著作権法の障害者への情報提供に係る権利制限規定(第37条)の変遷(2018年版)

 ※本エントリは「著作権法第三十七条(視覚障害者等・聴覚障害者等のための複製等)の変遷」(2014年7月21日公開)に2018年(平成30年)法改正を追加・更新したものです。
 現行の著作権法(昭和45年法律第48号)は日本法令索引の著作権法 ( 昭和45年5月6日法律第48号 ) 法令沿革一覧にあるとおり、1970年に昭和45年法律第48号として明治32年法律第39号の著作権法が全部改正されたものです。この全部改正時に、障害者への情報提供に係る権利制限規定が第37条として新設されました。1970年の全部改正以降、著作権法は頻繁に改正されていますが、この第37条は2000年、2006年、2009年、2014年、2018年に改正されています。
 1970年に著作権法が全部改正された時の著作権法第37条は以下のとおりでした。

(点字による複製等)
第三十七条 公表された著作物は、盲人用の点字により複製することができる。
2 点字図書館その他の盲人の福祉の増進を目的とする施設で政令で定めるものにおいては、もつぱら盲人向けの貸出しの用に供するために、公表された著作物を録音することができる。

 
 それが2018年に改正された著作権法(2019年1月1日施行)は以下のようになります。

(視覚障害者等のための複製等)
第三十七条 公表された著作物は、点字により複製することができる。
2 公表された著作物については、電子計算機を用いて点字を処理する方式により、記録媒体に記録し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。次項において同じ。)を行うことができる。
3 視覚障害その他の障害により視覚による表現の認識が困難な者(以下この項及び第百二条第四項において「視覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、公表された著作物であつて、視覚によりその表現が認識される方式(視覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この項及び同条第四項において「視覚著作物」という。)について、専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、当該視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は公衆送信を行うことができる。ただし、当該視覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者により、当該方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。 
(聴覚障害者等のための複製等)
第三十七条の二 聴覚障害者その他聴覚による表現の認識に障害のある者(以下この条及び次条第五項において「聴覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で次の各号に掲げる利用の区分に応じて政令で定めるものは、公表された著作物であつて、聴覚によりその表現が認識される方式(聴覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この条において「聴覚著作物」という。)について、専ら聴覚障害者等で当該方式によつては当該聴覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、それぞれ当該各号に掲げる利用を行うことができる。ただし、当該聴覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者により、当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。
 一 当該聴覚著作物に係る音声について、これを文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うこと。
 二 専ら当該聴覚障害者等向けの貸出しの用に供するため、複製すること(当該聴覚著作物に係る音声を文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による当該音声の複製と併せて行うものに限る。)。

 
 著作権法第37条が上の姿になるまでの改正の変遷をまとめてみました。文化庁のサイト日本法令索引(法令沿革と審議過程がわかるデータベース)をもとにしています。なお、平成15年以前の改正については、文化庁に情報がなく、日本法令索引を目視で1つ1つ変遷を拾うことでまとめたため、見落としのある可能性があります。ご注意ください。なお、以下で引用する法規類の太字部分は、その法改正時になされた改正箇所です。
 

1. 1970年(昭和45年)の著作権法全部改正

 1970年(昭和45年)の著作権法全部改正ではじめて障害者の情報提供に関する権利制限規定が設けられました。

著作権法(昭和45年法律第48号

(点字による複製等)
第三十七条 公表された著作物は、盲人用の点字により複製することができる。
2 点字図書館その他の盲人の福祉の増進を目的とする施設で政令で定めるものにおいては、もつぱら盲人向けの貸出しの用に供するために、公表された著作物を録音することができる。

改正点

 著作権法は明治32年法律第39号の全部が改正され、昭和45年法律第48号となった。この時に障害者の障害者への情報提供に係る権利制限規定である第37条として新設された。

著作権法施行令

 ※調査中

参考

  • 著作権法 ( 昭和45年 5月 6日法律第48号 ) | 日本法令索引
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    2. 2000年(平成12年)の法改正

    著作権法(平成12年法律第56号反映))

    (点字による複製等)
    第三十七条  公表された著作物は、点字により複製することができる。
    2  公表された著作物については、電子計算機を用いて点字を処理する方式により、記録媒体に記録し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。)を行うことができる。
    3  点字図書館その他の視覚障害者の福祉の増進を目的とする施設で政令で定めるものにおいては、専ら視覚障害者向けの貸出しの用に供するために、公表された著作物を録音することができる
    (聴覚障害者のための自動公衆送信)
    第三十七条の二
    聴覚障害者の福祉の増進を目的とする事業を行う者で政令で定めるものは、放送され、又は有線放送される著作物について、専ら聴覚障害者の用に供するために、当該著作物に係る音声を文字にしてする自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行うことができる。

    改正点(平成12年法律第56号転載)

    第三十七条第一項中「盲人用の」を削り、同条第二項中「盲人」を「視覚障害者」に、「もつぱら」を「専ら」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。
     2 公表された著作物については、電子計算機を用いて点字を処理する方式により、記録媒体に記録し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。)を行うことができる。
      第三十七条の次に次の一条を加える。
      (聴覚障害者のための自動公衆送信)
     第三十七条の二 聴覚障害者の福祉の増進を目的とする事業を行う者で政令で定めるものは、放送され、又は有線放送される著作物について、専ら聴覚障害者の用に供するために、当該著作物に係る音声を文字にしてする自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行うことができる。

    著作権法施行令

     ※調査中

    参考

  • 著作権法及び万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律の一部を改正する法律 ( 平成12年 5月 8日法律第56号 ) | 日本法令索引
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    3. 2006年(平成18年)の法改正

    著作権法(平成18年法律第121号)反映)

    (点字による複製等)
    第三十七条  公表された著作物は、点字により複製することができる。
    2  公表された著作物については、電子計算機を用いて点字を処理する方式により、記録媒体に記録し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。)を行うことができる。
    3  点字図書館その他の視覚障害者の福祉の増進を目的とする施設で政令で定めるものにおいては、公表された著作物について、専ら視覚障害者向けの貸出しの用若しくは自動公衆送信(送信可能化を含む。以下この項において同じ。)の用に供するために録音し、又は専ら視覚障害者の用に供するために、その録音物を用いて自動公衆送信を行うことができる。
    (聴覚障害者のための自動公衆送信)
    第三十七条の二
    聴覚障害者の福祉の増進を目的とする事業を行う者で政令で定めるものは、放送され、又は有線放送される著作物(放送される著作物が自動公衆送信される場合の当該著作物を含む。以下この条において同じ。)について、専ら聴覚障害者の用に供するために、当該放送され、又は有線放送される著作物に係る音声を文字にしてする自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行うことができる。

    改正点(平成18年法律第121号転載)

      第三十七条第三項中「おいては」の下に「、公表された著作物について」を、「貸出しの用」の下に「若しくは自動公衆送信(送信可能化を含む。以下この項において同じ。)の用」を加え、「、公表された著作物を録音する」を「録音し、又は専ら視覚障害者の用に供するために、その録音物を用いて自動公衆送信を行う」に改める。
      第三十七条の二中「有線放送される著作物」の下に「(放送される著作物が自動公衆送信される場合の当該著作物を含む。以下この条において同じ。)」を、「当該」の下に「放送され、又は有線放送される」を加える。

    著作権法施行令

    この時は改正なし。

    参考

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    4. 2009年(平成21年)の法改正

    著作権法(平成21年法律第53号反映))

    (視覚障害者等のための複製等)
    第三十七条  公表された著作物は、点字により複製することができる。
    2  公表された著作物については、電子計算機を用いて点字を処理する方式により、記録媒体に記録し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。)を行うことができる。
    3  視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者(以下この項及び第百二条第四項において「視覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、公表された著作物であつて、視覚によりその表現が認識される方式(視覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この項及び同条第四項において「視覚著作物」という。)について、専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、当該視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該視覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者により、当該方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。
    (聴覚障害者等のための複製等)
    第三十七条の二  聴覚障害者その他聴覚による表現の認識に障害のある者(以下この条及び次条第五項において「聴覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で次の各号に掲げる利用の区分に応じて政令で定めるものは、公表された著作物であつて、聴覚によりその表現が認識される方式(聴覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この条において「聴覚著作物」という。)について、専ら聴覚障害者等で当該方式によつては当該聴覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、それぞれ当該各号に掲げる利用を行うことができる。ただし、当該聴覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者により、当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。
     一  当該聴覚著作物に係る音声について、これを文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うこと。
     二  専ら当該聴覚障害者等向けの貸出しの用に供するため、複製すること(当該聴覚著作物に係る音声を文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による当該音声の複製と併せて行うものに限る。)。

