2025年から欧州アクセシビリティ法により欧州で発行が義務付けられる電子書籍のアクセシビリティの要件

この記事は、アクセシビリティAdventカレンダー 21日目の記事です。
以前、 European Accessibility Act(欧州アクセシビリティ法 | EAA)の概要を紹介するエントリで、この法が規定する電子書籍のアクセシビリティ要件を紹介しましたが、欧州アクセシビリティ法の紹介が主で、電子書籍のアクセシビリティ要件は間接的な紹介に留まっていたため、今回は、電子書籍にフォーカスを当てて、改めてEuropean Accessibility Act(欧州アクセシビリティ法)が規定する電子書籍のアクセシビリティの要件を整理します。

1.EAAの対象に電子書籍もなるのか。

なります。
電子書籍については以下が対象になることが第2条に明記されています。

  • 電子書籍と電子書籍閲覧ソフトウェア (e-books and dedicated software)
  • 電子書籍閲覧端末 (e-readers)

2. EAAの効力発生時期

 以下のとおり。2025年6月28日からEU内で効力が発生します。

  • 2022年6月28日までに加盟国で国内法の法整備。
  • 2025年6月28日からすべての製品とサービスに適用(一部の措置を2027年6月28日まで延期することができる)。

3. EAAで義務の対象となる者

 以下の事業者が対象(個人、法人問わず)

  • 製造業者(manufacturer)
  • 認定担当者(authorised representative)
  • 輸入事業者(importer)
  • 販売業者(distributor)
  • サービス提供者 (service provider)

 つまり、電子書籍に関して言えば、出版社(製造業者)、出版取次(販売業者)、AmazonやGoogleなどの書店(販売業者/サービス提供者)等、電子書籍の制作、販売に関わる全ての事業者(個人、法人問わず)が対象になります。

4. EAAが規定する電子書籍関係のアクセシビリティの要件

 電子書籍、電子書籍の閲覧環境、書店等の電子書籍を提供するサービスに求められるアクセシビリティ要件は以下にまとめました。なお、EAAでは、有体物の電子書籍専用端末は「製品」としての要件、無体物である電子書籍と電子書籍閲覧ソフトウェアは「サービス」と整理されています。そのため、前者が「製品」としての要件、後者が「サービス」としての要件を読む必要があります。ここでは、複数のセクションに分散している要件を電子書籍に絞ってまとめています。正確な規定ぶりや要件を確認したい場合は、 European Accessibility Act(欧州アクセシビリティ法)概要と電子書籍のアクセシビリティ要件 <修正版>を参照してください。

4.1 電子書籍のアクセシビリティの要件

 以下の7つの要件です。上述のとおり、EAAでは、電子書籍は「サービス」と位置づけられていますが、「サービス」としての要件では不足すると考えられたためか、電子書籍に特化した6つの要件が追加で規定されています。以下の要件1から要件6にそれに該当します(つまり、要件7以外)。

  1. 電子書籍にテキストに加えて音声が含まれている場合に、テキストと音声を同期させて提供することを保証すること(=EPUBならば、Media Overlay文書として提供する)
  2. 電子書籍の電子ファイルが支援技術の正常な動作を妨げることのないことを保証すること
  3. コンテンツへのアクセス、ファイルコンテンツ及び動的レイアウトを含むレイアウトのナビゲーション、構造化、コンテンツの表示における柔軟性と選択肢を保証すること
  4. 知覚可能(perceivable)、理解可能 (understandable)、操作可能 (operable)、堅固(robust)な方法で、コンテンツの代替レンディション、様々な支援技術との相互運用性を保証すること
  5. アクセシビリティ機能に関するメタデータを通じて情報を提供することにより、電子書籍を発見可能にすること
  6. デジタル著作権管理(DRM)によってアクセシビリティ機能を妨げないことを保証すること
  7. テキスト以外のコンテンツ(画像等)には代替テキストを提供すること

 要件1以外は、EPUBのアクセシビリティの仕様であるEPUB Accessibility 1.0そのものと言えます。EPUB Accessibility 1.0も国際規格化に向けて動いており、現在は、commitee draft(ISO/IEC CD 23761)のステータス。来年にはIS化するようですので、EPUB Accessibility 1.0が基準となるのでしょうか。

