7月 10

漫画の「音訳」(まんがDAISYの話)

「音訳」(おんやく)とは、文字情報や図表などの視覚情報を聴覚情報、つまり、音声に忠実に置き換える行為で、具体的には紙媒体の図書や雑誌をDAISYやテープという形式によって録音図書や録音雑誌にすることなどを指しています。視覚障害者等のための情報保障の手段の1つです。

 いわゆる「朗読」とよく混同されますが、視覚情報を忠実に音声に置き換えることが求められますので、本文のテキスト情報だけではなく、図や表、写真のような非テキスト情報に対してはその説明をする必要があります。また、同音異義語・記号等、文字、略称をただそのまま読んだのでは意味が正しく伝わらないものがありますので、意味がわかるよう、必要に応じて説明をつける、1文字ずつ読む、略称を元のフルネームに戻して読んだり等々を行う必要があります。繰り返しますが、視覚情報を忠実に聴覚情報に変換することが求められますので、誤読のないように読むことが求められます。日本語だと、漢字の読みの問題がありますので、読みの調査を含めた事前の調査が欠かせません。その資料の分野の知識をある程度を知っていなければ、これらの調査を行うこともできませんから、対象資料の専門性が高くなればなるほど難易度は高くなっていきます(例えば、医学系の書籍に掲載された画像に説明をつけることを想像していただけば・・・)。

 前置きが長くなってしまいました。ここからが本題漫画の音訳についてです。

 視覚情報を忠実に音声に置き換えることが求められる音訳ですが、対象が漫画になるとどうなるかという話を少々。漫画の音訳について日本ライトハウス情報文化センター「ワンブックワンライフ」で少し紹介されています。

近畿視情協録音製作委員会では、昨年から各施設がまんがの音訳に取り組んでいけるよう、読み方の要点や製作作業の流れなどを整理してきました。今回の録音分科会では、この報告がなされた後、まんが表現の基本について学びました。
まんが音訳は、絵と文字で表現されたものを音声化します。文章の読み上げと絵の説明の順序、絵の描写の説明の仕方(音訳者により個人差がある)、コマの変わり目やページの変わり目の案内方法など、さまざまな工夫が必要になります。説明が多すぎるとストーリーの流れが損なわれますし、少ないと内容が理解できにくくなるため、バランスが大切です。
 報告では利用者の感想も発表され、まんがの音訳に対する期待感が伝わってきました。また、10年以上前からまんが音訳に取り組んでいるグループN-BUNの方々にもお話を伺いました。原本から文章を抜き出し、絵の説明などを加えた「シナリオ原稿」を作成してから録音することなど、実際の作業について説明されました。
 後半の講義では、花園大学の畑先生による「まんがの読み方」の講義があり、まんが表現の基本について説明を受けました。まんがの紙面には「重要な情報」と「背景的な情報」があること。それらを判別するには、コマの位置や、コマ内部のレイアウトが関係していること。具体的には、ページがめくられる前後のコマが重要であることや、コマの内部では台詞と台詞の間(視線の通り道)に人物(表情)が描かれており、これらは重要な情報。それ以外の視線から外れやすいものなどは背景的な情報であることが多いなど、非常に興味深いお話でした。
 まんが表現の基本を学ぶことで、音訳の際、優先して伝えるべき情報が把握しやすくなり、聴きやすい録音図書の製作につながります。今後も各施設・団体で協力し、まんが音訳の基本ルールを作っていければよいと思いました。
from 日本ライトハウス情報文化センター「ワンブックワンライフ」2014年2月号

 他のジャンルの資料と同じような詳細な説明を漫画の絵に対して付すと、コマのテンポを損ねてしまうかもしれない。しかし、逆に説明を省きすぎると必要なコマの状況が伝わらない。コマの大きさにも意味がありますので、コマ割りをどのように音訳で表現するべきか。セリフの読み上げと絵の説明はどういう順序で行うべきか。擬音などの漫画独特の表現方法をどう音訳するか。などなど漫画ならではの苦労があるようです。

 ウェブや「サピエ図書館」を調べるとまんがDAISYを製作している機関はすでにいくつかあるようです。「ワンブックワンライフ」を読むかぎりまだまだ試行錯誤の段階なのかもしれません。漫画の音訳について詳しく知りたい。

