8月 11

図書館の障害者サービスと点字図書館関係年表(1825年から2016年まで)(表形式)

 施設としての障害者への情報提供の歴史について、年表形式でまとめてみました。

※2016/8/18 追記
同じ内容のものをでテキスト版としても作成してあります。読み上げ等で利用したい場合はこちらのほうがよいかもしれません。
テキスト版

 年表中のリンクは、該当する機関や団体のホームページへのリンクだったり、関連する参考資料へのリンクです。

図書館の障害者サービスと点字図書館関係年表(1825年から2016年まで)
図書館関係 点字図書館関係 著作権法 その他
1825年 ・ルイ・ブライユがアルファベットの6点式点字を開発
1854年 ・ブライユ式点字がフランスで正式に採用
1880年
(明治13年)
・キリスト教宣教師ヘンリー・フォールズ、築地病院に「盲人図書室」を設置(日本における施設としての障害者への情報提供の最初の事例?)
1890年
(明治23年)
・石川倉次が日本語の6点式点字を考案、同年に東京盲唖学校(現・筑波大学附属視覚特別支援学校)で採用
1901年
(明治34年)
石川倉次の考案した点字が官報に「日本訓盲点字」として公示(4月)
1916年
(大正5年)
・東京盲学校(現・筑波大学附属視覚特別支援学校)の学生である加藤梅吉が自身が所蔵する点字図書200冊を東京市立本郷図書館に寄託。それを受けて、東京市立本郷図書館は点字文庫開設(公共図書館による障害者への情報提供の嚆矢)
1922年
(大正11年)
・ 岩橋武夫、大阪の自宅で点字出版を開始(日本ライトハウスの創業) ・大阪毎日新聞社(現・毎日新聞社)が「点字大阪毎日」(現・点字毎日)創刊
1931年
(昭和6年)
・米国でプラット・スムート法成立。これを受けて米国議会図書館は、障害者サービス部門である視覚障害者および身体障害者のための全国図書館サービス(National Library Service for the Blind and Physically Handicapped : NLS)設置し、成人の視覚障害者を対象とした全国的な貸出しサービスが開始。
・IFLAでSub-committee on Hospital Libraries(病院図書館小委員会)が設置される(後のIFLA/LSN。)
1932年
(昭和7年)
・岩橋武夫、自宅にて点字図書貸出事業を開始
1933年
(昭和8年)
・第27回全国図書館大会で「点字図書及盲人閲覧者の取扱」というテーマで障害者への情報提供が取り上げられる。
1934年
(昭和9年)
米国でLPレコードのトーキングブック(録音図書)が発明される
1936年
(昭和11年)
東京盲学校(現・筑波大学附属視覚特別支援学校)の卒業生が帝国図書館に点字図書144冊を寄贈(10月)
『帝国図書館報』第29冊第12号に点字図書の書誌が掲載される
・日本ライトハウス、世界で13番目のライトハウとして公認される(4月)
1937年
(昭和12年)
・ヘレン・ケラー、来日
1940年
(昭和15年)
・本間一夫、日本盲人図書館(後の日本点字図書館)を創立(11月)
1948年
(昭和23年)
・日本盲人図書館、「日本点字図書館」と名を改める(4月) ・ヘレン・ケラー、2度目の来日
日本盲人会連合(日盲連)発足(8月)
1949年
(昭和24年)
身体障害者福祉法公布。更正養護施設として点字図書館を規定。公共図書館にあった多くの点字文庫が点字図書館として切り離される契機に。
1950年
(昭和25年)
・図書館法公布
1953年
(昭和28年)
日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)発足(9月)
1955年
(昭和30年)
・日本点字図書館、厚生省委託点字図書製作・貸出事業開始(1月) ・ヘレン・ケラー、3度目の来日
1957年
(昭和32年)
・国際基督教奉仕団(現・日本キリスト教奉仕団)テープライブラリ発足(2月)
・厚生省が点字図書館設置基準暫定案を作成(3月)
1958年
(昭和33年)
・日本点字図書館が録音図書の製作を開始し、「声のライブラリー」を設置
1959年
(昭和34年)
・日本ライトハウス、「声の図書館」(テープライブラリー)を開設。
1961年
(昭和36年)
・日本点字図書館・日本ライトハウス、厚生省委託声の図書製作・貸し出し事業開始。
・日本点字図書館、「声のライブラリー」を「テープライブラリー」と改称(4月)
・郵便法改正(盲人用郵便が無料化)
1963年
(昭和38年)
・日本ライトハウス、厚生省委託点字図書製作・貸出事業開始
1967年
(昭和42年)
・京都で視覚障害学生と点訳サークル学生を中心に関西SL(Student Library)発足(4月)
1969年
(昭和44年)
国立国会図書館と東京都立日比谷図書館に対して、日本盲大学生会・関西SL等が図書館蔵書の開放運動を行う。
1970年
(昭和45年)
・東京都立日比谷図書館、視覚障害者サービスを開始(4月) ・旧著作権法を全部改正した著作権法(①)公布。37条(点字による複製等)等を新たに規定(5月) ・日本盲大学生会・関西SL等が視覚障害者読書権保障協議会(視読協)結成(6月)
1971年
(昭和46)
・視読協、全国図書館大会で「図書館協会会員に訴える-視覚障害者の読書環境整備を」と訴える。大会で初めて「障害者サービスの推進」が決議される(10月) ・著作権法(①)施行(4月)
1972年
(昭和47年)
・京阪神点字図書館連絡協議会発足(参加4館) (6月)
1973年
(昭和48年)
ふきのとう文庫開設(11月)
1974年
(昭和49年)
・京阪神点字図書館連絡協議会から近畿点字図書館研究協議会が発足(近点協)に(参加12館、うち公共図書館2館)(11月)
