10月 10

障害者差別解消法とウェブアクセシビリティ

 障害者差別解消法とウェブアクセシビリティについて。

 障害者差別解消法とか、合理的配慮については、以下をまずは以下のエントリをご覧ください。

 ウェブサイトのアクセシビリティの改善も、当然、障害者差別解消法の対象になりますが、基本的に障害者差別解消法でいうところの「環境整備」に該当するものになります。

 しかし、ウェブアクセシビリティに関係するケースでも、例えば以下のようなケースは合理的配慮の提供が求められるケースになるかと思います。

  • 特定のページについて、アクセシビリティに問題があり、障害者から改善を求められ、過度の負担なく改善できる場合(たとえば、テキストエディタでHTMLの編集をすれば改善する場合)
  • PDFや画像で提供されている特定のコンテンツについて、それではスクリーンリーダーで読み上げができないからと障害者からテキストデータの提供を求められた場合

 以下のような事例は、合理的配慮の提供がなされない場合、スクリーンリーダーユーザーを排除してしまっていることになり、民間事業者も禁止事項とされている障害を理由とする不当な差別的取扱いになってしまうかもしれない。

  • (あってはならないことだが)CAPTCHAのように画像による認証方法を用いていて、代替手段を提供していなかった場合

 このテーマについては、石川准先生が言うべきことおっしゃっているので、こちらをご参照ください。

8月 18

図書館の障害者サービスと点字図書館関係年表(1825年から2016年まで)(テキスト形式)

 先のエントリにおいて、表形式で公開した「図書館の障害者サービスと点字図書館関係年表(1825年から2016年まで)」のテキスト版です。こちらのほうがスクリーンリーダーによる読み上げでもわかりやすいだろうということで、作成してみました。内容は表形式のものと同じです。

参考 表形式版

 各年ごとにその年に起こった出来事を図書館関係、点字図書館関係、著作権法関係、その他で分類してあります。

 年表中のリンクは、該当する機関や団体のホームページへのリンクだったり、関連する参考資料へのリンクです。

年表(1825年から2016年まで)

1825年

(その他)
  • ルイ・ブライユがアルファベットの6点式点字を開発

 

1854年

(その他)
  • ブライユ式点字がフランスで正式に採用

1880年(明治13年)

(図書館・点字図書館関係)
  • キリスト教宣教師ヘンリー・フォールズ、築地病院に「盲人図書室」を設置(日本における施設としての障害者への情報提供の最初の事例?)

1890年(明治23年)

(その他)
  • 石川倉次が日本語の6点式点字を考案、同年に東京盲唖学校(現・筑波大学附属視覚特別支援学校)で採用

 

1901年(明治34年)

(その他)

 

1916年(大正5年)

(図書館関係)
  • 東京盲学校(現・筑波大学附属視覚特別支援学校)の学生である加藤梅吉が自身が所蔵する点字図書200冊を東京市立本郷図書館に寄託。それを受けて、東京市立本郷図書館は点字文庫開設(公共図書館による障害者への情報提供の嚆矢)

 

1922年(大正11年)

(点字図書館関係)
(その他)

 

1931年(昭和6年)

(その他)

1932年(昭和7年)

(点字図書館関係)
  • 岩橋武夫、自宅にて点字図書貸出事業を開始

1933年(昭和8年)

(図書館関係)
  • 第27回全国図書館大会で「点字図書及盲人閲覧者の取扱」というテーマで障害者への情報提供が取り上げられる。

 

1934年(昭和9年)

(その他)

 

1936年(昭和11年)

(図書館関係)
(点字図書館関係)
  • 日本ライトハウス、世界で13番目のライトハウとして公認される(4月)

 

1937年(昭和12年)

(その他)
  • ヘレン・ケラー、来日

 

1940年(昭和15年)

(点字図書館関係)

 

1948年(昭和23年)

(点字図書館関係)
  • 日本盲人図書館、「日本点字図書館」と名を改める(4月)
(その他)

 

1949年(昭和24年)

(点字図書館関係)

 

1950年(昭和25年)

(図書館関係)
  • 図書館法公布

 

1953年(昭和28年)

(その他)

 

1955年(昭和30年)

(点字図書館関係)
  • 日本点字図書館、厚生省委託点字図書製作・貸出事業開始(1月)
(その他)
  • ヘレン・ケラー、3度目の来日

 

1957年(昭和32年)

(点字図書館関係)
  • 国際基督教奉仕団(現・日本キリスト教奉仕団)テープライブラリ発足(2月)
  • 厚生省が点字図書館設置基準暫定案を作成(3月)

 

1958年(昭和33年)

(点字図書館関係)
  • 日本点字図書館が録音図書の製作を開始し、「声のライブラリー」を設置

 

1959年(昭和34年)

(点字図書館関係)
  • 日本ライトハウス、「声の図書館」(テープライブラリー)を開設。

 

1961年(昭和36年)

(点字図書館関係)
  • 日本点字図書館・日本ライトハウス、厚生省委託声の図書製作・貸し出し事業開始。
  • 日本点字図書館、「声のライブラリー」を「テープライブラリー」と改称(4月)
(その他)
  • 郵便法改正(盲人用郵便が無料化)

 

1963年(昭和38年)

(点字図書館関係)
  • 日本ライトハウス、厚生省委託点字図書製作・貸出事業開始

 

1967年(昭和42年)

(その他)
  • 京都で視覚障害学生と点訳サークル学生を中心に関西SL(Student Library)発足(4月)

 

1969年(昭和44年)

(図書館・点字図書館関係)
  • 国立国会図書館と東京都立日比谷図書館に対して、日本盲大学生会・関西SL等が図書館蔵書の開放運動を行う。

 

1970年(昭和45年)

(図書館関係)
  • 東京都立日比谷図書館、視覚障害者サービスを開始(4月)
(著作権法関係)
  • 旧著作権法を全部改正した著作権法(①)公布。37条(点字による複製等)等を新たに規定(5月)
(その他)
  • 日本盲大学生会・関西SL等が視覚障害者読書権保障協議会(視読協)結成(6月)

 

1971年(昭和46)

(図書館関係)
(その他)
  • 著作権法(①)施行(4月)

 

1972年(昭和47年)

(点字図書館関係)
  • 京阪神点字図書館連絡協議会発足(参加4館) (6月)

 

1973年(昭和48年)

(その他)

 

1974年(昭和49年)

(図書館・点字図書館関係)
  • 京阪神点字図書館連絡協議会から近畿点字図書館研究協議会が発足(近点協)に(参加12館、うち公共図書館2館)(11月)
(図書館関係)
  • 大阪府立夕陽丘図書館開館、対面朗読サービスや郵送貸出を開始(5月)
  • 全国図書館大会で初めて障害者サービスの分科会「身体障害者への図書館サービス」が設置される(11月)

 

1975年(昭和50年)

(図書館関係)
  • 公共図書館の録音サービスが日本文芸著作権保護同盟から、著作権侵害と指摘する新聞記事報道(『愛のテープは違法の波紋』報道)(公共図書館における録音図書の製作が著作権者の許諾を取らなければ行えないということが明確に)(1月)
  • 国立国会図書館、学術文献録音サービス開始(10月)

 

1977年(昭和52年)

(点字図書館関係)
  • 第1回点字図書館館長会議(東京)開催

 

1978年(昭和53年)

(図書館関係)
  • 日本図書館協会(JLA)、障害者サービス委員会設置(最初から関東小委員会と関西小委員会があった)(4月)

 

1979年(昭和54年)

(その他)
  • IFLA/RTLB(盲人図書館会議)発足

 

1981年(昭和56年)

(図書館関係)
(点字図書館関係)
  • 全国点字図書館協議会、発足(4月)
  • 全国点字図書館長会議、「点字・録音・拡大資料の相互貸借に関する申し合せ」決議(11月)
(その他)

 

1982年(昭和57年)

(図書館関係)
  • 国立国会図書館、「点字図書・録音図書全国総合目録」(冊子体)を刊行開始(3月)