    改正点(平成21年法律第53号転載)

     第三十七条の見出し中「点字による」を「視覚障害者等のための」に改め、同条第三項を次のように改める。
    3 視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者(以下この項及び第百二条第四項において「視覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、公表された著作物であつて、視覚によりその表現が認識される方式(視覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この項及び同条第四項において「視覚著作物」という。)について、専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、当該視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該視覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者により、当該方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。
     第三十七条の二を次のように改める。
     (聴覚障害者等のための複製等)
    第三十七条の二 聴覚障害者その他聴覚による表現の認識に障害のある者(以下この条及び次条第五項において「聴覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で次の各号に掲げる利用の区分に応じて政令で定めるものは、公表された著作物であつて、聴覚によりその表現が認識される方式(聴覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この条において「聴覚著作物」という。)について、専ら聴覚障害者等で当該方式によつては当該聴覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、それぞれ当該各号に掲げる利用を行うことができる。ただし、当該聴覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者により、当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。
     一 当該聴覚著作物に係る音声について、これを文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うこと。
     二 専ら当該聴覚障害者等向けの貸出しの用に供するため、複製すること(当該聴覚著作物に係る音声を文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による当該音声の複製と併せて行うものに限る。)。

    著作権法の一部を改正する法律案に対する衆議院・参議院の附帯決議

    2009年の改正では、同法の改正について、著作権法第37条に関する付帯決議が衆議院と参議院でなされています。

    衆議院

    三 障害者のための著作物利用の円滑化に当たっては、教科用拡大図書や授業で使われる副教材の拡大写本等の作成を行うボランティア活動がこれまでに果たしてきた役割にかんがみ、その活動が支障なく一層促進されるよう努めること。著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

    参議院

    三、障害者の情報アクセスを保障し、情報格差を是正する観点から、本法の運用及び政令の制定に当たっては、障害の種類にかかわらず、すべての障害者がそれぞれの障害に応じた方式の著作物を容易に入手できるものとなるよう、十分留意すること。
    四、教科用拡大図書や副教材の拡大写本を始め、点字図書、録音図書等の作成を行うボランティアがこれまで果たしてきた役割にかんがみ、今後もボランティア活動が支障なく一層促進されるよう、その環境整備に努めること。
    七、国立国会図書館において電子化された資料については、情報提供施設として図書館が果たす役割の重要性にかんがみ、読書に困難のある視覚障害者等への情報提供を含め、その有効な活用を図ること。
    [PDF]著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

    著作権法施行令(平成21年政令第299号)

    (視覚障害者等のための複製等が認められる者)
    第二条 法第三十七条第三項(法第八十六条第一項及び第百二条第一項において準用する場合を含む。)の政令で定める者は、次に掲げる者とする。
     一 次に掲げる施設を設置して視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者(イ、ニ又はチに掲げる施設を設置する者にあつては国、地方公共団体又は一般社団法人等、ホに掲げる施設を設置する者にあつては地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人に限る。)
      イ 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第七条第一項の知的障害児施設及び盲ろうあ児施設
      ロ 大学等の図書館及びこれに類する施設
      ハ 国立国会図書館
      ニ 身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設
      ホ 図書館法第二条第一項の図書館(司書等が置かれているものに限る。)
      ヘ 学校図書館法(昭和二十八年法律第百八十五号)第二条の学校図書館
      ト 老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の三の養護老人ホーム及び特別養護老人ホーム
      チ 障害者自立支援法(平成十七年法律第百二十三号)第五条第十二項に規定する障害者支援施設及びする自立訓練、同条第十四項に規定する就労移行同条第一項に規定する障害福祉サービス事業(同条第六項に規定する生活介護、同条第十三項に規定支援又は同条第十五項に規定する就労継続支援を行う事業に限る。)を行う施設
     二 前号に掲げる者のほか、視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人(法第二条第六項に規定する法人をいう。以下同じ。)のうち、視覚障害者等のための複製又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの
    2 文化庁長官は、前項第二号の指定をしたときは、その旨を官報で告示する。 
    (聴覚障害者等のための複製等が認められる者)
    第二条の二 法第三十七条の二(法第八十六条第一項及び第百二条第一項において準用する場合を含む。)の政令で定める者は、次の各号に掲げる利用の区分に応じて当該各号に定める者とする。
     一 法第三十七条の二第一号(法第八十六条第一項において準用する場合を含む。)に掲げる利用 次に掲げる者
      イ 身体障害者福祉法第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設を設置して聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者(国、地方公共団体又は一般社団法人等に限る。)
      ロ イに掲げる者のほか、聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人のうち、聴覚障害者等のための複製又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの
     二 法第三十七条の二第二号(法第八十六条第一項及び第百二条第一項において準用する場合を含む。)に掲げる利用 次に掲げる者(同号の規定の適用を受けて作成された複製物の貸出しを文部科学省令で定める基準に従つて行う者に限る。)
      イ 次に掲げる施設を設置して聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者((2)に掲げる施設を設置する者にあつては国、地方公共団体又は一般社団法人等、(3)に掲げる施設を設置する者にあつては地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人に限る。)
       (1) 大学等の図書館及びこれに類する施設
       (2) 身体障害者福祉法第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設
       (3) 図書館法第二条第一項の図書館(司書等が置かれているものに限る。)
       (4) 学校図書館法第二条の学校図書館
      ロ イに掲げる者のほか、聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人のうち、聴覚障害者等のための複製を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの
    2 文化庁長官は、前項第一号ロ又は第二号ロの指定をしたときは、その旨を官報で告示する。

    改正点(平成21年政令第299号転載)

    第二条及び第二条の二を次のように改める。
    (視覚障害者等のための複製等が認められる者)
    第二条 法第三十七条第三項(法第八十六条第一項及び第百二条第一項において準用する場合を含む。)の政令で定める者は、次に掲げる者とする。
     一 次に掲げる施設を設置して視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者(イ、ニ又はチに掲げる施設を設置する者にあつては国、地方公共団体又は一般社団法人等、ホに掲げる施設を設置する者にあつては地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人に限る。)
      イ 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第七条第一項の知的障害児施設及び盲ろうあ児施設
      ロ 大学等の図書館及びこれに類する施設
      ハ 国立国会図書館
      ニ 身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設
      ホ 図書館法第二条第一項の図書館(司書等が置かれているものに限る。)
      ヘ 学校図書館法(昭和二十八年法律第百八十五号)第二条の学校図書館
      ト 老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の三の養護老人ホーム及び特別養護老人ホーム
      チ 障害者自立支援法(平成十七年法律第百二十三号)第五条第十二項に規定する障害者支援施設及びする自立訓練、同条第十四項に規定する就労移行同条第一項に規定する障害福祉サービス事業(同条第六項に規定する生活介護、同条第十三項に規定支援又は同条第十五項に規定する就労継続支援を行う事業に限る。)を行う施設
     二 前号に掲げる者のほか、視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人(法第二条第六項に規定する法人をいう。以下同じ。)のうち、視覚障害者等のための複製又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの
    2 文化庁長官は、前項第二号の指定をしたときは、その旨を官報で告示する。 
    (聴覚障害者等のための複製等が認められる者)
    第二条の二 法第三十七条の二(法第八十六条第一項及び第百二条第一項において準用する場合を含む。)の政令で定める者は、次の各号に掲げる利用の区分に応じて当該各号に定める者とする。
     一 法第三十七条の二第一号(法第八十六条第一項において準用する場合を含む。)に掲げる利用 次に掲げる者
      イ 身体障害者福祉法第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設を設置して聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者(国、地方公共団体又は一般社団法人等に限る。)
      ロ イに掲げる者のほか、聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人のうち、聴覚障害者等のための複製又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの
     二 法第三十七条の二第二号(法第八十六条第一項及び第百二条第一項において準用する場合を含む。)に掲げる利用 次に掲げる者(同号の規定の適用を受けて作成された複製物の貸出しを文部科学省令で定める基準に従つて行う者に限る。)
      イ 次に掲げる施設を設置して聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者((2)に掲げる施設を設置する者にあつては国、地方公共団体又は一般社団法人等、(3)に掲げる施設を設置する者にあつては地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人に限る。)
       (1) 大学等の図書館及びこれに類する施設
       (2) 身体障害者福祉法第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設
       (3) 図書館法第二条第一項の図書館(司書等が置かれているものに限る。)
       (4) 学校図書館法第二条の学校図書館
      ロ イに掲げる者のほか、聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人のうち、聴覚障害者等のための複製を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの
    2 文化庁長官は、前項第一号ロ又は第二号ロの指定をしたときは、その旨を官報で告示する。

    著作権法施行規則(平成21年文部科学省令第38号)