・大阪府立夕陽丘図書館開館、対面朗読サービスや郵送貸出を開始(5月)
・全国図書館大会で初めて障害者サービスの分科会「身体障害者への図書館サービス」が設置される(11月)
1975年
(昭和50年)
・公共図書館の録音サービスが日本文芸著作権保護同盟から、著作権侵害と指摘する新聞記事報道(『愛のテープは違法の波紋』報道)(公共図書館における録音図書の製作が著作権者の許諾を取らなければ行えないということが明確に)(1月)
・国立国会図書館、学術文献録音サービス開始(10月)
1977年
(昭和52年)
・第1回点字図書館館長会議(東京)開催
1978年
(昭和53年)
・日本図書館協会(JLA)、障害者サービス委員会設置(最初から関東小委員会と関西小委員会があった)(4月)
1979年
(昭和54年)
・IFLA/RTLB(盲人図書館会議)発足
1981年
(昭和56年)
・国立国会図書館、「点字図書・録音図書全国総合目録」の編纂開始 ・全国点字図書館協議会、発足(4月)
・全国点字図書館長会議、「点字・録音・拡大資料の相互貸借に関する申し合せ」決議(11月)
・国際障害者年
視覚障害児のためのわんぱく文庫開設
1982年
(昭和57年)
国立国会図書館、「点字図書・録音図書全国総合目録」(冊子体)を刊行開始(3月)
1984年
(昭和59年)
・岩田文庫(てんやく絵本ふれあい文庫の前身)開設
1986年
(昭和61年)
・国立国会図書館、「点字図書・録音図書全国総合目録データベース(AB01)」提供開始。国会、行政・司法の各支部図書館、都道府県立・政令指定都市立図書館のほか、一部の点字図書館にオンラインで提供を開始。
・IFLA、東京で世界大会開催(8月)
・近点協、「製作資料の着手情報システム(NLB)」を開始(3月) 東京で開かれたIFLA(国際図書館連盟)の大会での専門家会議で視覚障害者のためのデジタル録音図書の標準化が国際的に議論
1987年
(昭和62年)
・点訳絵本/点訳入りFDの郵送料が無料になる(8月)
1988年
(昭和63年)
・日本IBMが点訳オンラインサービス「 IBMてんやく広場」開始 ・スウェーデン国立点字録音図書館(TPB)がデジタル図書開発を計画
1989年
(平成元年)
公共図書館で働く視覚障害職員の回(なごや会)、発足(9月)
1990年
(平成2年)
身体障害者福祉法改正。第34条で規定される「点字図書館」が「視聴覚障害者情報提供施設」に変更(6月) ・スウェーデンのラビリテンテン社、DAISYの開発に着手
・米国でADA法案可決(5月)
1991年
(平成3年)
・IFLA視覚障害者セミナーを東京(東京大学安田講堂、国立国会図書館東京本館新館講堂など)で開催(1月)
1993年(平成5年) ・運営を日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)点字図書館部会 特別委員会が引き継ぎ、「IBMてんやく広場」から「てんやく広場」に改名 ・障害者基本法公布
1994年(平成6年) ・日本点字図書館、厚生省委託事業として、「点字図書情報サービス事業」(点字図書・録音図書目録の一括化)を開始(1月)。
・てんやく広場、国立国会図書館点字図書・録音図書総合目録(AB01)のデータを借り受けてテスト稼働(11月)
・第19回全国点字図書館大会(この年から「全国点字図書館長会議」が「全国点字図書館大会」に)
・『障害者白書』が刊行される(12月)
1995年
(平成7年)
・国立国会図書館、「NDL CD-ROM Line点字図書・録音図書全国総合目録」頒布開始 ・てんやく広場、1994年の点字図書・録音図書全国総合目録データのテスト稼働をもとにオンラインリクエストの試行を開始(2月)
・日本点字図書館と東京都公共図書館の蔵書目録を搭載した「NIT(ニット)」に国立国会図書館の点字図書・録音図書全国総合目録のデータを搭載し、ニットプラスと改称(6月)
・シナノケンシがデジタル録音図書の試作一号機を開発
1996年
(平成8年)
・新しくオープンした大阪府立中央図書館が児童室の場所を「視覚障害児のためのわんぱく文庫」に提供 ・日本点字図書館、厚生省委託点字図書近代化事業を受け、点字資料のデジタル化を開始(5年間)(4月)
・全国点字図書館協議会、全国視覚障害者情報提供施設協議会に名称変更(11月)
・日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)、点字図書館部会の名称を「情報サービス部会」に変更
・DAISY Consortium設立
1997年
(平成9年)
・国立国会図書館、「全国の点字図書・録音図書製作速報」をHPに掲載開始 ・第23回全国視覚障害者情報提供施設大会開催(帯広)(全国点字図書館大会から変更)
・近畿点字図書館研究協議会、名称を「近畿視覚障害者情報サービス研究協議会(近畿視情協)」とする
・DAISY Consortium、DAISY 2.0の仕様を公開
・IFLA盲人図書館会議で DAISYがデジタル録音図書の標準規格になることが決定(8月)
1998年
(平成10年)
・国立国会図書館の「点字図書・録音図書全国総合目録」の冊子体が34号(1997年2号)で終刊 ・「てんやく広場」を全視情協に移管(7月)
・「ないーぶネット」に名称を変更(9月)
・視覚障害者読書権保障協議会、解散
・シナノケンシ、日本初のDAISY再生機プレクストークTK300発売(4月)
厚生省(現在の厚生労働省)の平成10年度~12年度(1998-2000年)補正予算事業。これによりDAISYの全国的な点字図書館への導入が実現
1999年
(平成11年)
・全国視覚障害者情報提供施設協議会、全国視覚障害者情報提供施設協会(全視情協)に名称変更(6月)
