スクリーンリーダー関係年表(日本を中心に)

 どのスクリーンリーダーがいつごろ出ていたのかということを調べてみました。隅付き括弧(【 】)で国名が記載されているものは、その国に於けるスクリーンリーダー関係の動向です。
 日本のものを中心にまとめましたが、国内のスクリーンリーダーについてもそうですが、海外のものも、私が知りうる範囲に限られますので、これがない、あれもないというということがあるかもしれません。ご指摘いただけると幸いです。
 音声合成のことも一部掲載していますが、音声合成エンジンの数を考えると、中途半端かもしれません。

スタンドアロンBASIC

1983年

  • 【日本】初めて日本語の音声合成エンジンを内蔵したパソコンPC-6001mkIIが7月に発売される。
  • 【日本】大阪大学の教員末田統が日本で(?)最初のスクリーンリーダー、「IBTU」を開発。
  • 【日本】視覚障害者の斎藤正夫(現アクセステクノロジー社長)が、PC-6001mkIIの画面に表示される文字をモールス信号で表現するプログラムを12月に自作。

MS-DOS

1986年

  • 【日本】MS-DOS用の最初のスクリーンリーダ「BRPC」が大阪大学の末田統を中心に開発され、リリース。
  • 【日本】「OS-Talk」がFM16β用としてリリース。

1987年

  • 【日本】斎藤正夫が「VDM100」をリリース。

1987年

Windows / Mac / モバイル

1995年

  • 【米国】JAWS for Windows がリリース(Windows 3.1をサポート)
  • 【米国】Window-Eyes がリリース(Windows 3.1をサポート)
  • Windows 95リリース。これを機にPCがマウスを用いて操作するGUIへの移行が進んだため、日本の視覚障害者の間で「Windows ショック」と呼ばれる。
  • 1996年

  • 【日本】労働省の外郭団体である障害者職業総合センターが最初のWindows 用のスクリーンリーダ「95Reader」をリリース。
  • 1998年

  • 【日本】1984年に日本初の点字音声ワープロ「AOK点字音声ワープロ」を開発した高知システムが「PC-Talker」をリリース
  • 1999年

    • 【日本】「outSPOKEN」がリリース。

    2001年

  • 【日本】国際的に普及していた「JAWS」の日本語版が日本IBMからリリース(JAWS for Windows (IBM Version) Version 3.7)。
  • 【日本】らくらくホンII(F671i)で携帯電話に音声読み上げ機能が初めて搭載される。
  • 2002年

  • 【日本】「WinVoice」がリリース。
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    h3>2005

    • Mac OS X v10.4 TigerでVoiceOverが初めて標準搭載(ただし、この時は日本語の音声合成エンジンは搭載されず)。

    2006年

  • 【オーストラリア】オープンソースのスクリーンリーダNVDA (Non Visual Desktop Access)の最初のバージョンがリリース。
  • 【日本】Focus Talk ver.1.0がリリース
  • 2009年

  • iPhone OS(現在のiOS)3.0 でiPhone にVoiceOverが搭載される(iPhone OSでは当初から日本語の音声合成エンジンが搭載されていたため、標準的ないPhoneの環境で日本語のスクリーンリーダーが使用できた)。
  • Windows7でスクリーンリーダー「ナレーター」が標準搭載される。ただし、日本語の音声音声エンジンは搭載せず。別途、視覚障害者にドキュメントトーカ 日本語音声合成エンジンを無償で配布)。また、Windows 7のナレーターは、Officeの読み上げにも対応していない「簡易的な」スクリーンリーダーだった。
  • 【日本】修正BSDライセンスの日本語の音声合成システムOpen-JTalkのver.1.0が公開。
  • 【日本】NVDA日本語化プロジェクトにより、NVDA 2009.1(日本語版)がリリース(ただし、NVDA 日本語版ガイドブックによると、「本当に実用的な日本語対応は2013年5月の 2013.1jp から」とのこと)。
  • 2011年

  • Mac OS X v10.7 Lionで、日本語音声合成エンジン(Kyoko)が標準で搭載される。Macの標準的な環境で日本語のスクリーンリーダーが使用できるようになる。
  • Google、ChromeVoxをリリース。
  • 2012年

  • iOS 6.0でVoiceOverが日本語の詳細読みに対応。
  • 2013年

  • Windows8でナレーターで日本語の音声音声エンジンHarukaが標準搭載。Windowsの標準的な環境で日本語のスクリーンリーダーが使用できるようになる。
  • 【日本】NVDA 2013.1jp(上で「本当に実用的な日本語対応」とされたもの)がリリース
  • 2014年

  • GW Micro、Window-Eyes日本語版をリリース。
  • 2015年

  • 【日本】アクセス・テクノロジーのスクリーンリーダーVDMWが高知システム開発のPC-Talkerに統合。
  • 参考文献

    JEITAの2016年度音声認識・音声合成関連製品動向調査結果

     一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)音声入出力方式標準化専門委員会が2016年度版の「音声認識・音声合成関連製品動向調査結果」を8月に公開しています。各社が販売している音声合成エンジンの仕様がまとめられています。基本辞書の規模が一部でも掲載されているのが参考になります。スクリーンリーダー等に用いられるものを確認したい場合、「音声合成関連製品 一覧(第2分冊.PC製品)」を見ればよいのでしょうか?(ちょっとよくわからないのですが)

    「アクセシビリティ検証ツールとしてのNVDA入門」 (Japan Accessibility Conference vol.1)

    11月11日に開催されたJapan Accessibility Conference vol.1で、NVDA日本語チーム 西本卓也さんが、「アクセシビリティ検証ツールとしてのNVDA入門」というテーマでオープンソースのスクリーンリーダー、NVDAの紹介をされていました。以下はそのスライドです。

      
     カンファレンスを中継した動画のアーカイブが公開されています(西本さんのお話は以下の動画の3時間24分あたり)。私は、このカンファレンスには参加していないのですが、西本さんのお話は、ちょうどNVDAに興味を持ち始めて自分でもさわり始めた頃だったので、自分の現在の関心と見事にマッチしたので、とても勉強になりました。染み渡る感じ。
     NVDAの思想として、OS、アプリとの本来の役割分担を意識するというのは、個人的にとても共感するところがありましたが、他のスクリーンリーダーはどうなのでしょうか。なんとなくOSとアプリの中間的な層にスクリーンリーダーはあるという印象は持っていて、その中でアプリ寄り、OS寄りの差はあるように感じていたけど、そもそもスクリーンリーダーのことを何も知らないことを思い知らされました。各スクリーンリーダーの関係者の話を聞いてみたいですね。考えてみると、これまた参加できなかった10月31日のNVDAワールド 2017 – connpassは、MSのナレーターの話もあったりして、かなり貴重な機会だったんだんですね。Windowsにスクリーンリーダーが標準で搭載されたことの意味は大きくて、今後のスクリーンリーダー業界?にたぶん大きな影響を与えるだろうと思っているので、ナレーターの話聞いてみたかった。

    以下は、西本さんが発表の中でふれた関連サイトへのリンクです。



    開発者のためのNVDA (2017)
    →導入しやすいポータブル版環境(インストール不要)のNVDAが公開されている