     聴覚障害者等用複製物の「貸出しの基準」として、以下の規定が省令(著作権法施行規則<昭和45年文部省令第26号>)に新設されて規定されています。

    第三章 聴覚障害者等用複製物の貸出しの基準
    第二条の二 令第二条の二第一項第二号の文部科学省令で定める基準は、次のとおりとする。
     一 専ら著作権法(以下「法」という。)第三十七条の二第二号の規定の適用を受けて作成された複製物(以下この条において「聴覚障害者等用複製物」という。)の貸出しを受けようとする聴覚障害者等を登録する制度を整備すること。
     二 聴覚障害者等用複製物の貸出しに関し、次に掲げる事項を含む規則を定めること。
      イ 聴覚障害者等用複製物の貸出しを受ける者が当該聴覚障害者等用複製物を法第三十七条の二第二号に定める目的以外の目的のために、頒布せず、かつ、当該聴覚障害者等用複製物によつて当該聴覚障害者等用複製物に係る著作物を公衆に提示しないこと。
      ロ 複製防止手段(電磁的方法(法第二条第一項第二十号に規定する電磁的方法をいう。)により著作物のデジタル方式の複製を防止する手段であつて、著作物の複製に際しこれに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物とともに記録媒体に記録する方式によるものをいう。次号において同じ。)が用いられていない聴覚障害者等用複製物の貸出しを受ける場合に、当該貸出しを受ける者が当該聴覚障害者等用複製物を用いて当該聴覚障害者等用複製物に係る著作物を複製しないこと。
     三 複製防止手段を用いていない聴覚障害者等用複製物の貸出しをする場合は、当該聴覚障害者等用複製物に係る著作物とともに、法第三十七条の二第二号の規定により複製を行つた者の名称及び当該聴覚障害者等用複製物を識別するための文字、番号、記号その他の符号の記録(当該聴覚障害者等用複製物に係る著作物が映画の著作物である場合にあつては、当該著作物に係る影像の再生の際に併せて常に表示されるようにする記録に限る。)又は記載をして、当該貸出しを行うこと。
     四 聴覚障害者等用複製物の貸出しに係る業務を適正に行うための管理者を置くこと。
    2 前項の規定は、法第八十六条第一項及び第百二条第一項において準用する法第三十七条の二の政令で定める者に係る令第二条の二第一項第二号の文部科学省令で定める基準について準用する。

    参考

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    5. 2014年(平成26年)の法改正

    著作権法(平成26年法律第35号反映)

    (視覚障害者等のための複製等)
    第三十七条  公表された著作物は、点字により複製することができる。
    2  公表された著作物については、電子計算機を用いて点字を処理する方式により、記録媒体に記録し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。)を行うことができる。
    3  視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者(以下この項及び第百二条第四項において「視覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、公表された著作物であつて、視覚によりその表現が認識される方式(視覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この項及び同条第四項において「視覚著作物」という。)について、専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、当該視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該視覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者により、当該方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。
    (聴覚障害者等のための複製等)
    第三十七条の二  聴覚障害者その他聴覚による表現の認識に障害のある者(以下この条及び次条第五項において「聴覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で次の各号に掲げる利用の区分に応じて政令で定めるものは、公表された著作物であつて、聴覚によりその表現が認識される方式(聴覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この条において「聴覚著作物」という。)について、専ら聴覚障害者等で当該方式によつては当該聴覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、それぞれ当該各号に掲げる利用を行うことができる。ただし、当該聴覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者により、当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。
     一  当該聴覚著作物に係る音声について、これを文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うこと。
     二  専ら当該聴覚障害者等向けの貸出しの用に供するため、複製すること(当該聴覚著作物に係る音声を文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による当該音声の複製と併せて行うものに限る。)。

    改正点(平成26年法律第35号転載)

    第三十七条第三項ただし書及び第三十七条の二ただし書中「受けた者」の下に「若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者」を加える。

    著作権法の一部を改正する法律案に対する衆議院・参議院の附帯決議

      2014年の改正では、将来の第37第3項の改正も視野に入れた付帯決議が衆議院と参議院でなされています。詳しくは以下のエントリ参照。

    著作権法施行令(平成26年政令第285号より)

    (視覚障害者等のための複製等が認められる者)
    第二条 法第三十七条第三項(法第八十六条第一項及び第三項並びに第百二条第一項において準用する場合を含む。)の政令で定める者は、次に掲げる者とする。
     一 次に掲げる施設を設置して視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者(イ、ニ又はチに掲げる施設を設置する者にあつては国、地方公共団体又は一般社団法人等、ホに掲げる施設を設置する者にあつては地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人に限る。)
      イ 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第七条第一項の障害児入所施設及び児童発達支援センター
      ロ 大学等の図書館及びこれに類する施設
      ハ 国立国会図書館
      ニ 身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設
      ホ 図書館法第二条第一項の図書館(司書等が置かれているものに限る。)
      ヘ 学校図書館法(昭和二十八年法律第百八十五号)第二条の学校図書館
      ト 老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の三の養護老人ホーム及び特別養護老人ホーム
      チ 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)第五条第十一項に規定する障害者支援施設及び同条第一項に規定する障害福祉サービス事業(同条第七項に規定する生活介護、同条第十二項に規定する自立訓練、同条第十三項に規定する就労移行支援又は同条第十四項に規定する就労継続支援を行う事業に限る。)を行う施設
     二 前号に掲げる者のほか、視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人(法第二条第六項に規定する法人をいう。以下同じ。)のうち、視覚障害者等のための複製又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの
    2 文化庁長官は、前項第二号の指定をしたときは、その旨を官報で告示する。 
    (聴覚障害者等のための複製等が認められる者)
    第二条の二 法第三十七条の二(法第八十六条第一項及び第三項並びに第百二条第一項において準用する場合を含む。)の政令で定める者は、次の各号に掲げる利用の区分に応じて当該各号に定める者とする。
     一 法第三十七条の二第一号(法第八十六条第一項及び第三項において準用する場合を含む。)に掲げる利用 次に掲げる者
      イ 身体障害者福祉法第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設を設置して聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者(国、地方公共団体又は一般社団法人等に限る。)
      ロ イに掲げる者のほか、聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人のうち、聴覚障害者等のための複製又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの
     二 法第三十七条の二第二号(法第八十六条第一項及び第百二条第一項において準用する場合を含む。)に掲げる利用 次に掲げる者(同号の規定の適用を受けて作成された複製物の貸出しを文部科学省令で定める基準に従つて行う者に限る。)
      イ 次に掲げる施設を設置して聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者((2)に掲げる施設を設置する者にあつては国、地方公共団体又は一般社団法人等、(3)に掲げる施設を設置する者にあつては地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人に限る。)
       (1) 大学等の図書館及びこれに類する施設
       (2) 身体障害者福祉法第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設
       (3) 図書館法第二条第一項の図書館(司書等が置かれているものに限る。)
       (4) 学校図書館法第二条の学校図書館
      ロ イに掲げる者のほか、聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人のうち、聴覚障害者等のための複製を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの
    2 文化庁長官は、前項第一号ロ又は第二号ロの指定をしたときは、その旨を官報で告示する。

    改正点(平成26年政令第285号転載)

    第二条第一項中「第八十六条第一項及び」の下に「第三項並びに」を加える。第二条の二第一項各号列記以外の部分中「及び」の下に「第三項並びに」を加え、同項第一号中「第八十六条第一項」の下に「及び第三項」を加える。

    著作権法施行規則

    この時の第37条に係る改正はなし

    参考

     
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    6. 2018年(平成30年)の法改正

    著作権法(平成30年法律第30号反映)

    (視覚障害者等のための複製等)
    第三十七条 公表された著作物は、点字により複製することができる。
    2 公表された著作物については、電子計算機を用いて点字を処理する方式により、記録媒体に記録し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。次項において同じ。)を行うことができる。
    3 視覚障害その他の障害により視覚による表現の認識が困難な者(以下この項及び第百二条第四項において「視覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、公表された著作物であつて、視覚によりその表現が認識される方式(視覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この項及び同条第四項において「視覚著作物」という。)について、専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、当該視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は公衆送信を行うことができる。ただし、当該視覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者により、当該方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。 
    (聴覚障害者等のための複製等)
    第三十七条の二 聴覚障害者その他聴覚による表現の認識に障害のある者(以下この条及び次条第五項において「聴覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で次の各号に掲げる利用の区分に応じて政令で定めるものは、公表された著作物であつて、聴覚によりその表現が認識される方式(聴覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この条において「聴覚著作物」という。)について、専ら聴覚障害者等で当該方式によつては当該聴覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、それぞれ当該各号に掲げる利用を行うことができる。ただし、当該聴覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者により、当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。
     一 当該聴覚著作物に係る音声について、これを文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うこと。
     二 専ら当該聴覚障害者等向けの貸出しの用に供するため、複製すること(当該聴覚著作物に係る音声を文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による当該音声の複製と併せて行うものに限る。)。