・日本点字図書館と全視情協と協議の結果、類似した2つのサービスである日本点字図書館の「ニットプラス」と全視情協の「ないーぶネット」を一本化し、「点字図書情報ネットワーク整備事業」として、両者の協力のもとに全視情協が運営する「ないーぶネット」の構築を行うことで合意(12月)
・日本ライトハウス、DAISY図書製作・貸出開始
・日本点字図書館、DAISY図書(デジタル録音図書)の貸出開始
2000年
(平成12年)
著作権法改正(②)。点字の公衆送信が可能になり、著作権法第37条の2(聴覚障害者のための自動公衆送信)が新たに規定される(5月)
2001年
(平成13年)
・文部科学省、公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準に障害者サービスをはじめて明記 ・インターネット版ないーぶネット(総合ないーぶネット)本格運用を開始。Web上からの貸出申し込みが可能に(4月) ・著作権法(②)が施行(1月) ・シナノケンシが、DAISYのインターネット配信実証実験
・DAISY Consortium、DAISY 2.02の仕様を承認(2月)
・DAISY Consortium、DAISYの正式名称を”Digital Audio-based Information SYstem”から”Digital Accessible Information SYstem”に変更(12月)
2002年
(平成14年)
・DAISY Consortium、DAISY 3(ANSI/NISO Z39.86 2002)を承認(3月)
・米国の非営利の社会的企業Benetech社、Bookshareを立ち上げる。
2003年
(平成15年)
・「図書館等における著作物等の利用に関する当事者協議」開始(1月)
・国立国会図書館、点字図書・録音図書全国総合目録をNDL-OPACにおいてインターネット公開(1月)
・大阪府立中央図書館、録音図書ネットワーク配信事業開始(4月)
・郵政公社発足。盲人用郵便物の表示が「盲人用」から「点字用郵便物」に変更(4月)
2004年
(平成16年)
・日本図書館協会と日本文芸家協会の間で視覚障害者のための録音図書作成についての許諾契約(公共図書館等における音訳資料作成の一括許諾に関する協定書)を締結。「障害者用音訳資料利用ガイドライン」発表(4月)
・関係団体で「図書館における著作物の利用に関する当事者協議会」(リンク先はPDFファイル)設置(5月)
日本文藝家協会と交わした「公共図書館等における音訳資料作成の一括許諾に関する協定書」に基づく障害者用音訳資料作成の一括許諾開始(8月)
・DAISY配信サービス「びぶりおネット」が日本点字図書館と日本ライトハウス盲人情報文化センターにより開始(4月) ・DAISY再生機器が「日常生活用具給付制度」の給付対象に(4月)
・障害者基本法改正(6月)
2005年
(平成17年)
・録音図書ネットワーク製作事業「びぶりお工房」本格運用開始(4月)
・「びぶりおネット」に点字データ配信サービスを追加(10月)
2006年
(平成18年)
著作権法(③)改正。これにより点字図書館は、視覚障害者向けの録音データの公衆送信可能になる(12月) ・障害者権利条約採択(6月)
2007年
(平成19年)
・著作権法③施行(7月)
2008年
(平成20年)
平成19年度障害者保健福祉推進事業「視覚障害者に対する新たな情報提供システムに関する研究」報告書公開(3月) ・教科書バリアフリー法施行(9月)
2009年
(平成21年)
・「公共図書館等における音訳資料作成の一括許諾に関する協定書」に基づく障害者用音訳資料作成の一括許諾終了(12月) ・びぶりおネット個人ユーザーへのダウンロードサービス開始(2月)
・平成21年補正事業で、厚生労働省の委託事業として、日本点字図書館が「視覚障害者情報提供ネットワークシステム整備事業」を受託。「ないーぶネット」と「びぶりおネット」を統合した「視覚障害者情報提供ネットワーク(サピエ)」を構築(11月)
著作権法(④)改正。視覚障害者「等」のために録音図書に限定されず、必要な方式で製作できることに、また、点字図書館だけではなく、図書館等も複製の主体になる。また、第三十七条の二が全部改正され、(聴覚障害者等のための複製等)に(6月)
2010年
(平成22年)
「図書館の障害者サービスにおける著作権法第37条第3項に基づく著作物の複製等に関するガイドライン」策定(2月) 視覚障害者情報総合システム「サピエ」運用開始(4月) ・著作権法(④)施行(1月) ・特定非営利活動法人大活字文化普及協会が専門委員会としての読書権保障協議会設置(12月)
2011年
(平成23年)
・国立国会図書館、国立国会図書館サーチで障害者向け資料検索機能の追加(9月) ・障害者基本法改正(8月)
・IDPF、EPUB 3の仕様を勧告(10月)
2012年
(平成24年)
DAISY Consortium、DAISY AI(ANSI/NISO Z39.98-2012)承認(7月)
2013年
(平成25年)
・盲人、視覚障害者およびプリントディスアビリティ(印刷物を読むことが困難)のある人々の出版物へのアクセス促進のためのマラケシュ条約採択(6月)
・障害者差別解消法成立(6月)
2014年
(平成26年)
国立国会図書館、「視覚障害者等用データの収集及び送信サービス」開始(1月)
・国立国会図書館の「視覚障害者等用データ送信サービス」と「サピエ図書館」のシステム連携。「視覚障害者等用データ送信サービス」のコンテンツが「サピエ図書館」から利用可能に。(6月3日)
・日本、障害者権利条約の批准書を寄託(1月。2月に効力が発生)
2015年
(平成27年)
2016年
(平成28年)
・障害者差別解消法施行(4月)