7月 03

Internet ArchiveのOpen Libraryが360万点強のDAISY図書を提供しているようだ

以前、Internet Archiveブログで、プリントディサビリティの方が無料で100万点のDAISY図書を利用できるようになったという記事が掲載されました。2010年11月の話です。

タイトルごとに以下のようにEPUBやmobi形式ともにDAISY3形式のテキストDAISYがダウンロードできるようになっています。この選択肢の多さが素晴らしいです。
コンテンツのダウンロード部分のスクリーンショット。PDF、テキストデータ、EPUB、DAISY、mobi形式、Djvu形式でダウンロードできるほか、Kindleに送信する機能などが用意されている 2014-07-03 1.34.43

 テキストデータがあって、EPUBが作れるなら、EPUBに近いDAISY3形式のテキストDAISYも同時に提供することはそれほど難しいことではないと思いますが、今日(2014年7月3日)に確認したら、360万点を超えている。3年8ヶ月で約260万点増えたことになるのか・・。すごい・・。

Open LibraryのAccessible bookのスクリーンショット。2014年7月3日現在で3,663,755 works / 3,649,730 ebooksのコンテンツが提供できることが表示されている
 Accessible book (Open Library) 2014年7月3日現在

1日1000冊のペースで書籍をスキャニングして、それをテキストデータ化しているようです。英語の書籍とはいえ、古い書籍も結構あるのですが、このペースで校正はどうやっているのだろう。

 なお、上の360万点のうち、142万点は現代書籍であるため、暗号化されている”Protected DAISY”です。米国議会図書館の視覚障害者及び身体障害者のための全国図書館サービス(Library of Congress National Library Service for the Blind and Physically Handicapped:NLS)で利用者として登録された人でないと利用できません。米国議会図書館の視覚障害者及び身体障害者のための全国図書館サービス(Library of Congress National Library Service for the Blind and Physically Handicapped:NLS)によって提供されたコンテンツだそうです。

Open LibraryのProtected Accessible bookのスクリーンショット。2014年7月3日現在で1,446,009 works / 1,421,849 ebooksのProtected Accessible bookのコンテンツが提供できることが表示されている
 Protected DAISY (Open Library) 2014年7月3日現在

例えば、”Protected DAISY”である1955年刊の”Ovid”をダウンロードしようとすると以下の画面に遷移します。この画面でNLS提供のコンテンツであること、NLSのアカウントを保有する者でないと閲覧することをできないことを伝えています。

NLS提供のDAISYをダウンロードする前に表示される画面で、NLSのアカウントを保有する者でないと閲覧することができないことを伝えている
 例: DAISYをダウンロードする際に表示される画面

 最後になりますが、上のように紹介してしまうと、「アメリカすげー!それに比べて日本は・・・」という論調になりがちですが、

  • 英語はOCRの精度が日本語のそれを比べて高いこと(だから、書籍コンテンツをテキストデータ化しやすい)
  • 英語は日本語のように読みや分かちの問題がないので、合成音声による読み上げでも誤読もほとんどなくきれいに読み上げてくれ、テキストデータをそのままDAISYにしたテキストDAISYで利用に耐えうる

という点で、日本と事情が異なりますので、単純な比較は難しいところです。また、EPUB2とDAISY3は兄弟みたいなフォーマットですから、EPUBが提供できている環境からワンオプション(テキストDAISY)を追加することはさほど難しいことではないはずです。

とはいえ、この数はやはり凄いですね

※2014/7/8 修正
”Protected DAISY”の142万点を米国議会図書館の視覚障害者及び身体障害者のための全国図書館サービス(Library of Congress
National Library Service for the Blind and Physically Handicapped:NLS)が提供したものであると紹介してしまいましたが、”Protected DAISY”はNLSが提供したものではなく、IA自身が用意し提供しているコンテンツでしたので、修正しました。この”Protected DAISY”は現在書籍をスキャニングしたものだそうで、著作権法上、利用できる対象を制限しなければならず、そのためにNLSのプログラムにのっかっているようです。

関連エントリ

6月 05

「DAISY 2.02仕様(2001年2月28日付勧告 日本語訳)」の日本語訳を公開します。

DAISY 2.02に対する理解が必要だと思いまして、仕様を少しずつ訳しながら読んでました。結果として8割ほど訳してしまいました。DAISY 2.0 の日本語訳はすでにありますが、2.02の日本語訳はまだないようですし、せっかくなので全部訳してみました。あくまで「一人輪読会」レベルのものですが、公開します。

