7月 21

BookshareのDAISY化のためボランティアによるの紙の書籍のテキストデータ化・テキスト校正作業の流れ

 Bookshareは、米国の著作権法の権利制限規定に基づき、ボランティアによる紙の書籍のテキスト化(DAISY化)を行っています。ユーザーがテキストDAISY製作のリクエストをしてから、ボランティアが製作にとりかかり、提供に至るまでのフローの一部がボランティアマニュアルとしてBookshareのサイトに公開されています。

流れは以下の通りです。2のスキャニング・OCRと、3のテキスト校正は、クオリティコントロールのために、同一のボランティアが行わないようになっているそうです。ユーザーからリクエストを受けて提供するまでにかかる期間は、資料にもよりますが、数週間から数ヶ月とのこと。

  1. ユーザーからのリクエスト
  2. スキャニング・ OCR
  3. テキスト校正
  4. Bookshare管理者による承認・(DAISY化)・提供
  5. ユーザーからの指摘による修正
  6. 画像の説明文の追加

この作業に携わる者

 上では、「ボランティアによって」という表現を用いましたが、正確には製作には以下の3者がこの作業に関わっています。

  • 米国内のボランティア
  • Bookshareのスタッフ
  • 障害者(多くは聴覚障害者)を雇用している海外(インド、ラオス、ケニアなど)のパートナーへのアウトソーシング(雇用によって障害者のITスキルを向上させ、さらなる雇用につなげることを目的にしている)

 ボランティアを米国内に限定しているのは、おそらく著作権法上の制約なのだと思いますが、そうであるなら、海外にアウトソーシングしているのは、どういう法理なのかというところがよくわかりませんでした。

流れ

1 ユーザーからのリクエスト

 Bookshareの登録利用者が本のテキスト化(DAISY化)をフォームからリクエストします。

 製作のリクエストを受け、ボランティアが製作に取りかかるのを待っているタイトルが以下で公開されています。

参考

2 スキャニング・OCR

2.1 スキャニングするタイトル選択

 ボランティアはWish Listからスキャニングするタイトルを選択します。選定時の注意事項は以下。

  • すでにBookshareにないコンテンツであること
  • タイトルページがあること
  • 著作権情報が掲載されているか、パブリックドメイン/CCライセンス
  • 35ページ以上の書籍の場合は、ページ数が記載されていること
  • New York Times Best Sellersと主な雑誌は定期的に製作されているので、対象から外す
  • 以下の製作は受け付けないこと
    • 電子書籍として出ているもの(過去に印刷版として刊行またはスキャニングされたことがあったとしても)
    • 共通テスト(standardized tests)
    • 教科書の教師版
    • 著作権保護期間中の脚本
参考
2.2 スキャニング・OCR

 ボランティアが自身で保有しているスキャナーとOCRソフトウェアで紙の資料をスキャニングし、OCR処理を行います。

  • スキャナの設定
    • ページの区切り(ページブレイク)は残す。
    • 原資料記載のページ番号を入れる(ヘッダーやフッター機能は用いない)
    • 画像を取り除く(自動的に行えなければ、ボランティアが手動で行う)、代わりに取り除いた画像の説明を追加してもよい。
    • リッチテキスト形式((RTF)で保存する。
  • タイトルページ、著作権情報が記載されているページ、空白のページを含めて全てのページをスキャンする。

 原本では、ボールド、イタリック体等になっていないのに、OCRをかけて製作したRTFファイルはそうなっていないか、1語が2語に分割されていないか等の確認を行い、問題なければ、次のステップのアップロードになります。
 

参考
2.3 アップロード

 BookshareのボランティアアカウントでVolunteer Homeにログインして2.2で作成したRTF形式のデータをアップロードします。ファイルは複数のファイルに分割せずに1ファイルでアップロードします