主な参考文献

 

図書館関係

点字図書館関係

DAISY

8月 08

身体障害者福祉法における視覚障害者情報提供施設(いわゆる「点字図書館」)等の規定の変遷

 視覚障害者情報提供施設(いわゆる「点字図書館」)等は、身体障害者福祉法によって法的に位置づけられています(厚生労働省所管の障害者福祉施設)。視覚障害者情報提供施設が役割を拡大していく中で、身体障害者福祉法における規定も随時変更されてきました。今回は、身体障害者福祉法における点字図書館(視覚障害者情報提供施設)の規定の変遷を追ってみました。なお、日本法令索引を目視で1つ1つ変遷を拾うことでまとめたため、見落としのある可能性があります。ご注意ください。

 昭和24年の身体障害者福祉法制定時には「第三十三条 点字図書館は、点字刊行物を盲人の求に応じて閲覧させる施設とする。」とかなり短いものでしたが、現行法(平成26年6月13日法律第67号)では、以下のように規定されています。

平成26年6月13日法律第67号

(視聴覚障害者情報提供施設)
第三十四条  視聴覚障害者情報提供施設は、無料又は低額な料金で、点字刊行物、視覚障害者用の録音物、聴覚障害者用の録画物その他各種情報を記録した物であつて専ら視聴覚障害者が利用するものを製作し、若しくはこれらを視聴覚障害者の利用に供し、又は点訳(文字を点字に訳すことをいう。)若しくは手話通訳等を行う者の養成若しくは派遣その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する施設とする。

 なお、「厚生労働省令で定める便宜」は「身体障害者福祉法施行規則(最終改正:平成27年3月31日厚生労働省令第五五号)」で以下のとおり定められています。

(法第三十四条 に規定する厚生労働省令で定める便宜)
第十八条  法第三十四条 に規定する厚生労働省令で定める便宜は、点訳又は手話通訳等を行う者の養成又は派遣、点字刊行物等の普及の促進、視聴覚障害者に対する情報機器の貸出、視聴覚障害者に関する相談等とする。

 

 視覚障害者情報提供施設(いわゆる「点字図書館」)等に関係する第三十三条あるいは第三十四条 は、以下のとおり、これまで5回改正されています。 最後の平成11年改正(施行日の関係で最後に)は中央省庁再編にかかる文言レベルの修正ですので、重要な改正は2から5と言えるでしょうか。

  1. 昭和24年 身体障害者福祉法制定(昭和24年12月26日法律第283号)
  2. 昭和29年改正(昭和29年3月31日法律第25号)
  3. 昭和59年改正(昭和59年8月7日法律第53号)
  4. 平成2(1990)年改正(平成2年6月29日法律第58号)
  5. 平成12年改正(平成12年6月7日法律第101号)
  6. 平成11年改正(平成11年12月22日法律第160号)

1. 昭和24年 身体障害者福祉法制定(昭和24年12月26日法律第283号

 (点字図書館)
第三十三条 点字図書館は、点字刊行物を盲人の求に応じて閲覧させる施設とする。

2. 昭和29年改正(昭和29年3月31日法律第25号

(点字図書館)
第三十三条 点字図書館は、無料又は低額な料金で、点字刊行物を盲人の求に応じて閲覧させる施設とする。

改正点(昭和29年3月31日法律第25号より)

◎身体障害者福祉法の一部を改正する法律
(中略)
 第三十三条中「点字図書館は、」の下に「無料又は低額な料金で、」を加える。

3. 昭和59年改正(昭和59年8月7日法律第53号)

 この改正で録音図書の提供が新たに規定されました。日本点字図書館が録音図書の製作を開始し、「声の図書館」を開設したのが1958年(昭和33年)ですから、26年が経過しています。 旧著作権法が全面改正された1970年(昭和45年)の著作権法(昭和45年法律第48号)では、すでに第37条で著作権者の許諾を必要とせずに点字図書館が録音図書の製作を行うことが認められているので、著作権法と比べると身体障害者福祉法への追加はかなりの時間がかかっています。

 (点字図書館)
第三十三条 点字図書館は、無料又は低額な料金で、点字刊行物及び盲人用の録音物を盲人の利用に供する施設とする。

改正点(昭和59年8月7日法律第53号より)

◎身体障害者福祉法の一部を改正する法律
(中略)
第三十三条中「点字刊行物を盲人の求に応じて閲覧させる」を「点字刊行物及び盲人用の録音物を盲人の利用に供する」に改める。

4. 平成2(1990)年改正(平成2年6月29日法律第58号

 この改正で、「聴覚障害者情報提供施設」が新たに規定され、点字図書館、点字出版施設が「視覚障害者情報提供施設」として位置づけられました。この改正で「録音物」という言葉が消えてしまいましたが、「その他各種情報を記録した物であつて専ら視聴覚障害者が利用するもの」に含まれるということでしょうか。

 第三十三条 視聴覚障害者情報提供施設は、無料又は低額な料金で、点字刊行物、聴覚障害者用の録画物その他各種情報を記録した物であつて専ら視聴覚障害者が利用するものを製作し、又はこれらを視聴覚障害者の利用に供する施設とする。

改正点(平成2年6月29日法律第58号より)

 ◎老人福祉法等の一部を改正する法律
(中略)
(身体障害者福祉法の一部改正)
(中略)
第三十三条及び第三十四条を次のように改める。
  (視聴覚障害者情報提供施設)
 第三十三条 視聴覚障害者情報提供施設は、無料又は低額な料金で、点字刊行物、聴覚障害者用の録画物その他各種情報を記録した物であつて専ら視聴覚障害者が利用するものを製作し、又はこれらを視聴覚障害者の利用に供する施設とする。
 第三十四条 削除

5. 平成12年改正(平成12年6月7日法律第101号

 点訳が追加され、これは聴覚障害者情報提供施設についてだと思いますが、手話通訳の要請・派遣も新たに追加されました。また、「その他」ということで、法律を改正しなくても厚生省の政令でいろいろと追加できるようになりました。

 また、「その他各種情報を記録した物であつて専ら視聴覚障害者が利用するもの」では不十分だと考えられたのか、「録音物」という言葉が復活しています。

  (視聴覚障害者情報提供施設)
 第三十四条 視聴覚障害者情報提供施設は、無料又は低額な料金で、点字刊行物、視覚障害者用の録音物、聴覚障害者用の録画物その他各種情報を記録した物であつて専ら視聴覚障害者が利用するものを製作し、若しくはこれらを視聴覚障害者の利用に供し、又は点訳(文字を点字に訳すことをいう。)若しくは手話通訳等を行う者の養成若しくは派遣その他の厚生省令で定める便宜を供与する施設とする。

改正点(平成12年6月7日法律第101号より)