 この日本語訳は、上で述べたように私自身のDAISY 2.02に対する理解のために個人的に訳したものであり、当然ですが、DAISY Consortiumの公式な日本語訳ではありません。また、翻訳の正確性、その内容について一切保証をするものではありません。ご注意ください。

5月 29

Bookshareで個人ユーザーが最も早く簡単にアクセシブルな本を読む方法

DAISY図書などのアクセシブルコンテンツを集めた米国の電子図書館Bookshareを個人ユーザーが使う場合の、最も簡単で早い方法をBookshareブログが紹介しています(サポートチームによくされる質問なのでまとめたとか)。

 動画も公開されています。

 上の動画で紹介されるBookshareのWeb ReaderのUIがほとんどReadiumと同じなので、おや?と思ったのですが、調べてみたらやはりReadiumをベースとしたものでした。

 Bookshareでは、ReadiumをベースにDAISYも読めるように開発をしたのでしょうか。DAISYに対応しているかどうかも気になりますが、現行のReadiumは操作性から見てもまだDAISYユーザーが満足する機能がないように思えますので、Bookshare版では、そこもどのように拡張開発したのかが気になるところです。

#Benetech社のgithubリポジトリには、DAISY Pipeline 2のスクリプトも置かれていますので、もしかしたらビューワーに移す段階で、DAISYからEPUB3に変換しているのかもしれません。

 ちなみにBookshareで個人ユーザーが最も早く簡単にアクセシブルな本を読む方法は以下です。

  1. Google ChromeでBookshareにログインします。
    Bookshare_login
  2.  

  3. 読みたい本を検索します。
    bookshare_Search
  4.  

  5. 検索結果一覧の各書籍に表示される“Read Now”をクリックします。
    readnow
  6.  

  7. Chrome拡張プラグインのインストールが求められるので、インストールします(プラグインのインストールは最初だけです)。
  8.  

  9. 本が開きますので
    openbook

    openbook2

    TTSボタン開始ボタンを押して、読み上げをスタートさせます。
    tts

なお、Bookshareの個人会員登録の対象はそのサービスの趣旨から読書に障害を持つ方になっています。

5月 24

平成25年度マルチメディアデイジー教科書アンケート結果

 2月に行われたシンポジウム「デイジー教科書の現状、課題、そして将来に向けて」の資料の一部として日本障害者リハビリテーション協会が平成25年度に行ったマルチメディアデイジー教科書アンケートの結果が公開されています。

 
 マルチメディアDAISY教科書については、以下が参考になる。

関連エントリ

5月 01

EPUB3 からDTBook(DAISY XML)に変換するツールを作るNorwegian Library of Talking Books and Brailleのプロジェクト

EPUB3からDTBook(DAISY3のテキストコンテンツのためのXMLファイル)に変換するツールを作るプロジェクトをNorwegian Library of Talking Books and Braille(NLB)が進めています。DAISY Pipeline2のモジュールとして開発するようです。

EPUB3のコンテンツをDAISYに変換できれば、DAISYユーザーの使い慣れたDAISYのリーディングシステムでEPUB3由来のコンテンツを利用することもできるようになります。

このプロジェクトで作成するモジュールは、ガイドラインに従って厳密にマークアップされた北欧の図書館(NLBMTMCelia, NotaSBS)作成のEPUBからの変換を想定しているようです。ガイドラインから外れたEPUB3ファイルもDTBookに変換できるものになるかはまだ不明です。しかし、DTBookに変換できれば、そこからさらにDAISY2.02への変換も可能ですので、プロジェクトの進展を期待したいところです。

関連エントリ

3月 06

Daisy Online Delivery ProtocolをベースとしたDAISYオンライン配信プラットフォーム"Online Daisy "

(以前からあるようですが、メモとして。)

 ”Online Daisy “はベルギーの企業Pyximaが提供するDaisy Online Delivery Protocolをベースとした「DAISYオンライン配信プラットフォーム」です。

