2月 16

MyBook ⅢがEPUB3に対応していた

 様々なデジタルコンテンツをPC-Talkerというスクリーンリーダーで閲覧することができるバリアフリー読書ソフトMyBook Ⅲ(MyBook 3)が、いつの間にかEPUB3に対応していたという話。

 このソフトウェアを一言で説明するのはなかかな難しいので、上の高知システムのサイトをご覧いただければと思いますが、スクリーンリーダーでの利用に対応したデジタルコンテンツの閲覧ソフトウェアです。UIもスクリーンリーダーのユーザーが利用しやすいように設計されています。対応する形式は、DAISYやEPUB、PDFだけではなく、Word、Excel、PowerPoint、点字ファイルなど非常に多岐にわたります。また、サピエ図書館国立国会図書館のDAISY配信サービスに対応しており、これらのサービスをソフトウェアから直接利用(検索・ダウンロード・再生)できるようになっています。スクリーンリーダーのユーザーが様々なデジタルコンテンツを読むにあたって、なるべくMyBook Ⅲの中で操作が完結するように、あるいは起点になるように設計されています。日本語のWindows環境で最もよく使用されている(と思われる)スクリーンリーダー PC-Talkerに対応するこのソフトウェアでEPUB 3に読めることは大きいと思います。MyBook Ⅲというバージョンがどこまで利用されているかはわかりませんが、MyBookはスクリーンリーダーを用いる視覚障害者がWindows環境でよく利用していると聞いています。

 メニューに「EPUB」という項目があるので、EPUBに対応しているということは知っていたのですが、上記の高知システムのHPでは、EPUB 3と明記されていなかったので、EPUB2にのみ対応しているのかと思っていました。 @SGTMSYK さんによると、マニュアルにはきちんと対応が明記されているとのことで、「ええぇ、まじですかー」と思い、確認してみると、以下のように明記されていました。

EPUBファイルは、国際的な電子書籍フォーマットであり、特に英語圏では電子書籍の標準規格として扱われています。
主に、文庫や漫画、雑誌と言った、一般的な書籍がEPUBファイル化されています。
日本では、今後の普及が予測されそうです。

マイブックは、次のバージョンのEPUBファイルが読み込めます。
 EPUBバージョン 2.0
 EPUBバージョン 3.0

補足1.
文庫の場合、その殆どがテキストをベースに作成されていますので音声読み上げによる読書には適しています。
しかし、漫画や雑誌のように画像で文書化されているものに対しては、音声読み上げによる読書ができませんので、ご注意願います。

 EPUB3で作成されたファイルをいくつか読み込んでみましたが、こんな感じでした。

  • rubyタグの対応について。たとえば、<ruby>私<rp>(</rp><rt>わちき</rt><rp>)</rp></ruby> となっていても「私(わちき)」と表示されてしまい、ルビ表示はされません。しかし、rubyタグの情報は、読み上げには活用されるので、きちんと「わちき」と読み上げてくれる(スクリーンリーダーのPC-Talker側の対応かもしれませんが)。
  • 縦書きには未対応。
  • Media Overlaysにも未対応なので、音声のみのEPUBやマルチメディアDAISY的なEPUBの再生はできない。

 スクリーンリーダーの利用に焦点をあてたソフトウェアと考えれば、縦書きには未対応であることやルビ表示がされないことは、あまり問題ではないかもしれません。Media Overlaysにまだ対応していないのは残念ですが、rubyタグを読み上げに活用できるのであれば、テキストDAISY的なEPUBを読むには、スクリーンリーダーを利用する視覚障害者にとって利用しやすいソフトウェアかもしれません。

1月 23

DAISY Pipeline 2 ver.1.9公開。EPUB3からDAISY2.02への変換機能を実験的に実装

  DAISY Pipeline 2 ver.1.9が公開されました。

 追加された主な機能は以下の通りで、EPUB3からDAISY2.02への変換機能が実験的に実装されました。数の増えてきたEPUB3コンテンツをDAISY環境で利用することを実現するこの機能は、EPUB3の閲覧環境がDAISYユーザーが整備されるまでの繋ぎとして、非常に重要な機能だと思います。