参考
2.4 メタデータの記入

 アップロード終了後にメタデータを記入する画面が表示されるので、その場面でメタデータを記入します。記入するメタデータは以下の通り(ISBNを記入することで自動的に記入される項目あり)。

  • 品質分析(アップロード時にエラーの数に基づいた判定結果によって自動記入されるフラグ)
  • ISBN
  • タイトル(タイトルページのタイトルに一致するタイトル)
  • 著者
  • 著作権者(原本の著作権情報ページの情報と一定している必要がある)
  • 著作権が発生した日(原本の著作権情報ページの情報と一定している必要がある)
  • 出版者(原本の著作権情報ページの情報と一定している必要がある)
  • 短い概要または長い概要
  • 著作権上の理由による利用にあたっての地理的な制約
  • カテゴリ
  • アダルトコンテンツ情報(18歳未満のユーザー及び公共図書館では利用させないために、セクシャルコンテンツにはそれを示すフラグをたてる)
参考

 アップロードが完了すると、Checkout Listと呼ばれるリストにタイトルが掲載され、テキスト校正を行うボランティアが作業できるようになります。

3 テキスト校正(proofreading)

3.1 タイトルの選定/テキスト校正の期限

 テキスト校正は、クオィリティコントロールのためスキャニングを行ったボランティアと別のボランティアが担当します。1タイトルにつき、1人のボランティアが責任もって担当する仕組みになっています。1人のボランティアが多くのタイトルを抱え、提供期間がおそくなることがないように、一度に引き受けることができる条件は5タイトルまで、校正のしめきりはタイトル選定後2週間以内(1度は延長可)となっています。
テキスト校正を行うボランティアは、Checkout Listからテキスト校正を行うタイトルを選定し、Bookshareの管理者の承認をうけて、2で作成されたRTFファイルをダウンロードします。

参考
3.2 テキスト校正

 ダウロードしたRTFファイルをWORDなどの編集ソフトで校正・編集します。
主なチェック項目。

 
 上で触れたように、フォントサイズが以下のようにきちんとサイズまで規定されています。 RTFファイルからDAISYに変換する際の構造化(見出しレベルのレベル1、レベル2、レベル3の設定や目次の作成など)に使用されるのでしょうか。

タイトル: 20 point and bold
部: 18 point and bold
章: 16 point and bold
節、小節: 14 point and bold
本文: 12 point (not bold) 

参考
3.3 アップロード

校正が完了したら、Volunteer Homeにログインした後にアップロードします。このタイミングで、2.4で記入されたメタデータに誤りがないかを再度確認します。

参考

4 Bookshare管理者による承認・(DAISY化)・提供

 3までの行程を経たコンテンツをBookshareの管理者が承認して、ユーザーに提供します。3までで製作されたテキストデータ(RTFファイル)のDAISY化については、ドキュメントが見つからないので、どのようにやっているかは不明ですが、1点1点手動でやっているようには見えないので、おそらく自動的にDAISYに変換するプログラムが組まれていると思われます。

5 ユーザーからの指摘

 提供に至ったコンテンツの中にはできのよくないものも存在します。そういうコンテンツに対してユーザーからの指摘を受けつけ、問題があるものは、再スキャンなどの処理に回されます。品質に問題があり、再スキャンというの作成の対象に挙がっているタイトルが以下で公開されています。

画像の説明文の追加

図のような画像データで表現する必要があるものは、スキャニングの段階で取り除かれてしまいます。図の説明はスキャニング・OCR時に可能なら入れてというスタンスで、ボランティアに委ねています。ボランティアが追加する場合は、以下のマニュアルに従って記述します。

 上のような運用であるため、Bookshareには図の説明がないコンテンツが大量に存在することになるのですが、これに対しては、Bookshare運営元の Benetechが立ち上げたDIAGRAM CenterPOETという、 DAISYやEPUBの画像にテキストの説明を挿入するためのオンラインツールを開発し、Booksahreがこれを用いた Image Description Projectを2012年から進めています。

