2018年11月に書誌データフォーマットMARC 21 (参考: MARC 21 とは)にアクセシビリティに関するメタデータを記述することを想定した項目が既存項目の変更又は新設という形で追加されました。
- 041 – Language Code
- 341 – Accessibility Content
- 532 – Accessibility Note
何回に分けてMARC21に追加されたアクセシビリティに関するメタデータ項目について紹介します。
このエントリでは、言語情報を提供する項目である
を取り上げます。
目次
041
フィールドの改訂概要
041
のフィールドは、上の名称にあるとおり、メタデータの対象となる資料について、コードという形で言語情報をを入力するフィールドです。041
フィールド自体は以前からありますが、11月のMARC21の改訂でこの041のサブフィールド識別子が一部変更、又はサブフィールの新設によって、アクセシビリティに関する言語情報を入力できるようになりました。
改定前の041
のサブフィールド識別子は以下のとおりでした。
Subfield Codes(2018年11月の改訂前)
$a - Language code of text/sound track or separate title (repeatability code)
$b - Language code of summary or abstract (repeatability code)
$d - Language code of sung or spoken text (repeatability code)
$e - Language code of librettos (repeatability code)
$f - Language code of table of contents (repeatability code)
$g - Language code of accompanying material other than librettos (repeatability code)
$h - Language code of original (repeatability code)
$j - Language code of subtitles or captions (repeatability code)
$k - Language code of intermediate translations (repeatability code)
$m - Language code of original accompanying materials other than librettos (repeatability code)
$n - Language code of original libretto (repeatability code)
$2 - Source of code (nonrepeatability code)
$6 - Linkage (nonrepeatability code)
$8 - Field link and sequence number (repeatability code)
これが2018年11月に以下のようになりました。$j
が変更、$p
、$q
、$r
が新設されました。
Subfield Codes(2018年11月改訂後)
$a - Language code of text/sound track or separate title (repeatability code)
$b - Language code of summary or abstract (repeatability code)
$d - Language code of sung or spoken text (repeatability code)
$e - Language code of librettos (repeatability code)
$f - Language code of table of contents (repeatability code)
$g - Language code of accompanying material other than librettos (repeatability code)
$h - Language code of original (repeatability code)
$j - Language code of subtitles (repeatability code) ←変更
$k - Language code of intermediate translations (repeatability code)
$m - Language code of original accompanying materials other than librettos (repeatability code)
$n - Language code of original libretto (repeatability code)
$p - Language code of captions (repeatability code) ←新設
$q - Language code of accessible audio (repeatability code) ←新設
$r - Language code of accessible visual language (non-textual) (repeatability code) ←新設
$2 - Source of code (nonrepeatability code)
$6 - Linkage (nonrepeatability code)
$8 - Field link and sequence number (repeatability code)
改訂の経緯と改訂の詳細
字幕の言語情報- サブフィールド識別子 “$j とサブフィールド識別子 $p
改訂前までは、subtitlesとcaptionsの言語情報をサブフィールド識別子 $j
にまとめて記述していました。
$j - Language code of subtitles or captions
subtitlesとcaptionsは、日本語で訳せば同じ「字幕」になるものの、subtitlesはナレーションやセリフの翻訳字幕、captionは、聴覚障害者に対する情報保障として字幕(セリフやナレーションだけではなく、背景の音や付随するBGMなどを説明した追加の文字情報も提供)であり、明確に区別されています。それが同じフィールドで記述することはどうなのか、という議論がありました。その問題提起を受けて、サブフィールド識別子$j
は subtitle 専用のサブフィールド識別子に変更し、catpionの言語コードは新設されたサブフィールド識別子 $p
に記述されることになりました。
$j - Language code of subtitles
$p - Language code of captions
英語のビデオに英語の聴覚障害者向け字幕がついて映像資料は以下の形で言語コードが記述されます。
041 0# $a eng $p eng
音声解説の言語情報 -サブフィールド識別子 $q
DVDや映画、テレビなどの映像にそれに付随する音声だけではわからない情景・場面・人物の動きなどの視覚情報を音声で伝えるものが音声解説(音声ガイドともいわれます)です。音声解説の言語情報について記述するフィールドがこれまでなかったため、サブフィールド識別子 $q
が追加されました。
$q - Language code of accessible audio
英語に吹き替えられたフランスの映画で英語の音声解説がついたものは以下のように記述されます。
041 1#$a eng $h fre $q eng
手話の言語情報 – サブフィールド識別子 $r
手話が本文言語に相当する主たる言語であるコンテンツであれば、本文の言語コードを記述するサブフィールド識別子 $a
に記述することがかろうじて可能です。
$a - Language code of text/sound track or separate title
しかし、手話が本文言語ではなく、代替コンテンツとして提供されている場合に記述するフィールドがこれまでありませんでした。また、本文言語が手話である場合も、MARC Code List for Languages で用意されている手話の言語コードは、手話であることを示す sgn
のみであり、その手話がどの地域/国の手話なのかを示す言語コードが用意されていない点が不十分であると指摘されていました。
そこで、代替コンテンツとしての手話の言語情報を記述する想定で新設されたのが、サブフィールド識別子$r
です。”visual language”としているのはなるほどですね。
$r - Language code of accessible visual language (non-textual)
各国で使用される手話の言語コードが規定されいるiso639-3の言語コードが使用される想定のようです。
主たる言語情報が英語であり、かつ代替コンテンツとしてアメリカ手話(American Sign Language: ASL)提供されている場合は以下のように記述します。iso639-3の言語コードとして、アメリカ手話ase
が記述されています。
041 0# $a eng $r sgn
041 07 $r ase $2 iso639-3
$r
は代替コンテンツとして提供される手話の言語情報を記述することを想定したものであるため、本文言語として手話が提供されている場合には$r
は使用できません。本文言語が手話である場合には以下のように記述します。
041 0# $a sgn
041 07 $a ase $2 iso639-3
参考
以下のディスカッション・ペーパーとプロポーザルに議論の経緯やサンプルの書誌が多く掲載されています。
- Discussion Paper No. 2018-DP02: Subfield Coding in Field 041 for Accessibility in the MARC 21 Bibliographic Format
- Proposal No. 2018-02: Subfield Coding in Field 041 for Accessibility in the MARC 21 Bibliographic Format
- MARC 21 Format for Bibliographic Data: Appendix G: Format Changes