4.2 電子書籍リーダー

4.2.1 電子書籍端末

 ハードウェアとしての電子書籍端末の要件です。

4.2.1.1 機能及びユーザーインターフェイス

 最後の要件14は、電子書籍端末に特化した要件として規定されています。

  1. 複数の感覚チャンネルを通じて利用可能であること(視覚、聴覚、言語及び触覚要素の代替物を提供することを含む)。
  2. 操作等のためにVoice User Interface: VUIを使用する場合、代替手段を提供すること
  3. 視覚要素を用いる場合、操作等のために拡大率、明るさ、コントラストを柔軟に変更できる機能を提供するとともに、インターフェースを操作するための支援技術との相互運用性を確保すること
  4. 情報の伝達、動作の提示、応答の要求又は要素の特定のために色を使用する場合は、それに代わるものを提供すること
  5. 情報の伝達、動作の提示、応答の要求又は要素の特定のために音声によるシグナルを使用する場合は、それに代わるものも提供すること
  6. 出力される音声はユーザーにより音量と速度の制御が可能であること。
  7. 手動操作、手動制御が必要な場合には、同時操作の必要性を排除し、逐次操作を可能とさせるか、細かい運動制御に代わる手段を提供する。触覚で識別可能なパーツを使用すること(原文は”shall use tactile discernible parts”だが、何をしているのか不明。スイッチのような機器への対応を要件としている?)。
  8. 広範囲なリーチと強い強度を必要とする動作を求めないこと
  9. 光線過敏性発作の誘発を避けること
  10. アクセシビリティー機能を使用する際にユーザーのプライバシーを保護すること
  11. 生体認証による識別と操作に代替手段を提供すること
  12. 機能の一貫性を確保し、相互作用に十分かつ柔軟な時間を提供すること
  13. 支援技術とのインターフェース用のソフトウェアおよびハードウェアを提供すること。
  14. テキスト読み上げ技術を提供すること

4.2.1.2 端末に関する情報提供及びサポートサービス

  1. 製品の情報のアクセシビリティ特性に関する情報が記載されている場合には、その情報にアクセスできること
  2. 端末のパッケージに端末の情報(例えば、開封、利用、廃棄等)、端末の持つアクセシビリティ機能に関する情報が記載されている場合には、その情報がアクセシブルでなければならない。
  3. 端末の利用に関する情報(表示、指示、警告、利用方法、パッケージの開封、廃棄等)の提供(ウェブサイトを通じた提供も含む)は以下の要件を満たし、アクセスを保証すること
    • 複数の感覚チャンネルを介して情報を利用可能にする
    • 知覚可能(perceivable)、理解可能 (understandable)な方法で情報を提示する
    • ユーザーが複数の感覚チャンネルを介して異なる方法で利用するための代替支援形式を生成できるように情報コンテンツをテキスト形式で利用する
    • 予見可能な使用条件を考慮し、十分なコントラストを使用し、また文字、行及び段落の間の間隔を調節することを考慮して、適切なサイズ及び適切な形状のフォントで表示する
    • テキスト以外のコンテンツはその内容の代替表現で補足すること
  4. 利用可能な場合には、サポートサービス(ヘルプデスク、コールセンター、テクニカルサポート、リレーサービス、およびトレーニングサービス)が、アクセシブルなコミュニケーション手段で端末のアクセシビリティに関する情報と支援技術への対応に関する情報を提供すること

4.2.2 電子書籍閲覧アプリ

 電子書籍閲覧アプリは、EAAの中では、電子書籍とともに、書店等の電子書籍販売する「サービス」に組み込まれています。電子書籍は追加の要件が規定され、それが前述の4.1 電子書籍のアクセシビリティ要件になっています。アプリの場合は追加の要件は特にありませんが、サービスとして電子書籍と電子書籍アプリをセットで見ているようですので、前述の電子書籍のアクセシビリティの要件と後述の4.3 電子書籍を販売する書店に求められるアクセシビリティの要件から、アプリの要件を読む必要があるのでしょうか。まとめると以下になると思われます。

  1. 電子書籍のアクセシビリティ要件を満たした 電子書籍のアクセシビリティ機能を利用できること。
  2. 知覚可能(perceivable)、理解可能 (understandable)、操作可能 (operable)、操作可能(operable,)にすることで、一貫した適切な方法でアクセシブルにすること
  3. 利用可能な場合には、サポートサービス(ヘルプデスク、コールセンター、テクニカルサポート、リレーサービス、およびトレーニングサービス)が、アクセシブルなコミュニケーション手段でサービスのアクセシビリティに関する情報と支援技術への対応に関する情報を提供すること。

