9月 27

DAISY再生機PLEXTALK Pocket、ファームウェアのアップデートでEPUB2に対応

DAISY再生機であるシナノケンシのPLEXTALK Pocketのファームウェアがver.6.00にアップデートし、EPUB2に対応しました。現時点ではver.6.00へのファームウェアのアップデートは残念ながら英語版のみのようです。日本語版のアップデートはいつでしょうか。


PLEXTALK Pocket(PTP1)

 EPUB2リーダーでも読めるように配慮されたEPUB3コンテンツであれば、今回のファームウェアアップデートで読むことができるはずですので、日本語版のファームウェアも期待したいところです。PLEXTALK Pocketのように読み上げる機器の場合、レイアイトは問題になりませんし、普通に作られるEPUBの場合、EPUB2とEPUB3の違いは大きくないかもしれません(TTSに配慮されたEPUBであればともかく)。

もっとも今回は、英語版ファームウェアのみのアップデートという事情を想像してみますと、英語圏は日本語圏ほどEPUB3でなければならないという事情はあまりなく、対応もEPUB3に比べ簡単?なEPUB2でEPUBに対応させたという気がしないではありません。日本語版ファームウェアの場合は、EPUBに対応するとしてもEPUB3で対応しようとするかもしれません(あくまで想像ですが)。

9月 26

シナノケンシが総務省の補助を受けてDAISY/EPUBの製作ソフトウェアと再生ソフトウェアを開発中とのこと

 視覚障害者向けのDAISY録音図書再生機プレクストークなどを開発・生産しているシナノケンシが総務省の補助を受けてDAISY/EPUBの製作ソフトウェアと再生ソフトウェアを開発しているようです。

開発中のソフトウェアの概要

 それぞれ以下のようです。

マルチメディア DAISY/EPUB の製作ソフトウェア

  • OCR機能を搭載して、印刷物からのテキスト取得を簡便化するともに、そのテキストと肉声音声との同期を、音声認識を用いることで自動化し、製作を容易にする。
  • 出力形式は最新のDAISY規格であるEPUB3に適合させる。

 これは、印刷物にOCR処理をかけて抽出したテキストと音声認識によって音声データから抽出したテキストをマッチングさせることで、マルチメディアDAISYやEPUB3 with Media Overlaysを自動作成するということでしょうか。音声DAISYをマルチメディアDAISY化するためにも使えるかもしれませんね。
 

マルチメディア DAISY/EPUB の再生ソフトウェア

  • DAISY2.02 とEPUB3の再生に対応するAndroid タブレットにマルチメディア DAISY 再生ソフトウェア。

 
 このブログで何度か紹介していますが、現時点ではDAISYユーザーが満足するような機能を備えているEPUB 3再生ソフトウェアはほとんどありません(あってもVoice Dream Readerぐらいでしょうか)。

 DAISYユーザーがEPUB 3の恩恵を受けるためにはDAISY再生ソフトウェアのような、読み上げの細かな制御ができる機能などが必要ですが、シナノケンシが開発しているという再生ソフトウェアはDAISY2.02とEPUB 3の再生に対応しているということ。DAISY再生ソフトウェアとして求められる機能は備えていそうですし、それがEPUB3でも利用できるのではないかと。さらに日本語のTTSエンジンが搭載されていれば、理想的なビューワーになることが期待できそうです。

平成25年度末の商品化を目指すとのこと

 「平成25年度は、今年度の実証実験で寄せられた要望事項を反映して、機能改善 を図るとともに、配信部分を開発し、作って(製作)、配って(配信)、利用 (再生)を実現して、実証実験を重ねて有効性を確認し、平成 25 年度末の商品 化を目指す」とのこと。楽しみです。

※201403/02追記 014年3月2日のみんなのデジタル教科書教育研究会発表資料

2014年3月2日に行われたみんなのデジタル教科書教育研究会 Open Meeting 09 Saitamaにおいて、シナノケンシの方が上のアプリケーションを紹介しています。

参考 総務省のデジタル・ディバイド解消に向けた技術等研究開発

 なお、総務省の補助は「デジタル・ディバイド解消に向けた技術等研究開発(情報通信利用促進支援事業費補助金)」によるもので、高齢者・障害者の利便の増進に資する通信・放送サービスの研究開発を行う民間企業等に対して、その研究開発資金の一部を補助する事業です。

