HTML5 Conference の個人的なふりかえり #html5j

 先のエントリで書いたようにHTML5 Conferenceに参加してきました。

 HTML5 Conferenceは最初?の2012年のときから、すごい盛り上がりで「僕も混ぜてよ」という気持ちを持ちつつも、なかなか参加するに至らず(東京遠い)、今回が初参加でした。 Vivliostyleの村上真雄さんよりお声かけいただいて、html5j 電子出版部セッションのパネリストの1人として登壇する機会もいただいたので、一参加者として参加するだけではなく、スピーカーとして参加するという貴重な経験をさせていただきました。
hmtl5カンファレンスのスピーカー用の名札の写真
 今年のこのカンファレンス、セッションプログラムが公開される前に参加申込み者が定員の1600人を超えてしまうという勢いで、日本のIT系のイベントでは最も勢いがあるかもしれない。
 
 当日は朝早く京都を出て、11時すぎに会場となる東京電機大学のある最寄り駅の北千住着。カンファレンスのスピーカーには、お弁当がでることは聞いていたけど、その時点で猛烈にお腹がすいていたので、駅近くで海鮮丼を食べて会場入りした(なお、その後、会場で出たお弁当はお弁当でおいしくいただきました)。登壇して、気になるセッションを聞いて17時に会場を出て、そのまま京都に戻るという感じだった。京都駅に20時着。新幹線は待ち時間がほぼないので、京都につくのは意外と早い。

「Webフォント最新事情2017~導入事例も一挙紹介~」セッション

http://events.html5j.org/conference/2017/9/session/#e1
 関口 浩之さんによるウェブフォントのセッション。関口さん劇場。到着時間の関係もあって、このセッションは途中から参加だったので、最初の「FONTPLUS」とは何かという説明を聞き逃してしまった。そのため、流れが最初はつかめずにいたのだけど、それを差し置いても、関口さんの話は具体的で面白く、フォントがどう使われているという話や、フォントをどう表示させたいかという話は、フォントを普段はあまり意識したことがなかったので(エッ)、結構目から鱗だった(フォントの間の空白を調整して全体を美しく見せたいというニーズがあることからして、始めて知った。自分が○○ときに○○しても垢抜けないのはその差かー。みたいな)。

Webと出版が融合する新しい標準 Web Publications〈ウェブ出版物〉ができることで、Webと本の未来はどうなる?

http://events.html5j.org/conference/2017/9/session/#e2
 
このセッションはパネリストとして登壇。
 Vivliostyleの村上真雄さんによる10分のWeb Publicationsの概要説明があり(スライドは以下)、

イーストの下川和男さんによる5分のどのAdvanced Publishing Labの活動紹介があり(スライドは以下)、

 残り25分ほどがパネルディスカッションとなった。Web Pulicationsで話せるテーマがかなり広範であること、時間が短かったこと、パネリストの背景や関心も様々なので、議論が集約しきれなかったところが正直あったと思うけど、後で記録を読み返すと、ここを時間かけて膨らませればよかったんじゃないかという箇所が結構あったので、Web Pulicationsに関する論点は提示できていたのではないかとも思う。
 今にして思えば、パネリストのあの人数にあの時間なら、机を置かず、パネリストが全員立って、マイク持ちながら、村上さんのスライドにツッコミいれなが、立ち話しているかのように話をしたほうが盛り上がったかもしれない。
 私について言えば、パネルディスカッションというスタイルで、いきなり話を振られての適切なコメントを短く言うということが難しくて、ほとんど適切なコメントを言えていなかったような気がする。自分のペースで話せるスライドを使った発表でも、正直あまり得意ではないという自覚はあるけど、パネルディスカッションはそれとは全く別の難しさがあるなぁと感じた。Web Pulicationsについては、事前にいろいろとドキュメントを読んで考えをでまとめておいたのですよ。いいたかったことはここのどこかには書いてあるはずなんだけど・・・・。

 私は、図書館の立場、というよりも、アクセシビリティに関わる業務をしているという立場で、意見を期待されたのだと理解していたけど、Web Publicationsについて事前にいろいろとドキュメントを読み進めていくうちに、(無論アクセシビリティはもちろん無関係ではないけど)「ああぁ、これはいろいろな大前提となるコンテンツの器の話だ」と感じるようになっていたので、どういうスタンスでどのような発言をするべきかというのは、登壇しても迷っていた(それなりに学識のある方が発言されるならともかく、僕が器について発言してもあまり説得力ないぞ的な)。
 とはいえ、後で記録を確認すると、「コンテンツは器のUIが規定する」という考えを軸に、私は発言をしていたようだけど、上で述べたパネリストとして適切な発言をするということの難しさもあって、出だしの「コンテンツは器のUIが規定する」のところがそもそもうまく伝えられなかったかもしれず、全体的に何を言っているんだ感があったかもしれない。
 セッションでの僕の発言は、(だいぶ)補足し、誤解を招きそうなところを整理(削除)すると以下のようになる。