* a new command line tool, with native executables
* new schema-based DAISY 2.02 validation script
* new DTBook to ODT script
* new EPUB 3 to DAISY 2.02 script (experimental)
* TTS-narration support in DTBook to EPUB 3
* audio-only DAISY 2.02 to EPUB 3 conversion aligned with the TIES guidelines
* and many other bug fixes and improvements

 というわけで、早速試してみました。今回ためしたのは、WebUI版ですが、コマンドラインでも利用することができます。

DAISY Pipeline 2
DAISY Pipeline 2 のWeb UI画面。字が小さくて見づらいがScript欄に”EPUB3 to DAISY 2.02″が表示されている。

 とりあえず以下で公開されているEPUBでDAISY2.02の変換を試みてました。

結果は・・こんな画面が表示されて2つともとりあえず成功です。パチパチパチ。
Successと変換成功を知らせる画面

 しかし、残念ながら、どちらもDAISY2.02の再生ソフトで開けない。具体的にいえば、AMIS 3.13Voice of DAISYで開けない。
 
 まだまだ課題は多そうですが、実験的に実装されたことを考えれば、現時点では暖かい目で見守るべきところでしょうか。今後、どんどん改善されていくでしょうから。

 EPUB3コンテンツの提供者が、DAISY2.02も同時に提供できるようになる日もそう遠くなさそうですね。

1月 12

数式を含む理数系のDAISY, EPUB3製作に焦点を当てたChattyInfty3

 数式を含む理数系のDAISY, EPUB3製作に焦点を当てたChattyInfty3というアプリケーション。LaTeX 文書の編集、PDF ファイル出力、MathML などによるWeb教材作成など、数式などを含む理数系の教材の製作に焦点が置かれて開発されているようです。

 鈴木昌和先生のInfty Projectプロジェクトの一環として製作されたもので、他にも日英混在文や数式を含む科学技術分野の文献を対象としたOCRソフトなども開発されているようです。

 ChattyInftyについては以下もご参照ください。

 その他、鈴木昌和先生のお名前でCiniiを検索すると、数学文書点訳について、日本語分かち書き仮名変換処理、文書構造処理、表の自動点訳などおもしろそうな論文がぞろぞろ(一通りざっと読んでみましたが、さすがにちょっと私にはハードルが高かった・・・)

 研究集会「科学情報の電子化・自動処理,およびそのアクセシビリティ― デジタル教科書のアクセシビリティ」が今年も2月に東京で開催されることになっていて、私も参加する予定なのですが、そこで鈴木昌和先生と山口雄仁先生のお話が聞けることが楽しみだったりします。

参考(昨年の上の研究集会の案内)

1月 11

DAISY Consortiumのアクセシビリティスクリーニング方法論のガイドラインとチェックリスト」(Accessibility Screening Methodology Guidelines and Checklist)日本語訳を公開します

 DAISY Consortiumが2013年5月20日に公開した「アクセシビリティスクリーニング方法論のガイドラインとチェックリスト」(Accessibility Screening Methodology Guidelines and Checklist)を日本語に翻訳してみましたので、公開します。

これは電子書籍ビューアが障害者(全盲者、ロービジョン、ろう者、難聴者、ディスレクシア、学習障害者、そして、移動に障害のある者))にとってどの程度使いやすいものかを評価するためのもので、評価のためのガイドライン及びチェックリストで構成されています。

 まだ、Rev 1.0版ですので、まだドラフトの段階のドキュメントのようです。正直、通して読んでいて全体の構成が分かりづらく、前半はもっと短くできるのではないかと思わせるところがありますが、チェックリストを掲載する「機能テスト」の項は、電子書籍ビューワにどのような機能が求められるかが一覧されていて参考になるところが多いのではないかと思います。ここに上げられた要件に日本語特有の要件を加えれば、必要な要件は揃うのではないかと個人的には思います。

関連エントリ

12月 24

アクセシブルな出版物の制作 出版社のためのベストプラクティスガイドライン (Accessible Books Consortium)

世界知的所有権機関(WIPO)のマラケシュ条約で中心的な役割を果たすAccessible Books Consortium(ABC)は、”born accessible”な出版物の普及促進を目的とするInclusive Publishing、アクセシブルなコンテンツの共有・交換の促進を目的とするTIGAR Service、DAISYを利用できるICTスキルを持っていないプリントディスアビリティが発展途上国には多いため、そのICTスキル向上を目的とするCapacity Buildingの3つのプロジェクトを遂行しています。この3つのプロジェクトの中のInclusive Publishingの中で、「アクセシブルな出版物の制作 出版社のためのベストプラクティスガイドライン」(Accessible Publishing Best Practice Guidelines for Publishers)というものを公開しています。

