ソーシャルアクションアカデミー受講中

もうすでに始まって1か月が経過しようとしていますが、8月から認定NPO法人サービスグラントが開講するソーシャルアクションアカデミーという講座を受講しています。

サービスグラントは、プロボノとして職業上の知識や経験を積んだ人で社会課題の解決に取り組みたい人を、支援を求めるNPOや地域団体などの非営利組織とマッチングすることで、非営利組織の運営支援を行っているNPOです。ちなみに、2020年に1回だけですが、私もサービスグラントのプロボノプロジェクトに参加したことがあります。

ソーシャルアクションアカデミーは、非営利組織と社会課題解決に関心がある人を対象に2020年から開催されているもので、実際に受講者でチームを作って社会課題解決にむけて企画を立ててプロジェクトを実際に進めてみるという内容で、今回の開催で3期目となります。今期は、社会課題の可視化・構造化に取り組む社会調査の企画、実施を行うソーシャルリサーチ学科も加えて、以下の2つの学科が開講されています。私はこの2学科を同時に受講しています。

参加の動機ですが、異業種の方と社会課題に対して共通の問題意識をもって行動を起こすのは面白そうという単純な動機もありますが、もともとNPOセクタの活動、考え方やプロジェクトの進め方を関心があったというのが第一にあります。私の勤務先がジョブローテーションのある職場なので、担当している業務もいつかは離れることを前提に考える必要があり、「仕事」というフィルターを通さない形で、社会と直接向き合う軸足は持っておきたいなと数年前から考えていまして。

実は、2021年元旦に個人的に2023年までの3年間に実現したい、やっておきたいことを書き出していたのですが(ちなみに司書資格の取得も書き出したToDoに入っていた)、そのToDoの中で曖昧ながら、上の軸足作りの観点で「NPOセクタの活動にならんかの形で加わる?」というのがありました。ちょうどこの4月の人事異動で8年間担当してきた障害者サービスから離れ、いろいろと自身を振り返りもする中で、自分の関心と能力を考える中で、このToDoについて具体的にどのように動こうか思案していたところで、ソーシャルアクションアカデミーの開催の話があったので、学びと行動を繋ぐものとして、参加してみようかという気になりました。

ソーシャルアクション学科とソーシャルリサーチ学科、それぞれの学科で各10回+グループ企画+成果発表なので、育児と家事をしながらだと同時に進めるのは大変ですが、考えるときはキャパオーバーになるくらい詰め込まないと、考えがまとまらないところがあるので、8月から半年間、頑張りたいと思います。

JIS X 23761:2022(EPUBアクセシビリティ)が制定

EPUBのアクセシビリティ要件をまとめたJIS X 23761:2022がISO/IEC 23761:2021に対応する規格として8月22日に制定されました。

JIS X 23761:2022は、 上のJSAサイトで購入できるほか、閲覧のみであれば、日本産業標準調査会(JISC)で可能です(なぜ日本規格協会のHPでは部分的にしか見られないのか・・)。

JIS X 23761は、2017年に策定されたIDPFのEPUB Accessibility 1.0 に由来しています。このEPUB Accessibility 1.0がベースとなり、国際規格としてISO/IEC 23761:2021が制定され、それが今回JIS化されたという経緯があります。このEPUB Accessibility 1.0が、

このEPUBが誰にとってアクセシブルなのか(誰にとってアクセシブルではないのか)をメタデータとして情報を提供して、ユーザーが実際に利用する前にはっきりわかるようにせよ

というスタンスをとり、アクセシビリティメタデータの提供、特にアクセスモードの提供を必須としたことは、当時から深く同意できることだったので、機会があれば触れて紹介していました。そのEPUB Accessibilityが今回、JIS化まで至ったことは感慨深いです。

他でもすでに紹介もされていますが、JIS X 23761の主な内容は以下のとおりです。

  1. だれにとってアクセシブルなのか、そして、どのようなアクセシビリティの機能を有するのかをメタデータとして提供することを必須とすること。
  2. EPUB出版物がアクセシブルであることの要件
    • ページナビゲーション、メディアオーバーレイズなどのEPUB特有の部分について、要件を制定。それ以外のウェブコンテンツに共通する大部分はWCAG2.0(JIS X 8341-3) に則るとしている(WCAG 2.0レベルA(JIS X 8341-3)が必須、WCAG 2.0レベルAA(JIS X 8341-3)が推奨) 
  3. 規格本体には含まれないが、附属書として、日本語固有の事情(ルビ、わかち書き、読み上げの問題)が整理されている。

対応するISO/IEC 23761:2021に同等性において、一致する(identical)規格であるため、JIS X 23761に対応することで、ISO/IEC 23761:2021にも対応することにもなります。