 

1984年(昭和59年)

(その他)

 

1986年(昭和61年)

(図書館・点字図書館関係)
  • IFLA、東京で世界大会開催(8月)
(図書館関係)
  • 国立国会図書館、「点字図書・録音図書全国総合目録データベース(AB01)」提供開始。国会、行政・司法の各支部図書館、都道府県立・政令指定都市立図書館のほか、一部の点字図書館にオンラインで提供を開始。
(点字図書館関係)
  • 近点協、「製作資料の着手情報システム(NLB)」を開始(3月)
(その他)

 

1987年(昭和62年)

(その他)
  • 点訳絵本/点訳入りFDの郵送料が無料になる(8月)

 

1988年(昭和63年)

(点字図書館関係)
  • 日本IBMが点訳オンラインサービス「IBMてんやく広場」開始
(その他)
  • スウェーデン国立点字録音図書館(TPB)がデジタル図書開発を計画

 

1989年(平成元年)

(図書館関係)

 

1990年(平成2年)

(点字図書館関係)
(その他)
  • スウェーデンのラビリテンテン社、DAISYの開発に着手
  • 米国でADA法案可決(5月)

 

1991年(平成3年)

(図書館・点字図書館関係)
  • IFLA視覚障害者セミナーを東京(東京大学安田講堂、国立国会図書館東京本館新館講堂など)で開催(1月)

 

1993年(平成5年)

(点字図書館関係)
  • 運営を日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)点字図書館部会 特別委員会が引き継ぎ、「IBMてんやく広場」から「てんやく広場」に改名
(その他)
  • 障害者基本法公布

 

1994年(平成6年)

(点字図書館関係)
  • 日本点字図書館、厚生省委託事業として、「点字図書情報サービス事業」(点字図書・録音図書目録の一括化)を開始(1月)。
  • てんやく広場、国立国会図書館点字図書・録音図書総合目録(AB01)のデータを借り受けてテスト稼働(11月)
  • 第19回全国点字図書館大会(この年から「全国点字図書館長会議」が「全国点字図書館大会」に)
(その他)
  • 『障害者白書』が刊行される(12月)

 

1995年(平成7年)

(図書館関係)
  • 国立国会図書館、「NDL CD-ROM Line点字図書・録音図書全国総合目録」頒布開始
(点字図書館関係)
  • てんやく広場、1994年の点字図書・録音図書全国総合目録データのテスト稼働をもとにオンラインリクエストの試行を開始(2月)
  • 日本点字図書館と東京都公共図書館の蔵書目録を搭載した「NIT(ニット)」に国立国会図書館の点字図書・録音図書全国総合目録のデータを搭載し、ニットプラスと改称(6月)
(その他)
  • シナノケンシがデジタル録音図書の試作一号機を開発

 

1996年(平成8年)

(図書館関係)
  • 新しくオープンした大阪府立中央図書館が児童室の場所を「視覚障害児のためのわんぱく文庫」に提供
(点字図書館関係)
  • 日本点字図書館、厚生省委託点字図書近代化事業を受け、点字資料のデジタル化を開始(5年間)(4月)
  • 全国点字図書館協議会、全国視覚障害者情報提供施設協議会に名称変更(11月)
  • 日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)、点字図書館部会の名称を「情報サービス部会」に変更
(その他)
  • DAISY Consortium設立

 

1997年(平成9年)

(図書館関係)
(点字図書館関係)
(その他)
  • DAISY Consortium、DAISY 2.0の仕様を公開
  • IFLA盲人図書館会議で DAISYがデジタル録音図書の標準規格になることが決定(8月)

 

1998年(平成10年)

(図書館関係)
  • 国立国会図書館の「点字図書・録音図書全国総合目録」の冊子体が34号(1997年2号)で終刊
(点字図書館関係)
  • 「てんやく広場」を全視情協に移管(7月)
  • 「ないーぶネット」に名称を変更(9月)
(その他)

 

1999年(平成11年)

(点字図書館関係)
  • 全国視覚障害者情報提供施設協議会、全国視覚障害者情報提供施設協会(全視情協)に名称変更(6月)
  • 日本点字図書館と全視情協と協議の結果、類似した2つのサービスである日本点字図書館の「ニットプラス」と全視情協の「ないーぶネット」を一本化し、「点字図書情報ネットワーク整備事業」として、両者の協力のもとに全視情協が運営する「ないーぶネット」の構築を行うことで合意(12月)
  • 日本ライトハウス、DAISY図書製作・貸出開始
  • 日本点字図書館、DAISY図書(デジタル録音図書)の貸出開始

 

2000年(平成12年)

(著作権法関係)
  • 著作権法改正(②)。点字の公衆送信が可能になり、著作権法第37条の2(聴覚障害者のための自動公衆送信)が新たに規定される(5月)

 

2001年(平成13年)

(図書館関係)
  • 文部科学省、公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準に障害者サービスをはじめて明記
(点字図書館関係)
  • インターネット版ないーぶネット(総合ないーぶネット)本格運用を開始。Web上からの貸出申し込みが可能に(4月)
(著作権法関係)
  • 著作権法(②)が施行(1月)
(その他)
  • シナノケンシが、DAISYのインターネット配信実証実験
  • DAISY Consortium、DAISY 2.02の仕様を承認(2月)
  • DAISY Consortium、DAISYの正式名称を”Digital Audio-based Information SYstem”から” Digital Accessible Information SYstem”に変更(12月)

 

2002年(平成14年)

(その他)

 

2003年(平成15年)

(図書館関係)
  • 「図書館等における著作物等の利用に関する当事者協議」開始(1月)
  • 国立国会図書館、点字図書・録音図書全国総合目録をNDL-OPACにおいてインターネット公開(1月)
  • 大阪府立中央図書館、録音図書ネットワーク配信事業開始(4月)
(その他)
  • 郵政公社発足。盲人用郵便物の表示が「盲人用」から「点字用郵便物」に変更(4月)

 

2004年(平成16年)

(図書館関係)
(点字図書館関係)
  • DAISY配信サービス「びぶりおネット」が日本点字図書館と日本ライトハウス盲人情報文化センターにより開始(4月)
(その他)
  • DAISY再生機器が「日常生活用具給付制度」の給付対象に(4月)
  • 障害者基本法改正(6月)

 

2005年(平成17年)

(点字図書館関係)
  • 録音図書ネットワーク製作事業「びぶりお工房」本格運用開始(4月)
  • 「びぶりおネット」に点字データ配信サービスを追加(10月)

 

2006年(平成18年)

(著作権法関係)
  • 著作権法(③)改正。これにより点字図書館は、視覚障害者向けの録音データの公衆送信可能になる(12月)
(その他)
  • 障害者権利条約採択(6月)

 

2007年(平成19年)

(著作権法関係)
  • 著作権法③施行(7月)

 

2008年(平成20年)

(点字図書館関係)
(その他)
  • 教科書バリアフリー法施行(9月)

 

2009年(平成21年)

(図書館関係)
  • 「公共図書館等における音訳資料作成の一括許諾に関する協定書」に基づく障害者用音訳資料作成の一括許諾終了(12月)
(点字図書館関係)
  • びぶりおネット個人ユーザーへのダウンロードサービス開始(2月)
  • 平成21年補正事業で、厚生労働省の委託事業として、日本点字図書館が「視覚障害者情報提供ネットワークシステム整備事業」を受託。「ないーぶネット」と「びぶりおネット」を統合した「視覚障害者情報提供ネットワーク(サピエ)」を構築(11月)
(著作権法関係)
  • 著作権法(④)改正。視覚障害者「等」のために録音図書に限定されず、必要な方式で製作できることに、また、点字図書館だけではなく、図書館等も複製の主体になる。また、第三十七条の二が全部改正され、(聴覚障害者等のための複製等)に(6月)

 

2010年(平成22年)