参考

テキストデータの品質

テキストデータの品質は、メタデータの”Book Quality”という項目で確認することができます。以下の4つのランクで評価されています。Publisher Qualityが出版社から提供を受けたテキストデータで、Excellent、Good、Fairがボランティアが製作したコンテンツです。

  • Publisher Quality
  • Excellent(1ページに平均1つ以下のエラー)
  • Good(1ページに平均2つ以下のエラー)
  • Fair

その他

 以下は、いろいろ調べてみたのですが、よくわかりませんでした。情報求ム。

  • スキャニングする原本はボランティアが用意するのか、Bookshareが用意するのか。前者であれば、学術書などであれば、ボランティア側に相当な費用負担が発生するはずであるが、どう解決しているのか。
  • マニュアルを見る限り、スキャニング→OCRで作成したテキストデータ(RTF形式)のみをアップロードし、スキャニング画像はアップロードされていないようであるが、どうやってテキスト校正を行うのか。
7月 09

障害差別解消法の実施に関する文部科学省の調査研究協力者会議

 文部科学省が障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)の実施に関する調査研究協力者会議を6月から開催して居ます。その1回目と2回目の会議資料が7月8日に配布資料が公開されています。障害者差別解消法で各省庁に対して作成・公開を義務づけられている事業者(民間)向けの対応指針の検討が主な目的のようです。

 ヒアリングは上の2回までのようで、第3回(7月7日)、第4回(7月21日)は対応指針の検討、8月に対応指針案のパブリックコメント、9月に告示というのが、現在、想定されているスケジュールのようです。

 第2回では日本図書館協会障害者サービス委員会の委員長もヒアリングを受けています。

(資料5)公共図書館の障害者サービスと合理的配慮 (PDF:546KB)

参考

障害者差別解消法(抜粋)

(事業者のための対応指針)
第十一条 主務大臣は、基本方針に即して、第八条に規定する事項に関し、事業者が適切に対応するために必要な指針(以下「対応指針」という。)を定めるものとする。
2 第九条第二項から第四項までの規定は、対応指針について準用する。

7月 09

障害者差別解消法で各省庁が作成・公表を義務づけられている対応要領案及び対応指針案に関するヒアリング(内閣府)

 障害者差別解消法の九条と十一条で各省庁に作成・公開を義務づけられれている対応要領及び対応指針に関するヒアリングを内閣府が7月13日と14日に行うようです。

 議題に内閣官房、内閣法制局、人事院、内閣府、宮内庁、公正取引委員会、警察庁、消費者庁、復興庁、会計検査院、総務省・厚生労働省の名前が。内閣府が各省庁に対応要領と対応指針の作成についてヒアリングを行うのか、それとも各省庁が合同で対応要領と対応指針作成のためにヒアリングを行うのかは、まだわかりませんが、後者だとすると、2時間で10省庁分のヒアリングか・・・

7月13日

http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/20150713_youkou.html
議題
(1) 障害者差別解消法に基づく国等職員対応要領案及び事業者のための対応指針案について(内閣官房、内閣法制局、人事院、内閣府、宮内庁、公正取引委員会、警察庁、消費者庁、復興庁、会計検査院)
(2) その他

7月14日

http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/20150714_youkou.html
議題
(1) 障害者差別解消法に基づく国等職員対応要領案及び事業者のための対応指針案について(総務省・厚生労働省)
(2) その他

参考

障害者差別解消法(抜粋)

(国等職員対応要領)
第九条 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、基本方針に即して、第七条に規定する事項に関し、当該国の行政機関及び独立行政法人等の職員が適切に対応するために必要な要領(以下この条及び附則第三条において「国等職員対応要領」という。)を定めるものとする。
2 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、国等職員対応要領を定めようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。
3 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、国等職員対応要領を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
4 前二項の規定は、国等職員対応要領の変更について準用する。