◎社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律
(中略)
(身体障害者福祉法の一部改正)
第三条 身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)の一部を次のように改正する。
(中略)
  第三十三条中「点字刊行物」の下に「、視覚障害者用の録音物」を加え、「、又は」を「、若しくは」に、「供する」を「供し、又は点訳(文字を点字に訳すことをいう。)若しくは手話通訳等を行う者の養成若しくは派遣その他の厚生省令で定める便宜を供与する」に改める。
(中略)
第四条 身体障害者福祉法の一部を次のように改正する。
(中略)
第三十四条を削り、第三章中第三十三条を第三十四条とし、第三十二条の次に次の一条を加える。

6. 平成11年改正(平成11年12月22日法律第160号

  公布日は5の「社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律」の方が後になりますが、「中央省庁等改革関係法施行法」(平成13年1月6日施行)の施行日が前者(平成12年6月7日公布・施行)より後になるため、法への反映は「中央省庁等改革関係法施行法」が後になります。中央省庁再編により、厚生省と労働省を廃止・統合され、厚生労働省になったことによる改正です。

  (視聴覚障害者情報提供施設)
 第三十四条 視聴覚障害者情報提供施設は、無料又は低額な料金で、点字刊行物、視覚障害者用の録音物、聴覚障害者用の録画物その他各種情報を記録した物であつて専ら視聴覚障害者が利用するものを製作し、若しくはこれらを視聴覚障害者の利用に供し、又は点訳(文字を点字に訳すことをいう。)若しくは手話通訳等を行う者の養成若しくは派遣その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する施設とする。

改正点(平成11年12月22日法律第160号より)

 ◎中央省庁等改革関係法施行法
(中略)
 (身体障害者福祉法の一部改正)
第六百十五条 身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)の一部を次のように改正する。
  本則(第十五条第十一項、第十九条の二第五項及び第四十一条第一項を除く。)中「厚生省令」を「厚生労働省令」に、「厚生大臣」を「厚生労働大臣」に、「大蔵大臣」を「財務大臣」に改める。
(中略)
附則
 (施行期日)
第一条 この法律(第二条及び第三条を除く。)は、平成十三年一月六日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

関連エントリ

8月 06

1936年に東京盲学校の卒業生が点字図書を帝国図書館に寄付、それを受けて帝国図書館が点字図書の提供を開始?

1916年(大正5年)に東京盲学校(現在の筑波大学附属視覚特別支援学校)の学生が点字図書200冊を東京市立本郷図書館に寄託し、東京市立本郷図書館は点字文庫を開設したことが公共図書館による障害者への情報提供の嚆矢とされています。

 では、帝国図書館ではどうだったのだろうかと思っていたのですが、国立国会図書館デジタルコレクションで、偶然、以下の記事をみつけたので、メモとして。

 1936年(昭和11年)に東京盲学校の卒業生が点字図書を帝国図書館に寄付しています。そして、同年の『帝国図書館報』に初めて点字図書の書誌の掲載がされ、以後、継続的に点字図書の書誌が掲載されるようになります。寄付された点字図書の書誌が、『帝国図書館報』に掲載されたのかどうかはわかりませんが、時期的に深い関係がありそう。国立図書館における障害者への情報提供の最初の事例になるかもしれない。

 東京盲学校の卒業生による点字図書寄付については、『本邦の図書館界』(岡山県中央図書発行)第12に朝日新聞の記事を転載する形で紹介されています。東京盲学校の卒業生が点字図書を寄贈して帝国図書館に点字図書館に要請したとの1936年(昭和11年)の記事です。

該当する記事を掲載したページの画像。次にその記事をテキストに起こしたものを掲載しています
国立国会図書館デジタルコレクション – 本邦の図書館界. 第12(p5)の該当部分

 上の記事をテキストにしたのが以下です。

點字図書館設立の為に盲人が図書を寄贈

官立東京盲学校の卒業生杉山眞平君外十三名は帝國図書館に松本館長を訪れて點字図書一四四冊の寄附を申出で「日本全國15萬の盲人の為是非點字図書室を設置して戴きたい」と懇願した。松本館長は「十分努力しよう」と誓った。之の杖を頼りの盲人達の美談は本所■(注: 字がつぶれて判読できず。「區」か?)の吉野志郎氏が今春二十九歳を最後として病逝したが、同家は比較的財政に恵まれてゐた。そして志郎氏は生前口癖の様に「點字図書館が欲しい」と云ってゐたので志郎氏の父元吉氏が盲人達に百圓贈った。盲人達は之を基礎として皆々不自由な身で八方奔走し點字図書の蒐集に力め今回前記の様に一四四冊の蒐集に成功し之を帝國図書館に寄附したのである(昭一一、一〇、五 東京朝日)

 同年に刊行された『帝国図書館報』第29冊第12号に初めて点字図書の書誌も掲載されました。

国立国会図書館デジタルコレクション – 帝国図書館報. 第29冊第12号

 以下、該当部分のページの画像です。リンク先は国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている同雑誌の該当するページへのリンク。

点字図書の書誌が掲載されたページその1
点字図書の書誌が掲載されたページその2

ここに掲載された図書が、国立国会図書館に引き継がれているかどうかも気になるところですが、NDL-OPACで確認できる範囲では所蔵されているかどうかは確認できませんでした。

7月 24

プリントディスアビリティのある人を対象とした世界最大のアクセシブルなオンライン図書館 Bookshare

 Bookshareは、視覚障害その他の理由で通常の印刷物を読むことができないプリントディスアビリティのある人にアクセシブルなコンテンツを提供するオンライン図書館です。非営利の社会的企業Benetech社が2002年に立ち上げたもので、プリントディスアビリティのある人を対象としたオンライン図書館としては世界最大のものです。

誰が利用できるのか

 米国の著作権法の権利制限規定またはそれにならって権利者から得た許諾に基づいてコンテンツを製作・収集・提供しているため、利用できるのは、プリントディスアビリティとしてBookshareに会員登録した人に限定されます。具体的には、視覚障害、肢体不自由などの理由でページをめくれない等の身体障害、読書に困難のある学習障害のある障害者で、専門家によってそれを証明してもらう必要があります。

