Bookshareを運営するBenetechがOS、ブラウザ、スクリーンリーダーの組み合わせごとのMathMLの対応状況を確認できるサイトを公開しています。
現在、Windows、Mac、iOS、ChromeBookについて、それぞれのスクリーンリーダーの24の組み合わせが公開されており、対応/未対応のほうか、読み上げに必要な環境(NVDAではMathPlayerが必要など)についてもまとめられています。
前エントリに続き、アマゾンのAmazon Kindle パブリッシング・ガイドラインネタ。
2018年に公開されたバージョン 2018.2でMathMLへのサポートが追加されました。
最新のバージョン 2019.2の時点でMathMLサポートは以下のように記載されています(2018.2から変更なし) 。
10.6 MathML のサポート
タイプセッティングの改善は MathML をサポートしています。
サポートされているタグ:
- maligngroup
- mrow
- malignmark
- ms
- math
- mspace
- menclose
- msqrt
- mfenced
- mstyle
- mfrac
- msub
- mi
- msubsup
- mlabeledtr
- msup
- mmultiscripts
- mtable
- mn
- mtd
- mo
- mtext
- mover
- mtr
- mpadded
- munder
- mphantom
- munderover
- mroot
サポートされていないタグ:
- annotation
- maction
- mglyph
- mlongdiv
- msgroup
- mstack
- semantics
トラブルシューティング:
MathJax を含む HTML ページを開いてください。問題なく表示された MathML は、タイプセッティングの改善でサポートされています。
Kindleはデスクトップ環境のスクリーンリーダーでは、JAWSとNVDA、スマートフォンでは、VoiceOver (iOS/iPadOS)とTalkBack(Android)への対応を謳っていますが(なお、JAWS、NVDAの日本語コンテンツへの対応はまだ)、少なくともJAWSとNVDAはKindleに挿入されたMathML数式の読み上げに対応しているようです(確認できていませんが、VoiceOver もEPUBの閲覧環境との組み合わせではMathMLを読み上げることが多いので、対応している可能性は高そう)。
NVDAは2018年3月に公開されたNVDA2018.1で早速対応していたようです。最新のNVDA 2020.1のユーザーガイドでは、以下のとおり案内されています。開発が止まっているぽいMathPlayerが必要という点がひっかかりますが。
- 数式の読み上げ
Design Science の MathPlayer 4 を使うと NVDA で数式の読み上げと対話的なナビゲーションが可能です。 この機能を使うためにはコンピューターに MathPlayer 4 をインストールしてください。 MathPlayer は以下から無料でダウンロードできます: https://www.dessci.com/en/products/mathplayer/
NVDA は次の種類の数式コンテンツに対応します:
- Mozilla Firefox, Microsoft Internet Explorer および Google Chrome における MathML
- Microsoft Word と PowerPoint における Design Science の MathType: ただし MathType をインストールしておく必要があります。 評価版でもかまいません。 以下からダウンロードできます: https://www.dessci.com/en/products/mathtype/
- Adobe Reader における MathML: ただし、まだ公式な規格ではないため、この形式のファイルを作成できるソフトは公開されていません。
- Kindle for PC における数式: アクセシブルな数式を含む書籍に対応
NVDAはドキュメントの読み上げにおいて、これらの対応している数式コンテンツがあれば数式の読み上げを行います。 点字ディスプレイを使用している場合は、点字での数式の出力を行います。
11.7. Kindle for PC
NVDA は Amazon Kindle for PC での電子書籍の読み上げとナビゲーションに対応しています。 この機能は「スクリーンリーダー対応」として制作された Kindle 電子書籍で有効です。それぞれの電子書籍の詳細ページで対応状況を確認してください。
電子書籍の読み上げにはブラウズモードを使います。 電子書籍を開いたり、書籍の内容部分にフォーカスを移動したりすると、ブラウズモードに自動的に切り替わります。 カーソルの移動や「すべて読み上げ」の実行において、ページの移動は必要に応じて自動的に行われます。 PageDown キーで次のページに進みます。PageUp キーで前のページに戻ります。
1文字ナビゲーションはリンクと画像のみ有効です。ただし現在のページの中でしか移動できません。 リンクへの移動には脚注も含まれます。
アクセシブルな数式を含む書籍では、数式の読み上げと対話的なナビゲーションが可能です。 詳細は 数式の読み上げ を参照してください。
2019年10月にKindleに埋め込まれたMathMLコンテンツの読み上げに対応したそうです。
Reading Math Content
Reading math content in Kindle books is now possible for speech and braille users in the Kindle App for PC with JAWS and Fusion. Math expressions are shown in braille using Nemeth code, a system for reading and writing math that is exclusive to the English language.