    改正点(平成30年法律第30号転載)

    第三十七条第二項中「含む」の下に「。次項において同じ」を加え、同条第三項中「視覚障害者その他」を「視覚障害その他の障害により」に、「に障害のある」を「が困難な」に、「自動公衆送信(送信可能化を含む。)」を「公衆送信」に改める。

    著作権法の一部を改正する法律案に対する衆議院・参議院の附帯決議

    また、2018年の改正では、同法の改正について付帯決議が衆議院と参議院でなされています。

    衆議院

    六 本法による改正後の著作権法第三十七条第三項に規定する視覚障害者等の読書の機会の充実を図るためには、本法と併せて、当該視覚障害者等のためのインターネット上も含めた図書館サービス等の提供体制の強化、アクセシブルな電子書籍の販売等の促進その他の環境整備も重要であることに鑑み、その推進の在り方について検討を加え、法制上の措置その他の必要な措置を講ずること。著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

    参議院

    七、本法による改正後の著作権法第三十七条第三項に規定する視覚障害者等の読書の機会の充実を図るためには、本法と併せて、同項により拡大図書やDAISY等の作成を行うことが認められる主体の拡大を行うとともに、当該視覚障害者等のためのインターネット上も含めた図書館サービス等の提供体制の強化、アクセシブルな電子書籍の販売等の促進その他の環境整備も重要であることに鑑み、その推進の在り方について検討を加え、法制上の措置その他の必要な措置を講ずること。[PDF]著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

     

    著作権法施行令(平成30年政令第360号より)

    (視覚障害者等のための複製等が認められる者)
    第二条 法第三十七条第三項(法第八十六条第一項及び第三項並びに第百二条第一項において準用する場合を含む。)の政令で定める者は、次に掲げる者とする。
     一 次に掲げる施設を設置して視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者(イ、ニ又はチに掲げる施設を設置する者にあつては国、地方公共団体又は一般社団法人等、ホに掲げる施設を設置する者にあつては地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人に限る。)
      イ 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第七条第一項の障害児入所施設及び児童発達支援センター
      ロ 大学等の図書館及びこれに類する施設
      ハ 国立国会図書館
      ニ 身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設
      ホ 図書館法第二条第一項の図書館(司書等が置かれているものに限る。)
      ヘ 学校図書館法(昭和二十八年法律第百八十五号)第二条の学校図書館
      ト 老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の三の養護老人ホーム及び特別養護老人ホーム
      チ 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)第五条第十一項に規定する障害者支援施設及び同条第一項に規定する障害福祉サービス事業(同条第七項に規定する生活介護、同条第十二項に規定する自立訓練、同条第十三項に規定する就労移行支援又は同条第十四項に規定する就労継続支援を行う事業に限る。)を行う施設
      前号に掲げる者のほか、視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人(法第二条第六項に規定する法人をいう。以下同じ。)で次に掲げる要件を満たすもの
      イ 視覚障害者等のための複製又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。ロにおいて同じ。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力及び経理的基礎を有していること。
      ロ 視覚障害者等のための複製又は公衆送信を適正に行うために必要な法に関する知識を有する職員が置かれていること。
      ハ 情報を提供する視覚障害者等の名簿を作成していること(当該名簿を作成している第三者を通じて情報を提供する場合にあつては、当該名簿を確認していること)。
      ニ 法人の名称並びに代表者(法人格を有しない社団又は財団の管理人を含む。以下同じ。)の氏名及び連絡先その他文部科学省令で定める事項について、文部科学省令で定めるところにより、公表していること。
     三 視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人のうち、当該事業の実施体制が前号イからハまでに掲げるものに準ずるものとして文化庁長官が指定するもの

    2 文化庁長官は、前項第三号の規定による指定をしたときは、その旨をインターネットの利用その他の適切な方法により公表するものとする。
    (聴覚障害者等のための複製等が認められる者)
    第二条の二法第三十七条の二(法第八十六条第一項及び第三項並びに第百二条第一項において準用する場合を含む。)の政令で定める者は、次の各号に掲げる利用の区分に応じて当該各号に定める者とする。
     一 法第三十七条の二第一号(法第八十六条第一項及び第三項において準用する場合を含む。)に掲げる利用 次に掲げる者
      イ 身体障害者福祉法第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設を設置して聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者(国、地方公共団体又は一般社団法人等に限る。)
      ロ イに掲げる者のほか、聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人のうち、聴覚障害者等のための複製又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの
     二 法第三十七条の二第二号(法第八十六条第一項及び第百二条第一項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)に掲げる利用次に掲げる者(法第三十七条の二第二号の規定の適用を受けて作成された複製物の貸出しを文部科学省令で定める基準に従つて行う者に限る。)
      イ 次に掲げる施設を設置して聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者((2)に掲げる施設を設置する者にあつては国、地方公共団体又は一般社団法人等、(3)に掲げる施設を設置する者にあつては地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人に限る。)
       (1) 大学等の図書館及びこれに類する施設
       (2) 身体障害者福祉法第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設
       (3) 図書館法第二条第一項の図書館(司書等が置かれているものに限る。)
       (4) 学校図書館法第二条の学校図書館
      ロ イに掲げる者のほか、聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人のうち、聴覚障害者等のための複製を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの
    2 文化庁長官は、前項第一号ロ又は第二号ロの規定による指定をしたときは、その旨をインターネットの利用その他の適切な方法により公表するものとする。

    改正点(平成30年政令第360号転載)

     第二条第一項第二号中「のうち、視覚障害者等のための複製又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定する」を「で次に掲げる要件を満たす」に改め、同号に次のように加える。
     イ 視覚障害者等のための複製又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。ロにおいて同じ。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力及び経理的基礎を有していること。
     ロ 視覚障害者等のための複製又は公衆送信を適正に行うために必要な法に関する知識を有する職員が置かれていること。
     ハ 情報を提供する視覚障害者等の名簿を作成していること(当該名簿を作成している第三者を通じて情報を提供する場合にあつては、当該名簿を確認していること)。
     ニ 法人の名称並びに代表者(法人格を有しない社団又は財団の管理人を含む。以下同じ。)の氏名及び連絡先その他文部科学省令で定める事項について、文部科学省令で定めるところにより、公表していること。
    第二条第一項に次の一号を加える。
    三 視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人のうち、当該事業の実施体制が前号イからハまでに掲げるものに準ずるものとして文化庁長官が指定するもの
     第二条第二項中「前項第二号の」を「前項第三号の規定による」に、「官報で告示する」を「インターネットの利用その他の適切な方法により公表するものとする」に改める。
     第二条の二第一項第二号中「含む」の下に「。以下この号において同じ」を加え、「同号」を「法第三十七条の二第二号」に改め、同条第二項中「指定」を「規定による指定」に、「官報で告示する」を「インターネットの利用その他の適切な方法により公表するものとする」に改める。

    著作権法施行規則(平成30年文部科学省令第37号)

     視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人の公表事項や公表方法が第二条の三と第二条の四として新設されています(すでにあった「聴覚障害者等用複製物の貸出しの基準」(旧第二条の二)は第二条の五に移動)。

