパティで提供することが必須(must)とされている。なお、WCAGもその対象になるが、WCAGだけは、「最適化(規格またはガイドライン識別)の要件」ではなく、「アクセシビリティの要件」として整理されている。
 詳細は、以下のエントリにまとめたのでそちらを参照。

  • EPUBのアクセシビリティ仕様が求めるアクセシビリティメタデータ

8. 配信(提供)にあたっての要件

デジタル著作権管理(DRM)

EPUB 出版物に適用される場合、製作者は、支援技術によるアクセスを阻害する制限を課してはならない(must not)。

配信業者に提供するメタデータ

  配信業者に提供するメタデータについても、その形式でアクセシビリティメタデータが提供できるならば、(配信業者が求めなくても)アクセシビリティメタデータを提供しなくてはならない(must)。
 これも詳細は、以下のエントリにまとめたのでそちらを参照。

  • EPUBのアクセシビリティ仕様が求めるアクセシビリティメタデータ

9. おまけ

EPUB Accessibility 1.0 はあくまでコンテンツに対する要件をスコープとしているが、補論として配信システムとリーディングシステムの要件も提示しています。

配信システムの要件

  • ユーザーインターフェイスは、[WCAG 2.0] レベル AA に適合しなければならない(must)。
  • 利用可能なアクセシビリティ メタデータによって、検索結果を絞り込む機能を提供しなければならない(must)。

リーディングシステムの要件

  • 全ての [A11Y Test Suite] の基本的なアクセシブル リーディング システムのテストを合格しなければならない(must)。
  • User Agent Accessibility Guidelines (UAAG) 2.0レベル AA 適合性の要件を満たすべきである(should)。

※2018/09/02追記
ドキュメントへのリンクが古くなっていたので、修正しました。

EPUB, Metadata, アクセシビリティ, アクセシビリティメタデータ, 電子出版, 電子書籍

EPUBのアクセシビリティ仕様が求めるアクセシビリティメタデータ

2017-06-12 kzakza

 EPUBのアクセシビリティ仕様であるEPUB Accessibility 1.0は、アクセシビリティの要件として、EPUB出版物のパッケージドキュメント(OPFファイル)にschema.orgの語彙である以下のアクセシビリティメタデータを包含することを求めています。

  1. accessMode(必須)
  2. accessibilityFeature(必須)
  3. accessibilityHazard(必須)
  4. accessibilitySummary(必須)
  5. accessModeSufficient(推奨)
  6. accessibilityAPI(任意)
  7. accessibilityControl(任意)

 なお、上のschema.org以外の語彙のアクセシビリティメタデータを含むことも任意(optional)に行えます。どんどん行け。
 
 例えば、以下のようなEPUB出版物の場合、EPUB 3 パッケージドキュメント(OPFファイル)に含まれるアクセシビリティメタデータは、以下の記述になります。

  • EPUB出版物はテキストと視覚機能が必要なコンテンツ(画像やビデオなど)で構成されている
  • 非テキストコンテンツには代替テキスト、MathMLと(ビデオに)字幕がアクセシビリティの機能として追加されている
  • アクセシビリティ上の注意事項として、動画で画面が点滅する箇所がある。発作を誘発する音声や吐き気を催させるような動作を擬態するものはない。
  • その他はWCAGレベルAレベルに適合している。
<package … >
   <metadata>
      …
      <meta property="schema:accessMode">textual</meta>
      <meta property="schema:accessMode">visual</meta>
      <meta property="schema:accessModeSufficient">textual,visual</meta>
      <meta property="schema:accessModeSufficient">textual</meta>
      <meta property="schema:accessibilityFeature">transcript</meta>
      <meta property="schema:accessibilityFeature">MathML</meta>
      <meta property="schema:accessibilityFeature">alternativeText</meta>
      <meta property="schema:accessibilityHazard">flashing</meta>
      <meta property="schema:accessibilityHazard">noMotionSimulationHazard</meta>
      <meta property="schema:accessibilityHazard">noSoundHazard</meta>
      <meta property="schema:accessibilitySummary">
         The video in chapter 2 presents a flashing hazard. A transcript is
         provided that covers all the essential information contained in the
         video. The publication otherwise meets WCAG 2.0 Level A.
      </meta>
      <dc:publisher>Acme Publishing Inc.</dc:publisher>
      <meta property="a11y:certifiedBy">Acme Publishing Inc.</meta>
      <link rel="dcterms:conformsTo" href="http://www.idpf.org/epub/a11y/accessibility-20170105.html#wcag-aa"/>
  …
   </metadata>
   …
</package>