9月 25

障害と開発に関する国連総会ハイレベル会合で成果文書として配布された手話動画とテキストハイライトを同期させたHTML5文書

 9月23日にニューヨークの国連本部で、障害と開発に関する国連総会ハイレベル会合が開催されました。

 この会合の成果文書が、HTML5 with video、マルチメディアDASIY、EPUB3など様々なアクセブルな形式で公開されています。

 

 この中ですごいのはHTML5 with videoでしょうか。手話動画とテキストハイライトが同期されています。


Sign language with text (HTML5 with video)

 マルチメディアDAISYやMedia OverlaysなEPUBの動画版といったものですが、動画とテキストハイライトの同期はDAISYやEPUB3の仕様のではサポートされていません(EPUB3は動画を埋め込むこと自体は可能です)。

 なお、この国連総会の会合は、NHK WORLDでも報道されています。

9月 13

スーパーマリオ EPUB

 @commonstyle さんのツィートより。

https://twitter.com/commonstyle/status/378448635253387264
https://twitter.com/commonstyle/status/378452814004899841

EPUB3でスーパーマリオを作った方がいるようです。

 こういうのを紹介すると、ゲームをEPUB内にいれて何の意味があるのかという意見を聞くことがあるのですが、こういうのは、どんなものが作れるのかということをやってみせるということがなにより重要です。スーパーマリオはもってこいの素材ですね。

9月 04

EPUB版点字図書(点字記号フォント埋め込み版)をつくってみた

 @momdo_さんのブログの中で言及されている点字記号フォント同梱のEPUBがなかなか興味深かったので作ってみました。
 
 EPUB版点字図書の作成には、Project Gutenbergで提供されている以下の図書のテキストデータを使用しました。

 上のProject Gutenbergの図書のテキストデータを元に作成したのが以下のUnicode点字のEPUB版点字図書です。


図 iBooksで開くEPUB版点字図書

 TrueTypeとWOFF、OpenTypeの点字記号フォントを同梱しています。端末に点字フォントがない場合でも、WOFFとTrueType、OpenTypeのWebフォントにEPUBビューワーが対応していれば表示できるはずです(埋め込んだフォントの関係で、空白スペース部分は以下のように□が表示されます。ご了承ください)。
※なお、点字プリンタ、点字ディスプレイを利用する場合、出力先の機器がユニコードに対応していればよいだけですので、ここで行っているような点字フォントの埋め込みは本質的には必要ありません。

38

 点字コンテンツの作成中に晴眼者がコンテンツを確認する以外にフラットなスマートフォンやタブレット端末で点字記号を表示させることに、あまり意味はないかもしれません。しかし、点字プリンタや点字ディスプレイにつなげることができれば話は別です。少なくともiOS端末は点字ディスプレイに対応しているようです。ここで作成したEPUB版点字図書を点字ディスプレイで閲覧するためには、さらに点字ディスプレイがUnicodeに対応している必要がありそうですが、ここで作成したEPUB版点字図書が使用できるかどうか気になるところです。

 なお、このEPUB版点字図書を作成するために変換に変換を重ねた上に(後述の「参考 作成のプロセス」を参照)、私自身、点字を読むことができないため、最終的にできあがったEPUB版点字図書には見出しがない、目次がない、パラグラフが適切でない、そもそも点訳がおかしいなどなどいろいろと問題があろうかと思います。今回はあくまで実験的にEPUB版点字図書を作ることに主眼をおいていますので、点訳の不備等についてはご了承ください。

 以下、蛇足ですが、変換するまでのプロセスです。

参考 作成のプロセス

 適度の量のUnicode点字のテキストファイルがなかなか見つからないため、以下の手順でProject Gutenbergで公開されている図書のテキストデータからEPUB版点字図書に変換しました。

  1. 元となる図書のテキストデータを用意
  2. テキストファイルをBRF形式の点字ファイル(Braille ASCII点字)に変換
  3. BRF形式の点字ファイルをPEF形式の点字ファイル(Unicode点字)に変換
  4. PEF形式の点字ファイルをEPUBに変換しやすいテキスト形式のUnicode点字ファイルに整形
  5. Unicode点字のテキストファイルをEPUB形式に変換
  6. EPUBに同梱する点字フォントを用意
  7. EPUB形式の中のメタデータを修正
  8. EPUBファイルを再作成
  9. 作成したEPUBファイルをバリデート
  10. デキタ! ヽ(`・ω・´)ノ