(図書館関係)
(点字図書館関係)
(著作権法関係)
  • 著作権法(④)施行(1月)
(その他)
  • 特定非営利活動法人大活字文化普及協会が専門委員会としての読書権保障協議会設置(12月)

 

2011年(平成23年)

(図書館関係)
(その他)
  • 障害者基本法改正(8月)
  • IDPF、EPUB 3の仕様を勧告(10月)

 

2012年(平成24年)

(その他)

 

2013年(平成25年)

(その他)
  • 盲人、視覚障害者およびプリントディスアビリティ(印刷物を読むことが困難)のある人々の出版物へのアクセス促進のためのマラケシュ条約採択(6月)
  • 障害者差別解消法成立(6月)

 

2014年(平成26年)

(図書館関係)
  • 国立国会図書館、「視覚障害者等用データの収集及び送信サービス」開始(1月)
  • 「視覚障害者等用データ送信サービス」と「サピエ図書館」のシステム連携。「視覚障害者等用データ送信サービス」のコンテンツが「サピエ図書館」から利用可能に。(6月3日)
(その他)
  • 日本、障害者権利条約の批准書を寄託(1月。2月に効力が発生)

 

2016年(平成28年)

(その他)
  • 障害者差別解消法施行(4月)

主な参考文献

図書館関係

点字図書館関係

DAISY

8月 11

図書館の障害者サービスと点字図書館関係年表(1825年から2016年まで)(表形式)