4.3 電子書籍を販売する書店に求められるアクセシビリティの要件

 Amazonなどの電子書籍を販売する書店には、障害者による予見可能な利用を最大化するために以下の要件を満たすことが求められています。

  1. サービスが提供する電子書籍、電子書籍閲覧ソフト、電子書籍閲覧端末のアクセシビリティの要件を満たすこと。
  2. サービスの機能に関する情報、サービスが提供する電子書籍へのリンク、サービスのアクセシビリティ特性、および支援技術への対応に係る情報の提供について以下とする。
    • 複数の感覚チャンネルを介して情報を利用可能にする
    • 知覚可能(perceivable)、理解可能 (understandable)な方法で情報を提示する
    • ユーザーが複数の感覚チャンネルを介して異なる方法で利用するための代替支援形式を生成できるように情報コンテンツをテキスト形式で利用する
    • 予見可能な使用条件を考慮し、十分なコントラストを使用し、また文字、行及び段落の間の間隔を調節することを考慮して、適切なサイズ及び適切な形状のフォントで表示する
    • 文字、行及び段落の間の間隔を調節することを考慮して、適切なサイズ及び適切な形状のフォントで表示すること
    • テキスト以外のコンテンツはその内容の代替表現で補足すること
    • サービスが提供する電子書籍を、知覚可能、操作可能、理解可能かつ堅牢にすることにより、一貫した適切な方法で提供すること
  3. ウェブサイト (ウェブアプリケーションを含む) やモバイルアプリケーションを含むモバイルデバイスベースのサービスを、知覚可能(perceivable)、理解可能 (understandable)、操作可能 (operable)、操作可能(operable,)にすることで、一貫した適切な方法でアクセシブルにすること
  4. 利用可能な場合には、サポートサービス(ヘルプデスク、コールセンター、テクニカルサポート、リレーサービス、およびトレーニングサービス)が、アクセシブルなコミュニケーション手段でサービスのアクセシビリティに関する情報と支援技術への対応に関する情報を提供すること。

5. 関連エントリ

WebとEPUBにおける数式対応とその読み上げ対応 – MathMLを中心に 

Webアクセシビリティ Advent Calendar 2019、7日目の記事、というかメモです。
数式ありのコンテンツについて、WebやEPUBでどのような方法で記述し、そして、アクセシブルなものにするのか、現状の考えられる案をMathMLを中心に書き出してみました。なお、近年の仕様の動向やブラウザの実装に係る動きは、ミツエーリンクスさんのブログWebにおける数式と数式の読み上げを取り巻く環境についてでまとめてくれています。
 なお、私自身のスコープが
数式入りの学術文献を如何にアクセシブルな形でEPUBにするか
にあります。EPUBより実装が進んでいるであろうWeb(Webブラウザ上での対応)も比較の対象として触れますが、EPUB対応を前提としていることをご了承ください。数式入りというと、小中高の教育系コンテンツも考えらますが、このエントリは高等教育向けのコンテンツを対象とします。

1. 数式入りのコンテンツ(特に学術系コンテンツ)をWeb化 / EPUB化する大前提

  • 学術用途に耐えうること。つまり、引用という形で再利用可能であること。
  • 数式を表示できること。
  • スクリーンリーダーで読み上げられること。

2. 数式への対応方法

 WebやEPUBに数式を入れる方法として以下が考えられます。2.1とそれ以外の方法を組み合わせることになるだろうと思われる。

2.1 プレーンなテキストデータとして記述

2.1.1 方法

二項演算子及び関係演算子を用いて一行で表記可能なシンプルな数式はテキストデータとして表記する。

2.1.2 優位性

  • 現行の実装で最もシンプルで汎用性が高い。課題に挙げた事例を除けば、読み上げる可能性が高い。

2.1.3 課題

  • この方式で記述できない数式がある。その数式への対応については、別の対応が必要。その線引きについても、例えば、以下の課題がある。
    • 塁乗などは上付き数字で表記は可能である( 例: 2³ )。しかし、スクリーンリーダーでどのように読み上げるのか(上付き数字も普通の数字と区別なく読んでいるようであれば厳しいか)。
    • 簡単な分数であれば、スラッシュで表記可能である(例:13⇒ 1/3)。しかし、スクリーンリーダーの読み上げて、理解可能か。また、学術文献の表記として、このような置き換えがアリか。