1.元となる図書のテキストデータを用意

  Project Gutenbergで提供されている以下の図書のテキストデータを使用します。

 私は点字を読むことができないため、この段階で意味のある単位である程度ファイルを分割・修正しておきます。
分割・修正後のファイル一式: pg35597_src.zip

2.テキストファイルをBRF形式の点字ファイル(Braille ASCII点字)に変換

 テキストファイルをBRF形式のBraille ASCII点字に変換してくれるWebサービスで1で用意したテキストファイルを点字ファイルに変換します。

変換後ファイル一式: pg35597_brf.zip
※上はBraille ASCII点字であり、1文字1点字の逐字点訳ですので、通常のテキストエディタで開くと、それなりに理解できるセンテンスや単語が表示されます。

3.BRF形式の点字ファイルをPEF形式の点字ファイル(Unicode点字)に変換

 BRFファイルからPEFファイルへの変換します。変換にはDAISY Piplelineを使用しました。このブログでよく紹介しているDAISY Pipleline 2のほうではなく、DAISY Pipleline 1のほうです。

47
図 DAISY Pipleline 1でBRF形式の点字ファイルをPEF形式の点字ファイルに変換

変換後ファイル一式: pg35597_pef.zip
※上はUnicode点字です。テキストエディタで開くと昨今の最新のOSであれば、点字記号の並んたテキストが表示されるはずです。

4. PEF形式の点字ファイルをEPUBに変換しやすいテキスト形式のUnicode点字ファイルに整形

 PEF形式の点字ファイルをEPUBに変換するコンバータは残念ながら、見つかりませんでした。次で変換に使用する「でんでんコンバーター」で変換できるようにテキストファイルに変更し、でんでんマークダウンの記述に変更します(ここは手作業)。

整形後ファイル一式: pg35597_txt.zip

5.Unicode点字のテキストファイルをEPUB形式に変換

 でんでんコンバーターで4までで作成したテキスト形式のUnicode点字ファイルをEPUBに変換します。
 

電書ちゃんのでんでんコンバーター – でんでんコンバーター

変換後: a_treatise_on_the_brewing_of_beer_e_hughes.epub

6.EPUBに同梱する点字フォントを用意

5で作業を終えてもよいのですが、点字フォントを搭載していない端末もまだ多いため、点字記号フォントをEPUBに同梱します。今回使用したの@momdo_さんに教えていただいたライセンスフリーの以下のフォントです。

 ただし、上で提供されているものは、TrueTypeフォントですので、EPUB 3の仕様でフォントのコアメディアタイプに指定されているWOFFフォントとOpenTypeフォントも用意したいところ。

 今回は以下を使用してTrueTypeからWOFFフォントとOpenTypeフォントに変換しました。

 5で作成したEPUBファイルの中を開いて以下の記述をそれぞれ追加します。

@font-face {
	font-family: Braille6;
	src: url(font/braille6.otf) format('opentype'), url(font/braille6.ttf) format('truetype'),url(font/braille6.woff) format('woff');
}
body {
  text-align: justify;
  text-justify: inter-ideograph;
	font-family: "Apple Braille", Georgia, "Segoe UI Symbol", Braille6, monospace;
  vertical-align: baseline;
  word-wrap: break-word;
}

OEBES/style.css

<manifest>
・・・
<item media-type="application/font-woff" href="font/braille6.woff" id="_braille6.woff" />
<item media-type="application/x-font-ttf " href="font/braille6.ttf" id="_braille6.ttf" />
<item media-type="application/x-font-opentype " href="font/braille6.otf" id="_braille6.otf" />
</manifest>
</metadata>

OEBES/content.opf

追記 埋め込みに使用した点字フォントについて

埋め込んだ点字フォントが表示される場合は、以下のようにスペースに当たる部分が□で表示されます。
38

 これは埋め込み使用した点字フォントにUnicodeにおけるU+2800に割り当てるべきフォント(点字における全く点のないフォント、つまり、点字における空白スペース)が用意されていないために生じている問題です。この問題を改善するためには埋め込むフォントそのものに手を入れる必要がありますが、フォントの改修はこのエントリの目的を超えるものになりますので、このままとさせていただきます。ご了承ください。

