Unicode点字と点字フォーマットPEF(Portable Embosser Format)

いきなりですが、貴方の端末では、以下のフォントはどのように表示されているでしょうか。
——-ここから
 ⠘⠀⠙⠀⠚⠀⠛⠀⠜⠀⠝⠀⠞⠀⠟
ここまでの間———-
 以下のように表示されているならば、貴方の端末(OS)Unicode点字に「対応」しています。
上で表示したユニコード点字の画像

Unicode点字

 点字記号は、1999年に公開されたUnicode 3.0から割り振られています。U+2800からU+28FFまで割り振られ、Braille Patternsと呼ばれています。
Unicode 6.2のBraille Patterns

 文字コードレベルで点字に対応できるならば、特定のフォーマットを使用しなくても、テキストファイルやワードファイル、PDFファイル、EPUBファイルなど幅広く利用されているフォーマットでも点字を利用することができ、点字データの作成・交換・配布も行いやすくなると思われます。残念ながら対応しているのは、最新のOSに限られてしまうようです。対応を確認できたOSは以下のとおりです。※1
 
 表示できることを確認できたOSは以下のとおりです(ご協力いただいた方には感謝感謝です!)。

表示できた
  • Windows 7 Home,Pro(表示できなかった端末もあり)
  • OS X v10.8 Mountain Lion
  • iOS 6.1.4
表示できなかった
  • Windows XP
  • Windows Vista
  • Android 4.1.1(HTC J butterfly )

Unicode点字への「対応」について  ※1 2013/08/27 追記

 @momdo_さんからいただいた以下のご指摘で、私が「Unicode点字に対応」という言葉を安易に使用しているが判明しました(汗)。整理します。

 Unicode点字に対応ということを問題とする場合、以下の2つの段階があります。

  1. OSとアプリケーションがUnicode 3.0以降に対応している
  2. Unicode点字フォントを搭載している

 1については、Unicode 3.0は1999年に公開されていますので、今、動いているほとんどの端末がその条件を満たしているはずです。
 最近の晴眼者が使用する端末でUnicode点字の対応が問題となるのは、2の点字フォントの有無の問題です。点字フォントを自分で追加すれば、Unicode点字にも対応できるはずです。上で確認したように最近のOSでは点字フォントを標準で搭載されるようになっているようです。
 ここで気になるのが、点字プリンタや点字ディスプレイなど点字機器類への入出力です。例えば、Unicode 3.0対応有り、点字フォントなしのOSの端末へ繋いだとしても、点字機器そのものがUnicode 3.0に対応し、点字記号の情報を持っていれば、そのまま使えるのではないかという気がします。どうなのだろう?
※ 2013/08/28 追記の追記
 @momdo_さんに以下のエントリの追記でご指摘いただいたので、修正しました。

  • Unicode 3.0以降→Unicode
  • Unicode点字フォント→点字フォント

 
 Unicodeのこれまでのバージョンアップで、Unicodeの前方互換性がきちんと担保されているのか否かについてよくわからなかったため、「Unicode 3.0以降」という書き方をしてしまいましたが、Wikipediaを見る限り、点字についてはUnicode対応が3.0以前のものでも大丈夫そうでしたので、この項でのUnicodeのバージョン番号は削りました。「点字フォント」の修正についても@momdo_さんのご指摘の通りです。
点字プリンタや点字ディスプレイなど点字機器類への入出力の問題についてですが、私もよく分かっていませんので、自分に課した宿題かなと思っています。
 

(参考)Braille ASCII

 英数字では現在、Braille ASCIIという表示方式がよく使われているようです。Braille ASCIIは文字コードASCIIの0x20から0x5Fに割り当てられた64文字を上書きする形で点字に置き換える方式です。なお、Braille ASCIIで作成された点字文書はBRF形式で保存されることが多いようです。

  
 例えば、ASCII文字で「3」を表すコード0x33には、点字で「3」を意味する点字記号「⠒」、「B」(大文字のB)を表すコード0x42には、「b」をあらわす点字「⠃」が割り当てらています。通常のテキストエディタで開くと、0x33、0x42はそれぞれ「3」、「B」ですので、それぞれ「3」と「B」が表示されます。しかし、Braille ASCIIに対応したアプリケーションで開くと、それぞれ「⠒」、「⠃」という点字記号に置き換えられて表示されます。