 施設としての障害者への情報提供の歴史について、年表形式でまとめてみました。

※2016/8/18 追記
同じ内容のものをでテキスト版としても作成してあります。読み上げ等で利用したい場合はこちらのほうがよいかもしれません。
テキスト版

 年表中のリンクは、該当する機関や団体のホームページへのリンクだったり、関連する参考資料へのリンクです。

図書館の障害者サービスと点字図書館関係年表(1825年から2016年まで)
図書館関係 点字図書館関係 著作権法 その他
1825年 ・ルイ・ブライユがアルファベットの6点式点字を開発
1854年 ・ブライユ式点字がフランスで正式に採用
1880年
(明治13年)
・キリスト教宣教師ヘンリー・フォールズ、築地病院に「盲人図書室」を設置(日本における施設としての障害者への情報提供の最初の事例?)
1890年
(明治23年)
・石川倉次が日本語の6点式点字を考案、同年に東京盲唖学校(現・筑波大学附属視覚特別支援学校)で採用
1901年
(明治34年)
石川倉次の考案した点字が官報に「日本訓盲点字」として公示(4月)
1916年
(大正5年)
・東京盲学校(現・筑波大学附属視覚特別支援学校)の学生である加藤梅吉が自身が所蔵する点字図書200冊を東京市立本郷図書館に寄託。それを受けて、東京市立本郷図書館は点字文庫開設(公共図書館による障害者への情報提供の嚆矢)
1922年
(大正11年)
・ 岩橋武夫、大阪の自宅で点字出版を開始(日本ライトハウスの創業) ・大阪毎日新聞社(現・毎日新聞社)が「点字大阪毎日」(現・点字毎日)創刊
1931年
(昭和6年)
・米国でプラット・スムート法成立。これを受けて米国議会図書館は、障害者サービス部門である視覚障害者および身体障害者のための全国図書館サービス(National Library Service for the Blind and Physically Handicapped : NLS)設置し、成人の視覚障害者を対象とした全国的な貸出しサービスが開始。
・IFLAでSub-committee on Hospital Libraries(病院図書館小委員会)が設置される(後のIFLA/LSN。)
1932年
(昭和7年)
・岩橋武夫、自宅にて点字図書貸出事業を開始
1933年
(昭和8年)
・第27回全国図書館大会で「点字図書及盲人閲覧者の取扱」というテーマで障害者への情報提供が取り上げられる。
1934年
(昭和9年)
米国でLPレコードのトーキングブック(録音図書)が発明される
1936年
(昭和11年)
東京盲学校(現・筑波大学附属視覚特別支援学校)の卒業生が帝国図書館に点字図書144冊を寄贈(10月)
『帝国図書館報』第29冊第12号に点字図書の書誌が掲載される
・日本ライトハウス、世界で13番目のライトハウとして公認される(4月)
1937年
(昭和12年)
・ヘレン・ケラー、来日
1940年
(昭和15年)
・本間一夫、日本盲人図書館(後の日本点字図書館)を創立(11月)
1948年
(昭和23年)
・日本盲人図書館、「日本点字図書館」と名を改める(4月) ・ヘレン・ケラー、2度目の来日
日本盲人会連合(日盲連)発足(8月)
1949年
(昭和24年)
身体障害者福祉法公布。更正養護施設として点字図書館を規定。公共図書館にあった多くの点字文庫が点字図書館として切り離される契機に。
1950年
(昭和25年)
・図書館法公布
1953年
(昭和28年)
日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)発足(9月)
1955年
(昭和30年)
・日本点字図書館、厚生省委託点字図書製作・貸出事業開始(1月) ・ヘレン・ケラー、3度目の来日
1957年
(昭和32年)
・国際基督教奉仕団(現・日本キリスト教奉仕団)テープライブラリ発足(2月)
・厚生省が点字図書館設置基準暫定案を作成(3月)
1958年
(昭和33年)
・日本点字図書館が録音図書の製作を開始し、「声のライブラリー」を設置
1959年
(昭和34年)
・日本ライトハウス、「声の図書館」(テープライブラリー)を開設。
1961年
(昭和36年)
・日本点字図書館・日本ライトハウス、厚生省委託声の図書製作・貸し出し事業開始。
・日本点字図書館、「声のライブラリー」を「テープライブラリー」と改称(4月)
・郵便法改正(盲人用郵便が無料化)
1963年
(昭和38年)
・日本ライトハウス、厚生省委託点字図書製作・貸出事業開始
1967年
(昭和42年)
・京都で視覚障害学生と点訳サークル学生を中心に関西SL(Student Library)発足(4月)
1969年
(昭和44年)
国立国会図書館と東京都立日比谷図書館に対して、日本盲大学生会・関西SL等が図書館蔵書の開放運動を行う。
1970年
(昭和45年)
・東京都立日比谷図書館、視覚障害者サービスを開始(4月) ・旧著作権法を全部改正した著作権法(①)公布。37条(点字による複製等)等を新たに規定(5月) ・日本盲大学生会・関西SL等が視覚障害者読書権保障協議会(視読協)結成(6月)
1971年
(昭和46)
・視読協、全国図書館大会で「図書館協会会員に訴える-視覚障害者の読書環境整備を」と訴える。大会で初めて「障害者サービスの推進」が決議される(10月) ・著作権法(①)施行(4月)
1972年
(昭和47年)
・京阪神点字図書館連絡協議会発足(参加4館) (6月)
1973年
(昭和48年)
ふきのとう文庫開設(11月)
1974年
(昭和49年)
・京阪神点字図書館連絡協議会から近畿点字図書館研究協議会が発足(近点協)に(参加12館、うち公共図書館2館)(11月)
・大阪府立夕陽丘図書館開館、対面朗読サービスや郵送貸出を開始(5月)
・全国図書館大会で初めて障害者サービスの分科会「身体障害者への図書館サービス」が設置される(11月)
1975年
(昭和50年)
・公共図書館の録音サービスが日本文芸著作権保護同盟から、著作権侵害と指摘する新聞記事報道(『愛のテープは違法の波紋』報道)(公共図書館における録音図書の製作が著作権者の許諾を取らなければ行えないということが明確に)(1月)
・国立国会図書館、学術文献録音サービス開始(10月)
1977年
(昭和52年)
・第1回点字図書館館長会議(東京)開催
1978年
(昭和53年)
・日本図書館協会(JLA)、障害者サービス委員会設置(最初から関東小委員会と関西小委員会があった)(4月)
1979年
(昭和54年)
・IFLA/RTLB(盲人図書館会議)発足
1981年
(昭和56年)
・国立国会図書館、「点字図書・録音図書全国総合目録」の編纂開始 ・全国点字図書館協議会、発足(4月)
・全国点字図書館長会議、「点字・録音・拡大資料の相互貸借に関する申し合せ」決議(11月)
・国際障害者年
視覚障害児のためのわんぱく文庫開設
1982年
(昭和57年)
国立国会図書館、「点字図書・録音図書全国総合目録」(冊子体)を刊行開始(3月)
1984年
(昭和59年)
・岩田文庫(てんやく絵本ふれあい文庫の前身)開設
1986年
(昭和61年)
・国立国会図書館、「点字図書・録音図書全国総合目録データベース(AB01)」提供開始。国会、行政・司法の各支部図書館、都道府県立・政令指定都市立図書館のほか、一部の点字図書館にオンラインで提供を開始。
・IFLA、東京で世界大会開催(8月)
・近点協、「製作資料の着手情報システム(NLB)」を開始(3月) 東京で開かれたIFLA(国際図書館連盟)の大会での専門家会議で視覚障害者のためのデジタル録音図書の標準化が国際的に議論
1987年
(昭和62年)
・点訳絵本/点訳入りFDの郵送料が無料になる(8月)
1988年
(昭和63年)
・日本IBMが点訳オンラインサービス「 IBMてんやく広場」開始 ・スウェーデン国立点字録音図書館(TPB)がデジタル図書開発を計画
1989年
(平成元年)
公共図書館で働く視覚障害職員の回(なごや会)、発足(9月)
1990年
(平成2年)
身体障害者福祉法改正。第34条で規定される「点字図書館」が「視聴覚障害者情報提供施設」に変更(6月) ・スウェーデンのラビリテンテン社、DAISYの開発に着手
・米国でADA法案可決(5月)
1991年
(平成3年)
・IFLA視覚障害者セミナーを東京(東京大学安田講堂、国立国会図書館東京本館新館講堂など)で開催(1月)
1993年(平成5年) ・運営を日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)点字図書館部会 特別委員会が引き継ぎ、「IBMてんやく広場」から「てんやく広場」に改名 ・障害者基本法公布
1994年(平成6年) ・日本点字図書館、厚生省委託事業として、「点字図書情報サービス事業」(点字図書・録音図書目録の一括化)を開始(1月)。
・てんやく広場、国立国会図書館点字図書・録音図書総合目録(AB01)のデータを借り受けてテスト稼働(11月)
・第19回全国点字図書館大会(この年から「全国点字図書館長会議」が「全国点字図書館大会」に)
・『障害者白書』が刊行される(12月)
1995年
(平成7年)
・国立国会図書館、「NDL CD-ROM Line点字図書・録音図書全国総合目録」頒布開始 ・てんやく広場、1994年の点字図書・録音図書全国総合目録データのテスト稼働をもとにオンラインリクエストの試行を開始(2月)
・日本点字図書館と東京都公共図書館の蔵書目録を搭載した「NIT(ニット)」に国立国会図書館の点字図書・録音図書全国総合目録のデータを搭載し、ニットプラスと改称(6月)
・シナノケンシがデジタル録音図書の試作一号機を開発
1996年
(平成8年)
・新しくオープンした大阪府立中央図書館が児童室の場所を「視覚障害児のためのわんぱく文庫」に提供 ・日本点字図書館、厚生省委託点字図書近代化事業を受け、点字資料のデジタル化を開始(5年間)(4月)
・全国点字図書館協議会、全国視覚障害者情報提供施設協議会に名称変更(11月)
・日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)、点字図書館部会の名称を「情報サービス部会」に変更
・DAISY Consortium設立
1997年
(平成9年)
・国立国会図書館、「全国の点字図書・録音図書製作速報」をHPに掲載開始 ・第23回全国視覚障害者情報提供施設大会開催(帯広)(全国点字図書館大会から変更)
・近畿点字図書館研究協議会、名称を「近畿視覚障害者情報サービス研究協議会(近畿視情協)」とする
・DAISY Consortium、DAISY 2.0の仕様を公開
・IFLA盲人図書館会議で DAISYがデジタル録音図書の標準規格になることが決定(8月)
1998年
(平成10年)
・国立国会図書館の「点字図書・録音図書全国総合目録」の冊子体が34号(1997年2号)で終刊 ・「てんやく広場」を全視情協に移管(7月)
・「ないーぶネット」に名称を変更(9月)
・視覚障害者読書権保障協議会、解散
・シナノケンシ、日本初のDAISY再生機プレクストークTK300発売(4月)
厚生省(現在の厚生労働省)の平成10年度~12年度(1998-2000年)補正予算事業。これによりDAISYの全国的な点字図書館への導入が実現
1999年
(平成11年)
・全国視覚障害者情報提供施設協議会、全国視覚障害者情報提供施設協会(全視情協)に名称変更(6月)
・日本点字図書館と全視情協と協議の結果、類似した2つのサービスである日本点字図書館の「ニットプラス」と全視情協の「ないーぶネット」を一本化し、「点字図書情報ネットワーク整備事業」として、両者の協力のもとに全視情協が運営する「ないーぶネット」の構築を行うことで合意(12月)
・日本ライトハウス、DAISY図書製作・貸出開始
・日本点字図書館、DAISY図書(デジタル録音図書)の貸出開始
2000年
(平成12年)
著作権法改正(②)。点字の公衆送信が可能になり、著作権法第37条の2(聴覚障害者のための自動公衆送信)が新たに規定される(5月)
2001年
(平成13年)
・文部科学省、公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準に障害者サービスをはじめて明記 ・インターネット版ないーぶネット(総合ないーぶネット)本格運用を開始。Web上からの貸出申し込みが可能に(4月) ・著作権法(②)が施行(1月) ・シナノケンシが、DAISYのインターネット配信実証実験
・DAISY Consortium、DAISY 2.02の仕様を承認(2月)
・DAISY Consortium、DAISYの正式名称を”Digital Audio-based Information SYstem”から”Digital Accessible Information SYstem”に変更(12月)
2002年
(平成14年)
・DAISY Consortium、DAISY 3(ANSI/NISO Z39.86 2002)を承認(3月)
・米国の非営利の社会的企業Benetech社、Bookshareを立ち上げる。
2003年
(平成15年)
・「図書館等における著作物等の利用に関する当事者協議」開始(1月)
・国立国会図書館、点字図書・録音図書全国総合目録をNDL-OPACにおいてインターネット公開(1月)
・大阪府立中央図書館、録音図書ネットワーク配信事業開始(4月)
・郵政公社発足。盲人用郵便物の表示が「盲人用」から「点字用郵便物」に変更(4月)
2004年
(平成16年)
・日本図書館協会と日本文芸家協会の間で視覚障害者のための録音図書作成についての許諾契約(公共図書館等における音訳資料作成の一括許諾に関する協定書)を締結。「障害者用音訳資料利用ガイドライン」発表(4月)
・関係団体で「図書館における著作物の利用に関する当事者協議会」(リンク先はPDFファイル)設置(5月)
日本文藝家協会と交わした「公共図書館等における音訳資料作成の一括許諾に関する協定書」に基づく障害者用音訳資料作成の一括許諾開始(8月)
・DAISY配信サービス「びぶりおネット」が日本点字図書館と日本ライトハウス盲人情報文化センターにより開始(4月) ・DAISY再生機器が「日常生活用具給付制度」の給付対象に(4月)
・障害者基本法改正(6月)
2005年
(平成17年)
・録音図書ネットワーク製作事業「びぶりお工房」本格運用開始(4月)
・「びぶりおネット」に点字データ配信サービスを追加(10月)
2006年
(平成18年)
著作権法(③)改正。これにより点字図書館は、視覚障害者向けの録音データの公衆送信可能になる(12月) ・障害者権利条約採択(6月)
2007年
(平成19年)
・著作権法③施行(7月)
2008年
(平成20年)
平成19年度障害者保健福祉推進事業「視覚障害者に対する新たな情報提供システムに関する研究」報告書公開(3月) ・教科書バリアフリー法施行(9月)
2009年
(平成21年)
・「公共図書館等における音訳資料作成の一括許諾に関する協定書」に基づく障害者用音訳資料作成の一括許諾終了(12月) ・びぶりおネット個人ユーザーへのダウンロードサービス開始(2月)
・平成21年補正事業で、厚生労働省の委託事業として、日本点字図書館が「視覚障害者情報提供ネットワークシステム整備事業」を受託。「ないーぶネット」と「びぶりおネット」を統合した「視覚障害者情報提供ネットワーク(サピエ)」を構築(11月)
著作権法(④)改正。視覚障害者「等」のために録音図書に限定されず、必要な方式で製作できることに、また、点字図書館だけではなく、図書館等も複製の主体になる。また、第三十七条の二が全部改正され、(聴覚障害者等のための複製等)に(6月)
2010年
(平成22年)
「図書館の障害者サービスにおける著作権法第37条第3項に基づく著作物の複製等に関するガイドライン」策定(2月) 視覚障害者情報総合システム「サピエ」運用開始(4月) ・著作権法(④)施行(1月) ・特定非営利活動法人大活字文化普及協会が専門委員会としての読書権保障協議会設置(12月)
2011年
(平成23年)
・国立国会図書館、国立国会図書館サーチで障害者向け資料検索機能の追加(9月) ・障害者基本法改正(8月)
・IDPF、EPUB 3の仕様を勧告(10月)
2012年
(平成24年)
DAISY Consortium、DAISY AI(ANSI/NISO Z39.98-2012)承認(7月)
2013年
(平成25年)
・盲人、視覚障害者およびプリントディスアビリティ(印刷物を読むことが困難)のある人々の出版物へのアクセス促進のためのマラケシュ条約採択(6月)
・障害者差別解消法成立(6月)
2014年
(平成26年)
国立国会図書館、「視覚障害者等用データの収集及び送信サービス」開始(1月)
・国立国会図書館の「視覚障害者等用データ送信サービス」と「サピエ図書館」のシステム連携。「視覚障害者等用データ送信サービス」のコンテンツが「サピエ図書館」から利用可能に。(6月3日)
・日本、障害者権利条約の批准書を寄託(1月。2月に効力が発生)
2015年
(平成27年)
2016年
(平成28年)
・障害者差別解消法施行(4月)