(事業者のための対応指針)
第十一条 主務大臣は、基本方針に即して、第八条に規定する事項に関し、事業者が適切に対応するために必要な指針(以下「対応指針」という。)を定めるものとする。
2 第九条第二項から第四項までの規定は、対応指針について準用する。

6月 26

全国高等教育障害学生支援協議会(AHEAD JAPAN) 第1回大会 参加メモ

 全国高等教育障害学生支援協議会(Association on Higher Education and Disability of Japan : AHEAD JAPAN) 第1回大会に1日目、2日目全ての日程参加してきました。AHEAD JAPANは高等教育機関における障害学生支援に関する相互の連携・協力体制を確保を目的に2014年10月に成立した団体です。

日程、場所、プログラム等は以下。

大会概要

日時:2015年6月19日(金曜日)、6月20日(土曜日)
場所:東京大学先端科学技術研究センター(東京都目黒区駒場4-6-1)
詳細: 全国高等教育障害学生支援協議会(AHEAD JAPAN) 第1回大会

 で、これはその参加メモです。

 1日目のプレカンファレンスには200名は参加していたそうで、おそらく2日目もそれくらい。まさに全国の障害学生支援関係者が一同に介していた感じではなかったかと思います。図書館関係者で参加していたのは、佛教大学の松戸宏予先生をのぞけば、おそらく私一人ぐらいだったと思います。

 この大会全体の大きなテーマが

  • 2015年4月に予定されている障害者差別解消法の施行に向けて国公立大学と私立大学に求められる対応

というもので、特に国立大学法人は、職員向けの対応要領を今年度中に作成することが義務づけられているので、時期的にはすでに待ったなしの状況。ということもあり、障害学生支援に積極的な大学が多く参加したということもあり、私が参加した国公立大学等分科会も含めて具体的で前向きな検討がなされている印象でした(私立大学等分科会のほうは参加していないので知りませんが・・・)。

 障害者差別解消法で求められる大学の対応については、以下にまとめたので、こちらをご参照ください。

 日本学生支援機構(JASSO)の実態調査でもわかることですが、今回の大会での議論、ポスター発表等を見ると、聴覚障害者、発達障害者、肢体不自由の学生が在学する大学が多く(JASSOの調査だと、病弱・虚弱の学生も多い)、視覚障害の学生が在学する大学は少ないということもあって、関心も前者に対する支援のほうが高い。公共図書館の障害者サービスが視覚障害者に対するサービスから始まっているので、「障害者」といえば視覚障害者がまず頭に浮かびますが、図書館が視覚障害者以外の障害者に対するサービスをもっと充実させないといけないのかなと思ったり。視覚障害者の障害学生そのものが少ないという点については、視覚障害者が大学進学に到達するには、勉学の上でいろいろな障害があるということも。公共図書館における障害者サービスと大学図書館におけるそれもだいぶ意味が変わってくるのでしょうか。

 2日間のイベントの内容を逐一紹介するのはさすがにやめておきますが、ざっくりと。
 

1日目プレカンファレンス

 1日目。プレカンファレンスといいつつ、障害学生支援について先進的な大学の具体的な取り組みついて情報交換されたり、対応要領の作成を想定した議論があったりと、大会の本丸はこの1日目だったと思います。

セミナー「差別解消法と合理的配慮の提供に向けた体制整備に必要なこと」

 配付資料として、協議会が作成した対応要領案が配布され、それを石川准先生(静岡大学)、村田淳先生(京都大学)、高橋知音先生(信州大学)、竹田一則先生(筑波大学)が解説。私立大学関係者向けには、柏倉秀克先生(日本福祉大学)が文部科学省から告示だされる対応指針を想定した体制整備について日本福祉大学の事例を紹介しつつ解説。