  • コンテンツは器のUIがその性格を規定する。紙の書籍についても、目次やページ、そして、紙の複数の固まりという物理的なあり方というか、触った時のページの厚みであと何ページ残っているか直感的にわかるUIに規定されている。Webについても、ブラウザやナビゲーションとしての検索エンジンなどに規定されている。電子書籍も本当はそのはずで独自の性格を持っているはず。
  • しかし、EPUBは現在は、紙と同時で出るものが多いので、紙のコンテンツに規定されてしまっており、本来の電子書籍という器本来のあり方がまだ発揮できていない。Web出版物は、たぶんEPUBのように紙版と同時に出る事例が多くないと思うので、紙版のあり方に規定されるようなことがないのではないか。今後どのようなコンテンツが出てくるか楽しみにしている。
  • Web側からすると、Web Pulicationの登場により、これまでのWebでは出来なかった表現ができるようになる。長いコンテンツがより読みやすくなる。EPUB側からすると、従来のEPUBよりWebのように簡単に作れるたり、公開できるようになる。
  • 現在は、WebとEPUBの間に大きな隙間が空いている状態だと思うが、Web出版物の登場で、みんながおもしろがって、その間を埋めてくれると良いと思っている。
  • 電子出版では、アマゾンなどのプラットフォームが公開、コンテンツへのリーチ、課金、DRMなど全てをそれぞれで囲い込む状況となっている。Webでは、このようではなく、公開、コンテンツへのリーチや課金などが水平分業型になっていると思うが、よりWeb寄りのWeb出版物もそうなっていくと思う。EPUBのそばにそういうコンテンツ群が登場することで、電子出版のビジネスモデルも変わっていけば面白い。
  • 出版物というと、出版社が出すコンテンツが想起されやすいが、実は官公庁のような公的機関や大学、個人が無償で公開しているようなものも大量にある。
    こういった無償で出しているコンテンツは、DRMフリーのものが多いので、適当な器があれば柔軟に移行できるのではないのか。これまではWeb出版物という器がなかったからだせなかったコンテンツがこういうところから出しやすくなるのではないか。

 パネルディスカッションで言えなかったことを補足しようとするときりがないけど、少しだけ追記すると、コンテンツを規定する器のUIには以下で触れるようなコンテンツと目の距離やコンテンツが読む{見る}ものに強いる姿勢も含まれると考えている。Webのように縦置き画面で少し離れたところからでも読みやすい文章と、本のように横に倒して30cmほどコンテンツから離れた状態で読みやすい文章は異なるはずなので、それで文体や作法もかわるはず。ケータイ小説も、今でいうガラケーの小さな画面で読むことを前提に書かれ、また、書く側もほとんど携帯で書いているので、紙で印刷された状態で読んでもそのおもしろさは伝わらない気がする(読んだことはないけど)。

 
 EPUB3の仕様が2011年に固まった当時、「この仕様の利用が順調に伸びるとしても、当面は紙版の書籍と同じものが刊行されるのだろう、しかし、いずれは、EPUB版オリジナルのコンテンツが増えてくるに違いない、そうなったときこそ、電子書籍の本来のUIやコンテンツのあり方が発揮されるだ!」とちょっと青臭く考えていた。2017年になってそれがEPUBではなく、Web Publicationsという形で出てくるのかーという感慨が個人的にある。2011年から2013年に電子書籍の登場で読書はこう変わるという議論がいろいろとされていたと記憶しているけど、Web Pulicationsにあてはあるものも多いかもしれない。

ECMAScript and Babel’s role

http://events.html5j.org/conference/2017/9/session/#a3
 ECMAScriptについては、標準化されたJavaScriptである、ということ以上のことは本当に何も知らずに参加したのだけど、さすがにそれだけの理解では、話について行くのは厳しかった(以上・・・・・・汗)。

多様なユーザーニーズに応えるフロントエンドデザインパターン〜書籍「インクルーシブ HTML + CSS & JavaScript」より

http://events.html5j.org/conference/2017/9/session/#d4
 11月発売予定の書籍『インクルーシブHTML+CSS & JavaScript』をベースに訳者である太田良典さんと伊原力也さんによる実装例の紹介。
スライドは以下。


 まず、太田良典さんと伊原力也さんがスライドめくりながら対話形式で話を進行していくというのが面白かった。お二人の話力もあると思うけど、対話形式のほうが一人が一方的に話すよりも、一般的にはテンポもよくて、わかりやすいのではないか。
 内容について。アクセシビリティ系の本や記事は、こうやるとアクセシブルでないからちゃっちゃだめと否定的なことが書いてあることが多いが、この本は、HTMLとJS、cssでこう実装するとアクセシブルという実装例を示しているそうで、「すいませんすいません」と思いながら話を伺っていた。原著者がHeydon Pickering氏ということで、同氏が意識しているスクリーンリーダーはJAWSかNVDAなのかな、日本の視覚障害者が多くしているスクリーンリーダーPC-Talkerだとどうなのかな、日本の視覚障害者によく利用されている音声ブラウザNetReader(ICTスキルが高い特に全盲の視覚障害者ほど使用しているという印象)で対応できるだろうかというところを気にしながら。例えば、ここで紹介されていたaria-live属性のようにたぶんPC-Talkerではまだ対応していない実装例もあるのだけど、しかし、どこまで特定のソフトにあわせる必要があるのか、悩ましい。とか、とはいえ、視覚障害者の間でPC-Talkerのシェアが圧倒的なので悩ましい。とか、いろいろとぐるぐるとぐるぐると。
ちなみにセッション中にこの本をアマゾンで予約した。

ウェブのための次世代決済法

http://events.html5j.org/conference/2017/9/session/#b5
GoogleのえーじさんによるWebPaymentsの話。Webpaymentsについては、このブログでも以下のエントリなどでよく分からないまま書いたこともあり(今、読み返すとたぶん間違ってるところある)、関心は持っていたけど、その後全然動向を追っていなかったので、その後どうなったのかという関心を持って参加した。
Webでの課金の仕様を検討するW3CのWeb Payments Community Group
 
 上のブログで書いた当時、肝心の課金部分をどのようにW3C標準にするか、いまいち想像ができなかったけど、なるほどこのように標準化するのか、頭いい人が考えることが違うと若干あほっぽいけど、素朴にそんなことを思っていたり、 仕様が固まるどころか、思っていた以上に一部とはいえ、実装がかなり進んでいたことに驚いた(仕様の数が多いことも)。
スライドは以下。