    第三章  視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人の公表事項等
    (公表事項)
    第二条の三 令第二条第一項第二号ニの文部科学省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
     一 視覚障害者等のために情報を提供する事業の内容(法第三十七条第三項(法第八十六条第一項及び第三項並びに第百二条第一項において準用する場合を含む。)の規定により複製又は公衆送信を行う著作物等の種類及び当該複製又は公衆送信の態様を含む。)
    二 令第二条第一項第二号イからハまでに掲げる要件を満たしている旨
    (公表方法)
    第二条の四 令第二条第一項第二号ニの規定による公表は、文化庁長官が定めるウェブサイトへの掲載により行うものとする。
    第三章の二
     聴覚障害者等用複製物の貸出しの基準
    第二条の五 令第二条の二第一項第二号の文部科学省令で定める基準は、次のとおりとする。
     一 専ら著作権法(以下「法」という。)第三十七条の二第二号の規定の適用を受けて作成された複製物(以下この条において「聴覚障害者等用複製物」という。)の貸出しを受けようとする聴覚障害者等を登録する制度を整備すること。
     二 聴覚障害者等用複製物の貸出しに関し、次に掲げる事項を含む規則を定めること。
      イ 聴覚障害者等用複製物の貸出しを受ける者が当該聴覚障害者等用複製物を法第三十七条の二第二号に定める目的以外の目的のために、頒布せず、かつ、当該聴覚障害者等用複製物によつて当該聴覚障害者等用複製物に係る著作物を公衆に提示しないこと。
      ロ 複製防止手段(電磁的方法(法第二条第一項第二十号に規定する電磁的方法をいう。)により著作物のデジタル方式の複製を防止する手段であつて、著作物の複製に際しこれに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物とともに記録媒体に記録する方式によるものをいう。次号において同じ。)が用いられていない聴覚障害者等用複製物の貸出しを受ける場合に、当該貸出しを受ける者が当該聴覚障害者等用複製物を用いて当該聴覚障害者等用複製物に係る著作物を複製しないこと。
     三 複製防止手段を用いていない聴覚障害者等用複製物の貸出しをする場合は、当該聴覚障害者等用複製物に係る著作物とともに、法第三十七条の二第二号の規定により複製を行つた者の名称及び当該聴覚障害者等用複製物を識別するための文字、番号、記号その他の符号の記録(当該聴覚障害者等用複製物に係る著作物が映画の著作物である場合にあつては、当該著作物に係る影像の再生の際に併せて常に表示されるようにする記録に限る。)又は記載をして、当該貸出しを行うこと。
     四 聴覚障害者等用複製物の貸出しに係る業務を適正に行うための管理者を置くこと。
    2 前項の規定は、法第八十六条第一項及び第百二条第一項において準用する法第三十七条の二の政令で定める者に係る令第二条の二第一項第二号の文部科学省令で定める基準について準用する。

    文化庁告示(平成30年文化庁告示第百十五号)

    著作権法施行令第二条第一項第二号二(法人の名称並びに代表者(法人格を有しない社団又は財団の管理人を含む。以下同じ。)の氏名及び連絡先その他文部科学省令で定める事項について、文部科学省令で定めるところにより、公表していること。)の公表場所は、著作権施行規則で、「文化庁長官が定める」としていますが、それが文化庁告示で、以下のとおり指定されています。

    著作権法施行規則(昭和四十五年文部省令第二十六号)第二条の四の規定に基づき、文化庁長官が定めるウェブサイトとして、教育利用に関する著作権等管理協議会のウェブサイトを定め、平成三十一年一月一日から施行する。
    [PDF]文化庁告示第百十五号

    参考

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    全体に係る関連エントリ

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    スクリーンリーダー関係年表(日本を中心に)

     どのスクリーンリーダーがいつごろ出ていたのかということを調べてみました。隅付き括弧(【 】)で国名が記載されているものは、その国に於けるスクリーンリーダー関係の動向です。
     日本のものを中心にまとめましたが、国内のスクリーンリーダーについてもそうですが、海外のものも、私が知りうる範囲に限られますので、これがない、あれもないというということがあるかもしれません。ご指摘いただけると幸いです。
     音声合成のことも一部掲載していますが、音声合成エンジンの数を考えると、中途半端かもしれません。

    スタンドアロンBASIC

    1983年

    • 【日本】初めて日本語の音声合成エンジンを内蔵したパソコンPC-6001mkIIが7月に発売される。
    • 【日本】大阪大学の教員末田統が日本で(?)最初のスクリーンリーダー、「IBTU」を開発。
    • 【日本】視覚障害者の斎藤正夫(現アクセステクノロジー社長)が、PC-6001mkIIの画面に表示される文字をモールス信号で表現するプログラムを12月に自作。

    MS-DOS

    1986年

    • 【日本】MS-DOS用の最初のスクリーンリーダ「BRPC」が大阪大学の末田統を中心に開発され、リリース。
    • 【日本】「OS-Talk」がFM16β用としてリリース。

    1987年

    • 【日本】斎藤正夫が「VDM100」をリリース。

    1987年

    Windows / Mac / モバイル

    1995年

  • 【米国】JAWS for Windows がリリース(Windows 3.1をサポート)
  • 【米国】Window-Eyes がリリース(Windows 3.1をサポート)
  • Windows 95リリース。これを機にPCがマウスを用いて操作するGUIへの移行が進んだため、日本の視覚障害者の間で「Windows ショック」と呼ばれる。
  • 1996年

  • 【日本】労働省の外郭団体である障害者職業総合センターが最初のWindows 用のスクリーンリーダ「95Reader」をリリース。
  • 1998年

  • 【日本】1984年に日本初の点字音声ワープロ「AOK点字音声ワープロ」を開発した高知システムが「PC-Talker」をリリース
  • 1999年

    • 【日本】「outSPOKEN」がリリース。

    2001年

  • 【日本】国際的に普及していた「JAWS」の日本語版が日本IBMからリリース(JAWS for Windows (IBM Version) Version 3.7)。
  • 【日本】らくらくホンII(F671i)で携帯電話に音声読み上げ機能が初めて搭載される。
  • 2002年

  • 【日本】「WinVoice」がリリース。
  • <

    h3>2005

    • Mac OS X v10.4 TigerでVoiceOverが初めて標準搭載(ただし、この時は日本語の音声合成エンジンは搭載されず)。

    2006年

  • 【オーストラリア】オープンソースのスクリーンリーダNVDA (Non Visual Desktop Access)の最初のバージョンがリリース。
  • 【日本】Focus Talk ver.1.0がリリース
  • 2009年

  • iPhone OS(現在のiOS)3.0 でiPhone にVoiceOverが搭載される(iPhone OSでは当初から日本語の音声合成エンジンが搭載されていたため、標準的ないPhoneの環境で日本語のスクリーンリーダーが使用できた)。
  • Windows7でスクリーンリーダー「ナレーター」が標準搭載される。ただし、日本語の音声音声エンジンは搭載せず。別途、視覚障害者にドキュメントトーカ 日本語音声合成エンジンを無償で配布)。また、Windows 7のナレーターは、Officeの読み上げにも対応していない「簡易的な」スクリーンリーダーだった。
  • 【日本】修正BSDライセンスの日本語の音声合成システムOpen-JTalkのver.1.0が公開。
  • 【日本】NVDA日本語化プロジェクトにより、NVDA 2009.1(日本語版)がリリース(ただし、NVDA 日本語版ガイドブックによると、「本当に実用的な日本語対応は2013年5月の 2013.1jp から」とのこと)。
  • 2011年

  • Mac OS X v10.7 Lionで、日本語音声合成エンジン(Kyoko)が標準で搭載される。Macの標準的な環境で日本語のスクリーンリーダーが使用できるようになる。
  • Google、ChromeVoxをリリース。
  • 2012年

  • iOS 6.0でVoiceOverが日本語の詳細読みに対応。
  • 2013年

  • Windows8でナレーターで日本語の音声音声エンジンHarukaが標準搭載。Windowsの標準的な環境で日本語のスクリーンリーダーが使用できるようになる。
  • 【日本】NVDA 2013.1jp(上で「本当に実用的な日本語対応」とされたもの)がリリース
  • 2014年

  • GW Micro、Window-Eyes日本語版をリリース。
  • 2015年

  • 【日本】アクセス・テクノロジーのスクリーンリーダーVDMWが高知システム開発のPC-Talkerに統合。
  • 参考文献

    著作権法第37条第3項及びその運用ガイドラインにかかる図書館団体と権利者団体の協議の経緯

     著作権法第37条(以下)は、図書館や点字図書館が、代替資料の製作などプリントディスアビリティのある人(著作権法の条文上は「視覚障害者等」)に情報提供を行うための重要な権利制限規定です。

    (視覚障害者等のための複製等)
    第三十七条 公表された著作物は、点字により複製することができる。
    2 公表された著作物については、電子計算機を用いて点字を処理する方式により、記録媒体に記録し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。)を行うことができる。
    3 視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者(以下この項及び第百二条第四項において「視覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、公表された著作物であつて、視覚によりその表現が認識される方式(視覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この項及び同条第四項において「視覚著作物」という。)について、専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、当該視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該視覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者により、当該方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。

     特に第37条第3項については、図書館団体と権利者団体が協議を重ねて策定した運用ガイドラインがあり、例えば、受益者である「視覚障害者等」をだれがどのように判断するのかということや、但し書きに該当する(つまり、図書館がだいたい資料を作ってはいけないもの)など、著作権法の条文だけでは判断できないことを具体的に定めています。図書館の間では著作権法第37条第3項に係るサービスを行う場合は、このガイドラインに基づいて行われています。

     著作権法第37条第3項及びガイドライン策定に至る2000年以降の経緯について、まとめてみました。なお、著作権法第37条に関係する事項を中心にまとめていますが、図書館と権利者との協議は、著作権法第37条に特化したものではなく、第31条も含む図書館業務全体を対象にしていたため、以下にまとめた経緯には、37条以外の事項も含まれています。
     