これは、WIPOの出資によってEDItEURのSarah Hilderley氏が作成したもので、これまではEDItEURのウェブサイトで公開されていたのですが、2014年6月にABCが発足したタイミングでABCのウェブサイトに移ったみたいです。ちなみにこのガイドラインは日本障害者リハビリテーション協会が日本語に翻訳して公開しています。

 なお、Accessible Books Consortiumについては、一度このブログでも紹介したことがありますので、こちらをご参照ください。

12月 14

アクセシブルな電子書籍をテーマとしたIFLA LPD サテライト会議の発表資料とアブストラクトが公開されている

2014年8月に開催されたIFLA World Library and Information Congress 2014にあわせて開催された、IFLA LPD(Libraries Serving Persons with Print Disabilities Section)主催のサテライト会議のアブストラクトと発表資料が公開されています。サテライト会議のテーマは”eBooks for everyone! An opportunity for more inclusive libraries”ということで、アクセシブルな電子書籍、マラケシュ条約に関係する発表が多いようです。

12月 06

EPUB3がISO/IEC TS 30135としてTS(Technical Specification)なる?→なってた。

EPUB3にISO/IECの国際標準番号 DTS-30135 が付与され、ISO/IEC JTC1に提案されたという話が2013年2月にありましたが、”ISO/IEC TS 30135-枝番:2014″でTSの番号が付与されたEPUB3の仕様が11月5日に公開されています。TS(Technical Specification)になったのでしょうか?IDPFの公式サイトにもどこにもニュースが掲載されていないので、ちょっとよく分かりませんが・・。

“ISO/IEC TS 30135-枝番:2014 Information technology — Digital publishing — EPUB3”

※追記
stageが”60.60″(International Standard published)なので、すでにTS(Technical Specification)になっているそうです。(@momdo_ さんより)

 そして、JSAで買えます。無料で公開されている仕様でもISOの規格として購入しようとするとそれなりにかかります。

 Wikipediaにはすでに掲載されていたりして。

参考

9月 09

DAISYユーザーのためにEPUB 3リーディングシステムはまだか、という話

 先日、 「DAISYの種類とバージョン」というエントリでDAISYの各バージョンについて紹介しましたが、EPUB 3で、読み情報を格納できるようになったことは、日本語圏のDAISYユーザーにとって非常に大きいことだと改めて感じました。なるべく早いEPUB 3への移行が望まれるのですが、EPUB 3でDAISYユーザーが満足するリーディングシステムはまだないため、残念ながら現状では難しいと思われます。

 昨年、以下のようなエントリで、私案でDAISYユーザーが利用するためのEPUBのリーディングシステムの要件を整理したことがありますが、EPUBの閲覧環境はアクセシビリティ視点でこれを書いた当時とあまり状況は変わっていないような気もします。

とはいえ・・見落としているリーディングシステムが結構あるような気もしますので、ちょっと調べねばとも思っています。

 EPUBTestBISG EPUB 3 Support Grid: Current Resultsで、各リーディングシステムの実装状況が一覧できるようになっており、項目として”Accessibility”も評価項目が設けられています。現時点で”Accessibility”の評価が掲載されているリーディングシステムが2つしかないのは、残念ですね。

関連エントリ

9月 05

DAISYの種類とバージョン

DAISYは、Digital Accessible Information SYstemの略で、視覚障害者や発達障害者など読書に困難のある方々のための書籍コンテンツの国際規格です。日本では、「デジタル録音図書の国際標準規格」と紹介されることが多いですが、DAISYの種類としてテキストDAISY、音声DAISY、マルチメディアDAISYがあるように、「録音図書」より幅広いコンテンツを包含するフォーマットです。DAISYには、現在も使用されている、または使用されようとしている仕様のバージョンとして、DAISY 2.02、DAISY3、EPUB 3があります。これらのDAISYの種類とバージョンを整理してみました。

  1. DAISYの種類
  2. DAISYのバージョン

1. DAISYの種類

DAISYには、おおざっぱに言ってテキストDAISY、音声DAISY、マルチメディアDAISYの3つの種類のDAISYがあります。特徴を表にまとめると以下のような感じになります。