<

h5>サンプルBRF形式ファイル

 TSBVI Libraryが公開しているBRFファイルです。

点字フォーマットPEF(Portable Embosser Format)

 
 このUnicode点字を活用したPEF(Portable Embosser Format)がスウェーデンから提案されています。

 このフォーマットの特徴は主に以下の3つです。最大の特徴はやはりUnicode点字を前提としていることです。

  • XML形式
  • Dulin Coreメタデータ
  • Unicode点字対応

 PEF(Portable Embosser Format)という名称からもわかるように、PDF(Portable Document Format)のように環境、言語環境に依存しない点字フォーマットを志向しており、正確かつ一義的に点字を表示することが可能なために電子文書の交換や長期保存に向いたフォーマットであることをウリにしています。
 利用事例はまだ多くないようですが、先のエントリで紹介したNLBのJacobsen氏にあるようにすでに北砲諸国ではすでにPEF形式が利用されているようです。また、このブログで何度も紹介しているコンバーターDAISY Pipelineのアウトプット点字ファイルとしてPEF形式が使用されています。

(参考)PEFファイルサンプル

[Example PEF document: Extending PEF]”examples/extended.pef”. Demonstrates how a PEF-file can be extended.

表示

 Mobile Safariでの表示例です。
写真

ソース

<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<pef version="2008-1" xmlns="http://www.daisy.org/ns/2008/pef" xmlns:ext="http://www.example.org/my-pef-extensions" ext:version="1">
    <head>
        <meta xmlns:dc="http://purl.org/dc/elements/1.1/" xmlns:org="http://www.example.org">
            <dc:title>Extending PEF</dc:title>
            <dc:creator>Joel Håkansson</dc:creator>
            <dc:date>2009-01-20</dc:date>
            <dc:format>application/x-pef+xml</dc:format>
            <dc:identifier>org.pef-format.00004</dc:identifier>
            <dc:description>Demonstrates how a PEF-file can be extended.</dc:description>
            <org:paper-size value="A4"/>
            <org:grade value="1"/>
            <org:margin-top value="5cm"/>
            <org:margin-left value="2cm"/>
            <org:binding content="coil"/>
        </meta>
    </head>
    <body xml:lang="en">
        <annotation xmlns="http://www.example.org/my-pef-extensions" style="default.css">
            This is an <b>extended</b> <dfn>PEF</dfn> 1.0 example. It demonstrates how a PEF-file can be extended.
        </annotation>
        <volume cols="20" rows="29" rowgap="0" duplex="true">
            <ext:volume-label>
                <ext:row>⠀⠀⠀⠀⠁⠀⠂⠀⠃⠀⠄⠀⠅⠀⠆⠀⠇⠀</ext:row>
                <ext:row>⠀⠀⠈⠀⠉⠀⠊⠀⠋⠀⠌⠀⠍⠀⠎⠀⠏⠀</ext:row>
                <ext:row>⠀⠀⠐⠀⠑⠀⠒⠀⠓⠀⠔⠀⠕⠀⠖⠀⠗⠀</ext:row>
            </ext:volume-label>
            <section ext:section-type="toc">
                <page ext:page-number="i">