2.2 数式の画像化と代替テキストの提供

2.2.1 方法

数式を画像化して挿入する。画像には数式の読みを代替テキストとして提供する。

2.2.2 優位性

  • 全ての数式に対応ができ、かつ、現在の実装で最も汎用性が高い。
  • 代替テキストに対応した環境では、確実に適切に読み上げる(適切な代替テキストを提供できることが前提となるが)。

2.2.3 課題

  • 1つ1つの数式に適切な代替テキスト(数式の読み)を提供することがハードルが高い。数式の難易度にそれは比例する。学術書に掲載されるような、複雑な数式の読みを代替テキストとして提供することは、かなり難易度が高い。それを作成する者が確保できるのか。
  • 日本語については、一意な読み方法が確立されていない(例 「5分の3引く1」で「31 5」と「351」の2通りの式が再現できるなど。)。数式の読み情報のみで正確な情報が伝えることができるか。
  • 数式の読み情報のみで、学術用途(引用用途)で再利用するために数式としての復元がどこまで可能かわからない。

2.3 MathML

2.3.1 方法

MathMLを使用して数式を記述する。

2.3.1.1 MathMLについて
  • EPUBの標準的な数式記述方法である。DAISY 3 においてもMathML 2.0に対応した拡張仕様 がある(参考: MathML in DAISY)など、DAISYとも古い付き合い。
  • MathMLは、Presentation MarkupContent Markupの2種類のマークアップがある。
  • 数式の同じ形の部分も式によってその内容(意味)が異なるが、Presentation Markupはその違いは考慮せずに「形」を記述する。Content Markupは「内容(意味)」を記述する。
  • Content Markupは、閲覧環境の対応が進めば利用者に最適な読み上げが期待できる。しかしContent Markupは内容を理解しないと記述ができない。数式への理解が曖昧であれば誤った記述となる可能性がある。
  • LaTexからの変換を想定する場合は、Content Markup への変換は困難であることが予想される。
  • Presentation MarkupとContent Markupでは、前者のほうがブラウザやEPUBの閲覧環境への対応も進んでいることが予想される。

2.3.2 優位性

  • EPUBの標準的な数式記述方法である。実装があるのであれば、この方法がEPUBの仕様としては理想的。
  • MathMLが読み上げるなら、数式を入れる側はMathMLとしての構造化のみを意識して入力することができる(数式の読みはMathMLに対応したスクリーンリーダーに委ねることができる)。
  • 数式として構造化されているため、実装があるのであれば、読み上げ対応に限定されず、構造化された情報を様々な支援技術が活用できることが期待できる。

2.3.3 課題

  • Webブラウザ及びEPUBのネイティブの実装でMathMLの表示、読み上げともに実装している環境が限られている(WebブラウザやEPUBでネイティブに表示、読み上げに対応する環境があるか検証が必要)。
  • 学術用途(引用用途)で再利用に耐えうるか検証が必要。

2.3.4 参考

2.4 MathML+ MathJax

2.4.1 方法

 JavaScriptライブラリであるMathJaxを利用し、MathMLとして数式を記述する。EPUBの場合は、このJavaScriptライブラリをEPUBに同梱する。

2.4.2 優位性

  • 数式表示はJavaScriptによるMathJaxがデファクトスタンドダードになりある(らしい)。JavaScriptに対応したあらゆるブラウザやEPUBの閲覧環境で対応することができる。
  • JavaScriptライブラリのサポートを前提とするが、EPUBの仕様に沿ってMathMLという形で数式を記述することができる。
  • MathMLが読み上げるなら、数式を入れる側はMathMLとしての構造化のみを意識して入力することができる(数式の読みはMathMLに対応したスクリーンリーダーに委ねることができる)。
  • 数式として構造化されているため、実装があるのであれば、読み上げ対応に限定されず、構造化された情報を様々な支援技術が活用できることが期待できる。
  • MathMLそのものはEPUBの仕様でサポートされているため、仮にMathJaxの開発がとまっても、中長期的にはMathMLにネイティブに対応することが期待できる。

