平成30年著作権法改正に対応する著作権法施行令改正案のパブリックコメントが開始

 備忘として。平成30年著作権法改正に対応する著作権法施行令改正案のパブリックコメントが開始されました。2018年11月17日土曜日に日の変わるタイミングで開始されたようです。土曜日に開始されることもあるんですね。
「著作権法施行令の一部を改正する政令(案)」及び「著作権法施行規則の一部を改正する省令(案)」に関する意見募集の実施について | パブリックコメント:意見募集中案件詳細|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
 1月1日に施行する必要があり、2009年の改正時にも11月14日に開始されていたので、今回はいつパプコメが開始されるのかと思っていたましたが、こんなギリギリになろうとは。本来は30日を確保する必要があるようですが、そんな事情で意見募集期間が短縮されています。

本政令案・省令案で規定する内容については、多くの事業者・団体の活動に影響を与え得るものであるところ、それらの関係者のニーズ・意向等の把握や、審議会での検討等に一定の期間を要した一方で、「著作権法の一部を改正する法律」(平成30年法律第30号)の施行(平成31年1月1日)までに本政令・省令を制定をすることが不可欠であることから、意見募集期間を短縮することとした。

 著作権法施行令の改正案そのものが提示されるのかと思っていたのですが、概要のみが示された上での意見募集です。過去の事例や他の政令を見てもそうらしいので、そういうものなのか。
 今回の著作権法改正では、障害者サービスに関係するところでは以下の3点に対応することになっています(詳細は、著作権分科会法制・基本問題小委員会で中間まとめた出た段階でまとめたものがありますので、ご参照ください。)。1番目と2番目は、著作権法の改正ですでに実現しましたが、3番目の複製等を行える主体の拡大は、今回の著作権法施行令で実現されることになっています。

  1. 第37条第3項における受益者の範囲に身体障害などにより読字に支障がある者を含めることを明文化(この部分がマラケシュ条約対応)
  2. 第37条第3項により認められる著作物の利用行為に公衆送信(メールによる提供)を追加
  3. 第37条第3項により複製等を行える主体の拡大(ボランティア団体の追加及び文化庁長官の個別指定に係る事務処理の円滑化)

 障害者サービスに関係するところを以下に転載しておきます。

(2)視覚障害者等のための複製又は公衆送信が認められる者(新法第37条第3項、新令第2条第1項第2号、新規則第2条の3及び第2条の4関係)
○ 新法第37条第3項では、「視覚障害者等の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるもの」が、視覚障害者等のための録音図書等を作成するため、著作物の複製又は公衆送信(インターネット送信のほかメール送信も含む。以下(2)において同じ。)を行うことができる旨、規定している。
○ 新令第2条では、「政令で定めるもの」として、新たに、視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人(法人格を有しないボランティア団体等も含む。)で次に掲げる要件を満たすものを類型的に規定する(これにより、文化庁長官による個別指定を受けずとも、視覚障害者等のための複製又は公衆送信が可能となる)。
① 視覚障害者等のための複製又は公衆送信を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力及び経理的基礎を有していること。
② 視覚障害者等のための複製又は公衆送信を適正に行うために必要な著作権法に関する知識を有する職員が置かれていること。
③ 情報を提供する視覚障害者等の名簿を作成していること(名簿を作成している第三者を通じて情報を提供する場合は、当該名簿を確認していること)。
④ 法人の名称並びに代表者の氏名及び連絡先その他文部科学省令で定める事項を文部科学省令で定めるところにより公表していること。
○ 新規則第2条の3では、上記④の「文部科学省令で定める事項」として、次に掲げるものを規定する。
i)視覚障害者等のために情報を提供する事業の内容(複製又は公衆送信を行う著作物の種類及び当該複製又は公衆送信の態様を含む。)
ii)上記①から③までに掲げる要件を満たしている旨
○ 新規則第2条の4では、上記④の「文部科学省令で定めるところ」として、文化庁長官が定めるウェブサイトへの掲載により行うことを規定する。

今回の改正に関連する(あるいはしそうな)エントリ

第3回 京都でウェブアクセシビリティたいらげ会 参加記録 #a11y_tairage

 10月12日 (金) に時代工房さんで行われた第3回 京都でウェブアクセシビリティたいらげ会 – connpassに参加してきました。たいらげ会は、今回が初参加。5月のアクセシビリティの祭典 2018への参加に引き続き、ウェブアクセシビリティ関係のイベントには今年2回目。