                    <row>⠀⠀⠀⠀⠁⠀⠂⠀⠃⠀⠄⠀⠅⠀⠆⠀⠇⠀</row>
                    <row>⠀⠀⠈⠀⠉⠀⠊⠀⠋⠀⠌⠀⠍⠀⠎⠀⠏⠀</row>
                    <row>⠀⠀⠐⠀⠑⠀⠒⠀⠓⠀⠔⠀⠕⠀⠖⠀⠗⠀</row>
                    <row>⠀⠀⠘⠀⠙⠀⠚⠀⠛⠀⠜⠀⠝⠀⠞⠀⠟⠀</row>
                    <row>⠀⠀⠠⠀⠡⠀⠢⠀⠣⠀⠤⠀⠥⠀⠦⠀⠧⠀</row>
                    <row>⠀⠀⠨⠀⠩⠀⠪⠀⠫⠀⠬⠀⠭⠀⠮⠀⠯⠀</row>
                    <row>⠀⠀⠰⠀⠱⠀⠲⠀⠳⠀⠴⠀⠵⠀⠶⠀⠷⠀</row>
                    <row>⠀⠀⠸⠀⠹⠀⠺⠀⠻⠀⠼⠀⠽⠀⠾⠀⠿⠀</row>
                </page>
            </section>
            <section>
                <page ext:page-number="1">
                    <row ext:row-type="header">⠀⠀⠀⠀⠁⠀⠂⠀⠃⠀⠄⠀⠅⠀⠆⠀⠇⠀</row>
                    <ext:new-para type="heading" text="  A 1 B ' K 2 L"/>
                    <row>⠀⠀⠈⠀⠉⠀⠊⠀⠋⠀⠌⠀⠍⠀⠎⠀⠏⠀</row>
                    <ext:new-para type="p" text="@ C I F / M S P &quot; E 3 H 9 O 6 R ^ D J G > N T Q , * 5 &lt; - U 8 V . % [ $ + X ! &amp; ; : 4  0 Z 7 ( _ ? W ] # Y ) ="/>
                    <row>⠀⠀⠐⠀⠑⠀⠒⠀⠓⠀⠔⠀⠕⠀⠖⠀⠗⠀</row>
                    <row>⠀⠀⠘⠀⠙⠀⠚⠀⠛⠀⠜⠀⠝⠀⠞⠀⠟⠀</row>
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                    <row>⠀⠀⠰⠀⠱⠀⠲⠀⠳⠀⠴⠀⠵⠀⠶⠀⠷⠀</row>
                    <row>⠀⠀⠸⠀⠹⠀⠺⠀⠻⠀⠼⠀⠽⠀⠾⠀⠿⠀</row>
                    <ext:new-para type="p"/>
                    <row>⠀⠀⠀⠀⠁⠀⠂⠀⠃⠀⠄⠀⠅⠀⠆⠀⠇⠀</row>
                    <row>⠀⠀⠈⠀⠉⠀⠊⠀⠋⠀⠌⠀⠍⠀⠎⠀⠏⠀</row>
                    <row>⠀⠀⠐⠀⠑⠀⠒⠀⠓⠀⠔⠀⠕⠀⠖⠀⠗⠀</row>
                    <row>⠀⠀⠘⠀⠙⠀⠚⠀⠛⠀⠜⠀⠝⠀⠞⠀⠟⠀</row>
                    <row>⠀⠀⠠⠀⠡⠀⠢⠀⠣⠀⠤⠀⠥⠀⠦⠀⠧⠀</row>
                    <row>⠀⠀⠨⠀⠩⠀⠪⠀⠫⠀⠬⠀⠭⠀⠮⠀⠯⠀</row>
                    <row>⠀⠀⠰⠀⠱⠀⠲⠀⠳⠀⠴⠀⠵⠀⠶⠀⠷⠀</row>
                    <row ext:row-type="footer">⠀⠀⠸⠀⠹⠀⠺⠀⠻⠀⠼⠀⠽⠀⠾⠀⠿⠀</row>
                </page>
            </section>
            <section>
                <page ext:page-number="A">
                    <ext:tactile-image src="map.svg"/>
                </page>
            </section>
        </volume>
    </body>
</pef>

ソースの画像(点字を表示できなかった方はこちらをご覧ください)

関連エントリ

Unicode点字と点字フォーマットPEF(Portable Embosser Format)」への9件のフィードバック

  1. Windows 8.1上で、IE11は冒頭の点字が表示され、Chrome 29は表示されませんでした。
    Windows 7で表示できた、できなかったというのも、ブラウザの違いによるものかもしれません。

  2. 貴重な情報ありがとうございます。Windows 7以降はOSに点字フォントが搭載されていると伺っているのですが、同じOS上でもブラウザによって表示できるものとできないものがあるのですね。

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