主な参考文献

 

図書館関係

点字図書館関係

DAISY

7月 24

プリントディスアビリティのある人を対象とした世界最大のアクセシブルなオンライン図書館 Bookshare

 Bookshareは、視覚障害その他の理由で通常の印刷物を読むことができないプリントディスアビリティのある人にアクセシブルなコンテンツを提供するオンライン図書館です。非営利の社会的企業Benetech社が2002年に立ち上げたもので、プリントディスアビリティのある人を対象としたオンライン図書館としては世界最大のものです。

誰が利用できるのか

 米国の著作権法の権利制限規定またはそれにならって権利者から得た許諾に基づいてコンテンツを製作・収集・提供しているため、利用できるのは、プリントディスアビリティとしてBookshareに会員登録した人に限定されます。具体的には、視覚障害、肢体不自由などの理由でページをめくれない等の身体障害、読書に困難のある学習障害のある障害者で、専門家によってそれを証明してもらう必要があります。

 会費は個人会員であれば、基本的に入会費25ドル年会費50ドルですが、ユーザーの身分によって無料になったり、ユーザーがいる国によってディスカウントされることもあります。

 プリントディスアビリティがあることの証明のところで、ハードルが高くなりますが、海外の人間でもプリントディスアビリティがあることが証明可能であれば、登録することが可能です。

参考

利用できるコンテンツ

 Bookshareは2015年7月24日現在で約35万点のアクセシブルなコンテンツを提供しています。

 ダウンロードして利用できるコンテンツの形式は以下のとおりで、ソースとなるテキストデータから自動的にユーザーが選択したいずれかの形式に変換されてダウンロードできるようになっているようです。

  • テキストDAISY(DAISY3)
  • 音声DAISY(DAISY3。合成音声によって読み上げた音声データを格納したDAISY)
  • 音声データ(MP3形式。合成音声によって読み上げた音声データ)
  • 点字データ(BRF形式)

 35万点のコンテンツのソースは以下の通りです。Bookshareといえば、米国の著作権法の権利制限規定に基づいてボランティアが紙の印刷物をスキャニング・OCR処理して作成したものが有名ですが、現在では、全体から見れば一部にすぎず、出版社から直接提供を受けるデータの方が数としては多くなっています。

ボランティアによる製作

ユーザーからの製作のリクエストを受けて、ボランティアが製作したテキストデータで、米国の著作権法の制限規定に基づいて製作しています。音楽共有サービスNapsterにヒントを得て、図書をスキャニングしたデータを合法的に共有できたらよいのではないかというところからフルックターマンは、Bookshareを着想したと言われているそうで、Bookshareが2002年に立ち上がった当初から現在に至るまで行われています。

 製作フローは1人のボランティアが紙の書籍をスキャニング・OCR処理を行い、別のボランティアがそれをテキスト校正するという製作フローになっており、リクエストを受けてから数週間から数ヶ月で完成するそうです。

参考

出版社から提供を受けたデータ

 出版社からもデータの提供を受けています。現在は、500以上の出版社からデータの提供を受けており、Bookshareが提供する35万点のうち、2/3は出版社からデータの提供を受けたコンテンツではないかと思います。

 出版社から提供を受けているフォーマットはEPUB 2とEPUB3で、PDFは現在、受け付けていません。メタデータは、ONIX2かExcelによって提供を受けているとのこと。

参考

著者から提供を受けたデータ

著者からのデータ提供も受け付けています。これまで数百の著者から直接データの提供を受けたそうです。受け付けるファイル形式はEPUB 2、EPUB 3、Word及びRTFで、紙版の書籍とPDF版による提供は受け付けていないとのこと。

参考

初等・中等教育の教科書

 Bookshareの存在を際だたせているもう1つのコンテンツがこの初等・中等教育の教科書データの提供です。

 米国では、個別障害者教育法(IDEA 2004)により、教科書の購入者である州や地方教育局の求めに応じて教科書出版社は教科書などの教材のデータをNIMAS(National Instructional Materials Accessibility Standard)というフォーマットで提出することが義務づけられています。Bookshareは、このNIMASファイルを元にテキストDAISYを作成して障害児に提供しています。米国教育省のOSEP(Office of Special Education Programs)から資金援助をうけて、無償で提供しています。

 また、Bookshareは紙の教科書を裁断して、スキャニングしてテキストDAISY化もしています。
 詳細は、参考に挙げた近藤武夫先生の論文に詳しいので、そちらをご参照ください。

参考

大学からアップロードされたデータ(University Partner Program)

 読書障害のある大学生支援を目的に、各大学が障害学生のためにスキャニングして製作した教科書などのテキストデータを収集しています。2015年7月24日現在で35校の大学がこのプログラムに参加しています。各大学は、Bookshareのボランティアマニュアルにしたがって教材をスキャニング・OCR処理をしてテキストデータを製作し、RTF形式でアップロードします。ただし、ボランティアが製作したものと異なり、大学がアップロードしたものの場合は、テキスト校正のフローが省略され、すぐに提供に回すことができます。

参考

NFB-NEWSLINEの雑誌・新聞

 National Federation of the Blind(NFB)の新聞・雑誌の音声提供サービスNFB-NEWSLINEと提携してNFB-NEWSLINEのコンテンツを利用できるようになっています。

参考

コンテンツの利用方法

 Bookshareはウェブサイトから直接閲覧することができるブラウザベースの閲覧システムBookshare Web Readerを提供しているほか、

Bookshareのウェブサイトで一覧されているように、デスクトップPC上のアプリケーションや、タブレット端末・スマートフォン端末用のアプリケーションやハードウェアデバイス(再生機器)で利用することが可能です。中にはBookshareのウェブサイトを訪問してコンテンツをダウンロードしなくても、ソフトウェア、デバイス上でBookshareのコンテンツを直接ダウンロードできるものもあります。