Reading math content in the Kindle app is very similar to accessing it on web pages. When mathematical content is found in a Kindle book, JAWS will describe the particular expression, which can also be accessed using a refreshable braille display. Pressing ENTER on this content will open a feature we implemented called the Math Viewer, which can be used to explore the expression in greater detail
Webアクセシビリティ Advent Calendar 2019、7日目の記事、というかメモです。
数式ありのコンテンツについて、WebやEPUBでどのような方法で記述し、そして、アクセシブルなものにするのか、現状の考えられる案をMathMLを中心に書き出してみました。なお、近年の仕様の動向やブラウザの実装に係る動きは、ミツエーリンクスさんのブログWebにおける数式と数式の読み上げを取り巻く環境についてでまとめてくれています。
なお、私自身のスコープが
数式入りの学術文献を如何にアクセシブルな形でEPUBにするか
にあります。EPUBより実装が進んでいるであろうWeb(Webブラウザ上での対応)も比較の対象として触れますが、EPUB対応を前提としていることをご了承ください。数式入りというと、小中高の教育系コンテンツも考えらますが、このエントリは高等教育向けのコンテンツを対象とします。
WebやEPUBに数式を入れる方法として以下が考えられます。2.1とそれ以外の方法を組み合わせることになるだろうと思われる。
二項演算子及び関係演算子を用いて一行で表記可能なシンプルな数式はテキストデータとして表記する。
数式を画像化して挿入する。画像には数式の読みを代替テキストとして提供する。
MathMLを使用して数式を記述する。
JavaScriptライブラリであるMathJaxを利用し、MathMLとして数式を記述する。EPUBの場合は、このJavaScriptライブラリをEPUBに同梱する。
LaTexを使用して数式を記述する。
JavaScriptライブラリであるMathJaxを利用し、LaTexとして数式を記述する。EPUBの場合は、このJavaScriptライブラリをEPUBに同梱する(EPUBの仕様ではサポートしていないが、MathJaxによりLaTexで記述することがブラウザ上でもEPUBの閲覧環境上でも可能になるはず)。
画像に付与された代替テキストの読み上げは、ほぼ全ての環境で対応していると言ってよいであろうと思われ、LaTexはEPUBの仕様でサポートされていないため、「2.2 数式の画像化と代替テキストの提供」、「2.5 LaTex」、「2.6 LaTex + MathML」の検証は省略。
以下を検証する必要がある (一部確認できているところは記入)。学術用途(引用用途)で再利用に耐えうるかの検証方法は要検討。
※本当は実際に検証してこの表を埋めるところまで書きたかったのですが、検証対象を絞るところで力尽きてしまいました 汗。
検証対象(例) | PC-Talker | NVDA | VoiceOver(iOS) |
---|---|---|---|
2³ ※上付き数字をどのように読むか | に うわつきすうじさん | に | |
1/3 ※のスラッシュによる表記をどのように読むか | いち すらっしゅ さん | いち すらっしゅ さん | |
3x = 2x + 6 − 1 ※減算演算子 (-) の表記をどうするか(文字コード的に。正直、ハイフンとマイナス混ざりそう・・) | |||
4 × ( 4 ÷ 2 ) = ※除算演算子(÷)と、括弧の読み上げが要確認か。 |
検証に用いたサンプル
ブラウザ | 検証したOS | Presentation Markup | Content Markup | 検証スクリーンリーダー | 備考 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
表示 | 読み上げ | 表示 | 読み上げ | ||||
Chrome | Windows 10 / macOS Mojave | 不可 | – | ||||
Firefox | Windows 10 / macOS Mojave | 可 | |||||
Edge | Windows 10 | 不可 | – | ||||
Safari | macOS Mojave | 可 | |||||
Safari | iOS | 可 | 可 | VoiceOver |
メモ
「3.2.1 MathML」に用いたサンプルのソースに以下を追加。検証対象にNetReaderを追加。
<script type="text/javascript"
src="https://cdn.mathjax.org/mathjax/latest/MathJax.js?config=TeX-AMS-MML_HTMLorMML">