参考

 点字フォントの埋め込みについては、@momdo_ さんが以下のブログでまとめていただいていますので、こちらもご参照ください。

7.EPUB形式の中のメタデータを修正

 現時点ではメタデータの拡張どころか、詳細なメタデータ情報を表示するリーディングシステムがあまり多くないため、メタデータの記述で頑張ってもそれをあまり生かせませんが、せっかくの点字図書なので、メタデータのタイトルと著者には、墨字と点字の両方を記述したいところです。というわけで、dcterms:alternativeとdcndl:creatorAlternativeを使用して点字版のタイトルと著者をそれぞれ記述しました。点字記号のタイトルや点字記号の著者の方をdc:titleやdc:creatorにするべきかもしれませんが、スクリーンリーダーなどで読み上げることを考慮して墨字タイトル・著者をdc:titleやdc:creatorにあてました。

<package xmlns="http://www.idpf.org/2007/opf" unique-identifier="identifier0" version="3.0" prefix="dcndl: http://ndl.go.jp/dcndl/terms/ ibooks: http://vocabulary.itunes.apple.com/rdf/ibooks/vocabulary-extensions-1.0/">
<metadata xmlns:dc="http://purl.org/dc/elements/1.1/">
<dc:identifier id="identifier0">urn:uuid:9a2b5539-34b4-469e-824b-5371cac917fa</dc:identifier>
<meta refines="#identifier0" property="identifier-type" scheme="xsd:string">uuid</meta>
<dc:title id="title0">A Treatise on the Brewing of Beer[braille]</dc:title>
<meta property="dcterms:alternative">⠂⠁⠀⠂⠂⠞⠗⠑⠁⠞⠊⠎⠑⠀⠂⠂⠕⠝⠀⠂⠂⠞⠓⠑ ⠂⠃⠗⠑⠺⠊⠝⠛⠀⠂⠂⠕⠋⠀⠂⠂⠃⠑⠑⠗⠡</meta>
<dc:creator id="creator0">E. Hughes</dc:creator>
<meta property="dcndl:creatorAlternative">⠀⠂⠑⠹⠀⠂⠂⠓⠥⠛⠓⠑⠎⠹</meta>
<dc:format>application/epub+zip</dc:format>
<dc:language>en-US</dc:language>
<meta property="ibooks:specified-fonts">false</meta>
<meta property="dcterms:modified">2013-09-03T16:30:43Z</meta>
</metadata>

OEBES/content.opf
※dcterms:alternativeとdcndl:creatorAlternative部分の点字記号がうまく表示できない場合はこちら

8.EPUBファイルを再作成

 以上の修正を終え、zipコマンドで再度、EPUBを再作成します。

cd pg35597
zip -0 -X ../pg35597.epub mimetype
zip -r ../pg35597.epub * -x mimetype


図 EPUBへ変換する前のソースファイル

9.作成したEPUBファイルをバリデート

 8で作成したEPUBを念のため、バリデータで確認します。ここで結構ひっかかりました・・。

10.デキタ! ヽ(`・ω・´)ノ

 バリデータが祝ってくれたら完成です ヽ(`・ω・´)ノ
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図 問題なしということで、祝ってくれるEPUB Validatorの図

完成版(再掲): pg35597.epub

関連エントリ

8月 14

EPUB 3からDAISYへの変換機能も必要じゃないの?というDAISY Pipelineのメーリングリスト上でのやりとり

 DAISYコンソーシアムが公開しているオープンソースのコンバーターDAISY Pipeline 2(開発中)は以下のようなDAISYの各バージョンからEPUB 3に変換する機能を持っています。

  • DAISY2.02 → EPUB3
  • DTBook(DAISY3のXMLドキュメント) → EPUB3
  • DAISY3 → EPUB3
  • DAISY -AI(DAISY4) XML → EPUB3
  • ※その他、HTMLファイル、点字ファイルへの変換も可能です。