JIS X 23761本体は抽象的な要件制定にとどめていますので、具体的な実装方法は関連文書に位置付けられているW3Cの達成方法集”EPUB Accessibility Techniques”を参照する必要があります。

ISO規格が元になっているため、JISはISO制定当時のTechniques 1.0を参照するように促していますが、附属書で若干言及もされているTechniques 1.1を参照する方が今となってはよいかもしれません。

今後の課題は、いよいよJIS X 23761の普及です。以下、私見ですが・・

JIS X 23761は、EPUB Accessibility Techniquesを参照する必要がある上、アクセシビリティの大部分をWCAG 2.0に委ねているため、WCAG 2.0とその関連文書も参照する必要もあり、参照しなければならない文書が多岐にわたります。例えば、WACGのレベルAへの準拠が必須ということから、画像に対して代替テキストの提供が求められるということを理解する必要があります。制作されるEPUBのほとんどが内製ではなく、外注によって制作されていると思いますが、(おそらくWeb技術などにあまり精通していない方が多いであろう)外注する側の出版社の担当者が、どのように仕様にかいて制作会社に発注すれば、JIS X 23761に対応したEPUBができるのかは、整理が必要かもしれません。

JIS X 23761は、EPUBというコンテンツを対象とした規格ですが、出版社がこの仕様に則ってEPUBというコンテンツをよりアクセシブルするだけは十分ではありません。JIS X 23761の「9. 配信」でも言及されていますが、そのEPUBとユーザーの間を繋ぐ書店が、アクセシビリティメタデータに対応し、ユーザーが自分にとって使い易いコンテンツを容易に発見できるようしていくこと、そして、支援技術を阻害しない形でデジタル著作権管理を適用させるなどの注意が払われることで、初めてJIS X 23761が活かせるのだと思います。

課題をいくつか書いてしまいましたが、JISの制定まで至ったからこそ、次の課題に臨めるようになりました。大きな一歩前進だと思います(お疲れ様でした!)。今後のJIS X 23761の普及でアクセシブルな読書環境が大きく拡大することを祈ります。

関連エントリ

図書館司書コース修了しました

以前のエントリで書いたように、2021年10月から某大学の通信学部で司書コースを受講していましたが、司書資格取得に必要な科目の単位をこの6月に全て取得し、司書コースを無事修了することができました(修了証が届くのはこれからですが)。

私が受講した通信制の大学では、レポートの提出から試験まで全ての工程をオンラインで行うことができたので、大変助かりました(スクリーニングが必要な科目は録画された動画の配信で受講)。オンラインで完結できなければ、修了できなかったと思います。

司書資格取得に必要な科目は、図書館法施行規則で規定されているとおりですが、全体的に図書館に関する業務を薄く広く学ぶという感じであったため、前のエントリで書いたとおり、「一気に平たく学び直す」という私の目的はとりあえず満たせたかなという気はします。10月から3月の間は読む本も図書館に関係するものになるべく集中させました(特にJLA図書館実践シリーズは結構読みました)。興味ベースや担当した業務ではこれまで接点のなかった領域についても、はるべきアンテナができたというか、情報や知識を放り込む箱のようなものが頭の中にある程度はできたと思います。特に学校図書館や地域資料について、今後もアンテナはっていこうという気になったのが、司書コースを受講した最も大きな成果かもしれません(地域資料は、司書コースでの学びに加えて、蛭田廣一さんのJLA図書館実践シリーズでの一連の著作を読んだことが特に大きかったかも)。

司書コースを受講した動機の1つに日本目録規則2018年版(NCR2018)を学ぶというのがありました。受講した司書コースの情報資源組織論では、日本目録規則1987年改訂3版(NCR1987)をベースにしたものだったので、その点は残念でしたが、各出版社が出版している情報資源組織論のテキストでは、すでにNCR2018に対応しているものを出していたので、樹村房のテキストJLAのテキストを購入して、並行してNCR2018も勉強しました。NCR1987とNCR2018の違いを比較しながら学んだことは、NCR2018の理解度を上げたことに繋がったと思うので、結果としてよかったように思います。

地元の公共図書館には、参考資料を借りたり、所蔵がない資料も他の図書館から取り寄せていただいたりと大変お世話になりました。司書コースを受講しつつ、利用者としてサービスを改めてじっくり観察したり、図書館年報を読んで、普段利用している地元の図書館がいろいろな分野でサービスを充実させていることがわかり、これも私にとっては大きな発見でした(遅いと言われそうですが)。

いずれにしても、当初の予定どおり、司書資格を予定通り1年で取ることができたのはよかったです。。現時点でその成果をどのように活かせるかわかりませんが、活かせるように精進したいと思います。現在、担当としている業務はNCR2018を前提としているものなので、NCR2018を読むリテラシーがついた点はさっそく活かせている(ような気はする)。