 会費は個人会員であれば、基本的に入会費25ドル年会費50ドルですが、ユーザーの身分によって無料になったり、ユーザーがいる国によってディスカウントされることもあります。

 プリントディスアビリティがあることの証明のところで、ハードルが高くなりますが、海外の人間でもプリントディスアビリティがあることが証明可能であれば、登録することが可能です。

参考

利用できるコンテンツ

 Bookshareは2015年7月24日現在で約35万点のアクセシブルなコンテンツを提供しています。

 ダウンロードして利用できるコンテンツの形式は以下のとおりで、ソースとなるテキストデータから自動的にユーザーが選択したいずれかの形式に変換されてダウンロードできるようになっているようです。

  • テキストDAISY(DAISY3)
  • 音声DAISY(DAISY3。合成音声によって読み上げた音声データを格納したDAISY)
  • 音声データ(MP3形式。合成音声によって読み上げた音声データ)
  • 点字データ(BRF形式)

 35万点のコンテンツのソースは以下の通りです。Bookshareといえば、米国の著作権法の権利制限規定に基づいてボランティアが紙の印刷物をスキャニング・OCR処理して作成したものが有名ですが、現在では、全体から見れば一部にすぎず、出版社から直接提供を受けるデータの方が数としては多くなっています。

ボランティアによる製作

ユーザーからの製作のリクエストを受けて、ボランティアが製作したテキストデータで、米国の著作権法の制限規定に基づいて製作しています。音楽共有サービスNapsterにヒントを得て、図書をスキャニングしたデータを合法的に共有できたらよいのではないかというところからフルックターマンは、Bookshareを着想したと言われているそうで、Bookshareが2002年に立ち上がった当初から現在に至るまで行われています。

 製作フローは1人のボランティアが紙の書籍をスキャニング・OCR処理を行い、別のボランティアがそれをテキスト校正するという製作フローになっており、リクエストを受けてから数週間から数ヶ月で完成するそうです。

参考

出版社から提供を受けたデータ

 出版社からもデータの提供を受けています。現在は、500以上の出版社からデータの提供を受けており、Bookshareが提供する35万点のうち、2/3は出版社からデータの提供を受けたコンテンツではないかと思います。

 出版社から提供を受けているフォーマットはEPUB 2とEPUB3で、PDFは現在、受け付けていません。メタデータは、ONIX2かExcelによって提供を受けているとのこと。

参考

著者から提供を受けたデータ

著者からのデータ提供も受け付けています。これまで数百の著者から直接データの提供を受けたそうです。受け付けるファイル形式はEPUB 2、EPUB 3、Word及びRTFで、紙版の書籍とPDF版による提供は受け付けていないとのこと。

参考

初等・中等教育の教科書

 Bookshareの存在を際だたせているもう1つのコンテンツがこの初等・中等教育の教科書データの提供です。

 米国では、個別障害者教育法(IDEA 2004)により、教科書の購入者である州や地方教育局の求めに応じて教科書出版社は教科書などの教材のデータをNIMAS(National Instructional Materials Accessibility Standard)というフォーマットで提出することが義務づけられています。Bookshareは、このNIMASファイルを元にテキストDAISYを作成して障害児に提供しています。米国教育省のOSEP(Office of Special Education Programs)から資金援助をうけて、無償で提供しています。

 また、Bookshareは紙の教科書を裁断して、スキャニングしてテキストDAISY化もしています。
 詳細は、参考に挙げた近藤武夫先生の論文に詳しいので、そちらをご参照ください。

参考

大学からアップロードされたデータ(University Partner Program)

 読書障害のある大学生支援を目的に、各大学が障害学生のためにスキャニングして製作した教科書などのテキストデータを収集しています。2015年7月24日現在で35校の大学がこのプログラムに参加しています。各大学は、Bookshareのボランティアマニュアルにしたがって教材をスキャニング・OCR処理をしてテキストデータを製作し、RTF形式でアップロードします。ただし、ボランティアが製作したものと異なり、大学がアップロードしたものの場合は、テキスト校正のフローが省略され、すぐに提供に回すことができます。

参考

NFB-NEWSLINEの雑誌・新聞

 National Federation of the Blind(NFB)の新聞・雑誌の音声提供サービスNFB-NEWSLINEと提携してNFB-NEWSLINEのコンテンツを利用できるようになっています。

参考

コンテンツの利用方法

 Bookshareはウェブサイトから直接閲覧することができるブラウザベースの閲覧システムBookshare Web Readerを提供しているほか、

Bookshareのウェブサイトで一覧されているように、デスクトップPC上のアプリケーションや、タブレット端末・スマートフォン端末用のアプリケーションやハードウェアデバイス(再生機器)で利用することが可能です。中にはBookshareのウェブサイトを訪問してコンテンツをダウンロードしなくても、ソフトウェア、デバイス上でBookshareのコンテンツを直接ダウンロードできるものもあります。

参考

Bookshareを運営するBenetchとは

 Benetechはテクノロジーの力で世界をより良くしていこうと、人権、リテラシー、環境をテーマに取り組んでいる非営利の社会的企業です。ジム・フルックターマン(Jim Fruchterman)氏が立ち上げたもので、前身となるArkenstone社のプロダクトラインを2000年に他の企業に売却し、社の名前をBenetechに、組織形態を非営利の社会的企業に改めて生まれた企業です。なお、Arkenstone社は、視覚障害者向けのOCRソフトウェアを開発していた企業で、それを用いた音声読書システム(スキャナとOCRソフトウェアで紙の資料をテキスト化し、合成音声で読み上げるシステム)が1990年代に60カ国で3万5千台販売されたそうです。