2.4.3 課題

  • JavaScriptに対応した環境にMathJaxの使用が限定される(ただし、JavaScriptに対応していないEPUBの閲覧環境は、読み上げに対応していない電子ペーパー端末に限定される?)。
  • MathJaxの、Presentation MarkupとContent Markupへの対応状況は要検証。
  • MathJaxで表示の課題は解消できても、読み上げへの対応はどうかは要検証
  • ネイティブでMathMLに対応している環境(iOS 版のSafariなど)への挙動の影響はどうかは要検証。
  • 学術用途(引用用途)で再利用に耐えうるか検証が必要。

2.4.4 参考

2.5 LaTex

2.5.1 方法

 LaTexを使用して数式を記述する。

2.5.2 優位性

  • 数式の入力・表示についてMathMLよりは広く使用されている。読み上げる環境がMathMLより進んでいる可能性ある。(英語についてはJAWSが対応していると聞いたことが)。
  • LaTexを記述できる者であれば、数式として表示されていなくても、Latexの記法で表示されたままでも、理解できる?(数式入りの学術文献を利用する者であれば、LaTexを取り扱えるものは多いと予想される)

2.5.3 課題

  • EPUBの仕様では本来サポートされておらず、閲覧環境の実装においても対応しているものはないと思われる。Webブラウザでも同様。
  • 学術用途(引用用途)で再利用に耐えうるか検証が必要。

2.6 LaTex + MathJax

2.6.1 方法

 JavaScriptライブラリであるMathJaxを利用し、LaTexとして数式を記述する。EPUBの場合は、このJavaScriptライブラリをEPUBに同梱する(EPUBの仕様ではサポートしていないが、MathJaxによりLaTexで記述することがブラウザ上でもEPUBの閲覧環境上でも可能になるはず)。

2.6.2 優位性

  • 数式の入力・表示についてMathMLよりは広く使用されている。読み上げる環境がMathMLより進んでいる可能性ある。(英語についてはJAWSが対応していると聞いたことが)。
  • MathJaxの対応もMathMLよりLatexのほうがこなれている?ツールも多い?
  • LaTexを記述できる人口の方がMathMLより多い?

2.6.3 課題

  • EPUBの仕様では本来サポートされていない。MathJaxにより、表示、そして、仮に読み上げが可能であったとしても、イレギュラーな対応になる。MathMLの開発が止まってしまったら、閲覧は担保できなくなる(中長期的に閲覧を担保できない)。
  • JavaScriptに対応した環境にMathJaxの使用が限定される(ただし、JavaScriptに対応していないEPUBの閲覧環境は、読み上げに対応していない電子ペーパー端末に限定される?)。
  • MathJaxで表示の課題は解消できても、読み上げへの対応はどうかは要検証
  • 学術用途(引用用途)で再利用に耐えうるか検証が必要。

3. 対応状況の検証

  画像に付与された代替テキストの読み上げは、ほぼ全ての環境で対応していると言ってよいであろうと思われ、LaTexはEPUBの仕様でサポートされていないため、「2.2 数式の画像化と代替テキストの提供」、「2.5 LaTex」、「2.6 LaTex + MathML」の検証は省略。
以下を検証する必要がある (一部確認できているところは記入)。学術用途(引用用途)で再利用に耐えうるかの検証方法は要検討。
※本当は実際に検証してこの表を埋めるところまで書きたかったのですが、検証対象を絞るところで力尽きてしまいました 汗。

3.1 プレーンなテキストデータとして記述

検証対象(例) PC-Talker NVDA VoiceOver(iOS)
2³ ※上付き数字をどのように読むか に うわつきすうじさん
1/3 ※13のスラッシュによる表記をどのように読むか いち すらっしゅ さん いち すらっしゅ さん
3x = 2x + 6 − 1 ※減算演算子 (-) の表記をどうするか(文字コード的に。正直、ハイフンとマイナス混ざりそう・・)
4 × ( 4 ÷ 2 ) = ※除算演算子(÷)と、括弧の読み上げが要確認か。

3.2 Webブラウザの対応(検証中)

3.2.1 MathML

検証に用いたサンプル

ブラウザ 検証したOS Presentation Markup Content Markup 検証スクリーンリーダー 備考
表示 読み上げ 表示 読み上げ
Chrome Windows 10 / macOS Mojave 不可
Firefox Windows 10 / macOS Mojave
Edge Windows 10 不可
Safari macOS Mojave
Safari iOS VoiceOver