 「合理的配慮の否定」は、「障害を理由とする不当な差別的取り扱い」(これは事業者(民間)含めて禁止されている)に繋がるものですが、<「合理的配慮の提供」ができない>(「合理的配慮の提供」は、公的機関は義務、事業者(民間)は努力義務)との区別しづらい状況もあるかも(区別する必要があるかどうか微妙ですが)。

 会場からは学生の評価の方法と合理的配慮の不提供の兼ね合い、つまり、ノートテイクなどの十分な合理的な配慮を提供できなかった場合は、その学生の評価をするべきか、とかLGBTは障害者差別解消法でいうところの障害者に含まれるのか(例えば、ユニセックストイレの設置等の問題)などの質問がでました。

法人分科会「学内体制整備における問題点の共有」

 国公立大学等分科会と私立大学等分科会のうち、私は国公立大学等分科会に参加。 
 午後に引き続き、対応要領案をベースに話が進められました。ここでは、筑波技術大学、群馬大学、宮城教育大学、富山大学、筑波大学など障害学生支援に積極的な大学が具体的な事例を中心に積極に発言して分科会をひっぱっていたので、全体としてかなり前向きに議論が進められたのではないかと思う。

 例えば、以下について議論がなされていました。

  • 合理的配慮の提供の前提となる意思の表明は本人からのみか
  • 教員の教育方針から
  • 障害学生支援のための予算の獲得について
  • 専門性のある組織体制の構築
  • 合理的配慮の提供と学生の評価の関係(例えば、ノートテイクなどの十分に合理的配慮が提供できない場合のその学生の評価はどうあるべきか)
  • 対応要領の作成で障害者当事者団体に意見を聞くということになっているが、どの段階で行うべきなのか
  • 対応要領に従わない教職員への対応はどうあるべきか

2日目(メインカンファレンス) 



基調講演(ピーター・ブランク教授)

 シラキュース大学のピーター・ブランク教授による基調講演。テーマは「米国の障害学生支援の制度と課題」のはずですが・・・・、どちらかというと、6月22日にブランク教授が立命館大学で行ったシンポジウムの基調講演のテーマに近い気がしないでもない。しかし、話としては、とても面白かった。ブランク教授はWebの柔軟性を信じていて「だれもが使いやすい」と「特定の個人に特化して使いやすい」はWebでは両立しうると考えている。
 
 講演はブランク教授が2014年に出した以下の著書の前半部分を中心になっているとのこと。

eQuality: The Struggle for Web Accessibility by Persons with Cognitive Disabilities (Cambridge Disability Law and Policy Series)

 ところで、ブランク教授が話の中で言及していたRaising the Floor (RtF)が進める”GPII”というプロジェクト、どこかで聞いたことがあるとかと思ったら、自分でブログに書いていた(すっかり忘れてた・・)。

 これまた話がまた少し外れますが、ビル・ゲイツが、最近、グラフや写真などを文字や音に翻訳する技術の特許を申請したという話をブランク教授がしていた。ピカソの絵画があったとすると、コンピューターがそれを文字や音に翻訳してつたえる技術のようです。気になって探してみたけど、よくわからず。

情報共有セッション「差別解消法,合理的配慮の現状と今後」

 内閣府の方が障害者差別解消法とその基本方針、文部科学省の方がそれに対応する高等教育関係の政府内の動き、厚生労働省が改正障害者雇用促進法を紹介。

 会場から、雇用促進法は改正されたが、国家公務員法は改正されなかった(国立大学法人は国家公務員法に準じる運用をする?)。自立通勤通勤ができること、介助なしに業務が遂行できることが応募条件にすることを今だにある。介助者が必要な障害者は応募すらできないということにになる。これは不当な差別的取り扱いになるのか、なるなら国家公務員法はどうなるのかという趣旨の質問がでていました。
  
 

AHEAD JAPAN 大会に行きそびれた方、関西の方

 AHEAD JAPAN 大会に行きそびれた方、関西の方であれば、7月に以下のイベントが京都大学で行われます。プログラムと登壇者をみると、内容的には、AHEAD JAPAN 大会1日目の内容に近い話がされる気がします。