     なお、ここに掲載したものは、公開もしくは公刊された情報に基いており、本エントリに参考情報として掲載しているか、リンクが貼られています。その範囲で調べた範囲で判明しなかったもの(例えば、ガイドラインにも言及のある障害者ワーキングチームの設置された時期、経緯など)は、このエントリでは掲載しておりません。

    経緯

    2000(平成12)年

    2月

    文部省生涯学習局長の下に「コンピュータ,インターネット等を活用した著作物等の教育利用に関する調査研究協力者会議」が設置され、図書館活動に係る著作権制度の改善の在り方について検討される。9月に報告書の形で会議の提言が[PDF]「コンピュータ,インターネット等を活用した著作物等の教育利用について(報告)」(Internet Archiveに保存されていたもの)に文化庁長官に提出され、図書館に関する著作権制度改善の検討の契機となる。障害者サービスに関係するところでは以下のようにまとめられている。

    (2)視覚障害者用に著作物の録音を行える主体の範囲
    著作権法第37条第1項の例外規定により,公表された著作物は,視覚障害者用の「点字」により複製することができることとされており,この行為を無許諾で行える主体については,何ら制限が設けられていない。これに対して,公表された著作物等を視覚障害者向けの貸出しのために「録音」する行為については,この行為を無許諾で行える主体が,点字図書館等の視覚障害者の福祉の増進を目的とする施設(政令で定めるもの)に限定されている。この施設は,具体的には著作権法施行令によって定められているが,一般の公共図書館などはこれに含まれていない。
    これについては,公共図書館の関係者やボランティア・グループの関係者などの間に,視覚障害者向けの貸出しのために上記の録音行為を無許諾で行える主体を拡大すべきであるとの意見がある。
    しかし,このことについては,点字の場合と異なり録音物の場合は,視覚障害者のみによる使用を担保することが現時点では困難であり,上記のような主体の拡大を主張する人々が,まずこれを担保する方法等を検討して提案する必要があると思われる。

    10月11日

    文化庁文化審議会著作権審議会マルチメディア小委員会に図書館等における著作物等の利用に関するワーキング・グループが設置される。

    2001(平成13)年

    4月27日

    文化審議会著作権分科会情報小委員会図書館等における著作物等の利用に関するワーキング・グループが設置される(第5回 <2001年9月28日> まで開催)。図書館側・権利者側から各4名の委員が選任されて、共通のテーブルで行った検討が始まる。

    12月10日

    文化審議会著作権分科会において、上記ワーキンググループの検討・整理等の結果が以下のように報告される。

     現行の著作権法第37条第3項では、専ら視覚障害者向けの貸出の用に供するために、公表された著作物を許諾を得ずに録音することができる者は、点字図書館等の施設に限定されているが、公共図書館等においても許諾を得ずに録音できるようにしてほしいとの要望がある。
    要望の理由としては、公共図書館においても現在録音図書の作成を行っており、許諾なく録音できる主体を公共図書館に拡大することは、視覚障害者の福祉の増進という規定の趣旨にも適うことであることがあげられている。
    この事項について、権利者側からは、健常者の使用にも供されるのではないかという危惧、録音図書を業として出版する者への影響に対する懸念、音読や入力が不正確に行われかねないとの懸念等が表明された。
    文化審議会著作権分科会審議経過の概要(平成13年12月10日)

     同日、図書館等における著作物等の利用に係る権利制限の見直しに関し、同ワーキング・グループにおいて整理された事項について、関係者による具体的な協議・検討を行うため、「図書館等における著作物の利用に関する検討」が設置される(設置期間は2003年3月31日まで。会議は、第1回 <2002年2月1日> から第7回 <同年9月24日> まで開催された)。

      【検討メンバー】

    • 金原優 (社)日本書籍出版協会副理事長
    • 小阪守  全国公共図書館協議会:東京都立中央図書館サービス部長
    • 児玉昭義 (社)日本映像ソフト協会専務理事・事務局長
    • 酒川玲子 (社)日本図書館協会参与(著作権担当)
    • 土屋俊 国公私立大学図書館協力委員会:千葉大学教授
    • 中西敦男 学術著作権協会常務理事
    • 前園主計 専門図書館協議会著作権委員会委員長
    • 三田誠広 (社)日本文芸家協会常務理事・知的所有権委員会委員長
    <「図書館等における著作物の利用に関する検討」に関する参考>

    2002(平成14)年

    9月27日

    文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第4回)において、「図書館等における著作物の利用に関する検討」の検討結果として、図書館における視覚障害者のための複製について以下のように報告される。

     当面、図書館団体と権利者団体が協力して、「簡便な許諾契約システム」「事前の意思表示システム」等の構築を行うことで、両者の意見が一致した。(法改正については、これらのシステムの効果を評価したうえで検討する。)
    「教育」「図書館」関係の権利制限見直しの概要(文化審議会著作権分科会法制問題小委員会 <第4回> 資料3 )

    2003(平成15)年

    1月

    「図書館等における著作物の利用に関する検討」に参加していた個人の資格で覚書を取り交わし、「図書館等における著作物等の利用に関する当事者協議」が開始される。

    2004年(平成16年)

    3月

    国公私立大学図書館協力委員会と日本著作出版権管理システム、学術著作権協会の間で図書館間相互貸借(ILL)のためのファクシミリ、インターネット送信のための無償許諾を 権利者側団体から得る

    4月30日

    日本図書館協会と日本文芸家協会の間で「視覚障害者のための録音図書作成についての公共図書館等における音訳資料作成の一括許諾に関する協定書」を締結される。

    8月1日

    「公共図書館等における音訳資料作成の一括許諾に関する協定書」に基づく障害者用音訳資料作成の一括許諾の申し込み受付の開始。

    5月25日

    「図書館における著作物の利用に関する当事者協議会」設置。権利者側と図書館側との各団体が委員を派遣して構成。以下の図書館側5団体、権利者側 6団体、計11 団体が、2,3 ヶ月に1回のペースで図書館における著作権問題の解決に向けて協議。

      ■ 図書館団体

    • 国公私立大学図書館協力委員会
    • 社団法人全国学校図書館協議会
    • 社団法人日本図書館協会
    • 全国公共図書館協議会
    • 専門図書館協議会
    • その他オブザーバとして国立国会図書館(2006<平成18>年から)など

     

      ■ 権利者団体(団体の五十音順)

    • 有限責任中間法人 学術著作権協会
    • 社団法人 日本映像ソフト協会
    • 社団法人 日本書籍出版協会
    • 株式会社 日本著作出版権管理システム
    • 社団法人 日本複写権センター
    • 社団法人 日本文藝家協会

    当事者協議会設置と同じタイミング?

    「著作権に関する図書館団体懇談会」設置。座長は土屋俊先生。2,3ヶ月に1回のペースで会合が開催されていたようである。

      ■ 参加した図書館団体

    • 公立大学図書館協議会
    • 国立国会図書館
    • 国立大学図書館協議会
    • 社団法人全国学校図書館協議会
    • 社団法人日本図書館協会
    • 私立大学図書館協会
    • 全国公共図書館協議会
    • 専門図書館協議会
    • 日本看護図書館協議会

    2005(平成17)年

    3月30日

    文化庁文化審議会著作権分科会法制問題小委員会平成17年第2回(2005年3月30日)において、常世田良氏より図書館関係の権利制限について要望事項が提出される。障害者サービス関係は以下。