 しかし、逆方向のEPUB 3からDAISYに変換する機能がありません(そして、現在公開されているロードマップにも開発の予定はありません)。

 EPUB3で作成されるコンテンツは日々増えているものの、現時点では、以下のエントリで紹介したようにDAISY再生ソフトウェア/機器のEPUB 3対応は不十分であり、EPUB 3ビューワーもDAISYユーザーが満足するほどアクセシブルではないという状況で、DAISYユーザーは増えていくEPUB 3コンテンツの恩恵を十分にうけることができません。

 
 EPUB 3をDAISY2.02やDAISY 3に変換し、DAISYユーザーが使い慣れている機器/アプリケーションで利用できるようにすることは、取り得る有効な選択肢の1つだと思われますが、同じように考える人がDAISY Pipeline開発陣の中にもいたようで、2013年1月にDAISY Pipelineの開発用メーリングリストでEPUB3_to_DAISYのコンバーターの開発の提案とそれに関する議論がされていました。

 個人的に関心があるところですので、少し詳しく紹介します。

メーリングリスト上のやりとり

 主に以下のお二人のやりとりです。お二人ともDAISY Pipleline 2開発に関わっている方のようです(Deltour氏は開発の中心メンバー?)。

 長いので先に結論を申し上げておきますと、一応EPUB 3からDAISYへの変換機能の開発をする方向ですすめていく・・・・ような感じではありますが、結論は出ていません。 

Jacobsen氏とDeltour氏のやりとり

Jacobsen氏の提案

 Jacobsen氏よりEPUB3から以下のようにDAISYに変換できる機能が必要じゃないかという提案です。

  • EPUB3 → DAISY2.02
  • EPUB3 → DTBook(もしくはDAISY3)
  • EPUB3 → ZedAI (いわゆるDAISY4)

https://groups.google.com/d/msg/daisy-pipeline-dev/yJIJqV7d1vQ/VYLT5qeHbMkJ
 

Deltour氏の回答

 Deltour氏はこのJacobsen氏の提案を妥当な提案であると認めつつ、

  • DTBookへ変換について: 文法的に寛容なHTML(そして、それを用いるEPUB 3)から文法的に厳格なDTBookへ変換は確実性を担保できないから難しい
  • しかし、EPUB3からDAISY 2.02への変換はDTBookと比べるとまだ容易かもしれない。

 ということで、EPUB 3からDTBook(及びDAISY3)への変換機能の開発には否定的なものの、DAISY 2.02への変換については比較的前向きな回答をしています。ただし、すでにDAISY Pipeline 2 プロジェクト計画書に掲載されたもっと優先順位が高いものに開発資源を割かねばならないため、DAISY 2.02への変換機能の開発にすぐにはリソースを割くことができない、との留保つきです。 

https://groups.google.com/d/msg/daisy-pipeline-dev/yJIJqV7d1vQ/QA6V20s6lwkJ

 

Jacobsen氏のNLBの状況説明

 Jacobsen氏、リソースをすぐに割けないことに同意しつつ、今回の提案の背景となったにNLBの状況説明(ちょっと蛇足になりますが、かなり興味深いので詳しく紹介します)。

  • NLBは紙の書籍を裁断し、OCRをかけた上でDTBookを制作している。DTBook制作は他の北欧諸国の機関と共同でインドのパートナー企業に外注している。
  • インドのパートナー企業との契約が2013年できれるので、そろそろ2014年以降の調達の計画とマークアップガイドラインの作成を始めなければならない。
  • 次の契約では、DTBookではなく、DAISY-AI(ZedAI/DAISY4)かEPUB 3を考えている。
  • 点字ファイルの作成について。現在は、DTBookからNorBrailleというツールを用いてPEF形式の点字ファイルに変換している(詳細: Braille production workflow at NLB)。
  • PEF形式への変換を、DTBookかDAISY-AI(ZedAI/DAISY4)をインプットファイルとするDAISY Pipelineを用いたフローに変更することを内部で検討している。
  • 音声DAISYの作成について。現在はDolphin Publisherを使用して、DAISY 2.02版のDAISYを作成している。Dolphin PublisherからHindenburg Audio Book Creatorに変更することを計画中。これならEPUB 3図書が作成できる。
  • もしEPUB 3形式のオーディオブックからDASIY2.02への変換が可能ならEPUB 3がオーディオブックのマスターフォーマットになるとJacobsen氏自身は考えている。
  • 教科書について。 XHTML 1.0形式の教科書データと、そして、おそらくDAISY3形式の教科書データを学生に配布している。しかし、代わりにEPUB 3形式の教科書データを配布すればよいので、EPUB 3からHTML形式やDAISY 3形式に変換することは私たちにはあまり必要ない。
  • 出版社からEPUB 3ファイルを受け入れるようになれば、そのEPUB3をインプットファイルとしてマルチメディアDAISYや点字ファイルが作成できるのだが・・・。