参考

Bookshareを運営するBenetchとは

 Benetechはテクノロジーの力で世界をより良くしていこうと、人権、リテラシー、環境をテーマに取り組んでいる非営利の社会的企業です。ジム・フルックターマン(Jim Fruchterman)氏が立ち上げたもので、前身となるArkenstone社のプロダクトラインを2000年に他の企業に売却し、社の名前をBenetechに、組織形態を非営利の社会的企業に改めて生まれた企業です。なお、Arkenstone社は、視覚障害者向けのOCRソフトウェアを開発していた企業で、それを用いた音声読書システム(スキャナとOCRソフトウェアで紙の資料をテキスト化し、合成音声で読み上げるシステム)が1990年代に60カ国で3万5千台販売されたそうです。

 Bookshareは、Benetechが進めるGlobal Literacy Programの1つで、同プログラムの下には、他にアクセシビリティに関する標準化やツールの研究・開発を行うDIAGRAM Centerや、大人の読み書き能力の向上を目的としたリテラシー教育プロジェクトRoute 66 Literacyがあります。

参考

7月 21

BookshareのDAISY化のためボランティアによるの紙の書籍のテキストデータ化・テキスト校正作業の流れ

 Bookshareは、米国の著作権法の権利制限規定に基づき、ボランティアによる紙の書籍のテキスト化(DAISY化)を行っています。ユーザーがテキストDAISY製作のリクエストをしてから、ボランティアが製作にとりかかり、提供に至るまでのフローの一部がボランティアマニュアルとしてBookshareのサイトに公開されています。

流れは以下の通りです。2のスキャニング・OCRと、3のテキスト校正は、クオリティコントロールのために、同一のボランティアが行わないようになっているそうです。ユーザーからリクエストを受けて提供するまでにかかる期間は、資料にもよりますが、数週間から数ヶ月とのこと。

  1. ユーザーからのリクエスト
  2. スキャニング・ OCR
  3. テキスト校正
  4. Bookshare管理者による承認・(DAISY化)・提供
  5. ユーザーからの指摘による修正
  6. 画像の説明文の追加

この作業に携わる者

 上では、「ボランティアによって」という表現を用いましたが、正確には製作には以下の3者がこの作業に関わっています。

  • 米国内のボランティア
  • Bookshareのスタッフ
  • 障害者(多くは聴覚障害者)を雇用している海外(インド、ラオス、ケニアなど)のパートナーへのアウトソーシング(雇用によって障害者のITスキルを向上させ、さらなる雇用につなげることを目的にしている)

 ボランティアを米国内に限定しているのは、おそらく著作権法上の制約なのだと思いますが、そうであるなら、海外にアウトソーシングしているのは、どういう法理なのかというところがよくわかりませんでした。

流れ

1 ユーザーからのリクエスト

 Bookshareの登録利用者が本のテキスト化(DAISY化)をフォームからリクエストします。

 製作のリクエストを受け、ボランティアが製作に取りかかるのを待っているタイトルが以下で公開されています。

参考

2 スキャニング・OCR

2.1 スキャニングするタイトル選択

 ボランティアはWish Listからスキャニングするタイトルを選択します。選定時の注意事項は以下。

  • すでにBookshareにないコンテンツであること
  • タイトルページがあること
  • 著作権情報が掲載されているか、パブリックドメイン/CCライセンス
  • 35ページ以上の書籍の場合は、ページ数が記載されていること
  • New York Times Best Sellersと主な雑誌は定期的に製作されているので、対象から外す
  • 以下の製作は受け付けないこと
    • 電子書籍として出ているもの(過去に印刷版として刊行またはスキャニングされたことがあったとしても)
    • 共通テスト(standardized tests)
    • 教科書の教師版
    • 著作権保護期間中の脚本
参考
2.2 スキャニング・OCR

 ボランティアが自身で保有しているスキャナーとOCRソフトウェアで紙の資料をスキャニングし、OCR処理を行います。

  • スキャナの設定
    • ページの区切り(ページブレイク)は残す。
    • 原資料記載のページ番号を入れる(ヘッダーやフッター機能は用いない)
    • 画像を取り除く(自動的に行えなければ、ボランティアが手動で行う)、代わりに取り除いた画像の説明を追加してもよい。
    • リッチテキスト形式((RTF)で保存する。
  • タイトルページ、著作権情報が記載されているページ、空白のページを含めて全てのページをスキャンする。

 原本では、ボールド、イタリック体等になっていないのに、OCRをかけて製作したRTFファイルはそうなっていないか、1語が2語に分割されていないか等の確認を行い、問題なければ、次のステップのアップロードになります。
 

参考
2.3 アップロード

 BookshareのボランティアアカウントでVolunteer Homeにログインして2.2で作成したRTF形式のデータをアップロードします。ファイルは複数のファイルに分割せずに1ファイルでアップロードします

参考
2.4 メタデータの記入

 アップロード終了後にメタデータを記入する画面が表示されるので、その場面でメタデータを記入します。記入するメタデータは以下の通り(ISBNを記入することで自動的に記入される項目あり)。

  • 品質分析(アップロード時にエラーの数に基づいた判定結果によって自動記入されるフラグ)
  • ISBN
  • タイトル(タイトルページのタイトルに一致するタイトル)
  • 著者
  • 著作権者(原本の著作権情報ページの情報と一定している必要がある)
  • 著作権が発生した日(原本の著作権情報ページの情報と一定している必要がある)
  • 出版者(原本の著作権情報ページの情報と一定している必要がある)
  • 短い概要または長い概要
  • 著作権上の理由による利用にあたっての地理的な制約
  • カテゴリ
  • アダルトコンテンツ情報(18歳未満のユーザー及び公共図書館では利用させないために、セクシャルコンテンツにはそれを示すフラグをたてる)
参考

 アップロードが完了すると、Checkout Listと呼ばれるリストにタイトルが掲載され、テキスト校正を行うボランティアが作業できるようになります。

3 テキスト校正(proofreading)

3.1 タイトルの選定/テキスト校正の期限

 テキスト校正は、クオィリティコントロールのためスキャニングを行ったボランティアと別のボランティアが担当します。1タイトルにつき、1人のボランティアが責任もって担当する仕組みになっています。1人のボランティアが多くのタイトルを抱え、提供期間がおそくなることがないように、一度に引き受けることができる条件は5タイトルまで、校正のしめきりはタイトル選定後2週間以内(1度は延長可)となっています。
テキスト校正を行うボランティアは、Checkout Listからテキスト校正を行うタイトルを選定し、Bookshareの管理者の承認をうけて、2で作成されたRTFファイルをダウンロードします。

参考
3.2 テキスト校正

 ダウロードしたRTFファイルをWORDなどの編集ソフトで校正・編集します。
主なチェック項目。

 
 上で触れたように、フォントサイズが以下のようにきちんとサイズまで規定されています。 RTFファイルからDAISYに変換する際の構造化(見出しレベルのレベル1、レベル2、レベル3の設定や目次の作成など)に使用されるのでしょうか。

タイトル: 20 point and bold
部: 18 point and bold
章: 16 point and bold
節、小節: 14 point and bold
本文: 12 point (not bold) 

参考
3.3 アップロード

校正が完了したら、Volunteer Homeにログインした後にアップロードします。このタイミングで、2.4で記入されたメタデータに誤りがないかを再度確認します。

参考

4 Bookshare管理者による承認・(DAISY化)・提供

 3までの行程を経たコンテンツをBookshareの管理者が承認して、ユーザーに提供します。3までで製作されたテキストデータ(RTFファイル)のDAISY化については、ドキュメントが見つからないので、どのようにやっているかは不明ですが、1点1点手動でやっているようには見えないので、おそらく自動的にDAISYに変換するプログラムが組まれていると思われます。

