デジタル教科書の固定レイアウトについて(日本DAISYコンソーシアム2014年度総会講演及び意見交換会 2014年10月)

2014年10月18日に行われた日本DAISYコンソーシアム2014年度総会でのJEPA村田真さんの講演と意見交換の会のテキスト書き起こしが掲載されています。

 EDUPUBの最新動向、文部科学省で行われているデジタル教材標準化の話などHPで公開されていない話が結構出ています。DAISYで教科書を実際に制作している関係者が参加しての意見交換会だったので、村田真さんとの意見交換も実務者レベルの踏み込んだものになったようです。行きたかった・・・。
村田真さんのお話では、欧米を中心に検討が進んでいるEDUPUBでは、高等教育寄りでになってしまっており、日本でニースのある小中等教育はそれほどメインじゃないということ(河村宏さん曰く、「アメリカの場合は、もう連邦法で幼稚園から高校まではライマスで全部のテキストファイルがNIMASフォーマットでナショナルレポジトリーに全部入ってしまっているので、そこはもう済んでいる」と)。
 文部科学省では、電通が受託する形で「デジタル教材等の標準化に関する企画開発委員会」(生涯学習局が所管)という事業を行っているようですが、文部科学省のサイトではこの事業についてまったくといってよいほど情報が公開されていないので、状況がほとんど見えていませんでしたが、ここでの検討状況も村田真さんがわりと詳しく話をされていたようです。構成は親委員会があって、その下にコンテンツ関係の第1分科会と、それ以外の第2分科会があるそうです(村田真さんは親委員会の委員)。教科書会社の参加が中心でアクセシビリティ関係者の参加は一人もいないので、村田真さんが孤軍奮闘されている状況がよくわかります。この事業では報告書も作成さているのですが、公開もされていないというのが解せませんね・・・。
 同じ生涯学習局が行っている事業である学びのイノベーション推進協議会でもデジタル教科書のあり方について検証がされているようですが、上の委員会との関係も正直よくわからない。

参考

DAISY Consortiumのアクセシビリティスクリーニング方法論のガイドラインとチェックリスト」(Accessibility Screening Methodology Guidelines and Checklist)日本語訳を公開します

 DAISY Consortiumが2013年5月20日に公開した「アクセシビリティスクリーニング方法論のガイドラインとチェックリスト」(Accessibility Screening Methodology Guidelines and Checklist)を日本語に翻訳してみましたので、公開します。

これは電子書籍ビューアが障害者(全盲者、ロービジョン、ろう者、難聴者、ディスレクシア、学習障害者、そして、移動に障害のある者))にとってどの程度使いやすいものかを評価するためのもので、評価のためのガイドライン及びチェックリストで構成されています。
 まだ、Rev 1.0版ですので、まだドラフトの段階のドキュメントのようです。正直、通して読んでいて全体の構成が分かりづらく、前半はもっと短くできるのではないかと思わせるところがありますが、チェックリストを掲載する「機能テスト」の項は、電子書籍ビューワにどのような機能が求められるかが一覧されていて参考になるところが多いのではないかと思います。ここに上げられた要件に日本語特有の要件を加えれば、必要な要件は揃うのではないかと個人的には思います。

関連エントリ

DAISY Planet 2014年12月号紹介

11月号に引き続き、DAISYコンソーシアムのウェブマガジンDAISY Planet Newsletters | DAISY Consortiumの2014年12月号を概要だけですが、紹介します。いつまで続くか…。

DAISY CEO Designate Appointed: Introducing Richard Orme

 Richard Orme氏がDAISY ConsortiumのCEO(最高経営責任者, chief executive officer)に任命されたことを紹介する記事。CEOのことをよくわかっていないのですが、PresidentのStephen King氏とは異なるんですね、とWikipediaのCEOの項を読んでもよく分からなかったりと・・・・。
 
 Richard Orme氏の経歴も紹介されています。一言で言えば、技術畑の人で、Royal National Institute of Blind People (RNIB)でアクセシブルな新聞サービスを開発したり、Dolphin Computer Access LtdでInnovation Directorを務めたり、発展途上国の視覚障害のある若者に教育環境の改善を目的するICEVI (International Council for the Education of Visually Impaired People)では、アクセシブル技術で途上国の若者の教育や社会参加を改善するプロジェクトでリーダーシップととっていたようです。また、Dolphin Computer Access Ltdなどで ディスレクシアなどの障害学生支援としてBookshareの英国内の大学での導入を支援したりもしていたようです。
 Richard Orme氏のウェブサイトにもこれまでの活動が掲載されています。

Accessible Books Consortium: Capacity Building Projects Galvanize Local Partnerships

 WIPOのマラケシュ条約で中心的な役割を果たすAccessible Books Consortiumは、”born accessible”な出版物の普及促進を目的とするInclusive Publishing、アクセシブルなコンテンツの共有・交換の促進を目的とするTIGAR Service、DAISYを利用できるICTスキルを持っていないプリントディスアビリティが発展途上国には多いため、そのICTスキル向上を目的とするCapacity Buildingの3つのプロジェクトを遂行しています。今回のこの記事では、そのうちのCapacity Buildingの一環としてバングラディッシュとスリランカでの活動を紹介しています。

バングラディッシュ

 現地のNGO法人Young Power in Social Action (YPSA)と共同でアクセシブルな本の製作/変換を目的とするプロジェクトをABCは行っています。2014年11月に終了した1フェーズでは90のアクセシブルな本を製作したそうです。政府や商業出版社を対象としたインクルーシブ出版に関するワークショップも開催しています。このワークショップについては、DAISY Planet 2014年9月号でも紹介されています。

スリランカ

ABCは、現地のNGO法人DAISY Lankaと了解覚書(Memorandum of Understanding)を交わして1000のアクセシブルな教材の製作を1年かけて行うプロジェクトを2014年8月から開始しています。スリランカの商業出版社3社とは、そのための電子ファイルの提供を合意しているそうです。
 なお、Accessible Books Consortiumについては、一度このブログでも紹介したことがありますので、こちらをご参照ください。

Availability above all!

Swedish DAISY Consortium Annual Conferenceがストックホルムで11月13日から14日に開催されました。この記事はその会議の概要を紹介しています。

 会議の資料と動画が公開されています(スウェーデン語ですが・・)

Obi & Tobi: New Releases Deliver Advance & Requested Features

 Obiがver.3.6にアップデートし、Tobiのver.2.4.3のテスト版が公開されたとのこと。Obiは音声DAISY、TobiはマルチメディアDAISYの製作を主とするDAISYコンソーシアムのOSSで、どちらもEPUB3の出力もサポートしています。Obiは今回のアップデートで出力する際の音声ファイルのフォーマットが増えたそうです。その他にも改良点がいくつか。Tobi 2.4.3では、構造化の機能が強化されているようです。
 今回のアップデートの詳細はこの記事(原文)か、それぞれのリリースノートをご覧ください。

DAISY Information Resources & Support Summary

DAISYコンソーシアムは情報提供のためのチャンネルをいろいろと持っていますが、それを紹介する記事です。それで終わってしまう記事ではあるのですが、せっかくなのでリンクだけも掲載しておきます。