https://groups.google.com/d/msg/daisy-pipeline-dev/yJIJqV7d1vQ/bhz0flgqVvMJ

Deltour氏の回答
  • 技術的にJacobsen氏の要件は実現可能であるが、HTML(EPUB 3)からDTBookへの変換はやりにくいし、最優先の要件ではない。外注して作成するEPUB 3のHTMLファイルのマークアップをきっちり管理できるならやりやすくなるだろう。
  • EPUB3形式のオーディオブックからDAISY2.02形式のオーディオブックへの変換は未知の領域(しかし、Hindenburg Audio Book Creatorを使う方法は興味をそそられる)。
  • DAISY Pipelineの現行のプロジェクト計画書は2013年10月まで。その間はこの計画書に掲載されていることを優先してやらねばならないので、どうしてもこれらの要件を盛り込みたいのであれば、DAISYコンソーシアムの上を説得するか、理事会にうんと言わせて、この計画書を変更させなければならない。以下の3つの選択肢がある。
    1. 理事会の同意を得て、優先順位を上げてもらい現行のプロジェクト計画書期間内に行う
    2. 2013年10月以降のプロジェクト計画書に盛り込む
    3. 急ぐならDAISY Pipelineの開発メンバーを頼らずに自分たちでやる

https://groups.google.com/d/msg/daisy-pipeline-dev/yJIJqV7d1vQ/IVf-Glf0ifIJ

Jacobsen氏の回答

(意訳)
 自分でコーディングしてみたいなぁ・・・。とにかく他の機関で同じような要望がどれくらいあるかを聞いて、それから決めましょう。

https://groups.google.com/d/msg/daisy-pipeline-dev/yJIJqV7d1vQ/at-PhUU1QrUJ

その後 ※追記

 5月にDeltour氏がDAISY Pipelineの次の開発フェーズ(2014年1月から2015年12月)のOverview案を公開しました。

 この案では、DAISY Pipeline 1の機能を統合し、DAISY 2.02とDAISY 3を作成する機能を開発することが提案されていますが、EPUB 3から DAISYに変換する機能には触れられていません。

 当然、Jacobsen氏から「入ってねーじゃねか!」というツッコミがありました。さらに次のコペンハーゲンの会合で他の北欧諸国からもEPUB 3からDTBookへの変換機能の要望がでるかもよと(以上、意訳)。

 Deltour氏もDAISY2.02、DASIY3、DTBookからEPUB3、DAISY -AI(DAISY4)への移行が短期間で進むとは考えておらず、故にDAISY 2.02とDAISY 3を作成する機能の開発も次もフェースでと候補に挙げたとのことです。次のフェースの計画の詳細についてに話し合うときに、EPUB 3からDAISYへの変換機能も検討の候補に含めようと回答しています。

 ということで、2014年から始まる次のフェースでにEPUB 3からDAISYへの変換機能の開発が行われるかもしれません。

関連エントリ

EPUB 3とDAISY 4の関係
DAISYからEPUB 3に変換する
DAISY再生ソフト・機器のEPUB対応
8月 13

アクセシブルなフォーマットにコンバートするスタンフォード大学のSCRIBE Project

 スタンフォード大学アクセシブル教育オフィス(Accessible Education. Office)がWordファイル、テキストファイル、htmlファイルなどから各種電子書籍フォーマット、DAISY、点字フォーマットに変換するコンバートサービスを公開しています。