6月 25

障害者差別解消法と大学に求められる取り組みについて

 障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)は障害者の権利の保障と実質的平等を確保することを目的として具体的な措置や義務を定めた法律で、2015年4月に施行されます。詳しくは法の条文今年2月に閣議決定された基本方針を読んでいただければよいのですが、各機関、各法人、事業者(民間)に対して様々な措置が義務化あるいは努力義務化されています。大学に関して言えば、大さっばに主に以下の4つです。

国立大学法人 公立大学法人 学校法人(私立大学)
1 障害を理由とする差別の禁止 義務(第七条第一項) 義務(第七条第一項) 義務(第八条第一項)
2 環境の整備(事前的改善措置) 努力義務(第五条) 努力義務(第五条) 努力義務(第五条)
3 合理的配慮の提供 義務(第七条第二項) 義務(第七条第二項) 努力義務(第八条第二項)
4 職員に対する対応要領の作成及びそれの公開 義務(第九条) 努力義務(第十条)  -

 このほかにも相談窓口の設置や職員に対する啓発活動等なども求められますが、これは4の対応要領を作成する過程で整備されるはず。

 1、2,3については、以下をご参照ください。

4の職員向けの対応要領とは、上の1、2、3について職員が適切に対応することができるように法人が職員を対象して作成する要領で、基本方針に即して言えば、

  • 事務・事業を行うに当たり、職員が遵守すべき服務規律の一環として定められる必要がある。
  • 対応要領の作成に当たり、障害者その他の関係者を構成員に含む会議の開催、障害者団体等からのヒアリングなど、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、作成後は、対応要領を公表しなければならない。
  • 想定される記載事項: 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方及び具体例、相談体制の整備、職員への研修・啓発

となります。

 私立大学に対しては、対応要領作成・公開の義務が課されていませんが、文部科学省が事業者(民間)向けに対応指針を告示する予定であるため、それに対応することが求められます。文部科学省は今まさにそのためのヒアリングを進めているところのようです。

参考 大学において求められる「教育上の合理的配慮等」-文科省の障がいのある学生の修学支援に関する検討会-

 文部科学省内に設置された「障がいのある学生の修学支援に関する検討会」において2012年6月から2012年12月の間に9回にわたり、大学等における教育上の合理的配慮の対象範囲について検討が行われ、その検討結果が「報告(第一次まとめ)」としてまとめられ、2012年12月に公開されています。

参考
6月 17

合理的配慮のあり方も検討した文科省の特別支援教育の在り方に関する特別委員会(H22年度〜H24年度)

 2010(平成22)年7月から2012(平成24)年6月にかけて、文部科学省が中央教育審議会の下に特別支援教育の在り方に関する特別委員会を設置し、インクルーシブ教育のあり方について検討を行っています。ここで、障害児教育で提供するべき合理的配慮及びその基礎となる環境整備のあり方についても検討されています。

 設置は、2010(平成22)年6月29日の閣議決定(「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」)を受けてのようです。この特別委員会は最終的に以下の報告書をまとめました。

 この3章が「障害のある子どもが十分に教育を受けられるための合理的配慮及びその基礎となる環境整備」であり、合理的配慮とその前提となる基礎的環境整備の考え方についてまとめられています。ここでは、内容については詳しく触れませんが、合理的配慮の提供は、あくまで個別の事例に対応するためのものであり、その前提として基礎的な環境の整備が重要であることが繰り返し述べられています。課題の整理もどちらかと言えば、基礎的環境整備を中心にまとめられています。

合理的配慮と基礎的環境整備については、以下のエントリでまとめましたことがあります。上の委員会時にはまだ存在しない障害者差別解消法における考え方ではありますが、同じであるはずですので、ご参照ください。