 Bookshareは、Benetechが進めるGlobal Literacy Programの1つで、同プログラムの下には、他にアクセシビリティに関する標準化やツールの研究・開発を行うDIAGRAM Centerや、大人の読み書き能力の向上を目的としたリテラシー教育プロジェクトRoute 66 Literacyがあります。

参考

7月 23

Bookshareを海外から利用するには

 Bookshareを利用するためには、 Bookshareにプリントディスアビリティのある者として利用者登録を行う必要があります。登録は米国在住のユーザーに限定しておらず、海外からも登録可能です。以下で公開されているリストをみると、すでに日本でもBookshareの登録ユーザーがいるようです。

 登録するためには、以下のエントリで紹介したように、しかるべき専門家にプリントディスアビリティがあることを証明してもらう必要があります。

証明してもらえる専門家が見つかれば、Bookshareが用意している書式(プリントディスアビリティであることを証明する書類)に署名してもらい、それをメールやFAXなどでBookshareに送付すれば、よいそうなので、日本からでも登録は可能ではないかと思います。ただし、証明する書類の送付そのものは比較的容易ですが、証明する専門家がその分、重い責任を負うことになりますのでご注意をください。

 ちなみに会費ですが、日本の場合はディスカウントはないので、入会費25ドル、年会費50ドルとなっています。

利用できるコンテンツ数

 海外から利用できるコンテンツは、Bookshareが出版社から許諾が得たものに限定され、米国の著作権法の制限規定に基づいてボランティアが製作したコンテンツなどは提供されていません。

 一部の国については、国ごとの利用できるコンテンツ数が以下に掲載されています(日本は掲載されていません)。最も多い国で228,000件。Bookshareが提供している全コンテンツ数が約35万点ですので、約2/3になります。

海外のパートナー機関を通じたのプリントディスアビリティの証明、会費の支払い

Bookshareは海外にパートナーとなる機関をもっており、そこを通じてプリントディスアビリティであることの証明や会費の支払いも可能なようです。残念ながら日本にはパートナー機関は存在しません。韓国だと、韓国国立中央図書館がパートナーとして窓口機関になっているので、ちょっと驚いたり。

マラケシュ条約批准への政府に対する働きかけの訴え

 上で紹介したとおり、海外ではBookshareが提供するコンテンツ全てを利用できるわけではありません。そこで、Bookshareは、マラケシュ条約が発効し、米国が批准したら、Bookshareの全てのコンテンツを他の批准国に提供できるので、各国のユーザーは各国の政府に批准を働きかけてほしいと訴えています。

7月 21

Bookshareの会員になって利用することができるプリントディスアビリティのある人

 Bookshareは、視覚障害その他の理由で通常の印刷物を読むことができないプリントディスアビリティのある人を対象とした米国の電子図書館サービスで、米国の著作権法の権利制限規定に基づいてコンテンツを集め、製作し、該当するユーザーに提供しています。

 Bookshareで登録できるプリントディスアビリティとは、具体的には、視覚障害、肢体不自由などの理由でページをめくれない等の身体障害、読書に困難のある学習障害のある障害者で、専門家によってそれを証明してもらう必要があります。なお、Bookshareが求める条件に合致するプリントディスアビリティのある人であれば、登録は米国以外の人でも登録は可能です。

 一時的に上のような読書障害になった者の登録も認められるようです。たたし、障害が解消したら、アカウントは削除しなくてはなりません。

 なお、自閉症、知的障害、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、聴覚障害のような障害を抱える障害者や英語が母国語でないことによる英語による読書の困難を抱える者はBookshareの利用者基準に合致しないため、それを理由として登録することはできません。

登録できるプリントディスアビリティとそれを証明する専門家

視覚障害者

 通常の印刷物を読むことができない全盲またはロービジョンの視覚障害者及び米国政府によって視覚障害者と法的に認めた者(日本出言えば、視覚障害の身体障害者手帳保有者に相当)。

証明できる専門家の例

身体障害者

肢体不自由などの身体障害によって、ページがめくれない、姿勢を維持できない等など、障害が読書に深刻な影響を与えると専門家が認めた者。

証明できる専門家の例
  • ホームドクターまたは医学的な専門家
  • 理学療法士
  • リソーススペシャリスト(特殊教育の専門家とのこと。特別支援教育よりも意味としては広い?)
  • 特別支援教育の教師
参考

学習障害

学習障害が読書に深刻な影響を与えると専門家が認めた者。

証明できる専門家の例
  • 神経学者
  • ホームドクター
  • 精神科医
  • 学習障害の専門家
  • 特別支援教育の教師
  • スクールサイコロジスト
  • 学習障害について経歴のある臨床心理士

会費について

個人

米国の学生:無料
その他の個人:入会費25ドル、年会費50ドル
一部の国でディスカウントあり。

団体・施設

米国の学校:無料
6〜10ドル/冊数
一部の国でディスカウントあり。

参考
6月 10

マラケシュ条約の各国の2015年の対応

 以下の記事で米国、カナダ、欧州の批准に対する状況が紹介されています。ちなみにBenetechは米国のbookshareを運営している会社です。

 さっくりまとめると、2015年中の批准の可能性については、カナダ「ほぼ確実」、米国「あり得る」、欧州各国「なさそう」とのことらしいです。

 カナダについては、批准の法整備のために”Support for Canadians with Print Disabilities Act(プリントディスアビリティのあるカナダ人支援法)”が議会で審議されているところのようです。

5月 27

アクセシブルな電子書籍とは何かを示すガイドラインを図書館側が作ってはどうか

 障害者差別解消法の施行まであと1年弱となりました。公共図書館向けのいろいろなサービスが障害差差別解消法の対応できる的なことを謳うようになると思いますが、電子書籍サービスもおそらくはその1つでしょう。

 個々の電子書籍ベンダの状況はよくわかりませんが、アクセシビリティ対応についてはベンダごとにそれぞれ重きを置くところがさまざまではないかと思います。「アクセシブルな電子書籍」と一言で言っても、図書館が考える「アクセシブルな電子書籍」とベンダ側(と出版社)が考えるそれが同じとは限らないため、図書館が考える「アクセシブルな電子書籍」が何かを明示する必要があるのではないかと考えています。利用者に対して直接サービスを提供する図書館側が考える「アクセシブルな電子書籍」の要件を整理して提示し、認識に齟齬が生じることを防ぐことが重要です。

