アクセシブルPDF(その1)- アクセシビリティに配慮したPDF作成のために必要な8つのこと –

 PDF(Portable Document Format)はドキュメントを環境に依存せずに交換できることから、電子文書フォーマットとして使用されています。もともとはAdobe社が開発したフォーマットでしたが、先のエントリで紹介したように、PDF1.7が2008年にISO規格になりましたので、国際規格の使用が推奨されている公的機関の利用も進んでいると思われます。PDFはWebに特化したフォーマットではありませんが、環境に依存しせずに文書を交換できるという特性からドキュメントの配布フォーマットとしてWeb上でも幅広く使用されています。
 そんな電子文書ファイルとして確固たる地位を築いているPDFは、アクセシビリティの機能がPDF1.4以降で大幅に強化されています。例えば、以下のような機能をPDFに持たせることができます。

  • スクリーンリーダー等支援ソフトウェア等による音声による読み上げ機能のサポート
  • 文字の拡大縮小をしても1行の文字数が行の幅に合わせて調整されるリフロー型表示、それを正しい順序で表示
  • 点字プリンタによるプリントアウトなど支援技術、支援ソフトウェアによる読者に適した形でコンテンツを出力するためのテキストデータ抽出

 そう、PDFはやればできる子。

アクセシブルPDFを作成するために必要なこと

 そのための条件を8つに分けてまとめてみました。

1.全ての文字情報に対してテキストデータを保持

 スクリーンリーダーによる読み上げや点字プリンタによる打ち出しを可能にするため、使用されているフォントはテキストとして抽出可能でなければなりません。スキャンしたドキュメントはOCR処理をかけてテキストデータを抽出可能にする必要があります。

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2.ドキュメントのタグによる構造化(タグ付きPDF)

 プログラムが理解できるようにドキュメントをタグによって構造化し、見出し、段落、リスト、表などをきちんと指定する必要があります。つまり、タグ付きPDFにすることです。タグの付与によってドキュメントを構造化することでスクリーンリーダー等の支援ソフトウェアで正しい順序で読み上げられるようになります。
 
 Acrobat Reader等一部のPDFリーダーでは、PDF文書をリフロー表示する機能を備えています。タグ付けをきちんとすることで、リフロー表示に切り替えた時に正しい順序でテキストや画像を表示されます。

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3.代替テキストの提供

 スクリーンリーダーなどできちんと読み上げられるように画像などの非テキストコンテンツには代替テキストを提供する必要があります。ウェブサイトと同様です。

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4.適切なナビゲーションの提供

  適切なナビゲーションの提供が重要であることは言うまでもありませんが、PDFの場合は、しおりの付与によってドキュメントのアウトラインを知らせること、ヘッダー/フッターやページ番号を提供することで現在位置を知らせるなどの方法があります。

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5.メタデータの提供

 ドキュメントのメタデータを提供することで、支援技術、支援アプリケーションのユーザーがドキュメントを複数の文書内から検索、または選択しやすくなります。メタデータがきちんと提供されていれば、読者は自分が現在どのドキュメントを開いているのか、つまり、現在位置を知ることができます。特にタイトルの提供は必須です。タイトルが提供されない場合、多くはファイル名が読み上げられることになるでしょう。

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6.フォーム

 フォームに求める条件はウェブサイトと同じだと思われますが、フォームを支援ソフトウェア等による読み上げでフォームを理解できること、そして、入力できること、キーボードによる操作が可能であること、フォームの記入による状況の変化を読者がコントロール可能であることなどが求められています。

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7.ドキュメントと文中の言語の指定

 ドキュメントと文中の言語が指定されていることで、スクリーンリーダー等の支援技術は適切な言語を選択して読み上げることができます。

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8.支援ソフトウェアに干渉しないようにセキュリティ設定

 PDFはコピー、印刷、抽出、注釈の付加、編集に制限をかける設定が可能です。これらの制限は読上げ機能や点字プリンタへの打ち出し等に干渉してしまう可能性がありますが、アクセシビリティがサポートされているPDF オーサリングツールは、制限の対象からスクリーンリーダーを除外する設定が可能になっていますので、それを有効にする必要があります。

 

PDFのアクセシビリティに関するガイドライン

 PDFのアクセシビリティに関する要件をまとめた主なガイドラインとして、WCAG 2.0(JIS X8341-3:2010)とPDF/UA(ISO 14289-1:2012)があります。

WCAG 2.0(JIS X8341-3:2010)

 
 W3CのウェブアクセシビリティガイドラインWCAG2.0(とJIS X8341-3:2010)はWeb上に公開するPDFファイルに対してもアクセシビリティ上の配慮を求めています。

WCAG2.0(とJIS X8341-3:2010)の要件を満たすPDFの作り方はWCAG2.0の関連文書であるWCAG 2.0 実装方法集にまとめられています。

 WCAG 2.0 実装方法集のPDF1〜PDF23は、日本語でかつWeb上で無料で入手可能なもののなかでは最も詳細でまとまっているものの1つです。導入編である「PDFテクノロジーノート」は、PDFのアクセシビリティの機能、オーサリングツール、支援技術の対応等がコンパクトにまとまっています。

PDF/UA(ISO 14289-1:2012)

 PDF1.7(ISO 32000-1:2008)をベースとして、アクセビリティに配慮したPDFであるPDF/UAが2012年にISO 14289-1:2012として国際規格化されました。

 PDF/UA(ISO 14289-1:2012)には、PDFファイルの要件(7章)、PDFリーダーの要件(8章)、支援技術の要件(9章)がまとめられています。本文のみだと20ページを切る短い規格ですが、PDF1.7(ISO 32000-1:2008)を参照する形で記述されていますので、PDF1.7(ISO 32000-1:2008)を並行して読む必要があります。
 なお、PDF1.7(ISO 32000-1:2008)は700ページを超える大部な仕様で価格もお求めやすくはありませんが、幸いAdobeのウェブサイト内で無料で公開されています(章節番号を含め、ISOのものと同じものだそうです)。

 

Adobe作成のガイドライン

 AdobeがアクセシブルPDF作成のガイドラインを公開しています。WCAG2.0(とJIS X8341-3:2010)やPDF/UA(ISO 14289-1:2012)のような公的なガイドラインではありませんが、Adobeのアプリケーションを使用するのであれば、実作業レベルで参考になります。ちなみにここで公開されているガイドラインはタグが付与されている等アクセシビリティに配慮されたPDF形式で公開されています。

関連エントリ

ウェブアクセシビリティガイドラインについて

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