    (E)著作権法第37条第3項について、複製の方法を録音に限定しないこと、利用者を視覚障害者に限定しないこと、対象施設を視覚障害者福祉施設に限定しないこと、視覚障害者を含む読書に障害をもつ人の利用に供するため公表された著作物の公衆送信等を認めることについて
    1 現行制度
     現行の著作権法第37条第3項においては、録音図書の作成者を視覚障害者福祉施設に限定するとともに、録音図書の貸出対象者を視覚障害者のみに限定している。また、録音データの公衆送信を権利制限の範囲に含めていない。
    2 当該制度に関する著作権に係る問題点
     図書館は「国民の教育と文化の発展に寄与する」ことを目的に、「資料を収集し、一般公衆の利用に供する」ために設置されている(図書館法第1条及び第3条)。ここにいう「一般公衆」には、障害のある人も当然含まれている。そして、障害のある人には、その人が利用できる形態の資料を収集し、あるいは利用できる形態に換えて資料を提供することによって、図書館法に掲げる当該目的を実現することになる。
     現行の著作権法第37条は、昭和45年の現行法制定に伴い追加されたものであるが、当時は公共図書館等における障害者サービスの実施館はほとんどなく、法制定以降に発展したものである。現在では公共図書館等における障害者サービス抜きに、障害者への情報保障は考えられないまでになっている。
     ところが、現行制度では、視覚障害者福祉施設とは言えない公共図書館、大学図書館、国立国会図書館等においては、視覚障害者向けの録音であっても無許諾ではできず、また、視覚障害者福祉施設であっても、視覚障害以外の利用者に対して録音資料を無許諾で提供できない。また、障害者への情報提供の迅速化と安定的な供給の確保のために不可欠な録音のマスターの保存についても問題を抱えている。
     また、現行著作権法では、録音資料の利用者を視覚障害者に限定しているが、録音資料は上肢障害でページをめくれない人や高齢で活字図書が読めない人、ディスレクシア(難読・不読症)、知的障害者等に対しても有効な読書手段であり、図書館に対しても提供を求める声が少なくない。
     さらに最近では、テキストデータを活用したデジタル媒体による読書をする障害者も増えている。また通常の文字の大きさでは読めない弱視者等のための拡大文字資料、触る絵本や読みやすくリライトされた図書、多様な読書障害者が利用できる国際標準規格のDAISY資料など様々な資料が求められているが、いずれも現行著作権法の規定により自由に製作、複製、提供ができないこととされている。
     さらに、一部の公共図書館、点字図書館では、視覚障害者等に対して、著作権者の許諾を得た音訳データのインターネット配信を実施している。ブロードバンド時代を迎え、各種障害者にとってインターネットを活用してのデータ作成や、情報提供は大きな役割を果たすものと考えられるが、著作権許諾が壁となって大きく進展できないでいる。時代の趨勢にあわせて公衆送信の送信データ内容、送信対象、そして公衆送信できる施設等の範囲を拡大し、多様な障害者の情報環境の改善を図ることが必要ではないかと考える。このような、時代の進展に応じた情報提供手段(情報障害者が利用できる形への変換)を法的に認めていかなければ、情報化社会における障害者の情報環境はこれまで以上に厳しいものとなるのではないかと考える。
    3 著作権法の改正以外による当該問題の解決策
     許諾契約による解決策が考えられるが、これによる場合、項目(A)の中で記した煩瑣な手続が必要となる。その結果、健常者よりも不利な状況に立たされている障害者が、情報アクセスにおいても、この手続に要する時間だけ更に不利な状況に立たされることになり、更にいえば、著作権者の特定や所在が確認できなかった場合、事実上障害者の情報アクセスの機会を剥奪することになる。
     したがって、著作権法の改正以外には当該問題の解決策は存在しないものと考える。
    4 その他
     現在、日本図書館協会と日本文藝家協会との間で協定を結び、文藝家協会所属の作家の作品については、事前登録した図書館においては個々の許諾事務が不要となるシステムが立ち上がっている。しかし、図書館における録音は文学作品だけではなく、あらゆる分野に及んでおり、さらに翻訳書も考えると、このシステムだけでは到底対応できないものと考える。
     なお、アメリカ合衆国、スウェーデン、韓国等においては、要望事項に掲げた内容の法整備がなされているものと聞いている。
    法制問題小委員会平成17年第2回(2005年3月30日) 資料3 図書館関係の権利制限について(常世田委員作成資料)

    2006(平成18)年

    1月1日

    「図書館における著作物の利用に関する当事者協議会」を構成する図書館関係団体と権利者団体の協議の結果、著作権法第31条に関する2つのガイドラインが策定される。

    1月

    文化審議会著作権分科会報告書(平成18年1月)[PDF]が発表。報告書に掲載された著作権法37条に関係する主な検討結果は以下のとおり(詳細は報告書の28ページから33ページを参照のこと)。
    ○著作権法第37条第3項について,複製の方法を録音に限定しないこと,利用者を視覚障害者に限定しないこと,対象施設を視聴覚障害者情報提供施設等に限定しないこと, 視覚障害者を含む読書に障害をもつ人の利用に供するため公表された著作物の公衆送信等を認めることについて

    イ 検討結果
    障害者による著作物の利用を促進するという趣旨に対しては支持する意見が多数であった。
    ただし一方で,一般に読書に障害を持つ人々の用に供するために図書館が複製や公衆送信を自由に行い得るとすることは問題がある,要望の範囲が広範に過ぎる,目的外利用されないようにどのように担保されるかが明らかにされていない,趣旨の明確化が必要であるなどの指摘があり,現行法の基本的な枠組みを変更することなく,障害者への一層の配慮をどのように具体化し得るのか,整理が必要である。 また現在,権利者団体と図書館団体との間で,録音図書の作成に関してガイドラインが締結され,一定の条件の下で公共図書館での複製が可能となっており,あえて権利制限規定を見直す必要性は小さいという意見があった。
    したがって,本件については,図書館関係者から障害者にとっての権利制限の必要性を十分踏まえた,より具体的で特定された提案を待って,権利者団体及び図書館関係者間で行っている協議の状況や,国民全体が均等に,より高いレベルでの文化の享受し得るという観点も踏まえつつ検討することが適当である。

    ○視覚障害者情報提供施設等において,専ら視覚障害者に対し,公表された録音図書の公衆送信をできるようにすることについて

    イ 検討結果
    視覚障害者による録音図書の利用をインターネットにより促進することが情報通信技術のもたらす利益を社会的弱者に広く及ぼすという意味で,極めて大きな公益的価値を有すると認められるため,本件要望の趣旨に沿って権利制限を行うことが適当であると考える。
    ただし,権利制限を認める場合には,対象者が専ら視覚障害者に限定されることや目的外利用を防ぐこと等を条件にすることとし,権利者の利益を害しないような配慮が必要である。

    2009(平成21)年

    1月

    文化審議会著作権分科会報告書(平成21年1月)[PDF]が発表。「第1編 法制問題小委員会 第3章 権利制限の見直しについて 第2節 障害者の著作物利用に係る権利制限の見直しについて 」において、検討結果が以下のとおりまとめられた(長文ですが、重要なので、以下に転載します)。