 というわけで、上のようにEPUB出版物に含むアクセシビリティメタデータについてまとめてみました。
 以下、言及がない場合は、EPUB Accessibility 1.0 については、imagedriveさんによる日本語訳、記述例については“EPUB Accessibility Techniques 1.0″(2017年1月5日版)からの引用です。

アクセシビリティメタデータを提供する意義

 EPUB Accessibility 1.0で以下のように、アクセシビリティメタデータを提供することの意義を説明しています。

 EPUB 出版物のアクセシブルな品質を、全ての利害関係者によって発見できることを保証することが、主要な関心事である。アクセシビリティ要件を満たすために用意された全てのアフォーダンスを知ることを要求することは、ユーザーが、それを購入したり、借りたり、別な方法で入手するとき、EPUB 出版物のユーザビリティを判断するために必要である。
 同様に、この仕様の要件を満たさないコンテンツは、広くアクセシブルでないにしても、依然として個々のユーザーのニーズを満たしているかもしれない。ただ豊かなメタデータの包含を通してのみ、ユーザーは、それらのコンテンツが彼らのニーズに適しているかどうかを判断できる。

 端的にいえば、アクセシビリティの観点から自分が利用できるEPUB出版物を発見できる、もっとストレートに言えば、自分が利用することができないコンテンツを検索時に排除できることに、アクセシビリティメタデータを提供する意義があると言えましょうか。EPUB出版物について、ユーザーが自分の状態に応じて自分の利用できるコンテンツを判断して選択することができるようにすることをEPUB Accessibility 1.0では、「発見可能(Discoverable)」と表現しています。
 EPUB Accessibility 1.0では、要件の適合によって以下のとおり、「発見可能なEPUB出版物」、「アクセシブルなEPUB出版物」、「最適化されたEPUB出版物」の3つにわけて整理していますが、いずれも「発見のメタデータ要件」を備えていることが必須としています。EPUB出版物そのもののアクセシビリティ品質を高めることよりも、アクセシビリティメタデータを提供することによってEPUB出版物を「発見可能(Discoverable)」とすることを最低ラインとしていることが重要です。コンテンツをアクセシブルにすることも重要ですが、既存のコンテンツを必要な人に到達させることができる仕組みはもっと重要と整理されているということになります。

発見のメタデータ要件 アクセシビリティの要件 最適化(規格またはガイドライン識別)の要件
発見可能なEPUB出版物 適合    
アクセシブルなEPUB出版物

適合 適合  
最適化されたEPUB出版物

適合   適合

必須(MUST)とされているメタデータ

1. accessMode

【解説】

(例えば、テキスト、視覚、聴覚、触覚のように)コンテンツを処理または理解するために必要な人間の感覚・知覚システムや認識能力
from “EPUB Accessibility 1.0”

 そのコンテンツが製作されたままの状態で正確に理解するに必要な人間の機能を明示する語彙です。EPUB出版物が、例えばテキストと画像で構成されるならば、画像を含めてそのコンテンツが製作されたままの状態で正確に理解するためは、テキストデータを利用できる能力と、画像を利用できる視覚機能が必要です。ユーザーにそれを知らせ、EPUB出版物が自身のニーズに合致するものかどうかを知るために提供する語彙です。
 なお、accessMode は、そのコンテンツが製作されたままの状態で正確に理解するのに必要な情報ですので、例えば、コミックのように画像だけで構成されるEPUB出版物でその画像に代替テキストが提供されているとしても、”textual”という値は提供しません。アクセシビリティ上の配慮も含めた情報については、後述の accessModeSufficientで提供します。