DAISYの種類
種類 目次のテキストデータ 本文フルテキスト 目次・本文等を読み上げた音声データ
テキストDAISY 有り 有り 無し
音声DAISY 有り 無し 有り
マルチメディアDAISY 有り 有り 有り

2.DAISYのバージョン」で紹介するように、DAISYには、DAISY2.02、DAISY3、EPUB3(DAISY4世代)の3つのバージョンがありますが、いずれのバージョンでもテキストDAISY、音声DAISY、マルチメディアDAISYを製作することが可能です。

テキストDAISY

目次と本文のテキストデータで構成されるDAISYです。音声DAISYやマルチメディアDAISYのように音声ファイルをもっていないため、音声DAISYやマルチメディアDAISYと比べると、ファイルサイズは非常に軽量です。ユーザーが用意する必要がありますが、機械音声(TTS)によって読み上げさせることが可能です。TTSが利用できない環境でも、本文テキストの文字の拡大縮小や配色の変更等が可能であるため、ロービジョンの方にとって有用です。

欧米言語には、日本語のように読みの問題等がないこと、そして、特に英語について言えることですが、優れた機械音声(TTS)が多く存在することから、このテキストDAISYがよく使われているそうです。日本語の場合は、それと逆の理由でテキストDAISYはまだあまり普及はしていません。しかし、商用で流通しているいわゆる「電子書籍」は、目次とテキストデータで構成されるテキストDAISYとも言えますので、日本でも「テキストDAISY」的なコンテンツは、電子書籍の普及で一気に増えると思われます。EPUB3では、ruby要素を使用できるようになったほか、インラインSSML、PLS(Pronunciation Lexicon Specification)などTTSをサポートする機能が大幅に強化されましたので、日本語でテキストDAISYを利用できる環境が整いつつあります。

音声DAISY

「録音図書」という言葉から最もイメージしやすいのが音声DAISYでしょうか。目次等のナビゲーションに係る部分のテキストデータは保持しますが、本文部分は本文を音訳した(視覚情報である本文を音声化した)音声データのみになります。音声ファイルを保持しているので、ファイルサイズは大きくなります。「DAISY」という名称が、もともと”Digital Audio-based Information SYstem”であったように、当初は録音図書テープではできなかった録音図書のランダムアクセスを可能とするデジタル録音図書の規格として策定されたものでした。音声DAISYがもっとも歴史のあるタイプのDAISYになるかと思います。現在も日本では、音声DAISYが最も多く製作されています。

EPUB3で製作した「音声DAISY」(DAISY2.02からの変換。音声の再生は0:40あたりから)

マルチメディアDAISY

テキストDAISYと音声DAISYの特徴をあわせもったDAISYで、本文のテキストデータと読み上げ音声の両方をもち、音声を再生する際には以下のように本文テキストの該当箇所をハイライト表示させる機能を持っています。音声ファイルを保持しているので、ファイルサイズは大きくなります。マルチメディアDAISYは全盲の視覚障害者だけではなく、ロービジョン、発達障害、知的障害など通常の紙の書籍では読書するのに困難のある様々な方にも有用であるため、今後普及が期待されているDAISYです。


マルチメディアDAISY図書の「ごん狐」

2. DAISYのバージョン

DAISYにはDAISY2.02、DAISY3、DAISY4世代のEPUB3の3つのバージョンがあります。
DAISYのバージョンの図。DAISY2.02からDAISY3、続いて、DAISY4世代へ。DAISY4世代は交換フォーマットと配布フォーマットに分かれ。交換フォーマットはDAISY AI(ANSI/NISO Z39.98-2012)、配布フォーマットがEPUB

DAISY2.02

Recommendation, February 28 2001(DAISY Consortium)
URL: http://www.daisy.org/z3986/specifications/daisy_202.html非公式日本語訳
ファイル: SMIL1.0 + XHTML1.0 + CSS2.1 + 音声ファイル(MP3、PCMなど)など
目次ファイル:Navigation Control Center (NCC) document(ファイル名は”ncc.html”または”NCC.HTML”)
メタデータを格納しているファイル:Navigation Control Center (NCC)ドキュメント(ファイル名は”ncc.html”または”NCC.HTML”)