    2 検討結果
    (1)全体の方向性
     障害者の著作物利用についての権利制限は、これまで障害者の福祉の増進、社会参加の促進等の観点から規定が設けられてきている。一方、今回の検討においては、いわゆる情報アクセスの保障、情報格差是正の観点から対応が求められており、障害者にとって、録音物等のその障害に対応した形態の著作物がなければ健常者と同様に著作物を享受できないという状況を解消することが必要とされている。このような観点からは、従来の権利制限規定の対象となっていた障害種の障害者に限らず、多様な障害に対応して各障害者に必要な形態の著作物を制作することについても、基本的に高い公益性が認められると考えられる。
     このような観点から、本小委員会における検討では、障害者が著作物を利用できる可能性を確保する方向で著作権法上可能な措置について検討すべきであるとの意見や、障害者福祉の問題は、諸外国と比べて日本固有の事情があるとは考えられないことから、諸外国の例等を参考にそれと同程度の立法措置を講ずべきとの意見があった。また、検討に当たっては、健常者向けのマーケットや障害者向けのマーケットへの影響について考慮すべきであるとの意見があった。
     以上を基本的な方向性としつつ、各検討課題における対応方策について、次のとおり検討を行った。
    (2)視覚障害者関係についての対応方策(1(1)ア・イ関係)
    ① 障害者の私的複製を代わって行うための措置について
     現行の著作権法第 30 条では、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的として、その使用する者が著作物を複製することができることとされている。この「使用する者」については、使用者自身であることが原則であるものの、その支配下において補助的な立場にある者が使用者自身に代わって複製することも許されると解されている。このため、このような考え方を前提とすれば、ボランティア等が障害者の自宅において録音物を作成するような場合や障害者自身と個人的関係のある者が録音物を作成するような場合など、第 30 条の私的使用目的の複製に該当するものもあると考える。
     一方、現在、点字図書館で行われているプライベートサービスのように、外部の機関が多数の視覚障害者からの個人的な複製の要望に応じて録音物を作成するとの形態については、第 30 条の範囲の複製とは考えにくい。また、点字図書館が対象施設となっている第 37 条第 3 項では、視覚障害者の用に供するために、公表された著作物を録音することができることとされているが、その目的は、貸出しの用に供するため又は自動公衆送信の用に供するためとの限定がある。
     平成 18 年 1 月の著作権分科会報告書では、「私的使用のための複製」による対応を考えるのか、一定の障害者向けのサービスについて特別の権利制限を考えるのかについて、実態を踏まえた上で検討すべきとされていたところである。
     この点、第 30 条の私的使用目的の複製は、家庭内の行為について規制することが実際上困難である一方、零細な複製であり、著作権者等の経済的利益を不当に害するとは考えられないという趣旨に基づいた規定であり、前述のプライベートサービスのように、外部の機関が多数の視覚障害者からの要望に応じて録音物を作成するとの形態について、第 30 条の範囲を拡大して対応することは、本来の規定の趣旨から外れるものと考えられる。
    したがって、点字図書館がプライベートサービスとして視覚障害者等の私的使用目的の複製を第三者が代わって行うための措置としては、別途、第 37 条第 3 項に基づき録音図書の作成を行う目的について、貸出しの用に供するため又は自動公衆送信の用に供するために限らないこととし、視覚障害者等が所有等をする著作物から録音図書を作成・譲渡することが可能となる措置を講ずることが適当と考えられる。
    ② 第 37 条第 3 項の複製を行う主体の拡大について
    現行の第 37 条第 3 項では、「点字図書館その他視覚障害者の福祉を増進する目的とする施設」において録音が可能としており、具体的には、視覚障害者を対象とした施設が指定されているが、これらのほか、公共図書館等においても録音を可能とするよう要望がなされている。
    現在、国立国会図書館や一般図書館において、日本図書館協会と日本文藝家協会が実施する「障害者用音訳資料ガイドライン」に従い、権利処理を行った上で録音図書(デイジー図書を含む)の作成を実施してきている これらの施設は、同ガイドラインの下で、登録制などにより利用者が視覚障害者等であることの確認が行える体制が整えられているものとして事業を実施しているものである。このように利用者の確認等が整えられ、視覚障害者の福祉等に携わる施設と同等の取組が可能と認められる公共施設については、第 37 条第 3 項の規定に基づく複製主体として含めていくことが適当と考えられる。
    ③ 第37条第3項の対象者の範囲の拡大について今回の権利制限は、録音物がなければ、健常者と同様に著作物を享受できない者への対応という観点から検討が必要とされているものであり、その必要性は、理念的には視覚障害者に限られるものではないと考えられることから、障害等により著作物の利用が困難な者について、可能な限り権利制限の対象に加えることが適切である。
    もっとも、権利制限規定は、権利の範囲を定める規定との性格上から、また法に関する予測可能性を確保する観点から、規定の適用範囲を明確にしておく必要がある。範囲の明確化の方法としては、例えば、障害者手帳や医師の診断書の有無等の基準により限定する方法があるが、そのほか施設の利用登録等により確認がなされた者等を対象とするといった方法で認めていくべきとの要望もある。このため、このような意見等を踏まえ、規定の明確性を担保しつつ可能な限り範囲を広げていくよう努めることが適当と考えられる。
    ④ 第37条第3項の複製方式の拡大について
     本事項については、対象とする障害種の範囲の検討と密接な関係を有するため、知的障害者、発達障害者等関係の課題と併せて検討を行った。(2(5)で詳述)
    ⑤ 第 37 条第 3 項の範囲の拡大に関するその他の条件について
     今後、障害者向けの録音物等の市場が大きくなってくることも考えられ、営利事業としてこれらの複製を行う場合は権利制限の取扱いを慎重に検討すべきではないかとの意見があった。
     また、コンテンツの提供者等によりこれらの録音物が提供されることが本来望ましいとの考え方 45からは、コンテンツ提供者自らが、障害者に利用しやすい形態で提供するインセンティブを阻害しないようにする必要があると考えられることから、録音物等の形態の著作物が市販されている場合については、権利制限を適用しないこととすることが適当と考えられる。
    (中略)
    (4)知的障害者、発達障害者等関係についての対応方策(1(1)オ・カ関係)
    ① 現行規定での対応可能性
     ヒアリングの中では、学校教育に関係した事例が多く見られたが、著作権法第35条第1項では、学校その他の教育機関において、教育を担任する者及び授業を受ける者が、授業の過程において使用する場合には、公表された著作物を複製することができ、また翻案して利用することもできる(第 43 条第 1 号)とされている。
     この「教育を担任する者」については、その支配下において補助的な立場にある者が代わって複製することも許されると考えられており、学校教育、社会教育、職業訓練等の教育機関での活用であれば、要約等やデイジー図書の製作の態様によっては、現行法においても許諾を得ずに複製できる場合があると考えられる。ただし、複製の分量や態様、その後の保存等の面においては、必要と認められる限度に限られる。
    一方、ヒアリングの中では、これらの取組の中核的な施設のようなものがデイジー図書の蓄積や提供を行う構想等も提示されているが、そのような形態であれば、第35条第1項の範囲の複製とは考えにくい。
    ② 対応方策について
     知的障害者、発達障害者等にとって、著作物を享受するためには、一般に流通している著作物の形態では困難な場合も多く、デイジー図書が有効である旨が主張されており、著作物の利用可能性の格差の解消の観点から、視覚障害者や聴覚障害者の場合と同様に、本課題についても、何らかの対応を行う必要性は高いと考えられる。
     このような観点から、視覚障害者関係(上記(2))、聴覚障害者関係(上記(3))の権利制限の対象者の拡大を検討していく中で、権利制限規定の範囲の明確性を確保する必要性はあるものの、可能な限り、知的障害、発達障害等により著作物の利用が困難な者についてもこの対象に含めていくよう努めることが適切である。その際、複製の方式については、録音等の方式に限定せず、それぞれの障害に対応した複製の方法が可能となるよう配慮されることが望ましいと考えられる。
    (5)まとめ
     以上のように、障害者の著作物利用についての権利制限については、障害者の情報アクセスを保障し、情報格差を是正する観点から、対象とする障害種を視覚障害や聴覚障害に限定することなく、障害等により著作物の利用が困難な者であれば、可能な限り権利制限規定の対象に含め、また、複製等の主体、方式についてもそれに応じて拡大を行う方向で、速やかに所要の措置を講ずることが適当である。
     また、権利者への影響の観点から、権利制限を行うには一定条件の確保を前提とするために速やかな措置が難しい事項があった場合についても、その条件が整い次第、所要の措置を実施に移すことが適当と考える。
    文化審議会著作権分科会報告書(平成21年1月)[PDF]

    6月19日

    著作権法の一部を改正する法律(平成21年法律第54号)公布(改正内容については、「2009年著作権法改正によって図書館にできるようになったこと:障害者サービスに関して」を参照)。

    12月

    上記の改正著作権法の施行(2010年1月1日)に伴い、障害者用音訳資料作成の一括許諾システムが終了する。

    2010(平成22)年

    1月1日

    著作権法の一部を改正する法律(平成21年法律第54号)施行。

    2月18日

    「図書館における著作物の利用に関する当事者協議会」を構成する図書館関係団体と権利者団体の協議の結果、「図書館の障害者サービスにおける著作権法第37条第3項に基づく著作物の複製等に関するガイドライン」が策定される。

    2013(平成25)年

    9月2日

    図書館の障害者サービスにおける著作権法第37条第3項に基づく著作物の複製等に関するガイドライン」の別表を一部修正。同日、メンバーの交代等のため、当事者協議会の下に設置されていた図書館の障害者サービスにおける著作権法第37条第3項に基づく著作権の複製等に関するガイドライン検討のためのワーキングチームが解散。

    <参考>

    12月25日

    当時者協議会第38回会合が開催。この会合以降、当事者協議会の会合は開かれてはいない。

    <参考>

    全体に係る参考文献

    <ul>
    <li><a href="http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/">文化審議会著作権分科会 | 文化庁</a></li>
    <li><a href="http://www.jla.or.jp/Portals/0/html/fukusya/sankou.pdf">[PDF]「(参考資料) 図書館における著作物の利用に関する当事者協議会」について </a></li>
    <li><a href="http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I026333637-00">著作権法第37条に関する『図書館ガイドライン』について : 2015-03|書誌詳細|国立国会図書館サーチ</a></li>
    <li><a href="http://doi.org/10.20722/jcul.82">最近10年間における大学図書館に関係する著作権法の改正の動向について / 南亮一 大学図書館研究 Vol. 93 (2011)</a></li>
    <li><a href="http://current.ndl.go.jp/ca1528">CA1528 - 研究文献レビュー:図書館と著作権問題 / 村上泰子 | カレントアウェアネス・ポータル</a></li>
    <li><a href="http://www.normanet.ne.jp/~housou/copyright/index.html">障害者放送協議会 著作権委員会の活動</a></li>
    <li><a href="http://www.janul.jp/j/documents/index.html">国立大学図書館協会活動報告</a></li>
    

    [PDF]「著作権法第37条ガイドラインと大学のスタンス」(常世田良 第2回アカデミック・リンクセミナー 「障害者差別解消法と学修支援」 2016年2月19日)

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