【値】
  • auditory
  • tactile
  • textual
  • visual
  • colorDependent
  • chartOnVisual
  • chemOnVisual
  • diagramOnVisual
  • mathOnVisual
  • musicOnVisual
  • textOnVisual

 EPUB Accessibility Techniques 1.0 では、EPUBでもっとも使用されそうなのは、auditory、textual、visual、tactileだろうということで、これらの値に以下のように解説がついています。

  • textual — 見出し、パラグラフなどにテキストコンテンツを格納する出版物
  • visual — 画像、図、アニメーション、ビデなどの視覚的コンテンツを格納する出版物
  • auditory — スタンドアロンの音声クリップやビデオのサウンドトラックのような音声コンテンツを格納する出版物
  • tactile — 点字や触図などの触覚的コンテンツを格納する出版物
【記述例】
<meta property="schema:accessMode">textual</meta>
<meta property="schema:accessMode">visual</meta>
参考
  • META-001: Identify primary access | EPUB Accessibility Techniques 1.0

2. accessibilityFeature

【解説】

(例えば、代替テキスト、拡張した概要、キャプションなど)コンテンツの全体的なアクセシビリティに貢献する機能や適合。
from “EPUB Accessibility 1.0”

 アクセシビリティのために追加された機能や配慮に関する情報を提供する語彙です。代替テキストの有無が判断できることは、かなり重要だと思いますので、それを提供することを意味する”alternativeText”の付与は普及して欲しいですね(逆にいえば、”alternativeText”がないことで、代替テキストが提供されていないことが判断できるようになってほしい)。

【値】
  • alternativeText
  • annotations
  • audioDescription
  • bookmarks
  • braille
  • captions
  • ChemML
  • describedMath
  • displayTransformability
  • highContrastAudio
  • highContrastDisplay
  • index
  • largePrint
  • latex
  • longDescription
  • MathML
  • none
  • printPageNumbers
  • readingOrder
  • rubyAnnotations
  • signLanguage
  • structuralNavigation
  • synchronizedAudioText
  • tableOfContents
  • taggedPDF
  • tactileGraphic
  • tactileObject
  • timingControl
  • transcript
  • ttsMarkup
  • unlocked

from WebSchemas/Accessibility(W3C Wiki)

【記述例】
<meta property="schema:accessibilityFeature">MathML</meta>
<meta property="schema:accessibilityFeature">alternativeText</meta>
参考
  • META-003: Identify accessibility features | EPUB Accessibility Techniques 1.0

3. accessibilityHazard

【解説】

(例えば、発光、動作のシミュレーション、サウンドなど)コンテンツ表現の全ての潜在的な危険性。
from “EPUB Accessibility 1.0”

 アクセシビリティの観点からユーザーに知らせておくべき危険を警告するための語彙です。

【値】
  • flashing
  • noFlashingHazard
  • motionSimulation
  • noMotionSimulationHazard
  • sound
  • noSoundHazard
  • unknown

from WebSchemas/Accessibility(W3C Wiki)

【記述例】
<meta property="schema:accessibilityHazard">flashing</meta>
<meta property="schema:accessibilityHazard">noMotionSimulationHazard</meta>
<meta property="schema:accessibilityHazard">noSoundHazard</meta>
参考
  • META-004: Identify accessibility hazards | EPUB Accessibility Techniques 1.0

4. accessibilitySummary

【解説】

(例えば、拡張された記述の欠如や特定の危険性など)全ての既知な欠陥の説明を包含する、全体的なアクセシビリティの人間が可読可能な要約。
from “EPUB Accessibility 1.0”