日本では、もっとも普及しているDAISYのバージョンがDAISY2.02です。
以下、DAISY2.02に関する仕様の概要です。

  • 必須ファイルは、1つのNavigation Control Center (NCC) document(ファイル名は”ncc.html”または”NCC.HTML”)と1つ以上のSMILファイル。
  • Navigation Control Center (NCC)ドキュメントとテキストコンテンツドキュメントファイル(本文部分のテキスト)はXHTML1.0に準拠したドキュメント。
  • SMILドキュメントはSMIL1.0に準拠したドキュメント。
  • CSS2.1仕様に付録として記載されているAudio CSS(ACSS)も使用可。
  • ルビ表示を含め、漢字などの読み情報を格納する機能はサポートされていない。
  • CDなどの媒体にいれて配布する想定だったためか、EPUBのようなZIPアーカイブ化して単一ファイルとしてカプセル化するコンテナフォーマットは特に規定されていない。
参考 DAISY 2.0

URL: http://www.daisy.org/daisy20.html日本語訳
ファイル:SMIL1.0 + HTML4.0 + CSS + 音声ファイル(MP3、PCMなど)など

DAISY2.02の前のバージョンとして、DAISY2.0があります。ファイルの構成はDAISY2.02とほぼ同じですが、テキストベースのコンテンツファイルのhtmlファイルが、DAISY2.0はHTML4.0となっています(DAISY2.02では、XHTML1.0)。現在、DAISYが2.0の仕様に基づいて製作されることはさすがにないと思われますが、過去に製作されたDAISYの中にはDAISY2.0のものが結構あるようです。AMISなど、DAISY2.02に対応しても、DAISY2.0には対応してないという再生ソフトがちらほらとあるようなので、再生環境の観点からそのままでの利用には課題があるようです。

ANSI/NISO Z39.86-2005 (DAISY3)

Approved April 21, 2005 by the American National Standards Institute
Reaffirmation approved April, 2012 by the American National Standards Institute
ANSI/NISO Z39.86-2005
URL: http://www.daisy.org/z3986/2005/Z3986-2005.html
ファイル: SMIL2.0 + XML1.0(DTBook XML) + CSS2.1+ 音声ファイル(MP3、PCMなど)+OPF+NCX など
目次ファイル:NCX(Navigation Control file for XML applications)ファイル
メタデータを格納しているファイル: Open eBook Forum Package File (OPF)

欧米圏では、このDAISY3が主に使用されているようです。DAISY 3という名称で知られていますが、米国の標準規格として認証されていますので、”ANSI/NISO Z39.86-2005″と呼ばれることも多いです。2012年に再確認(reaffirmed)されたので末尾に”R2012″がついて、”ANSI/NISO Z39.86-2005 (R2012)”と表記されることもあります。名称にあるとおり、”ANSI/NISO Z39.86-2005″は2005年に承認されたものですが、”ANSI/NISO Z39.86-2005″の前のバージョンの仕様として2002年に承認された”ANSI/NISO Z39.86-2002″もあります。”ANSI/NISO Z39.86-2002″もDAISY3です。

米国では、個別障害者教育法(IDEA 2004)により、出版者は教科書などの教材のデータをNIMAS(全国指導教材アクセシビリティー標準規格)というフォーマットで提出することが義務づけられています。そのNIMASにDAISY3のサブセットが採用されています。

なお、DAISY3の策定の経緯は、国立国会図書館が2003年に公開した図書館調査研究リポート『デジタル環境下における視覚障害者等図書館サービスの海外動向』の2章と3章の中でくわしく紹介されています。

DAISY3は、米国議会図書館の盲人・身体障害者全国図書館サービス(National Library Service for the Blind and Physically Handicapped:NLS)が米国情報標準化機構(National Information Standards Organization:NISO)を通じて開始したデジタル録音図書の標準化の検討にDAISYコンソーシアムが参加するという経緯で策定されたそうで、DAISYコンソーシアム内で策定されたDAISY2とは、策定の経緯が大きく異なるようです。