メモ

  • NVDAとMathPlayerとの組み合わせでWORDに埋め込んだMathMLを読み上げさせることが可能らしい(参考: NVDA 2015.2 の数式対応 – nishimotzの日記)。ただし、少なくとも現行のMathPlayerは、32-bit Office に対応が限定される。Internet Explorer (IE) のプラグインとしても機能するが、IE10以降には対応しておらず、IEのEnterprise Modeでレガシーモードを使う必要がある。MathPlayerの更新も2016年でとまっており、MathPlayerやIEの方針が変わなければ、この組み合わせは利用できなくなると思われる。
  • NVDAには、Access8Mathというプラグインがある。Mozilla Firefox, Microsoft Internet Explorer and Google ChromeでMathMLを読み上げるようになるらしい。
  • PC-TalkerはMathMLの読み上げに対応していないようなので、ここでは検証対象からはずした。PC-Talkerの利用が前提の音声ブラウザNetReaderも外れる。

3.2.2 MathML + MathJax

「3.2.1 MathML」に用いたサンプルのソースに以下を追加。検証対象にNetReaderを追加。


<script type="text/javascript"
   src="https://cdn.mathjax.org/mathjax/latest/MathJax.js?config=TeX-AMS-MML_HTMLorMML">
</script>

ブラウザ 検証したOS Presentation Markup Content Markup 検証スクリーンリーダー 備考
表示 読み上げ 表示 読み上げ
Chrome Windows 10 / macOS Mojave
Firefox Windows 10 / macOS Mojave
Edge Windows 10
Safari macOS Mojave VoiceOver
Safari iOS VoiceOver

3.2.3 参考

3.3 EPUBの閲覧環境 (検証中)

検証するなら以下の表を埋める感じであろうか。

3.3.1 MathML

テスト用サンプルEPUB

 なお、DAISYユーザーのEPUB閲覧環境としては、EPUBにも対応したDAISY再生機器のプレクストークPTR3も有力な候補になりえるが、学術用途(引用用途)での再利用が困難である(つまり、コピペが難しい)と思われるため、とりあえず今回の検証対象からは外す(将来的には検証に加えた方がよいとも思うが)。

閲覧環境 検証したOS Presentation Markup Content Markup 検証スクリーンリーダー 備考
表示 読み上げ 表示 読み上げ
EPUBReader+Firefox Windows 10 / macOS Mojave
Thorium Reader Windows 10 / macOS Mojave Win10版では、"MathML"メニューにある"MathJax"にチェックされたときに表示可
Adobe Digital Editions 4.5.11 Windows 10 / macOS Mojave
MyBook Ⅴ Windows 10 不可
Dolphin EasyReader ver.6.03 日本語版 Windows 10 不可
EasyReader ver.8.02 英語版 Windows 10 不可 日本語版なし
Apple Books macOS Mojave
Murasaki macOS Mojave
Apple Books iOS 不可
ボイス オブ デイジー 5 iOS

VoiceOver(ソフト独自の読み上げ機能では数式の読み上げ不可)
EasyReader for iOS and Android iOS 不可 VoiceOver及びソフト独自の読み上げ機能
R2 Reader iOS VoiceOver
Voice Dream Reader iOS 不可

VoiceOver及びソフト独自の読み上げ機能

3.3.2 MathML + MathJax

閲覧環境 検証したOS Presentation Markup Content Markup 検証スクリーンリーダー 備考
表示 読み上げ 表示 読み上げ
EPUBReader+Firefox Windows 10 / macOS Mojave
Thorium Reader Windows 10 / macOS Mojave
Adobe Digital Editions 4.5.11 Windows 10 / macOS Mojave
MyBook Ⅴ Windows 10 不可
Dolphin EasyReader ver.6.03 日本語版 Windows 10 不可
EasyReader ver.8.02 英語版 Windows 10 不可(白紙状態でページが全く表示されない。) 日本語版なし
Apple Books macOS Mojave
Murasaki macOS Mojave
Apple Books iOS
ボイス オブ デイジー 5 iOS 不可(白紙状態でページが全く表示されない。)<

EasyReader for iOS and Android iOS / Android
R2 Reader iOS
Voice Dream Reader iOS 不可

3.3.3 参考

4. ツール・サービス

5. 他機関のプロジェクト

Benetech・DIAGRAM Center

6. 参考文献