 
 製作者がアクセシビリティについて、ユーザーに自然文で知らせるための語彙です。ユーザーに知らせるべきだが、他の語彙では伝えることができない事項もここで補完的に伝えることができます。

【記述例】
<meta property="schema:accessibilitySummary">
   The publication is missing alternative text for complex diagrams.
   The publication otherwise meets WCAG 2.0 Level A.
</meta>
<meta property="schema:accessibilitySummary">
   Chapter four contains a first-person interactive game that could cause
   motion sickness in certain individuals. The game is only provided for
   illustrative purposes, so readers unable to interact with it will not
   be at a disadvantage.
</meta>
参考
  • META-005: Include an accessibility summary | EPUB Accessibility Techniques 1.0

推奨(RECOMMENDED)とされているメタデータ

5. accessModeSufficient

【解説】

情報の著しい損失なしにコンテンツを消費するために十分なひとつ以上のアクセス モードのセット。EPUB 出版物は、それを包含するコンテンツの種類に応じて、消費するために十分なアクセス モードのセットを複数持つかもしれない。すなわち、このプロパティは、accessMode とは異なり、例えば音声コンテンツのトランスクリプトを包含するなど、幅広くアクセシブルでないコンテンツの全てのアフォーダンスを考慮に入れている。
from “EPUB Accessibility 1.0”

 accessMode がアクセシビリティ機能の追加される前のデフォルト状態でのEPUB出版物の状態を示すものでしたが、 この
accessModeSufficient は、追加されたアクセシリティ機能を考慮した上でEPUB出版物の内容を利用するのに必要な人間の機能を示す語彙です。

【値】
  • auditory
  • tactile
  • textual
  • visual
【記述例】

 例えば、以下に accessMode によって情報が提供されているEPUB出版物(テキストと画像で構成される出版物)があるとします。この場合、accessMode は、以下のような記述になります。accessMode の情報だけでは、テキストデータを利用できる能力だけで EPUB出版物の全ての情報がアクセスできるようになっているかはっきりしません。

<meta property="schema:accessMode">textual</meta>
<meta property="schema:accessMode">visual</meta>

まずテキストデータを利用できる能力と画像データ等の視覚情報を利用できる能力があれば、EPUB出版物の全ての情報がアクセスできますので、以下のように”textual”と”visual”をカンマでつないで記述します(順番に意味はないそうです)。

<meta property="schema:accessModeSufficient">textual,visual</meta>

このEPUB出版物の全ての画像に代替テキストが提供され、テキストデータを利用できる能力だけで、EPUB出版物の全ての情報にアクセスできることが保障されている場合は、以下のように “textual”のみを記述します。

<meta property="schema:accessModeSufficient">textual</meta>

 この例に挙げたEPUB出版物は、以下のいずれの状態でも全ての情報にアクセスできますので、

  • テキストデータを利用できる能力と画像データ等の視覚情報を利用できる能力
  • テキストデータを利用できる能力

以下のように”textual,visual”と”textual”のみを併記することになります。

<meta property="schema:accessModeSufficient">textual,visual</meta>
<meta property="schema:accessModeSufficient">textual</meta>
参考
  • META-002: Identify sufficient access modes | EPUB Accessibility Techniques 1.0

任意(OPTIONAL)とされているメタデータ

6. accessibilityAPI

【解説】

リソースは、特定のアクセシビリティ API と互換性があることを識別する。このプロパティは、オペレーティング システムのアクセシビリティ API との互換性が、リーディング システムにとって懸念事項であるとして、典型的に、EPUB 出版物でのスクリプティングの使用が、[WAI-ARIA 1.1] オーサリングプラクティスに従っていることを示すためにのみ使用される。
from “EPUB Accessibility 1.0”

 
 accessibilityAPI には、MacOSXAccessibility や iOSAccessibility などのOSのAPIに関する値が用意されていますが、上の EPUB Accessibility 1.0 にもあるとおり、これらのインターフェイスを利用するのは、コンテンツではなく、閲覧環境(リーディングシステム)側です。EPUB出版物の場合は、WAI-ARIAの属性をEPUB出版物に埋め込んだ際に、”ARIA”という値を使用するケースにほぼ限られるのではないかと思われます。