 例えば、以下について要件の優先順位を示したガイドラインを提示することで、ベンダやコンテンツプロバイダが自分が提供するサービスやコンテンツが、客観的に自己評価でき、かつ、今後どのように改善していけばよいのか、その道筋を示すというのは一つの方法です。

  • (出版社と電子書籍プラットフォームに対して)図書館が考える「アクセシブルな電子書籍」とは何か。
  • (ビューワー開発者と電子書籍プラットフォームに対して)図書館が考える電子書籍の「アクセシブルな閲覧環境」とは何か。
  • (電子書籍プラットフォームに対して)図書館が考える電子書籍の「アクセシブルな提供方法」とは何か。

 この方法の大きな利点は、ベンダ側に要件を提示できるだけではなく、図書館側が電子書籍サービスの導入やコンテンツの購入に際して、これらを「障害差差別解消法の対応」という文言に左右されずに客観的に評価できることです。

 障害の状況は人によってそれぞれ異なりますので、全ての方が満足するものを提供することは困難です。ベンダが出してきたものに対して、問題点を指摘することは無論重要ですが、図書館側が考える「アクセシブルな電子書籍」を明示せずに、ベンダが問題を指摘され続けるという状況は、ベンダにとっては、ゴールが見えないため、やる気を削ぐ可能性もあり、あまり望ましいことではありません。

 そこで、ガイドライン的なものを提示することで、だれもがサービスやコンテンツを客観的に評価でき、問題点を顕在化できるようにする。そして、現実的に実装できる道筋を示す。ベンダ側も全ての要件を一気に満たすことは難しくても、道筋が示されれば、優先順位の高い要件から「合理的配慮」の範囲内で少しずつ実装してくれるかもしれない。企業全体としてその気はなくても、内部の人がやる気を出して可能な範囲で少しずつ改善してくれるかもしれないし、あるいは、ガイドラインによる客観的な評価をもって、上を説得するようになるかもしれない。後半は希望的観測もありますが、ガイドラインのあり方は、ウェブアクセシビリティガイドラインで知られるW3CのWCAG2.0( = JIS X8341-3:2010)はロールモデルになるものだと思います。

 利用者に接してサービスを提供する図書館は、障害者のニーズをくみ上げて出版社やベンダーに「アクセシブルな電子書籍」とは何かを伝えることができるし、その役割を果たすことでアクセシブルな電子書籍の普及に貢献することができるはずです。

 要件を整理してガイドラインを作成するということは、関係者間で「アクセシブルな電子書籍」の認識を一致させる必要がまずはあり、相当大変なことだ思いますが、それは必要な調整ではないかととも思います。

 私が図書館側の人間なので、今回は「図書館」を中心に述べてきましたが、視覚障害者情報提供施設(いわゆる、点字図書館)に置き換えても同じことが言えるはずです。立場としては図書館と点字図書館は同じであるはずですので、連携して取り組めればよいかもしれません。米国のEPUB 3 Implementation Projectが出版社、リーディングシステム開発者、コンテンツ販売者、サービスプロバイダ、そして、アクセシビリティ関係のコミュニティが集まって要件を整理したように、日本でももっと広いくくりで領域をまたいでこういうものが作れると本当はもっとよいのでしょうか。

関連エントリ

3月 26

図書館の「障害者サービス」の英訳

 図書館の「障害者サービス」の英訳について。 “library service for “の後に「障害者」に当たる言葉にどの単語を使うべきかという話で、「障害」を意味する単語の”impairment”、”disability”、”handicap”のどれを使うべきかという話です。

 結論は実は出ていて、IFLAでは、いや、国際社会では、「障害者」という言葉に”persons with disabilities”などのように”disability”を用いるので、”library service for persons with disabilities”あるいは、”library service for the disabled”と訳せばよいのだと思う。結論そのものは迷いはないのですが、考え方としてどうなのだろうと思った次第。
 
 それぞれの意味は以下のエントリで触れた通りです。

 視覚障害に当てはめるならば、以下のとおりです。

(1)impairment(機能障害)
例: 目という機能に障害があること
   ↓
(2)disability(能力障害)
 例:目が見えないために墨字を読むという能力に障害があること墨字(インクで書かれた文字)を読めないこと。
   ↓
(3)handicap(社会的不利)
例:字で書かれた情報を得られないために社会的な不利を得がちだということ
  
 図書館の障害者サービスは、「障害者」を対象とする対象別のサービスではなく、図書館の全ての資料をすべての利用者に利用できるようにする、資料の利用に困難が利用者がいるなら、その利用者の困難を取り除くというのが図書館における障害者サービスです。だから、録音図書も提供するし、対面朗読サービスも提供しているのですが、障害者サービスをこの意味で考える場合、”library service for the handicapped”は矛盾しています。なぜなら、ここでの”the handicapped”は図書館利用において不利を得ている方ということになり、障害者サービスはそういう方を生じさせないサービスなのだからと。

 なので、handicapという言葉は用いず、disabilityという言葉を用いているのだろうか。
 
 なお、impairmentを用いないのは、昨今の「障害者」の定義が医学モデルではなく、社会モデルでされているからかと思う。

 以上、つらつらと思ったことでした。

1月 21

「京都市内の大学における点字図書について」京都大学点訳サークル2011 年京都大学 11 月祭個人研究

 京都大学点訳サークルが京都大学の学園祭11月祭で毎年、研究発表をしているそうですが、2011年度に京都市内の大学における点字図書の蔵書について調査し、発表したものが公開されていました。

 他の発表も以下に公開されています。

 この点訳サークルの11月祭での発表は1970年代から行われていたそうなので、上で公開されているものはそのごく一部なのでしょうね。