</script>
ブラウザ | 検証したOS | Presentation Markup | Content Markup | 検証スクリーンリーダー | 備考 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
表示 | 読み上げ | 表示 | 読み上げ | ||||
Chrome | Windows 10 / macOS Mojave | 可 | |||||
Firefox | Windows 10 / macOS Mojave | 可 | |||||
Edge | Windows 10 | 可 | |||||
Safari | macOS Mojave | 可 | 可 | VoiceOver | |||
Safari | iOS | 可 | 可 | VoiceOver |
検証するなら以下の表を埋める感じであろうか。
テスト用サンプルEPUB
なお、DAISYユーザーのEPUB閲覧環境としては、EPUBにも対応したDAISY再生機器のプレクストークPTR3も有力な候補になりえるが、学術用途(引用用途)での再利用が困難である(つまり、コピペが難しい)と思われるため、とりあえず今回の検証対象からは外す(将来的には検証に加えた方がよいとも思うが)。
閲覧環境 | 検証したOS | Presentation Markup | Content Markup | 検証スクリーンリーダー | 備考 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
表示 | 読み上げ | 表示 | 読み上げ | ||||
EPUBReader+Firefox | Windows 10 / macOS Mojave | 可 | |||||
Thorium Reader | Windows 10 / macOS Mojave | 可 | Win10版では、"MathML"メニューにある"MathJax"にチェックされたときに表示可 | ||||
Adobe Digital Editions 4.5.11 | Windows 10 / macOS Mojave | 可 | |||||
MyBook Ⅴ | Windows 10 | 不可 | – | ||||
Dolphin EasyReader ver.6.03 日本語版 | Windows 10 | 不可 | – | ||||
EasyReader ver.8.02 英語版 | Windows 10 | 可 | 不可 | 日本語版なし | |||
Apple Books | macOS Mojave | 可 | |||||
Murasaki | macOS Mojave | 可 | |||||
Apple Books | iOS | 可 | 不可 | ||||
ボイス オブ デイジー 5 | iOS | 可 | 可 | VoiceOver(ソフト独自の読み上げ機能では数式の読み上げ不可) | |||
EasyReader for iOS and Android | iOS | 可 | 不可 | VoiceOver及びソフト独自の読み上げ機能 | |||
R2 Reader | iOS | 可 | 可 | VoiceOver | |||
Voice Dream Reader | iOS | 不可 | – | VoiceOver及びソフト独自の読み上げ機能 |
閲覧環境 | 検証したOS | Presentation Markup | Content Markup | 検証スクリーンリーダー | 備考 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
表示 | 読み上げ | 表示 | 読み上げ | ||||
EPUBReader+Firefox | Windows 10 / macOS Mojave | 可 | |||||
Thorium Reader | Windows 10 / macOS Mojave | 可 | |||||
Adobe Digital Editions 4.5.11 | Windows 10 / macOS Mojave | 可 | |||||
MyBook Ⅴ | Windows 10 | 不可 | – | ||||
Dolphin EasyReader ver.6.03 日本語版 | Windows 10 | 不可 | – | ||||
EasyReader ver.8.02 英語版 | Windows 10 | 不可(白紙状態でページが全く表示されない。) | – | 日本語版なし | |||
Apple Books | macOS Mojave | 可 | |||||
Murasaki | macOS Mojave | 可 | |||||
Apple Books | iOS | 可 | |||||
ボイス オブ デイジー 5 | iOS | 不可(白紙状態でページが全く表示されない。)< | – | ||||
EasyReader for iOS and Android | iOS / Android | 可 | |||||
R2 Reader | iOS | ||||||
Voice Dream Reader | iOS | 不可 | – |