 Inputファイル形式とOutputファイル形式は以下の通りです。
07
from Conversion Options

 EPUBからDAISYに変換することはさほど難しいとは思えないので、EPUBからDAISYへの変換は対応してほしいところです※。

※2013/08/15 追記
思ってたほど簡単ではないようでした。

  音声(MP3)への変換を選択するとテキストをTTSで読み上げたものをMP3でダウンロードできるようです。
eeeedfr06
 音声ファイル(MP3)への変換画面

 変換できる点字フォーマットも非常に多く、PEF(Portable Embosser Format)の他に様々な点字フォーマットの変換に対応しているようです(知らないものばかり・・・)。
eeeee18
 点字ファイルへの変換画面

7月 16

Accessible EPUB Reading System – DAISYユーザーのためにEPUB 3リーディングシステムが求められること

 DAISYユーザーがDAISY的にEPUBを利用するためにはコンテンツであるEPUBファイルがアクセシブルである必要がありますが、そのアクセシビリティ機能を受け止めるビューワーも必要です。これまでのエントリで、DAISYリーダーのEPUB対応やDAISYから生成したEPUBを確認してきました。確認していく中でDAISYユーザーのためにEPUB 3リーディングシステムの要件がある程度まとまってきましたので、以下にまとめてみました。と言いましても、私のDAISY利用に対する理解が浅いため、知る人が読めば正直いろいろと過不足あろうかと思います(おそらくEPUBも・・・)。お気づきの点はご指摘いただけると幸いです。

 なお、インプットとして、W3CのUser Agent Accessibility Guidelines (UAAG) 2.0を参考にしました。まずはきちんと要件が整理されたW3CのUAAGを参照いただいた上で、以下をご覧いただければと思います。

 

1.テキストと色の設定

1.1. テキストの設定を変更できる

 フォント、フォントのサイズ、行間などを設定できる。

1.2. 色の設定を変更ができる

 テキストの色や背景色など色とコントラストを設定することできる。

 

2. 操作可能であること

2.1. 全ての機能をキーボードで操作できる

 リーディングシステムが持つ全ての機能をキーボードで操作できる。

2.2 文書の構造を活用した様々なレベルのフォーカスの移動ができる

 センテンス、パラグラフ、セクション、節、章などコンテンツ文書の構造を活用した様々なレベルのフォーカスの移動ができる。また、図、テーブル、註などユーザーにとって不要な箇所はフォーカスをスキップできる。音声合成によるテキスト読み上げ(TTS)、収録済み音声による読み上げ(Media Overlaysなど)の再生のフォーカスについても同様である。

 

3. ナビゲーション

3.1. 目次

 epub:type=”toc”で提供される目次だけではなく、Page Listランドマークなど様々なナビゲーションに対応している。

3.2. メタデータ

 メタデータはユーザーがコンテンツを開かなくても内容を識別する重要なナビゲーションである。タイトルだけではなく、著者、出版社、出版年などEPUBが持つメタデータをユーザーにコンテンツの選択するための情報としてユーザーは利用できる。また、拡張したメタデータの語彙にも対応している。

3.3. コンテンツ文書の構造を理解できる

 見出し、セクション、テープルなどコンテンツ文書の構造を理解し、ユーザーに伝えることができる。また、埋め込まれたセマンティクス(epub:type属性)も理解し、ユーザーに伝えることができる。

3.4. テキスト検索

 目次、本文などのテキストを全文検索できる。
 
 

4. 音声合成によるテキスト読み上げ(TTS:Text-To-Speech)

 音声合成によるテキスト読み上げ(TTS:Text-To-Speech)ができる。日本語ユーザーを対象とする場合は、日本語TTSエンジンと英語TTSエンジンを搭載している。

4.1. 非テキストコンテンツの代替テキストへのアクセス

非テキストコンテンツに提供される代替テキストにアクセスし読み上げることができる。

4.2. 読み情報へのアクセス

 PLSSSML、ruby要素にアクセスし、読み情報を取得できる。

4.3 読み上げ箇所を明示できる

 ハイライト表示などの方法で読み上げられている箇所を明示できる。

4.4. 言語情報の取得

 コンテンツ文書に埋め込まれた言語情報を取得して、適切な言語で読み上げることができる。

4.5. CSS 3 Speech

  CSS 3 Speechに対応している。

4.4. 読み上げの制御

  ボリューム、速度、間、ピッチ、ピッチレンジなど読み上げ音声を細かく制御することができる。

 