  合理的配慮の検討については、この特別委員会のさらに下にワーキンググループが2011(平成23)年7月に設置され、そこで主な検討がなされています。

ちなみに時期的には、日本の法律で初めて合理的配慮の概念を採用する改正障害者基本法が参議院で可決されるのが2011(平成23)年7月29日で、上のワーキンググループの設置が特別委員会で決まったのが同年5月というのですから、政府内の合理的配慮に関する検討ではおそらくかなり早い方ではないでしょうか。

 この特別委員会が終わる時期とほぼかぶるタイミングで、同じ文部科学省内で「障がいのある学生の修学支援に関する検討会」が2012(平成24)年6月に立ち上がり、今度は大学などの高等教育における「教育上の合理的配慮等」の検討が開始されています。

6月 12

リハ協が平成26年度マルチメディアデイジー教科書アンケートの結果を公開

 日本障害者リハビリテーション協会が行った平成26年度マルチメディアデイジー教科書アンケートの結果が公開されています。

6月 11

DAISYオンライン配信プロトコル ver2.0が正式版に。

 2015年2月に草案がパブリックレビューされていたDAISY Online Delivery Protocol(DAISYオンライン配信プロトコル)ver2.0が6月9日にDAISY Consortiumの理事会の承認をうけて、正式版になったそうです。

 正式版の仕様そのものはまだ公開されていませんが、以下のドキュメントに新機能がまとめられています。

 様々な機能の拡充がなされているようですが、”Service Discovery”の以下の機能は次項の”Automatic reading system configuration”で紹介されいる機能と組み合わせて、複数のサービスで実装されれば面白いなと思います。マラケシュ条約によって国境をまたいでサービスが理由できるようになれば、重要になってくるかも。

A new Service Discovery list maintained by the Daisy Consortium has been introduced; this list will allow users to “discover” available DODP Services based on their Geolocation or preferred reading language.

This would also allow independent discovery of services by a user, and act as a centralised list of available libraries in an accessible format.

関連エントリ

6月 10

マラケシュ条約の各国の2015年の対応

 以下の記事で米国、カナダ、欧州の批准に対する状況が紹介されています。ちなみにBenetechは米国のbookshareを運営している会社です。

 さっくりまとめると、2015年中の批准の可能性については、カナダ「ほぼ確実」、米国「あり得る」、欧州各国「なさそう」とのことらしいです。

 カナダについては、批准の法整備のために”Support for Canadians with Print Disabilities Act(プリントディスアビリティのあるカナダ人支援法)”が議会で審議されているところのようです。

5月 28

アクセシブルな電子書籍とは何かを示すガイドラインの話(の続き)

 先のエントリで、以下の3つについて図書館がガイドラインを作成して要件を提示してはどうかという話をしました。

  • (出版社と電子書籍プラットフォームに対して)図書館が考える「アクセシブルな電子書籍」とは何か(コンテンツ作成ガイドライン)
  • (ビューワー開発者と電子書籍プラットフォームに対して)図書館が考える電子書籍の「アクセシブルな閲覧環境」とは何か(ビューワーのガイドライン)
  • (電子書籍プラットフォームに対して)図書館が考える電子書籍の「アクセシブルな提供方法」とは何か(コンテンツ提供ガイドライン)

 
 それぞれについてどのようなガイドラインを作成するべきなのか、参考になる先行的なものを含めてまとめてみました。

1.「アクセシブルな電子書籍」を示すコンテンツ作成ガイドライン

 EPUBのようなHTMLやCSS等のWeb標準技術をベースとした形式は、ウェブアクセシビリティのガイドラインとして知られるW3CのWeb Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.0( = JIS X8341-3:2010 = ISO/IEC 40500:2012)が対象とする「ウェブコンテンツ(Web技術によって作成されたコンテンツ)」に該当します。 

