米国の大学におけるKindle DX訴訟(2010年)関係ふりかえり

 これは、 アクセシビリティAdvent Calendar 2020の16日目のエントリです(えっ?)。かなり古い事例紹介になりますが、障害当事者団体による米国の障害を持つアメリカ人法(Americans with Disabilities Act of 1990 : ADA) を根拠にアクセシビリティの担保を米国の大学に求める動きの1つとして、2010年前後のKindle DX訴訟をめぐる動きを少しふりかえります。

 2009年に米国の大学がKindle DXを授業で導入しようと試みた際に、視覚障害者団体がアクセシビリティが十分に担保されていないKindle DXを授業で用いることは問題であると訴えた事例です。詳細は以下に詳しいのですが、最終的に和解にいたり、大学はKindle DXの導入を見送っています。

 これを発端として、2010年に司法省と教育省が連名で米国の全大学の学長宛に通知(”Dear College or University President(June 29, 2010)“)を出しました。最新のICT機器やICT技術を導入する際は、障害学生が持つ全ての授業を受ける権利を侵害しないように留意しないと、ADAやアクセシビリティ基準を準拠したものの調達を政府に求めるリハビリテーション法508条に違反することになると大学に伝える内容になっています。

 上の通知に対して、大学からの問い合わせが多かったのか、教育省は2010年通知の趣旨を明確にするためにFAQの形式で追加の通知を再度2011年に出しています。FAQでは、15の設問が用意されていますが、このFAQで、最新のICT機器やICT技術の導入そのものを否定するものではないこと(ただし、アクセシビリティの担保を求めている)、先の通知が電子書籍に限るものではなく、オンラインコースやその他のオンラインコンテンツなど幅広いものが対象になることなどが質問に対する回答の形で説明されています。問9で現時点では障害学生が在籍していない場合も、将来の障害学生が持つ全ての授業を受ける権利に保障する必要があるため、最新のICT機器やICT技術を導入する際は、アクセシビリティの担保に留意する必要があることをADAとリハビリテーション法504条(508条ではなく)は求めているとはっきり書いてある点、アクセシビリティの法制化の強さを感じます。

 なお、障害者または障害当事者団体が米国の大学に対してアクセシビリティの担保による機会保障を求めた事例が以下に集約されています。上の通知だけでは、補いきれない部分が当然あるのだと思いますが、その後も事例が積み上げられていったようです(数がすごい・・・)。

米国の大学図書館のプリントディスアビリティの障害学生に対するサービス状況がわかる報告書など

 米国の大学図書館のプリントディスアビリティの障害学生に対するサービス状況がわかる報告書と個別の事例として大学図書館の案内例をまとめました。

報告書

 少し古いのですが、北米研究図書館協会 (Association of Research Libraries : ARL) が2012年に公開した以下のレポートで、大学図書館における障害者サービス、特にプリントディスアビリティのある学生に対するサービスのこれまでの経緯、現状、そして課題をまとめています。米国の障害を持つアメリカ人法(Americans with Disabilities Act of 1990 : ADA) で対応が求められている障害のある学生に対する合理的配慮の提供についても、米国の現状がよくわかるものになっています。 

 ARLに加入している大学図書館に対して障害学生へのサービスについて調査したアンケート調査報告書が2010年に公開されてしています。個々の大学の回答まで公開されているようです。

 アクセシブルな資料提供に焦点を絞ったものとしては、“REPOSITORY SERVICES FOR ACCESSIBLE COURSE CONTENT”プロジェクトの成果として、2017年に以下の報告書が公開されています。図書館が障害学生のために行うアクセシブルな資料製作やその図書館間の共有に焦点を置いています。

米国の大学の障害学生に対する情報保障案内例

University of Illinois

University of Queensland

Arizona State University)