5. Media Overlays

 収録済みの音声の再生とテキストを同期させるMedia Overlaysに対応している。

5.1. 読み上げ箇所を明示できる

 ハイライト表示などの方法で読み上げられている箇所を明示できる。

5.2. 読み上げの制御

  ボリューム、速度、間、ピッチ、ピッチレンジなど収録済みの読み上げ音声の再生を細かく制御することができる。
 
 

参考

関連エントリ

EPUB 3とDAISY 4の関係
DAISYからEPUB 3に変換する
DAISY再生ソフト・機器のEPUB対応
7月 04

"Accessible Publishing : Best Practice Guidelines for Publishers" ver.4.0

 EDItEURより”Accessible Publishing Best Practice Guidelines for Publishers”のver.4.0が2013年6月4日に公開されています。このガイドラインは World Intellectual Property Organization (WIPO)の出資によるEnabling Technologies Frameworkプロジェクトのジョイントプロジェクトとして作成されたものです。

  HTML版の他にEPUB版、Word版が公開されています。

 2011年4月に公開されたver.1.0版の日本語訳を日本障害者リハビリテーション協会情報センターが公開しています。

 ver.1.0からver4.0まではマイナーアップデートとのこと。Ver.1.0tと比較してver.4.0では、仕様が確定したEPUB 3に関する記述が増えているようです。

7月 01

必ずしも全てのEPUB 3が「DAISY」ではない

 支援技術開発機構の濱田麻邑さんがカレントアウェアネスに以下のような記事を投稿しています。EPUB 3とDAISY-AI(DAISY 4)の関係やEPUB 3のもつアクセシビリティ機能について簡潔に説明されていますので必読です。

 EPUBがアクセシビリィな機能を持つフォーマットであることに加え、DAISY-AI(DAISY 4)の配布フォーマットであることも知られるようになりました。しかし、一方で上の記事で濱田さんが以下のようなご指摘をされているように、EPUBで作ったからと言って必ずしもそのコンテンツがアクセシブルなわけではありません。
 

このように多様なアクセシビリティ機能がある一方で、EPUB3に準拠していてもアクセシブルでない電子出版物も製作できてしまうといった課題もある。

 

 EPUB 3というフォーマットは、DAISYが備えるアクセシブルな機能を包含していますので、EPUBでDAISY並のアクセシブルなコンテンツを作ることは可能です。しかし、可能であるというだけでして、EPUB 3で作れば、みんな「DAISY」だ、もしくはDAISY並にアクセシブルであるというわけではありません。「DAISYとEPUBの統合」という部分が強調されすぎて、EPUB 3で作りさえすれば、DAISYと同じアクセシビリティを備えたことになると思われる傾向があるように感じられ、ちょっと心配もしています。

 ウェブサイトがW3CのHTMLの仕様に準拠して作成されたからといって必ずもアクセシブルではないように、EPUBがアクセシブルであるかどうは、作り手がアクセシビリティにどの程度配慮するかに左右されます。EPUBはすでに数多く作成されていますが、アクセシビリティの観点からみればおそらく玉石混合といった状態ではないでしょうか。

epub

 

 EPUBはあくまでアクセシブルなコンテンツをいれることができる器です。しかし、その器に入れるコンテンツをアクセシブルにするのは実際にコンテンツを作る人です。

 EPUBをよりアクセシブルにするためのガイドラインがIDPFから公開されています。このガイドラインを参照して少しでもアクセイブルなEPUBが作られることが望まれます。

どこまで頑張ればDAISY並のアクセシビリティと言えるかという明確な線引きは難しいですが、テキストDAISYから生成されたEPUBでも以下は備えているはずです。
  

  • TTSに対する配慮(読み情報の提供や適切な順序で読み上げられるようコンテンツを作成するなど)
  • 様々なレベルでのナビゲーション(目次、コンテンツの構造化、コンテンツ文書へのセマンティクス、原資料のページ数情報など)
  • 読者の選択肢を制限しない(色、フォントサイズ、レイアウトなどを固定しない)

「コンテンツ文書へのセマンティクスの付与」については以下をご覧ください。

正直、BORN EPUBでは、コンテンツ文書へのセマンティクスの付与が一番抜け落ちそうな気がします。
 

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