【値】
  • AndroidAccessibility
  • ARIA
  • ATK
  • AT-SPI
  • BlackberryAccessibility
  • iAccessible2
  • iOSAccessibility
  • JavaAccessibility
  • MacOSXAccessibility
  • MSAA
  • UIAutomation

from WebSchemas/Accessibility(W3C Wiki)

【記述例】
<meta property="schema:accessibilityAPI">ARIA</meta>
参考
  • META-006: Identify ARIA Conformance | EPUB Accessibility Techniques 1.0

7. accessibilityControl

【解説】

(例えば、キーボードやマウスなど)コンテンツのアクセスに使用できる入力方法を識別する。
from “EPUB Accessibility 1.0”

 
 これは上の解説と以下の値に示されているコンテンツにアクセスできる方法を識別する情報を提供する語彙です。
 以下の記述例では、タッチ、マウス、キーボードで全てのコンテンツがアクセスできることを示しています。仮に”fullKeyboardControl”がない場合は、タッチ、マウスではアクセスできても、キーボードではアクセスできない部分があることを意味し、タッチやマウスが操作できないユーザーにとっては一部のコンテンツが利用できないということになります。

【値】
  • fullKeyboardControl
  • fullMouseControl
  • fullSwitchControl
  • fullTouchControl
  • fullVideoControl
  • fullVoiceControl

from WebSchemas/Accessibility(W3C Wiki)

【記述例】
<meta property="schema:accessibilityControl">fullTouchControl</meta>
<meta property="schema:accessibilityControl">fullMouseControl</meta>
<meta property="schema:accessibilityControl">fullKeyboardControl</meta>
参考
  • META-007: Identify Input Control Methods | EPUB Accessibility Techniques 1.0

規格またはガイドラインを識別するためのメタデータ

 上の表で言うところの、「発見のメタデータ要件」の要件ではなく、「アクセシビリティの要件」、「最適化の要件」に該当しますが、「アクセシビリティの要件」、「最適化の要件」に適合させる場合は、dcterms の conformsTo プロパティで適合している規格・ガイドラインを示すことが必須とされています(must)。

アクセシビリティの要件

 EPUB Accessibility 1.0 の「アクセシビリティの要件」では、WCAGのレベルAに適合することが必須とされていますが、あわせて dcterms の conformsTo プロパティでWCAGの適合レベルとEPUB Accessibility Vocabularyの certifiedBy プロパテでEPUB出版物のアクセビティ認証に責任を負う者をメタデータとして提供することが必須(must)とされています。
WCAGの適合レベルを示すIRIはそれぞれ以下の通り。

http://www.idpf.org/epub/a11y/accessibility-20170105.html#wcag-a
http://www.idpf.org/epub/a11y/accessibility-20170105.html#wcag-aa
http://www.idpf.org/epub/a11y/accessibility-20170105.html#wcag-aaa
【記述例】
<metadata>
  …
  <dc:publisher>Acme Publishing Inc.</dc:publisher>
  <meta property="a11y:certifiedBy">Acme Publishing Inc.</meta>
  <link rel="dcterms:conformsTo" href="http://www.idpf.org/epub/a11y/accessibility-20170105.html#wcag-aa"/>
  …
</metadata>
from "EPUB Accessibility 1.0"

最適化(規格またはガイドライン識別)の要件

 EPUB Accessibility 1.0 の「最適化(規格またはガイドライン識別)の要件」では、WCAG以外で、適合している規格、ガイドラインを識別するための情報を dcterms の conformsTo プロパティで提供することが必須(must)とされています 。
以下は、DAISYコンソーシアムのEPUB形式で製作された録音図書(音声が主たるコンテンツ)のガイドラインを提示しています。