5 ユーザーからの指摘

 提供に至ったコンテンツの中にはできのよくないものも存在します。そういうコンテンツに対してユーザーからの指摘を受けつけ、問題があるものは、再スキャンなどの処理に回されます。品質に問題があり、再スキャンというの作成の対象に挙がっているタイトルが以下で公開されています。

画像の説明文の追加

図のような画像データで表現する必要があるものは、スキャニングの段階で取り除かれてしまいます。図の説明はスキャニング・OCR時に可能なら入れてというスタンスで、ボランティアに委ねています。ボランティアが追加する場合は、以下のマニュアルに従って記述します。

 上のような運用であるため、Bookshareには図の説明がないコンテンツが大量に存在することになるのですが、これに対しては、Bookshare運営元の Benetechが立ち上げたDIAGRAM CenterPOETという、 DAISYやEPUBの画像にテキストの説明を挿入するためのオンラインツールを開発し、Booksahreがこれを用いた Image Description Projectを2012年から進めています。

参考

テキストデータの品質

テキストデータの品質は、メタデータの”Book Quality”という項目で確認することができます。以下の4つのランクで評価されています。Publisher Qualityが出版社から提供を受けたテキストデータで、Excellent、Good、Fairがボランティアが製作したコンテンツです。

  • Publisher Quality
  • Excellent(1ページに平均1つ以下のエラー)
  • Good(1ページに平均2つ以下のエラー)
  • Fair

その他

 以下は、いろいろ調べてみたのですが、よくわかりませんでした。情報求ム。

  • スキャニングする原本はボランティアが用意するのか、Bookshareが用意するのか。前者であれば、学術書などであれば、ボランティア側に相当な費用負担が発生するはずであるが、どう解決しているのか。
  • マニュアルを見る限り、スキャニング→OCRで作成したテキストデータ(RTF形式)のみをアップロードし、スキャニング画像はアップロードされていないようであるが、どうやってテキスト校正を行うのか。
6月 12

リハ協が平成26年度マルチメディアデイジー教科書アンケートの結果を公開

 日本障害者リハビリテーション協会が行った平成26年度マルチメディアデイジー教科書アンケートの結果が公開されています。

6月 11

DAISYオンライン配信プロトコル ver2.0が正式版に。

 2015年2月に草案がパブリックレビューされていたDAISY Online Delivery Protocol(DAISYオンライン配信プロトコル)ver2.0が6月9日にDAISY Consortiumの理事会の承認をうけて、正式版になったそうです。

 正式版の仕様そのものはまだ公開されていませんが、以下のドキュメントに新機能がまとめられています。

 様々な機能の拡充がなされているようですが、”Service Discovery”の以下の機能は次項の”Automatic reading system configuration”で紹介されいる機能と組み合わせて、複数のサービスで実装されれば面白いなと思います。マラケシュ条約によって国境をまたいでサービスが理由できるようになれば、重要になってくるかも。

A new Service Discovery list maintained by the Daisy Consortium has been introduced; this list will allow users to “discover” available DODP Services based on their Geolocation or preferred reading language.

This would also allow independent discovery of services by a user, and act as a centralised list of available libraries in an accessible format.

関連エントリ

5月 28

アクセシブルな電子書籍とは何かを示すガイドラインの話(の続き)

 先のエントリで、以下の3つについて図書館がガイドラインを作成して要件を提示してはどうかという話をしました。

  • (出版社と電子書籍プラットフォームに対して)図書館が考える「アクセシブルな電子書籍」とは何か(コンテンツ作成ガイドライン)
  • (ビューワー開発者と電子書籍プラットフォームに対して)図書館が考える電子書籍の「アクセシブルな閲覧環境」とは何か(ビューワーのガイドライン)
  • (電子書籍プラットフォームに対して)図書館が考える電子書籍の「アクセシブルな提供方法」とは何か(コンテンツ提供ガイドライン)

 
 それぞれについてどのようなガイドラインを作成するべきなのか、参考になる先行的なものを含めてまとめてみました。

1.「アクセシブルな電子書籍」を示すコンテンツ作成ガイドライン

 EPUBのようなHTMLやCSS等のWeb標準技術をベースとした形式は、ウェブアクセシビリティのガイドラインとして知られるW3CのWeb Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.0( = JIS X8341-3:2010 = ISO/IEC 40500:2012)が対象とする「ウェブコンテンツ(Web技術によって作成されたコンテンツ)」に該当します。 

ウェブコンテンツとは、ウェブブラウザ、支援技術などのユーザーエージェントによって利用者に伝達されるあらゆる情報及び感覚的な体験を指し、例えば、ウェブアプリケーション、ウェブシステム、携帯端末などを用いて利用されるコンテンツ、インターネット、イントラネット、CD-ROMなどの記録媒体を介して配布されるウェブコンテンツ技術を用いて制作された電子文書、ウェブブラウザを用いて操作する機器などに適用する。
from JIS X8341-3:2010「1.適用範囲」
参考: ウェブアクセシビリティガイドラインWCAG 2.0とJIS X8341-3:2010に関する整理

 

 EPUBの場合は、JIS化もISO化もしているWACG2.0に則って製作していけばよいはず、というよりは、本来的には(特に公的機関などは)しなければならないはずです。しかし、WACG及びJIS 8341-3:2010の双方が参照すべきとする具体的な実装方法を説明した「WCAG 2.0 実装方法集」には、まだアクセシブルなEPUBの製作方法が掲載されていません(アクセシブルなPDFの作成方法はすでに掲載されている)。WACGの関連文書において、実装方法が具体的に示されない現時点では、WCAG2.0( = JIS X8341-3:2010)に則って作成せよと言われてもまだ難しいかもしれません。将来的には、「WCAG2.0 実装方法集」にEPUBの実装方法も掲載され、官公庁などが刊行物のEPUB版制作を外注する時にその仕様書に「JIS 8341-3:2010の達成等級AAを準拠すること」等々の一文を追加するだけで済むようになれば理想的ですが、少なくとも今はまだ存在しないため、電子書籍向けにブレークダウンしたものが必要です。

 EPUBについては、IDPFがアクセシビリティガイドラインを公開しています。EPUBについてもっともまとまったものだと思います。

 しかし、上のIDFPのガイドラインは各要件が平たく説明され、優先順位が示されている訳ではありません。優先順位はWCAG2.0( = JIS X8341-3:2010)の達成等級が参考になりますが、米国の出版団体 Association of American Publishers (AAP) が上のガイドラインの中で優先順位の高い要件13を挙げていますので、これも参考になると思います。

2. 電子書籍の「アクセシブルな閲覧環境」を示すビューワーのガイドライン

 閲覧環境についても、W3CのUser Agent Accessibility Guidelines(UAAG)2.0があります。これは上のコンテンツ作成ガイドラインであるWACG 2.0と対になっているようなもので、Web技術を用いて製作される電子書籍の閲覧環境も対象に対象になります。JIS規格どころかまだW3C勧告にもなっていませんが、参考になる部分が大きいはずです。

 米国の出版団体 Association of American Publishers (AAP) もEPUB 3 リーディングシステムに優先的に実装してもらいたい10の機能を公開しています。

 そして、DAISYコンソーシアムが電子書籍リーディングシステムのアクセシビリティを評価するためのチェックリストを公開しています。これについては、手前味噌ながら、私が翻訳して公開しています。

 最後に、これは本当に手前味噌ですが、EPUBの閲覧環境については、私も私案として要件をまとめてみたことがあります。これを、EPUBに限定しないように抽象化しつつ、優先順位の高い要件を3段階くらいでランク付けすれば、それなりにそれなりかも。