Online Daisy
 http://www.online-daisy.com/

 ウェブサイトでは、どのような機能があるかという話はあっても、どのようなコンテンツを保有しているかという紹介がされておりませんので、AmazonのKindle Storeのようなコンテンツを提供するウェブサービスではなく、そういうウェブサービスを提供する機関や企業に”Online Daisy “というソリューションを提供するという話のようです。

  このプラットフォームでは、DAISYコンテンツ(図書、雑誌、新聞)をWeb上からストリーミングで再生したり、デバイスに直接ダウンロードしたり、Podcastで自動的な配信をうけることができるとのことです。

 デモサイトが公開されており、どのようなサービスが利用できるかを試すことができます。

3月 03

3月2日のみんなのデジタル教科書教育研究会 Open Meeting 09 Saitama 「DAISY / EPUBで実現するアクセシブルなデジタル教科書」配付資料

3月2日(日)に埼玉でみんなのデジタル教科書教育研究会 Open Meeting 09 Saitamaが、「DAISY / EPUBで実現するアクセシブルなデジタル教科書」というテーマで開催されました。その配布資料が以下で公開されています。

Open Meeting 09 Saitamaのプログラムは以下の通りです。

1. 開会(13:30~13:40)
2.(13:40~14:10)
  DAISY / EPUBをめぐる内外の最新情報
  NPO法人支援技術開発機構(ATDO) 濱田 麻邑 氏
  http://www.normanet.ne.jp/~atdo/
3.(14:10~14:40)
  マルチメディアDAISYの自動制作・利用システム
  シナノケンシ 西澤 達夫 氏
  http://www.shinanokenshi.com/japanese/products/plextalk.php
4.(14:40~15:10)
  スマホ・タブレット用DAISYプレイヤーアプリ「ボイス オブ デイジー」
  サイパック 工藤 智行 氏
  http://www.cypac.co.jp/home.html
休憩(10分間・質問用紙回収)
5.(15:20~16:30)
  冒頭10分間追加情報の提供(事務局)
  登壇者と参加者全員による意見交換(質疑応答含む)
  「DAISY / EPUBで実現するアクセシブルなデジタル教科書」
6. 閉会(16:30~16:40)

 どれも気になるテーマだったので、日帰りでも参加できないかと思ったのですが、当日は京都を離れてより西方にいたので、難しかったのでしたorz。総務省の助成をうけて開発されているシナノケンシのEPUB3生成ソフト・再生ソフトのお話は、シナノケンシのウェブサイト上にもなかなか出てこないので、個人的に特に気になっていたところです。

1月 31

日本DAISYコンソーシアムがDAISY2.02図書から変換したEPUB3 MediaOverlaysのサンプルを公開している

 日本DAISYコンソーシアムがDAISY2.02図書から変換したEPUB3 MediaOverlaysのサンプルを公開しています。

  ちなみにIDPFもいろいろなEPUB 3のサンプルファイルを以下で公開しています。

1月 31

DAISYコンソーシアムのアクセシブル出版EPUB 3 移行プロジェクト"Transition to Inclusive EPUB 3 Ecosystem (TIES) "

DAISYコンソーシアムは、アクセシビリティに関する機能をメインストリームの電子書籍フォーマットであるEPUB 3に仕様に盛り込むことができたということで、次のステージのプロジェクトとして、アクセシブルな出版をEPUB 3へ移行させるプロジェクト”Transition to Inclusive EPUB 3 Ecosystem (TIES) “を始めるそうです。

 これまでDAISY 3 /2.02で制作されてきたアクセシブルな出版物を、EPUB 3で制作するために必要な検証と技術的・業界関係的な環境作りを目的とする2カ年プロジェクト(2014-2015)で、主に以下のようなことが行われるようです。

制作環境のアップグレード(DAISY 3/2.02 → EPUB 3)の検証

 すでに普及している既存の DAISY 3/2.02の制作環境からEPUB 3の制作環境に移行について、実証実験を行いながら検証する。

出版社の連携強化

 以下を実現するために出版社との連携の強化を進める。

  • EPUB 3制作者が効率よくコンテンツを制作できるように出版社からソースファイルの提供をうける。
  • DAISYコンソシアムメンバーと出版社と連携により、アクセシビリティの機能が埋め込まれた出版物を出版社から出版する。
リーディングシステム
  • Readiumのようなオープンソースなリーディングシステム開発に貢献する。
  • リーディングシステムデベロッパーへの働きかける。

関連エントリ