<package …>
   <metadata>
      …
      <link rel="dcterms:conformsTo" href="http://www.daisy.org/guidelines/epub/navigable-audio-only-epub3-guidelines"/>
      …
   </metadata>
   …
</package>
from "EPUB Accessibility 1.0"

ガイドラインの適切なIRI がない場合、コンテンツを最適化する方法に関する詳細な情報を、accessibilitySummary でアクセシビリティの要約として提供するべき(should)としています。

<meta property="schema:accessibilitySummary">
    This publication is optimized for braille readers. It will not be
    usable by persons who cannot read braille. The publication is designed
    for braille reading devices capable of displaying 6 character cells and
    40 character line lengths. The text is not contracted, and follows
    Unified English Braille formatting conventions. All characters are
    encoded using the Unicode braille character set.
</meta>
from "EPUB Accessibility 1.0"

配信業者が要求する形式でのアクセシビリティメタデータの提供

 EPUB Accessibility 1.0は、EPUB出版物の配信業者が求めるメタデータ形式において、アクセシビリティメタデータを提供できる場合には、そのメタデータ形式でのアクセシビリティメタデータの提供も必須としています。

配信業者が、配信記録(例えば、ONIX)を EPUB 出版物に添付させることを要求する場合、製作者は、フォーマットが許可するレコードにアクセシビリティメタデータを包含しなければならない(must)

 
 配信業者がアクセシビリティメタデータの提供を求めていなくても、配信業者が提供を求めるメタデータ形式でのアクセシビリティメタデータを必須としているところがポイントです。EPUB Accessibility 1.0が例として挙げているのは、ONIXの Code List 196(E-publication Accessibility Details)です。

<ONIXMessage release="3.0">
   <Header>
      …
   </Header>
   <Product>
      …
      <DescriptiveDetail>
         <ProductFormFeature>
            <ProductFormFeatureType>09</ProductFormFeatureType>
            <ProductFormFeatureValue>10</ProductFormFeatureValue>
         </ProductFormFeature>
         <ProductFormFeature>
            <ProductFormFeatureType>09</ProductFormFeatureType>
            <ProductFormFeatureValue>11</ProductFormFeatureValue>
         </ProductFormFeature>
         <ProductFormFeature>
            <ProductFormFeatureType>09</ProductFormFeatureType>
            <ProductFormFeatureValue>13</ProductFormFeatureValue>
         </ProductFormFeature>
      </DescriptiveDetail>
      …
      <TitleDetail>
         <TitleType>01</TitleType>
         <TitleElement>
            <TitleElementLevel>01</TitleElementLevel>
            <TitleText>Accessible EPUB 3</TitleText>
         </TitleElement>
      </TitleDetail>
      …
   </Product>
</ONIXMessage>
参考
  • DIST-002: Include accessibility metadata in distribution records
  • Crosswalk | Accessibility Metadata Project
  • ONIX Code List 196

配信システム側に求められる対応

 EPUB Accessibility 1.0は、コンテンツのアクセシビリティ要件を規定するもので、それをユーザーに提供する配信システムの要件はフォーカス外ではありますが、補論として以下の要件を提示しています。

利用可能なアクセシビリティ メタデータによって、検索結果を絞り込む機能を提供しなければならない(must)。

 
 上の要件はそのとおりで、配信システムで活用されないとEPUB出版物にアクセシビリィメタデータを包含してもあまり意味はないと思いますが、同じことは閲覧環境(リーディングシステム)にも言えるはず。しかし、閲覧環境(リーディングシステム)のアクセシビリティ要件も補論として提示はされていますが、アクセシビリティメタデータのサポートは特に言及はされていません。

DAISY, EPUB, Metadata, アクセシビリティ, アクセシビリティメタデータ, 電子出版, 電子書籍 1件のコメント

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