3. 「アクセシブルな提供方法」を示すコンテンツ提供ガイドライン

 これについては、参照するべきガイドラインは特に思いつきませんが、少なくとも以下の5点はポイントになるはずです。

  • 上の1と2のガイドラインを準拠すること
  • DRMが上の1と2のガイドラインの準拠を妨げないこと
  • アクセシビリティメタデータの提供(参考:メタデータを電子書籍のアクセシビリティの議論の俎上にそろそろのせませんか
  • 電子書籍プラットフォームのウェブサイトのウェブアクセシビリティをWCAG2.0( = JIS X8341-3:2010)に準拠する形で担保すること
  • ユーザービリティ(コンテンツ入手までの手順をなるべく少なくするなど)

 

関連エントリ

5月 27

アクセシブルな電子書籍とは何かを示すガイドラインを図書館側が作ってはどうか

 障害者差別解消法の施行まであと1年弱となりました。公共図書館向けのいろいろなサービスが障害差差別解消法の対応できる的なことを謳うようになると思いますが、電子書籍サービスもおそらくはその1つでしょう。

 個々の電子書籍ベンダの状況はよくわかりませんが、アクセシビリティ対応についてはベンダごとにそれぞれ重きを置くところがさまざまではないかと思います。「アクセシブルな電子書籍」と一言で言っても、図書館が考える「アクセシブルな電子書籍」とベンダ側(と出版社)が考えるそれが同じとは限らないため、図書館が考える「アクセシブルな電子書籍」が何かを明示する必要があるのではないかと考えています。利用者に対して直接サービスを提供する図書館側が考える「アクセシブルな電子書籍」の要件を整理して提示し、認識に齟齬が生じることを防ぐことが重要です。

 例えば、以下について要件の優先順位を示したガイドラインを提示することで、ベンダやコンテンツプロバイダが自分が提供するサービスやコンテンツが、客観的に自己評価でき、かつ、今後どのように改善していけばよいのか、その道筋を示すというのは一つの方法です。

  • (出版社と電子書籍プラットフォームに対して)図書館が考える「アクセシブルな電子書籍」とは何か。
  • (ビューワー開発者と電子書籍プラットフォームに対して)図書館が考える電子書籍の「アクセシブルな閲覧環境」とは何か。
  • (電子書籍プラットフォームに対して)図書館が考える電子書籍の「アクセシブルな提供方法」とは何か。

 この方法の大きな利点は、ベンダ側に要件を提示できるだけではなく、図書館側が電子書籍サービスの導入やコンテンツの購入に際して、これらを「障害差差別解消法の対応」という文言に左右されずに客観的に評価できることです。

 障害の状況は人によってそれぞれ異なりますので、全ての方が満足するものを提供することは困難です。ベンダが出してきたものに対して、問題点を指摘することは無論重要ですが、図書館側が考える「アクセシブルな電子書籍」を明示せずに、ベンダが問題を指摘され続けるという状況は、ベンダにとっては、ゴールが見えないため、やる気を削ぐ可能性もあり、あまり望ましいことではありません。

 そこで、ガイドライン的なものを提示することで、だれもがサービスやコンテンツを客観的に評価でき、問題点を顕在化できるようにする。そして、現実的に実装できる道筋を示す。ベンダ側も全ての要件を一気に満たすことは難しくても、道筋が示されれば、優先順位の高い要件から「合理的配慮」の範囲内で少しずつ実装してくれるかもしれない。企業全体としてその気はなくても、内部の人がやる気を出して可能な範囲で少しずつ改善してくれるかもしれないし、あるいは、ガイドラインによる客観的な評価をもって、上を説得するようになるかもしれない。後半は希望的観測もありますが、ガイドラインのあり方は、ウェブアクセシビリティガイドラインで知られるW3CのWCAG2.0( = JIS X8341-3:2010)はロールモデルになるものだと思います。

 利用者に接してサービスを提供する図書館は、障害者のニーズをくみ上げて出版社やベンダーに「アクセシブルな電子書籍」とは何かを伝えることができるし、その役割を果たすことでアクセシブルな電子書籍の普及に貢献することができるはずです。

 要件を整理してガイドラインを作成するということは、関係者間で「アクセシブルな電子書籍」の認識を一致させる必要がまずはあり、相当大変なことだ思いますが、それは必要な調整ではないかととも思います。

 私が図書館側の人間なので、今回は「図書館」を中心に述べてきましたが、視覚障害者情報提供施設(いわゆる、点字図書館)に置き換えても同じことが言えるはずです。立場としては図書館と点字図書館は同じであるはずですので、連携して取り組めればよいかもしれません。米国のEPUB 3 Implementation Projectが出版社、リーディングシステム開発者、コンテンツ販売者、サービスプロバイダ、そして、アクセシビリティ関係のコミュニティが集まって要件を整理したように、日本でももっと広いくくりで領域をまたいでこういうものが作れると本当はもっとよいのでしょうか。

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3月 27

メタデータを電子書籍のアクセシビリティの議論の俎上にそろそろのせませんか

  2月19日に近畿視情協主催で「どうなる! 電子書籍のアクセシビリティ ~ だれにも使える「本」の実現をめざして」というイベントがありました。そこで登壇された大阪府立中央図書館の杉田正幸さんが、視覚障害者にとってもっとも使いやすい電子書籍書店は現状ではアマゾンのKindleストアではないかという話をされていました。
 

 しかし、そのアマゾンをして、合成音声による読み上げが可能かどうかの情報をきちんと提供できておらず、購入してダウンロードするまでは合成音声で読み上げできているのかわからないという状態が続いています。

 米国のAmazon.comは以下のようにきちんとメタデータとして提供しているのですが、
米国Amazon.comのメタデータにはText-to-Speechという項目がある。この写真ではその項目にEnabled(有効)という値が入っている
Amazon.com : Dead Wake: The Last Crossing of the Lusitania [Kindle Edition]

 
 日本のアマゾンは、以下のようになっており、メタデータとして提供していません。

日本のAmazon.co.jpには、米国Amazon.comのメタデータにあったText-to-Speech欄がない
マイクロフォーサーズレンズ FANBOOK [Kindle版] : Amazon.co.jp

 では、どこで合成音声に対応しているかを確認できるのかというと、画面上部の表紙画像が掲載されているところの
画面上部の表紙画像が掲載されている周辺に米印で次の文言が掲載されている。

以下の文言で判断するしかありません。

※この商品は固定レイアウトで作成されており、タブレットなど大きなディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。

 

 コミックに至っては上の文言すらなく、コミックは画像を用いた固定レイアウトなんだということを知らなければ、購入するタイミングで合成音声で読み上げることができるかどうかも判断することができません。

 なお、余談ながら、Amazon.co.jpでも洋書については米国のAmazon.comのメタデータをそのまま流用しているからなのか、合成音声の対応についてきちんとメタデータが提供されています、
Amazon.co.jpの洋書にはtext-to-Speech(テキスト読み上げ機能)欄がある
Amazon.co.jp: Dead Wake: The Last Crossing of the Lusitania 電子書籍: Erik Larson: Kindleストア

 ここでは、視覚障害者が比較的使いやすいとされるAmazon.co.jpのことばかり書いてしまいましたが、iBooksストア、google Play、楽天kobo、紀伊国屋書店などの他の電子書籍ストアでも状況は変わらず(あるいはもっとひどい)、この種のメタデータは提供されていません。

 電子書籍サービスを視覚障害者の方が利用するようになってきており、アクセシビリティに関するメタデータの提供は、未来の課題ではなく、現在進行形の問題だと思います。電子書籍ストアにはなるべく早く提供するようにして欲しいところです。

 また、ここでは合成音声による読み上げに関するメタデータを問題にしましたが、メタデータとして提供するべき語彙は他にもいろいろとあるはずです。電子書籍のアクセシビリティについての議論はいろいろなところでされているようですが、国内でアクセシビリティの観点からメタデータについて議論されていることをあまり聞いたことがありません。アクセシビリティについてどのような情報をメタデータとして提供するべきかという議論をそろそろ日本でも行うべきではないでしょうか。電子書籍そのものに格納されるメタデータと、電子書籍ストアのウェブサイトで提供されるべきメタデータ、それぞれについて。

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