以下、DAISY3仕様の概要です。

  • パッケージファイルであるOPFファイルはOpen eBook Publication Structure 1.2仕様に準拠。
  • 目次ファイル:NCX(Navigation Control file for XML applications)ファイルはEPUB2でも採用されている。
  • DAISY XML(またはDTBook XML):DTBook XML要素セットを使用して記述されたXML1.0のテキストベースのコンテンツファイル。
  • DTBook XML要素セットを使用したコンテンツファイル(DAISY XML)はEPUB2でも使用可。
  • CSS2.1仕様に付録として記載されているAudio CSS(ACSS)も使用可。
  • ルビ表示を含め、漢字などの読み情報を格納する機能はサポートされていない(日本では、独自の実装でルビ表示を実現しているところがあるようですが、仕様上はサポートされていない)。
  • CDなどの媒体にいれて配布する想定だったためか、EPUBのようなZIPアーカイブ化して単一ファイルとしてカプセル化するコンテナフォーマットは特に規定されていない。

DAISY4世代(DAISY AIとEPUB3)

DAISY4世代は、製作者側がもつ交換フォーマットと、ユーザーが使用する配布フォーマットに分かれています。交換フォーマットがDAISY AI(Authoring and Interchange)で米国の標準規格として認証もされましたので”ANSI/NISO Z39.98-2012″と呼ばれます。配布フォーマットはEPUB 3です。

メタデータ、音声、本文データ、SMILなどを持った交換フォーマットDAISY AI(ANSI/NISO Z39.98-2012)から配布フォーマットであるEPUBと点字データ、拡大図書などに変換される図です

DAISY AI(ANSI/NISO Z39.98-2012)

Approved July 9, 2012 by the American National Standards Institute
URL:http://www.daisy.org/z3998/2012/z3998-2012.html
ANSI/NISO Z39.98-2012

策定の経緯を含めて詳細は以下にまとめてあります。

DAISY AI(ANSI/NISO Z39.98-2012)に準拠したファイルを少なくとも私はほとんど見たことがありません。DAISYコンソーシアムもEPUB 3 移行プロジェクトでEPUB3への移行は力入れているようですが、DAISY AIはあまり力を入れているように見えませんし、使用されている例があるのかもよくわかりません。NIMAS(全国指導教材アクセシビリティー標準規格)がDAISY3からこちらに移行すると一気に使用されるようになるかもしれません。

EPUB 3

Recommended Specification 26 June 2014 by International Digital Publishing Forum ※
URL:http://idpf.org/epub/301
※EPUB 3.0は2011年10月11日勧告
ファイル:HTML5(XHTML5)+CSS2.1(と一部のCSS3)+SMIL3.0+音声や動画ファイル+OPF など
目次ファイル:EPUB Navigation Document(ファイル名は”nav.xhtml”とされていることが多い)
メタデータを格納しているファイル: パッケージドキュメントファイルのOPFファイル

EPUB3の特徴は主に以下の通りです。TTSサポートのところで触れているが、ruby要素、インラインSSML、PLSによっての読みの情報を格納できるようになりました。日本語コンテンツとしては非常に大きなことですね。

  • パッケージファイルであるOPFファイルはEPUB Publications 3.0.1に準拠。
  • 動画・音声ファイルのサポート。
  • SMIL3.0のサブセットが仕様に組み込まれ、テキストと同期した形で音声を再生することが可能になった(EPUB Media Overlays)。DAISYとしては、当たり前の機能ですが、EPUBとしては大きな機能の追加です(動画とテキストの同期は不可)。
  • MathMLのサポート。
  • JavaScriptのサポート。
  • Text-to-speechのサポート機能強化(ruby要素、CSS3 Speech Module、インラインSSML、PLS(Pronunciation Lexicon Specification)をサポート)。
  • 国際化対応(縦書きなどの日本語組版対応など)。
  • (EPUBとしては、当然のことであるが、)ZIPアーカイブ化して単一ファイルとしてカプセル化するコンテナフォーマットの仕様が「DAISY」としてはようやく盛り込まれた。

ちなみにEPUBで作れば、全てがDAISYユーザーが満足するアクセシブルなコンテンツになるかというとそうではありません。作り手がアクセシビリティを意識して製作する必要があります。DAISYコンソーシアムは、DAISYユーザーが満足するようなアクセシブルなEPUBを”Accessible EPUB“と呼び、一応、他のEPUBと区別しているようです。

8月 20

訳しました→DAISYコンソーシアムの音声DAISY的EPUBの作成ガイドライン

 前のエントリで紹介したDAISYコンソーシアムの音声DAISY的EPUBの作成ガイドラインを訳しましたので、公開します。

参考