アクセシビリティの祭典 2018 個人的なふりかえり


 alt で悩んでいたところに、alt がテーマで@mondo_ さんがしゃべる、altaltaltと、繰り返し口に出しても怪訝な顔をされそうにない勉強会が京都にある、ということで、家内調整を丁寧に行った(?)上で参加してきました。
 ところで、余談ながら、図書館関係のイベントに参加するノリで、時代工房に到着して早々に関係者や参加者に「○○図書館の○○です」と業務な感じで所属機関込みで自己紹介してしまって、気分的にやらかした感があり、冒頭若干気落ちしながら、最初のもんどさんの話を伺っていたりとかもしていた。(「そうだよー、図書館関係のイベントではないのだから、ハンドルネームか、名前だけ名乗ればよかったー」とかもんもんと)。
 今回は、もんど(@mondo_) さんがalt(代替テキスト)で、時代工房の柴田( @sbtnbfm ) さんがよいリンクの話で、お二人ともそれぞれスライドはすでに公開されているので、話の内容の詳細はそれを。


 柴田さんが使用されているツールは、HTML Slidyなのかな。そのままHTMLを公開すればスクリーンリーダーユーザーが使いやすいものを公開できるし、かっこよい。自分も使ってみたくある。
 もんどさんと、柴田さんのお話は、尾内でべ( @onouchidebe )さんが図で一枚にまとめてくださっています。要所要所に絵心が光る。そんな心を持ち合わせていない私にとって嫉妬しかない(絶賛している)。


 ということで、以下は感想を。
 
 もんどさんのalt のお話について。
 プリントディスアビリティのある方のためにEPUB形式でテキストデータを作ることについて考えているところで、特にその中でEPUBに含まれる画像の代替テキストのあり方について頭を悩ませています。もう超絶といってよい。EPUBは、Web技術をベースとしているけど、一方で、DAISYの後継規格という位置づけでもある(参考: DAISYの種類とバージョン)ので、Webと音訳のコンテキストが重なるところにEPUBはあるのだと理解しているけど、そう考えると、Webにおける非テキストコンテンツにおける代替テキストの要件と、音訳における図等の処理の違いはあるのであろうか、あるのであればEPUBはどちらに寄せるべきなのだろうか、と。
 前提となる認識として、音訳側の代替テキストのほうが代替テキストが長くなる傾向にあると感じているところがある。ターゲットが(たぶん)同じである以上、究極的には目指すところは同じはずですが、日本で録音図書が製作されるようになって、そのノウハウも60年以上蓄積があるので、重ならないところもあるのかもしれないと。このあたりの悩み、以下のツィートから始まるスレッドでも @ma10 さんと前々日に議論させていただいたりしていた。


 Webにおける非テキストコンテンツの代替テキストの要件を詳しく知りたくて、もんどさんのお話を伺ったのですが、

  • 元の非テキストコンテンツと同じ目的<及び情報を伝える
  • 代替テキストを非テキストコンテンツと置き換えてもそのページが持つ情報が失われない

という基本要件は音訳もWebの代替テキストもやはり全く同じではないかと改めて感じた(むしろ同じすぎるくらいで、Web側の基本要件がこのように至った経緯を知りたい)。簡潔さを求められる点がWebのほうが強いかなという感じもしましたが、簡潔さは無論、音訳でも求められるわけで音訳者によるという感じもする。
 
 とすると、音訳とWebの代替テキストの長さに違いがあるとするならば、フォーマット(入れ物)の違いが大きいのかもしれない(テキストベースか、音声ベースか、又はDAISY形式とHTMLの違いとか)。制作者側のコンテキストの違いも大きいだろうか。音訳の場合、制作のリクエストを利用者から受けて行われることが多く、制作される個々のタイトルについて実際のニーズを制作者が感じているということ、ボランティアベースで作られている、つまり、熱意があるので、長くなることを厭わないところはあるのではないか、とか。もう少し考えたい。
 柴田さんのリンクのお話。
target="_blank"の安易な利用はアクセシビリティ的にどうなのかという議論はずいぶん前に内部でもしたことがあるなぁと思い出しながら、柴田さんのお話、伺っていましたが、ユーザーを戸惑わせない、しかし、ユーザー側が自分の望む形でリンクを活用できる形を選択肢として提供することを制作者側が常に意識して作らないといけないということ、改めて突きつけられた感じ。常に自分がやれているかというと、疑問符がつくかもしれない 汗。反省。
 柴田さんの発表については、その後。柴田さんと @robert_KIMATA さんがその後していたやりとりも、おもしろかった。リンクの考え方とか、XHTML2.0にまで話が及んだりとか。


 
 たいらげ会の懇親会の話。
 
 懇親会を場所を変えてやりましょうとなった場合、一度落ち着いてしまうと、帰る時間がかなり遅くなってしまうため、懇親会の前のタイミングで帰るつもりだったのだけど、懇親会もたいらげ会の会場となった時代工房さんで引き続き行われて、テーブルにどんと置かれるビール缶に惹かれて結局、参加してしまった。勉強会と同じ会場で懇親会というの、参加しやすさは、参加者の立場で見て実感した。これが参加しやすい。勉強会の雰囲気がそのまま残っていることもよくて、リラックスした雰囲気で話せるのがとても良かった。これは自分が関係するイベントでも取り入れたい。
 全体を通して楽しい時間で、いろいろと刺激を受けて考えさせられるところがありました。ありがとうございました。次回も・・きっと開催されるのですよね!