ウェブコンテンツとは、ウェブブラウザ、支援技術などのユーザーエージェントによって利用者に伝達されるあらゆる情報及び感覚的な体験を指し、例えば、ウェブアプリケーション、ウェブシステム、携帯端末などを用いて利用されるコンテンツ、インターネット、イントラネット、CD-ROMなどの記録媒体を介して配布されるウェブコンテンツ技術を用いて制作された電子文書、ウェブブラウザを用いて操作する機器などに適用する。
from JIS X8341-3:2010「1.適用範囲」
参考: ウェブアクセシビリティガイドラインWCAG 2.0とJIS X8341-3:2010に関する整理

 

 EPUBの場合は、JIS化もISO化もしているWACG2.0に則って製作していけばよいはず、というよりは、本来的には(特に公的機関などは)しなければならないはずです。しかし、WACG及びJIS 8341-3:2010の双方が参照すべきとする具体的な実装方法を説明した「WCAG 2.0 実装方法集」には、まだアクセシブルなEPUBの製作方法が掲載されていません(アクセシブルなPDFの作成方法はすでに掲載されている)。WACGの関連文書において、実装方法が具体的に示されない現時点では、WCAG2.0( = JIS X8341-3:2010)に則って作成せよと言われてもまだ難しいかもしれません。将来的には、「WCAG2.0 実装方法集」にEPUBの実装方法も掲載され、官公庁などが刊行物のEPUB版制作を外注する時にその仕様書に「JIS 8341-3:2010の達成等級AAを準拠すること」等々の一文を追加するだけで済むようになれば理想的ですが、少なくとも今はまだ存在しないため、電子書籍向けにブレークダウンしたものが必要です。

 EPUBについては、IDPFがアクセシビリティガイドラインを公開しています。EPUBについてもっともまとまったものだと思います。

 しかし、上のIDFPのガイドラインは各要件が平たく説明され、優先順位が示されている訳ではありません。優先順位はWCAG2.0( = JIS X8341-3:2010)の達成等級が参考になりますが、米国の出版団体 Association of American Publishers (AAP) が上のガイドラインの中で優先順位の高い要件13を挙げていますので、これも参考になると思います。

2. 電子書籍の「アクセシブルな閲覧環境」を示すビューワーのガイドライン

 閲覧環境についても、W3CのUser Agent Accessibility Guidelines(UAAG)2.0があります。これは上のコンテンツ作成ガイドラインであるWACG 2.0と対になっているようなもので、Web技術を用いて製作される電子書籍の閲覧環境も対象に対象になります。JIS規格どころかまだW3C勧告にもなっていませんが、参考になる部分が大きいはずです。

 米国の出版団体 Association of American Publishers (AAP) もEPUB 3 リーディングシステムに優先的に実装してもらいたい10の機能を公開しています。

 そして、DAISYコンソーシアムが電子書籍リーディングシステムのアクセシビリティを評価するためのチェックリストを公開しています。これについては、手前味噌ながら、私が翻訳して公開しています。

 最後に、これは本当に手前味噌ですが、EPUBの閲覧環境については、私も私案として要件をまとめてみたことがあります。これを、EPUBに限定しないように抽象化しつつ、優先順位の高い要件を3段階くらいでランク付けすれば、それなりにそれなりかも。

3. 「アクセシブルな提供方法」を示すコンテンツ提供ガイドライン

 これについては、参照するべきガイドラインは特に思いつきませんが、少なくとも以下の5点はポイントになるはずです。

  • 上の1と2のガイドラインを準拠すること
  • DRMが上の1と2のガイドラインの準拠を妨げないこと
  • アクセシビリティメタデータの提供(参考:メタデータを電子書籍のアクセシビリティの議論の俎上にそろそろのせませんか
  • 電子書籍プラットフォームのウェブサイトのウェブアクセシビリティをWCAG2.0( = JIS X8341-3:2010)に準拠する形で担保すること
  • ユーザービリティ(コンテンツ入手までの手順をなるべく少なくするなど)

 

関連エントリ